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第三夜
第18話 状況整理
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自身のスマホでひとしきり現場写真を撮影してから、大広間へ戻ろうと踵を返す。
ちょうど神那が大広間方面からパタパタと駆けてくるところだった。全員が集まったと報告に来たのだろう。
「森谷さん」
「ああ、どうもわざわざ。集まりました?」
「ええ、いえ──原田さんが、まだ」
「原田さんて使用人の? …………」
眉をひそめたところで、奥座敷の方からギシギシと廊下を歩みくる音が聞こえた。とっさに森谷が神那をうしろに隠す。が、廊下の暗がりから顔を出したのは、話をすれば原田その人であった。大柄な身体を左右に揺らし、首元にかけたタオルを握っている。
すこし類人猿にも似た強面がこちらを見るなりキョトンとゆるんだ。
「あれ?」
「原田さん、どこにいてはったんです」
「どこって──風呂に入っていました。ゴミを出しに外へ出たら土砂降りだったもんで」
「ああ」
そういえば雨が降っていた。
風呂場の場所はとくに聞いていなかったが、先ほど一花と便所に行った際、奥座敷のさらに奥側に空間があったことを思い出した。
「風呂、奥座敷の向こう側にあったんすか」
「あれは使用人用の風呂ですよ。皆さま用の風呂はもっと広間に近い方にあります。ご案内しましょうか」
「はァ、気持ちとしてはやまやまなんですが──ちと緊急事態でして」
「緊急?」
「殺人事件です。人が、ころされました」
「エッ。……っひ」
原田の顔がみるみるうちに蒼くなる。森谷が背にした部屋のなかが目に入ったらしい。ことばで説明するよりよほど説得力があるだろう。
いまここで立ち話をしても仕方がない。くるりと振り向いて神那を見ると、彼女はうるんだ瞳でこちらを見上げていた。殺人現場を目の前にしてさぞ心細かったことだろう。
「藤宮さん、警察には?」
「博臣さんが通報してくれました。でも──この雨で、山道を登ってくるのは時間がかかりそうとのことで」
「せやろなァ。まあ、そう心配せんでも大丈夫すわ。オレも一応警察官やさかいに」
「は──はい!」
神那の顔に笑みがもどる。
なんて花が咲くように笑うのだろう。あまりの神々しさになぜか後ろめたい気分を覚えつつ、労わるようにその背に手を添えた。
「ほな行きましょか。原田さんも、大広間までごいっしょ願います」
「わ、わかりました」
森谷を含め、総勢十六名がこの大広間に集まった。
無理もないことだがみな一様に表情は暗い。ただひとり、博臣だけはいつもとそう変わらぬ穏やかな面差しであるが。
──ようやく葬式が終わったとおもったらまたお通夜や。
と、現状の雰囲気に内心文句を垂れながら、森谷は一同を見渡した。
「もうお聞きかと思いますが、宏美さんが何者かに殺害されました。警察到着までにはすこし時間がかかるやろうってことなんで、取り急ぎ自分が事情聴取とさせていただきます」
「ま、待て。なんだアンタいきなり仕切って──」
睦実が声を荒げる。
しかし井佐原がすぐさま口を挟んだ。
「こん人警察官だはんで。さっきそう仰っとりましたよ」
「け、警察──」
相良の親戚一同がわずかにざわついた。
こういう反応は慣れている。森谷は顔を険しくしかめた。
「いまから自分も含めて、ここにいる皆さんは容疑者候補となります。状況で判断すれば外部犯説は極めて低い。皆さんはお育ちがよくていらっしゃるやろうから分かってはると思いますが、容疑者候補ちゅうのはすこしの行動ひとつで嫌疑が濃くなりますよって。死体があって気持ち悪いかもしらんけども、くれぐれもこの家から出ることのないように」
「こんな雨のなかどこへ行けっていうんだ──」
淳実がふるえる。
ごもっともである。雨足を目で確認したわけではないが、屋根にバタバタと当たる雨音からして、そこそこ激しいだろうことは想像にかたくない。
ふいに一花が森谷を見上げた。
「あたし、ずーっとシゲさんといたわよ。それでも疑わしいの?」
「それを言うなら僕だってそうだ。将臣も」
恭太郎の声が尖る。
正直、彼らを知る身としては、容疑者候補であるはずはないと思っている。が、警察官としてはそうも言ってはいられまい。実際に「そんなことをするような人じゃない」という周囲の証言ほど当てにならぬものはない。
「たしかにオレからしたら、お前らは白やけども。しかしオレ自身が容疑者候補であるうちは、そない道理は通用せえへん。わかるやろ」
「分かってるよ。言ってみただけ」
恭太郎は肩をすくめた。
整理をすべく、一度全員にどこにいたのかを確認した。まず、森谷と常にともにいたのは一花だけである。連れションに出かけたことで、将臣と恭太郎には空白の時間が生まれたからだ。しかし入れ替わりにやってきた神那と総一郎が、ふたりの所在を証明した。疑念は一ミリほどしかなかったが、これで大枠の疑いが晴れたといっていいだろう。
つづいて神那と総一郎。
ふたりとは森谷もしばらく一緒だったが、冬陽を部屋に送るとして、一度所在不明となる。とはいえ冬陽の部屋から導師部屋までの時間を考えると、物理的に犯行は不可能だ。分かりきってはいるが、ふたりへの疑念もなくすべきである。
問題はここからだ。
まず、博臣。
彼は奥座敷のなかへ引っ込んでから、だれもその姿を見ていない。見たとすれば座敷わらしだろうが、証言が取れるはずもない。
およそ殺人に手を染める人間ではない、と分かってはいながらの仮説を前に、渋面をつくって彼に向けた。が、彼が気をわるくしたようすはない。
「人生で一度、あるかないかの経験ですな。結構けっこう」
懐の広い男である。
つづいて、相良睦実一家。
妻の靖子と息子の睦月は、大広間での晩餐が締まったあと、ずっと一家でともに部屋にいたという。そこには宏美の娘である相良心咲も一緒だった、とも。これについては聴取から真偽を確かめるべきだが、森谷のなかでは納得するところもある。
なぜ同室であるはずの心咲が、母の異変に気が付かなかったのか──と不思議だったのだが、別室にいたというなら問題ない。晩餐会でも睦月と仲良さげだったところを見ると、なおさら納得だった。
さて、ここからだ。
相良冬陽。彼女は途中までともにいたが、神那たちに部屋へ送られてからの所在がはっきりしない。布団に入って寝ついたとのことだが、神那たちが退室したあとに行動した可能性もある。
また、淳実もそうだった。彼は家族がいないため、部屋でひとり篭っていたという。布団の上でゴロゴロしていたそうだが、それを証明する人間はいない。おまけに生前の宏美からは散々馬鹿にしたような言葉も浴びせられていた。怨恨もなくはない。
では、葬儀社の井佐原はどうだろう。
彼は晩餐会後、すぐに大広間へ戻り、葬式会場の撤去に勤しんでいたそうだ。それはゴミを捨てにいった際の原田も見ていたし、あれほど豪奢に飾られていた会場があらかた片付けられている現状を見ても、嘘はないだろう。
それから原田。
彼は、この大広間を片付けたあとゴミを捨てに行ったところを見た。犯行が可能ならばその後だろう。雨に降られたから、と言い訳をして、浴びた返り血を風呂場で流すことは可能だ。──とはいえ、彼が使用した風呂場は客人用とは別の奥座敷のさらに奥。
犯行後に血を流したとしても、すぐにバレてしまう。そんな迂闊なことをするだろうか。
──あとひとり。
森谷は、緊張によって乾いた上唇をぺろりと舐めた。
春江、か。
彼女は奥座敷での騒動後、原田と大広間を片していたが、あらかた片付けを終えた原田がゴミを捨てに出ていって以降、その姿はだれも目撃していない。
曰く、いつ博臣から声がかかっても良いように、自室でずっと待機していたというが──証明者はいない。
──さあて、これはなかなか。
脳内で整理をする。
存在証明が取れないのは以下の五名。
導師、浅利博臣。
被害者の姪、相良冬陽。
被害者の次兄、相良淳実。
使用人、原田幸三。
そして被害者の姉、相良春江──。
森谷はむっつりと考え込んだ末、第一番目の事情聴取対象に浅利博臣を指名した。
ちょうど神那が大広間方面からパタパタと駆けてくるところだった。全員が集まったと報告に来たのだろう。
「森谷さん」
「ああ、どうもわざわざ。集まりました?」
「ええ、いえ──原田さんが、まだ」
「原田さんて使用人の? …………」
眉をひそめたところで、奥座敷の方からギシギシと廊下を歩みくる音が聞こえた。とっさに森谷が神那をうしろに隠す。が、廊下の暗がりから顔を出したのは、話をすれば原田その人であった。大柄な身体を左右に揺らし、首元にかけたタオルを握っている。
すこし類人猿にも似た強面がこちらを見るなりキョトンとゆるんだ。
「あれ?」
「原田さん、どこにいてはったんです」
「どこって──風呂に入っていました。ゴミを出しに外へ出たら土砂降りだったもんで」
「ああ」
そういえば雨が降っていた。
風呂場の場所はとくに聞いていなかったが、先ほど一花と便所に行った際、奥座敷のさらに奥側に空間があったことを思い出した。
「風呂、奥座敷の向こう側にあったんすか」
「あれは使用人用の風呂ですよ。皆さま用の風呂はもっと広間に近い方にあります。ご案内しましょうか」
「はァ、気持ちとしてはやまやまなんですが──ちと緊急事態でして」
「緊急?」
「殺人事件です。人が、ころされました」
「エッ。……っひ」
原田の顔がみるみるうちに蒼くなる。森谷が背にした部屋のなかが目に入ったらしい。ことばで説明するよりよほど説得力があるだろう。
いまここで立ち話をしても仕方がない。くるりと振り向いて神那を見ると、彼女はうるんだ瞳でこちらを見上げていた。殺人現場を目の前にしてさぞ心細かったことだろう。
「藤宮さん、警察には?」
「博臣さんが通報してくれました。でも──この雨で、山道を登ってくるのは時間がかかりそうとのことで」
「せやろなァ。まあ、そう心配せんでも大丈夫すわ。オレも一応警察官やさかいに」
「は──はい!」
神那の顔に笑みがもどる。
なんて花が咲くように笑うのだろう。あまりの神々しさになぜか後ろめたい気分を覚えつつ、労わるようにその背に手を添えた。
「ほな行きましょか。原田さんも、大広間までごいっしょ願います」
「わ、わかりました」
森谷を含め、総勢十六名がこの大広間に集まった。
無理もないことだがみな一様に表情は暗い。ただひとり、博臣だけはいつもとそう変わらぬ穏やかな面差しであるが。
──ようやく葬式が終わったとおもったらまたお通夜や。
と、現状の雰囲気に内心文句を垂れながら、森谷は一同を見渡した。
「もうお聞きかと思いますが、宏美さんが何者かに殺害されました。警察到着までにはすこし時間がかかるやろうってことなんで、取り急ぎ自分が事情聴取とさせていただきます」
「ま、待て。なんだアンタいきなり仕切って──」
睦実が声を荒げる。
しかし井佐原がすぐさま口を挟んだ。
「こん人警察官だはんで。さっきそう仰っとりましたよ」
「け、警察──」
相良の親戚一同がわずかにざわついた。
こういう反応は慣れている。森谷は顔を険しくしかめた。
「いまから自分も含めて、ここにいる皆さんは容疑者候補となります。状況で判断すれば外部犯説は極めて低い。皆さんはお育ちがよくていらっしゃるやろうから分かってはると思いますが、容疑者候補ちゅうのはすこしの行動ひとつで嫌疑が濃くなりますよって。死体があって気持ち悪いかもしらんけども、くれぐれもこの家から出ることのないように」
「こんな雨のなかどこへ行けっていうんだ──」
淳実がふるえる。
ごもっともである。雨足を目で確認したわけではないが、屋根にバタバタと当たる雨音からして、そこそこ激しいだろうことは想像にかたくない。
ふいに一花が森谷を見上げた。
「あたし、ずーっとシゲさんといたわよ。それでも疑わしいの?」
「それを言うなら僕だってそうだ。将臣も」
恭太郎の声が尖る。
正直、彼らを知る身としては、容疑者候補であるはずはないと思っている。が、警察官としてはそうも言ってはいられまい。実際に「そんなことをするような人じゃない」という周囲の証言ほど当てにならぬものはない。
「たしかにオレからしたら、お前らは白やけども。しかしオレ自身が容疑者候補であるうちは、そない道理は通用せえへん。わかるやろ」
「分かってるよ。言ってみただけ」
恭太郎は肩をすくめた。
整理をすべく、一度全員にどこにいたのかを確認した。まず、森谷と常にともにいたのは一花だけである。連れションに出かけたことで、将臣と恭太郎には空白の時間が生まれたからだ。しかし入れ替わりにやってきた神那と総一郎が、ふたりの所在を証明した。疑念は一ミリほどしかなかったが、これで大枠の疑いが晴れたといっていいだろう。
つづいて神那と総一郎。
ふたりとは森谷もしばらく一緒だったが、冬陽を部屋に送るとして、一度所在不明となる。とはいえ冬陽の部屋から導師部屋までの時間を考えると、物理的に犯行は不可能だ。分かりきってはいるが、ふたりへの疑念もなくすべきである。
問題はここからだ。
まず、博臣。
彼は奥座敷のなかへ引っ込んでから、だれもその姿を見ていない。見たとすれば座敷わらしだろうが、証言が取れるはずもない。
およそ殺人に手を染める人間ではない、と分かってはいながらの仮説を前に、渋面をつくって彼に向けた。が、彼が気をわるくしたようすはない。
「人生で一度、あるかないかの経験ですな。結構けっこう」
懐の広い男である。
つづいて、相良睦実一家。
妻の靖子と息子の睦月は、大広間での晩餐が締まったあと、ずっと一家でともに部屋にいたという。そこには宏美の娘である相良心咲も一緒だった、とも。これについては聴取から真偽を確かめるべきだが、森谷のなかでは納得するところもある。
なぜ同室であるはずの心咲が、母の異変に気が付かなかったのか──と不思議だったのだが、別室にいたというなら問題ない。晩餐会でも睦月と仲良さげだったところを見ると、なおさら納得だった。
さて、ここからだ。
相良冬陽。彼女は途中までともにいたが、神那たちに部屋へ送られてからの所在がはっきりしない。布団に入って寝ついたとのことだが、神那たちが退室したあとに行動した可能性もある。
また、淳実もそうだった。彼は家族がいないため、部屋でひとり篭っていたという。布団の上でゴロゴロしていたそうだが、それを証明する人間はいない。おまけに生前の宏美からは散々馬鹿にしたような言葉も浴びせられていた。怨恨もなくはない。
では、葬儀社の井佐原はどうだろう。
彼は晩餐会後、すぐに大広間へ戻り、葬式会場の撤去に勤しんでいたそうだ。それはゴミを捨てにいった際の原田も見ていたし、あれほど豪奢に飾られていた会場があらかた片付けられている現状を見ても、嘘はないだろう。
それから原田。
彼は、この大広間を片付けたあとゴミを捨てに行ったところを見た。犯行が可能ならばその後だろう。雨に降られたから、と言い訳をして、浴びた返り血を風呂場で流すことは可能だ。──とはいえ、彼が使用した風呂場は客人用とは別の奥座敷のさらに奥。
犯行後に血を流したとしても、すぐにバレてしまう。そんな迂闊なことをするだろうか。
──あとひとり。
森谷は、緊張によって乾いた上唇をぺろりと舐めた。
春江、か。
彼女は奥座敷での騒動後、原田と大広間を片していたが、あらかた片付けを終えた原田がゴミを捨てに出ていって以降、その姿はだれも目撃していない。
曰く、いつ博臣から声がかかっても良いように、自室でずっと待機していたというが──証明者はいない。
──さあて、これはなかなか。
脳内で整理をする。
存在証明が取れないのは以下の五名。
導師、浅利博臣。
被害者の姪、相良冬陽。
被害者の次兄、相良淳実。
使用人、原田幸三。
そして被害者の姉、相良春江──。
森谷はむっつりと考え込んだ末、第一番目の事情聴取対象に浅利博臣を指名した。
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