異世界ライフは山あり谷あり

常盤今

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-時間をさかのぼって、バルーカ南の森の中にて-

「…………で、二本角は獣化移動に似た速さでの攻撃を仕掛けて来るんだな?」

「ああ。その攻撃をされたのは最初に戦った時の1度だけだったが、一緒に戦っていた3等級の剣士が機転を利かせて俺を蹴ってくれたおかげで何とか避けれたんだ」

「1回だけか。多用はできないみたいだが…………」

 午後最初の小休止中、話題はこれから戦うかもしれない二本角の黒オーガのことになった。

「獣化移動は高速で動くことの代償として下半身が非常に不安定になる。それを補うために両腕を駆使して姿勢を制御しなければならない。
 獣化移動中に剣を振れない理由もそこにある」

「いいのか?
 技の詳細を俺に聞かせたりして」

「別に構わないさ。
 こんなことは冒険者や軍人として経験を積んでいけば、自然と耳に入ってくることだ」

 それだけ獣化移動の使い手が多いということなのだろう。
 模擬戦で相手が獣人だった場合、かなりの確率で獣化移動を使ってきてた気がする。もちろん獣人の種類にもよるけど。

「二本角はあの攻撃を弾く肌のせいか知らんが、高速で動いても下半身が安定しているのだろう。両腕を自由に使えるから高速移動中も攻撃が可能ってことだ。
 もっともその分だけ脚への負担も大きいとみるべきで、多用できないのも頷ける」

 そうか。
 獣人は敢えて下半身を不安定にさせることで、脚にかかる負担を他へ逃してるわけか。

「ということで、1度か2度の攻撃を確実に避けることが重要なんだが…………
 貴様は獣化移動の発動を見極められるのか?」

 確か武闘大会の時にロザリナが言ってたな。下半身に溜めを作るとかなんとか。一瞬だけらしいが。

「無理だ。俺にはできそうにないな」

「ならばこちらから逃げろとか避けろと言おう。
 そうしたら即座に左右どちらかに跳べ。
 細かく動くことはできないはずだから、それで何とか回避できるはずだ」

「わかった。頼む」

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「避けろ!!」

 !?!?

 右側の藪の中に跳ぶ…………というより身体を投げ出した。
 すぐ左側を何かが駆け抜けた際の風が舞う。
 紙一重というほどではないが、ランテスの声掛けのおかげでなんとか回避できた。
 互いの射程が違い過ぎて、発動を見極めるとか以前に細かい身体の動きを見れる距離ですらなかったが。

 一連の回避動作のせいで零式改の発動準備が解けてしまった。
 まさか二本角も同じように出会い頭の一撃を狙っていたとは…………

 ちょうど俺とランテスの中間を駆け抜けた形で後方で動きの停まった二本角に対し、通じないのを承知の上で土甲弾を放つ。

 ズドォォォォン!! ズドォォォォン!!

 (避けた?!)

 防御姿勢をとって1発目を受けた二本角が2発目を回避した。

 ズドォォォォン!! ズドォォォォン!! ズドォォォォン!!

 続けざまに発射した土甲弾も回避しながら俺へと向かって来る。
 あちらのターゲットはやはり魔術士である俺のようだ。
 かなり距離を詰められてヒヤッとしたが、そこへランテスが割って入ってきた!



 ランテスは一刀。二本角はトンファーブレードの二刀。
 手数の少なさをランテスは二本角の周囲を細かく動くことでカバーしている。
 一見すると互角の戦いを演じているが、ランテスが繰り出す斬撃はことごとく二本角の黒肌に弾かれている。
 やはり黒オーガの物理耐性の高さは半端ではない。
 相手の攻撃を避けたり防いだりする必要がないので、このままでは二本角に形勢が傾いていくであろうことは誰の目にも明らかだ。
 
 この状況でカギを握るのは俺になるのだが、先ほどから有効な魔法を撃てないでいる。
 せいぜい土槍(回転)や風刃をチマチマと撃つぐらいしかできてない。しかもほとんど外しているし。
 どうしてかと言うと、直撃させたり高威力の魔法を撃つにはランテスが邪魔なのだ。
 当然俺も射線を確保するために移動してるのだが、二本角の周囲を細かく動くというランテスの戦い方との相性がすこぶる悪い。

 ロクに連携も練習していない即席パーティーなので仕方ない面はあるものの、最大の原因は俺にあった。
 思えばちゃんと前衛がいる状態での後衛魔術士としての戦闘を、俺はまったく経験したことがない。
 グリードさんと二本角と戦った時は俺も前衛的な立ち位置だったし、タークさんパーティーに臨時参加した時もロザリナやサリアさん達とパーティーを組んだ時も連携とは無縁の戦い方だった。
 強いて挙げるなら、4等級昇格試験の時だろうか。
 6等級パーティーを前衛として後方でちゃんと魔術士をしていた。
 もっともあんなヌルい戦闘では何の経験にもならないだろう。しかも見てるだけが多かったし。

 『君は低等級の内に身に着けておくべき冒険者の基礎的な知識だったり、依頼のやり方やパーティーの組み方・連携を始めとした諸々の技能を習得していないのではないかね?』

 以前某ギルドマスターに言われた小言が頭をよぎる。
 二本角の黒オーガとの戦闘という重大な局面で、まさかこんな基本的な問題にぶち当たるとは…………


 そんな中で少しずつランテスが押され始めた。
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