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第三夜
第15話 導師部屋へいこう
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「先ほど承ったご相談を踏まえても、一度わらし様にお伺いを立てたいと思っていたのです。挨拶がてら、わらし様に謝罪いたしましょう。春江さんよろしいかな」
博臣はまっすぐ襖を見据えて言った。
とつぜんの住職登場に呆けた春江だが、冬陽に腕を引かれて我に返る。険しく歪んだその顔に、わずかばかりの安堵が混じる。
「あ。あの……よろしくお願いいたします」
「話を終えたら、春江さんへお声がけにうかがいますから、みなさまも各々お休みなさい。ちなみに大広間は先ほど、井佐原さんが食事会を締めて、原田さんが片付けをはじめたところだ。途中だった者は食いっぱぐれぬように戻った方がいいぞ」
最後のはどうやら一花と恭太郎に向けられた言葉らしい。ふたりはエッと眉を下げて互いを見合う。
それを横目に、和尚は人だかりをずいと進み、奥座敷の襖に手をかけた。物々しい装飾などなんのその。彼はうっそりと浮かべた笑みはそのままに襖を開きかけて、ア、とわざとらしく声をあげた。
「将臣、導師部屋で待機しなさい。私が戻ったらば春江さんにお声がけを」
「承りました」
「……それでは」
──何人も、中を覗かぬよう。
言い置いて、博臣はいとも簡単に奥座敷への襖を開けた。襖の上、鴨居部分に張られた紙垂が揺れる。半端に開いた入口にするりと身体を滑り込ませ、彼はそのまま後ろ手にタン、と閉める。取り残された我々野次馬たちは、しばらく無言のまま立ち尽くすほかなかった。
最初に動きを見せたのは、一花だった。
「食いっぱぐれちゃう!」
と踵を返して廊下を駆け出した。
そのうしろ姿に、一気に脱力したか冬陽はふらりとしりもちをつく。あわてて神那が駆け寄ると、
「腰が」
といって照れ笑いを浮かべながら力が入らないことを報告した。
すかさず総一郎は、
「お部屋まで運びましょう」
格好つけしいで冬陽を姫抱きにすると、神那に道案内をしてもらいつつさっさと廊下を引き上げていく。あいつめ、乙女たちのナイト気取りでうまいポジションを見つけやがったな──と森谷は憎々しげにそのうしろ姿をにらみつけた。
春江がぎしりと一歩進む。その瞳は、いまだ廊下にへたり込む宏美に注がれている。そういえば様子がおかしい。あれほど勢いづいていた威勢はどこへやら、廊下が暗いためその表情はよく見えぬが、宏美はいまだ動く気配はない。
「あなたも部屋に戻りなさい。宏美」
「…………」
「遺産については改めて、姉弟みんなで話し合いましょう」
「…………」
返事はない。
春江はため息をつき、宏美の腕をぐいと引っ張った。そしてギョッと目を見張った。
「ひ、宏美──」
「…………」
宏美は目をかっぴらき震えていた。
口の端からよだれを流して、瞳に怯懦の色を見せる。まるでよほど恐ろしいものでも見たかのような尋常じゃない表情に、春江も慄き、宏美の手を離す。糸が切れたマリオネットのようにふたたびくたりと床に座り込んでから、宏美は「アぁ」と声にならぬ奇声をあげるや自力で立ち上がり、
「うぁああッ」
と甲高く叫んで廊下を走り去っていった。
まるで嵐のようだ。
呆然とそのうしろ姿を見送る森谷のとなりで、春江はぞっと青ざめた顔でその行く先を見つめる。ぽつねんと残された恭太郎と将臣はそれぞれ奥座敷や春江をするどく見据え、動かなかった。
※
大広間は閑散としていた。
博臣の言ったとおり、食事会はすでに散会し、使用人の原田がせっせとごみを集めているところだった。睦実の家族と宏美の娘、淳実は部屋にもどったのだろう。葬儀社の井佐原すらも、この会食を締めるや隣室の葬儀会場の片付けに入ってしまったとのことだった。
ただひとり、一花は食べかけのまま残された食事のつづきを始めている。そのほか大広間まで戻ってきたのは、春江と森谷、恭太郎と将臣のみ。一気に脱力してしまって森谷は畳に腰を落とした。
「はあ──しんどっ」
「ごめんなさいね、茂樹くん。身内の恥ずかしいところを見せてしまって」
「いやいや、資産家の葬式なんてだいたいこないなもんですわ。しかし妹さんえらい剣幕でしたけど、なんかあったんすか」
「……母の遺言書に、資産は童子守を継ぐ冬陽にすべて託すと書いてあったのが一番の原因でしょう。妹はああいう性格ですからあけっぴろげに感情を出しますけれど、なんにも言わない弟たちだっておなじことを思っているとおもいます」
「なぜミチ子さんはそんな遺言を」
将臣が首をかしげた。
彼の分の食事はすでに空である。なるほど、食事をきちんと終えてから席を立ったに違いない。とはいえ将臣の胃袋にしてみればこの程度の食事、常人からすれば仏飯くらいの腹持ちにしかならぬだろうが。
春江はあきらめたように首を振る。
「あの子たちはみな、母とはずいぶん疎遠だったんです。早いうちから家を出て、結婚をしても孫が生まれても、この家には近寄ろうとはしなかった。妹なんかはお金がなくなるとたまに帰ってきたみたいですけど、そのたび母は敷居も跨がせなかったそうで。母にとって身内といえるのは、結婚してからもしばらく一緒に暮らしていた私と、孫の冬陽くらいのものなんでしょう」
「失礼ですが、旦那さんは?」
職業病である。聞かずにはいられない。
春江は苦笑した。
「ずいぶん前に離縁しました。といっても円満離婚ですから、たまに冬陽と三人で食事もするんですよ」
「ええですねェ」
と、脳みそを働かせずに相槌を打つ。
春江はそのまま休む間もなく、原田とともに晩餐の片づけにとりかかる。料理は麓の料理屋で手配した仕出し弁当のため、卓上は空の弁当箱にまみれている。使用人の原田が「座っててくだせえ」と声をかけるも、彼女は片付ける手を止めようとはしなかった。なにかして気を紛らわせたいのかもしれない。
ふと、異音に気が付いた。いつの間にか外は雨が降り出したらしく、バタバタとはげしく屋根に当たる音がする。この分だと夜通し降りそうだ。
森谷はよお、と将臣に目を向けた。
「和尚さん──中でなんしよるん」
「さあ。でも、お師僧がこうして他者を締め出すときは、たいてい何かやってるときですから……たぶん本当に座敷わらしと対話でも試みているんでしょう」
「何かって」
「ここの坊主は裏でお祓いだのなんだの、請け負ってるンだ。一花のお墨付きだから腕はたしかだよ。代々、浅利の野郎どもはそういう力があるらしい。ア、シゲさんも、泣かせた女のひとりやふたりいるんだろ。きっと憑いてるだろうから祓ってもらえば?」
「どさくさ紛れになにとんでもない法螺ぶっ込んどんねんこんガキャ! ……って、え。まークンも?」
「幸か不幸か、おれは母親似なんですよ。まったくない」
こう聞くと意外である。
仏道に勤しむ、浮世離れした将臣にこそ、シックスセンス的な力がありそうなものだが、彼はこれまでさんざん一花たちといっしょに行動してきて、様々なことに巻き込まれたというに、一度も霊的体験をしたことがないという。
代わりに恭太郎が耳をほじくりながらつぶやいた。
「話し合いが終わるまでには部屋にもどった方がいいんじゃないのか、将臣」
「分かってる。もう行くよ」
「待ってエ。あたしももう食べ終わるから!」
「つったって戻る部屋がちがうだろう」
「どーせ恭ちゃんは将臣を部屋まで送るついでに、そこでのんびりするんでしょ。だったらあたしも導師部屋行くもん」
と飯をかっこみ、一花はお茶を飲み干すと立ち上がった。
台所の方から原田の「ゴミを捨ててきます」という声が聞こえる。片付けも終盤にさしかかっているらしい。森谷はパン、と膝を打つ。
「なんや。みんな導師様の部屋に集まるんか? ほんならオレも同席さしてもらお」
「そうしよ、そうしよ。恋バナしよーっ」
「しねえよ」
不機嫌な声色でつぶやいてから、将臣は大広間から出て迷わず玄関の方へ足を向ける。その襟首をすかさず掴んで、恭太郎は「部屋にもどりまあす」と台所にいるであろう春江にむかって声をかけた。
はーい、という返事を背に、森谷も一花とともに部屋を出る。
上機嫌に前へ躍り出て部屋までの道を先導する一花。そのうしろに将臣、恭太郎がつづく。最後尾についた森谷は気が付いた。恭太郎の首が、左にかしげている。
「……聞こえてはるんか? 和尚と座敷わらしの対話」
「あのオヤジは僕に声を聞かせないのがうまいんだ。内も、外もね」
恭太郎の声はひどくそっけなかった。
博臣はまっすぐ襖を見据えて言った。
とつぜんの住職登場に呆けた春江だが、冬陽に腕を引かれて我に返る。険しく歪んだその顔に、わずかばかりの安堵が混じる。
「あ。あの……よろしくお願いいたします」
「話を終えたら、春江さんへお声がけにうかがいますから、みなさまも各々お休みなさい。ちなみに大広間は先ほど、井佐原さんが食事会を締めて、原田さんが片付けをはじめたところだ。途中だった者は食いっぱぐれぬように戻った方がいいぞ」
最後のはどうやら一花と恭太郎に向けられた言葉らしい。ふたりはエッと眉を下げて互いを見合う。
それを横目に、和尚は人だかりをずいと進み、奥座敷の襖に手をかけた。物々しい装飾などなんのその。彼はうっそりと浮かべた笑みはそのままに襖を開きかけて、ア、とわざとらしく声をあげた。
「将臣、導師部屋で待機しなさい。私が戻ったらば春江さんにお声がけを」
「承りました」
「……それでは」
──何人も、中を覗かぬよう。
言い置いて、博臣はいとも簡単に奥座敷への襖を開けた。襖の上、鴨居部分に張られた紙垂が揺れる。半端に開いた入口にするりと身体を滑り込ませ、彼はそのまま後ろ手にタン、と閉める。取り残された我々野次馬たちは、しばらく無言のまま立ち尽くすほかなかった。
最初に動きを見せたのは、一花だった。
「食いっぱぐれちゃう!」
と踵を返して廊下を駆け出した。
そのうしろ姿に、一気に脱力したか冬陽はふらりとしりもちをつく。あわてて神那が駆け寄ると、
「腰が」
といって照れ笑いを浮かべながら力が入らないことを報告した。
すかさず総一郎は、
「お部屋まで運びましょう」
格好つけしいで冬陽を姫抱きにすると、神那に道案内をしてもらいつつさっさと廊下を引き上げていく。あいつめ、乙女たちのナイト気取りでうまいポジションを見つけやがったな──と森谷は憎々しげにそのうしろ姿をにらみつけた。
春江がぎしりと一歩進む。その瞳は、いまだ廊下にへたり込む宏美に注がれている。そういえば様子がおかしい。あれほど勢いづいていた威勢はどこへやら、廊下が暗いためその表情はよく見えぬが、宏美はいまだ動く気配はない。
「あなたも部屋に戻りなさい。宏美」
「…………」
「遺産については改めて、姉弟みんなで話し合いましょう」
「…………」
返事はない。
春江はため息をつき、宏美の腕をぐいと引っ張った。そしてギョッと目を見張った。
「ひ、宏美──」
「…………」
宏美は目をかっぴらき震えていた。
口の端からよだれを流して、瞳に怯懦の色を見せる。まるでよほど恐ろしいものでも見たかのような尋常じゃない表情に、春江も慄き、宏美の手を離す。糸が切れたマリオネットのようにふたたびくたりと床に座り込んでから、宏美は「アぁ」と声にならぬ奇声をあげるや自力で立ち上がり、
「うぁああッ」
と甲高く叫んで廊下を走り去っていった。
まるで嵐のようだ。
呆然とそのうしろ姿を見送る森谷のとなりで、春江はぞっと青ざめた顔でその行く先を見つめる。ぽつねんと残された恭太郎と将臣はそれぞれ奥座敷や春江をするどく見据え、動かなかった。
※
大広間は閑散としていた。
博臣の言ったとおり、食事会はすでに散会し、使用人の原田がせっせとごみを集めているところだった。睦実の家族と宏美の娘、淳実は部屋にもどったのだろう。葬儀社の井佐原すらも、この会食を締めるや隣室の葬儀会場の片付けに入ってしまったとのことだった。
ただひとり、一花は食べかけのまま残された食事のつづきを始めている。そのほか大広間まで戻ってきたのは、春江と森谷、恭太郎と将臣のみ。一気に脱力してしまって森谷は畳に腰を落とした。
「はあ──しんどっ」
「ごめんなさいね、茂樹くん。身内の恥ずかしいところを見せてしまって」
「いやいや、資産家の葬式なんてだいたいこないなもんですわ。しかし妹さんえらい剣幕でしたけど、なんかあったんすか」
「……母の遺言書に、資産は童子守を継ぐ冬陽にすべて託すと書いてあったのが一番の原因でしょう。妹はああいう性格ですからあけっぴろげに感情を出しますけれど、なんにも言わない弟たちだっておなじことを思っているとおもいます」
「なぜミチ子さんはそんな遺言を」
将臣が首をかしげた。
彼の分の食事はすでに空である。なるほど、食事をきちんと終えてから席を立ったに違いない。とはいえ将臣の胃袋にしてみればこの程度の食事、常人からすれば仏飯くらいの腹持ちにしかならぬだろうが。
春江はあきらめたように首を振る。
「あの子たちはみな、母とはずいぶん疎遠だったんです。早いうちから家を出て、結婚をしても孫が生まれても、この家には近寄ろうとはしなかった。妹なんかはお金がなくなるとたまに帰ってきたみたいですけど、そのたび母は敷居も跨がせなかったそうで。母にとって身内といえるのは、結婚してからもしばらく一緒に暮らしていた私と、孫の冬陽くらいのものなんでしょう」
「失礼ですが、旦那さんは?」
職業病である。聞かずにはいられない。
春江は苦笑した。
「ずいぶん前に離縁しました。といっても円満離婚ですから、たまに冬陽と三人で食事もするんですよ」
「ええですねェ」
と、脳みそを働かせずに相槌を打つ。
春江はそのまま休む間もなく、原田とともに晩餐の片づけにとりかかる。料理は麓の料理屋で手配した仕出し弁当のため、卓上は空の弁当箱にまみれている。使用人の原田が「座っててくだせえ」と声をかけるも、彼女は片付ける手を止めようとはしなかった。なにかして気を紛らわせたいのかもしれない。
ふと、異音に気が付いた。いつの間にか外は雨が降り出したらしく、バタバタとはげしく屋根に当たる音がする。この分だと夜通し降りそうだ。
森谷はよお、と将臣に目を向けた。
「和尚さん──中でなんしよるん」
「さあ。でも、お師僧がこうして他者を締め出すときは、たいてい何かやってるときですから……たぶん本当に座敷わらしと対話でも試みているんでしょう」
「何かって」
「ここの坊主は裏でお祓いだのなんだの、請け負ってるンだ。一花のお墨付きだから腕はたしかだよ。代々、浅利の野郎どもはそういう力があるらしい。ア、シゲさんも、泣かせた女のひとりやふたりいるんだろ。きっと憑いてるだろうから祓ってもらえば?」
「どさくさ紛れになにとんでもない法螺ぶっ込んどんねんこんガキャ! ……って、え。まークンも?」
「幸か不幸か、おれは母親似なんですよ。まったくない」
こう聞くと意外である。
仏道に勤しむ、浮世離れした将臣にこそ、シックスセンス的な力がありそうなものだが、彼はこれまでさんざん一花たちといっしょに行動してきて、様々なことに巻き込まれたというに、一度も霊的体験をしたことがないという。
代わりに恭太郎が耳をほじくりながらつぶやいた。
「話し合いが終わるまでには部屋にもどった方がいいんじゃないのか、将臣」
「分かってる。もう行くよ」
「待ってエ。あたしももう食べ終わるから!」
「つったって戻る部屋がちがうだろう」
「どーせ恭ちゃんは将臣を部屋まで送るついでに、そこでのんびりするんでしょ。だったらあたしも導師部屋行くもん」
と飯をかっこみ、一花はお茶を飲み干すと立ち上がった。
台所の方から原田の「ゴミを捨ててきます」という声が聞こえる。片付けも終盤にさしかかっているらしい。森谷はパン、と膝を打つ。
「なんや。みんな導師様の部屋に集まるんか? ほんならオレも同席さしてもらお」
「そうしよ、そうしよ。恋バナしよーっ」
「しねえよ」
不機嫌な声色でつぶやいてから、将臣は大広間から出て迷わず玄関の方へ足を向ける。その襟首をすかさず掴んで、恭太郎は「部屋にもどりまあす」と台所にいるであろう春江にむかって声をかけた。
はーい、という返事を背に、森谷も一花とともに部屋を出る。
上機嫌に前へ躍り出て部屋までの道を先導する一花。そのうしろに将臣、恭太郎がつづく。最後尾についた森谷は気が付いた。恭太郎の首が、左にかしげている。
「……聞こえてはるんか? 和尚と座敷わらしの対話」
「あのオヤジは僕に声を聞かせないのがうまいんだ。内も、外もね」
恭太郎の声はひどくそっけなかった。
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