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第五夜
第28話 相良の秘密
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「ッあ!?」
森谷の手は弾かれるように一花の肩から離れた。
──今のはなんや?
──夢か。
──いや、でも夢の場所はこの。
森谷は狼狽し、一花を見る。
先ほどまで、ぼうっと奥座敷を見つめていた彼女は、いつの間にか森谷を見上げて固まっていた。
いつも笑みが浮かぶ口元は恐怖に結ばれ、肩は小刻みにふるえる。おなじ映像を視たのだろう。恐怖を感じてはいるものの、森谷ほどの動揺はない。彼女の体質上、いつもこのようなものを視てしまうのか──と、森谷は憐憫をおぼえた。
「い、まのは──」
「分かんない。……分かんないけど、でもみんなが見せた」
と、一花が指をさす。
みんな?
と聞く間もなく、森谷は声もなく喉をひきつらせた。
奥座敷に座る、子ども。子ども。子ども──。
それぞれ年齢は異なる。乳幼児であったり、五歳ほどだったり。共通するのは彼らがいずれも赤い服を着ていることだろうか。いや、よく見れば、それは赤い服などではない。自身の身体から溢れ出た血液によって染まった着物や、おくるみである。
──これは?
脳みそが拒否をする。
幻覚だと警鐘を鳴らす。
しかし、もはや──。
「おやおや。全員集合だね」
背後から声をかけられて飛び退いた。
黒い導師服をまとい、音もなく現れたのは宝泉寺住職の浅利博臣であった。ゆるやかに弧を描く口元に合わせて細められた瞳は笑っていない。そのうしろには将臣と恭太郎、なぜか総一郎と神那までもがついてきている。
お馴染みの顔ぶれに安堵したか、一花は肩の力を抜いて和尚の袖を掴んだ。
「和尚、どうしよ」
「任せなさい。あとは私の仕事だ」
「ウン」
住職がずいと前に歩み出る。
それから座敷を見つめたまま、言った。
「先代が遺した言によれば、このわらし様という存在はミチ子刀自が幼少の頃より始まったものとされている。その実態をよく知る者はもはや──この世にはおるまい。最後の守り人である彼女も召されてしまった」
「実態」
森谷が繰り返す。
先ほどの事情聴取時、彼は言った。
──奥座敷の床下に相良の秘密が眠っている。
──ほとんどが土に還っているだろうがね。
と。
この言葉の真意を聞かぬまで、引くに引けないほどには、森谷はこの相良家に囚われている。
住職は振り向きもせずうなずいた。
「刀自が、宝泉寺の来訪を許したのは、なにも親密な付き合いがあったからではない。彼女がその身一生涯のなかで抱えてきた秘密を共有した、唯一の外部者だったゆえだ」
と言うと、博臣はおもむろに鴨居へ手を伸ばし、紙垂を引きちぎった。
「なっ!?」
坊主乱心か。
場に動揺が走る。
が、彼はつとめて冷静に神聖な飾り物をすべて千切り捨てると、半開きであった襖を勢いよく開け放った。
森谷と総一郎がぎくりと身をふるわせた。
部屋から、すえた臭いが漂いくる。何年も時が止まったような、停滞した臭いだ。
「し、正気ですか。和尚」
「正気も正気だよ。なにせこれが、ミチ子刀自から承っていた正式な依頼なのだから」
「…………は?」
「来たまえ」
と、博臣は滑るように部屋へ入室した。
気がつけば、先ほどまで整然と座っていた多数の子どもたちの影はない。
一瞬ためらう森谷であったが、恭太郎と将臣の表情を見て、覚悟を決めた。彼らがいつになく沈痛な面持ちだったからである。
敷居を跨ぐ。
一花や神那、総一郎もつづいて中に入る。
部屋は十二畳ほどの殺風景なものだった。睦月に聞いていたとおり、わずかな家具と小道具が少々。電灯すらもついていない。がらんどうとした空間はなんと物寂しい。
博臣は、部屋の正面奥にある一畳の畳を見下ろしている。あまり踏み荒らさぬようにと爪先だけでそちらへ赴くと、彼はすこし身をずらした。
「座敷わらしを文化人類学的視点で見た場合の話をしたね」
「え、ええ」
「相良の家には、数代ごとに難ある子どもが生まれることがあったんだ」
立ったまま、博臣は訥々と語り出す。
部屋の静寂が妙に耳に障った。
「難ある子ども?」
「障がい児だ。血筋が近いとそのような子が生まれる確率は高くなるという。相良の家も同様に、戦前は血縁内での婚姻も多かったそうだ。ミチ子さんも従兄と結婚したようだし。とくに男児は身体が弱い子ばかりだったと聞く。障がいといっても代によって、奇形児であったり、いまでいう精神疾患児であったりした、とも。心の内ならばまだよい。見た目に分からぬのだからね。しかし奇形児となると人目につくだろう、まして昔の村落は噂も早けりゃ迫害も早い──」
「はァ。せやから知られとうなくて、豪農は奥座敷で育てるんでしょう?」
「しかし、バレてしまうこともある。あるいは家族に害をなす場合も」
「害、て」
「心のストッパーが欠如する精神疾患があるんだ。これは本人にもどうしようもない。いまでこそ理解もあって、根気強く投薬治療が出来るだろうが、何度も言うように時代はちがう。人々の意識もちがう。たとえばその子が、森谷さんの大切な人の髪をひっつかみ、引き倒すところを見たとしよう。何度止めてもその子の癇癪は治まらぬ。次第にだれもが、家族に危害を及ぼす存在と認識してしまう。ではどうする?」
博臣の声は、背筋を冷やすほど厳かである。
森谷は想像する。
どうするもなにも、どうしようもない。隔離入院はどうか。いや、治療法がない以上入院は無理だ。外へ出したとして、家族に障がい児がいることを知られるのは避けたいと考えるならば、悪手である。となると屋敷での隔離か。いや、屋敷にいる限り家族の身の安全が保証されることはない。縛り付けてしまえばどうだ。それは──死ぬより辛いことかもしれぬ。八方塞がりだ。ならばどうする。
自身の大切な者を傷付けるだけの存在ならば、それがたとえ同じ腹から生まれた兄弟でも、あるいは我が種から生まれた我が子でも。……
──やっぱり行き着くのか。
森谷は喉奥に鉛が詰まったような感覚をおぼえた。
「ころす、んやろうか。オレも、その立場になったら。……」
「それがもっとも簡単な結論だった」
簡単のわけはない。
人を、家族をころすなど。
しかし反論する元気もない。現に自分も、その簡単な答えに導かれてしまったのだから。背後に控える者たちはだれひとり口を開こうとはしなかった。みな同様に、森谷とおなじ思考回路をたどったのかもしれない。
「相良家もおなじだった。簡単な結論に導かれ、えらんでしまったんだ。すべては家族を守るために」
「殺したんすか? 子どもを?」
「ああ」
「そんな話は聞いていないッ」
突然、背後で怒声がした。
睦実である。いったいいつから聞いていたのか、彼はいまにも飛びかからんばかりの体勢で、真っ赤な顔をして博臣を睨み付けている。それを抑え込むのは息子の睦月だった。
ごめんなさい、と睦月は絞り出すように呟いた。
「皆さんが一斉に捌けていくのを見て、どうしたんだろうと、おもって──」
「……相良の方たちには、あまり知られたくなかったでしょうね」
という博臣だが、彼が動揺するそぶりはない。むしろ睦実父子が来ていたことすらお見通しだったかのよう。住職は畳から目線を外し、ゆっくりと睦実を見据える。
「あくまであなたが生まれる以前の話です。大体、身内にそんな話を無闇矢鱈にするとでもお思いですか。否、ミチ子さんがするわけはない」
「あんたに母さんのなにが分かるってんだ!」
「お言葉を返すようですが──春江さんを除くご兄弟の皆々様方は、逃げるように家を出てからとんと音沙汰もなかったそうではありませんか。先代がミチ子さんと最後にお会いしたのが一九九九年、盆暮れ正月と一度も顔を見せに来ないとぼやいておられたそうですよ」
「…………ッ」
「そんなことだから、ミチ子さんにとっては春江さんとその娘である冬陽さんがすべてだった。……」
不意にぽつりと、寂寥の混じる声色で呟いた。
彼の視線はふたたび畳へと注がれている。睦実はもう口を開かない。いや、彼だけではない。この場にいるだれもが住職のつぎのことばを待っていた。
話を戻しましょう、と森谷を見る。
「その忌まわしい悪習は戦後まもなく終わりを告げたそうです。集団就職等で外の世界に目を向けるようになったからでしょうな。ミチ子さんも、祖母が自分の従姉妹に対してその行為をしたのを最後に、ぱったりと見ることはなくなった──と、本人が手紙の内で語っています。ところで、ミチ子さんには兄がふたりと姉がひとり、それから──ふたつ下に妹がいた」
「妹?」
睦実の声が揺れた。
動揺が手に取るようにわかる。存在を知らなかったとでも言いたげに。
「無理もない。ミチ子さんの妹──ミヤ子さんはまだ幼いころに亡くなっている」
「…………」
嫌な筋書きが脳裏をよぎった。
先ほどの事情聴取時、彼は言った。
──奥座敷の床下に相良の秘密が眠っている。
──土に還っているだろうけれどね。
まさか。
「和尚、それは」
「ミヤ子さんは幼少期から異様なほどに気性が荒く、嗜虐心をこじらせた子どもだったようだ。これもミチ子さんから先代に語られた話だよ。そして、そのきっかけはほんの一瞬の事だった、とも。妹は、自分の母親の髪を引っ掴んで、畳の上を引きずり回した」
「!」
やがて博臣は、足元の畳を指さした。
畳にはわずかにズレた痕跡がある。
「和尚」
「当時十歳にも満たぬミチ子さんは、やらねばと、思ったそうだ」
森谷の手は弾かれるように一花の肩から離れた。
──今のはなんや?
──夢か。
──いや、でも夢の場所はこの。
森谷は狼狽し、一花を見る。
先ほどまで、ぼうっと奥座敷を見つめていた彼女は、いつの間にか森谷を見上げて固まっていた。
いつも笑みが浮かぶ口元は恐怖に結ばれ、肩は小刻みにふるえる。おなじ映像を視たのだろう。恐怖を感じてはいるものの、森谷ほどの動揺はない。彼女の体質上、いつもこのようなものを視てしまうのか──と、森谷は憐憫をおぼえた。
「い、まのは──」
「分かんない。……分かんないけど、でもみんなが見せた」
と、一花が指をさす。
みんな?
と聞く間もなく、森谷は声もなく喉をひきつらせた。
奥座敷に座る、子ども。子ども。子ども──。
それぞれ年齢は異なる。乳幼児であったり、五歳ほどだったり。共通するのは彼らがいずれも赤い服を着ていることだろうか。いや、よく見れば、それは赤い服などではない。自身の身体から溢れ出た血液によって染まった着物や、おくるみである。
──これは?
脳みそが拒否をする。
幻覚だと警鐘を鳴らす。
しかし、もはや──。
「おやおや。全員集合だね」
背後から声をかけられて飛び退いた。
黒い導師服をまとい、音もなく現れたのは宝泉寺住職の浅利博臣であった。ゆるやかに弧を描く口元に合わせて細められた瞳は笑っていない。そのうしろには将臣と恭太郎、なぜか総一郎と神那までもがついてきている。
お馴染みの顔ぶれに安堵したか、一花は肩の力を抜いて和尚の袖を掴んだ。
「和尚、どうしよ」
「任せなさい。あとは私の仕事だ」
「ウン」
住職がずいと前に歩み出る。
それから座敷を見つめたまま、言った。
「先代が遺した言によれば、このわらし様という存在はミチ子刀自が幼少の頃より始まったものとされている。その実態をよく知る者はもはや──この世にはおるまい。最後の守り人である彼女も召されてしまった」
「実態」
森谷が繰り返す。
先ほどの事情聴取時、彼は言った。
──奥座敷の床下に相良の秘密が眠っている。
──ほとんどが土に還っているだろうがね。
と。
この言葉の真意を聞かぬまで、引くに引けないほどには、森谷はこの相良家に囚われている。
住職は振り向きもせずうなずいた。
「刀自が、宝泉寺の来訪を許したのは、なにも親密な付き合いがあったからではない。彼女がその身一生涯のなかで抱えてきた秘密を共有した、唯一の外部者だったゆえだ」
と言うと、博臣はおもむろに鴨居へ手を伸ばし、紙垂を引きちぎった。
「なっ!?」
坊主乱心か。
場に動揺が走る。
が、彼はつとめて冷静に神聖な飾り物をすべて千切り捨てると、半開きであった襖を勢いよく開け放った。
森谷と総一郎がぎくりと身をふるわせた。
部屋から、すえた臭いが漂いくる。何年も時が止まったような、停滞した臭いだ。
「し、正気ですか。和尚」
「正気も正気だよ。なにせこれが、ミチ子刀自から承っていた正式な依頼なのだから」
「…………は?」
「来たまえ」
と、博臣は滑るように部屋へ入室した。
気がつけば、先ほどまで整然と座っていた多数の子どもたちの影はない。
一瞬ためらう森谷であったが、恭太郎と将臣の表情を見て、覚悟を決めた。彼らがいつになく沈痛な面持ちだったからである。
敷居を跨ぐ。
一花や神那、総一郎もつづいて中に入る。
部屋は十二畳ほどの殺風景なものだった。睦月に聞いていたとおり、わずかな家具と小道具が少々。電灯すらもついていない。がらんどうとした空間はなんと物寂しい。
博臣は、部屋の正面奥にある一畳の畳を見下ろしている。あまり踏み荒らさぬようにと爪先だけでそちらへ赴くと、彼はすこし身をずらした。
「座敷わらしを文化人類学的視点で見た場合の話をしたね」
「え、ええ」
「相良の家には、数代ごとに難ある子どもが生まれることがあったんだ」
立ったまま、博臣は訥々と語り出す。
部屋の静寂が妙に耳に障った。
「難ある子ども?」
「障がい児だ。血筋が近いとそのような子が生まれる確率は高くなるという。相良の家も同様に、戦前は血縁内での婚姻も多かったそうだ。ミチ子さんも従兄と結婚したようだし。とくに男児は身体が弱い子ばかりだったと聞く。障がいといっても代によって、奇形児であったり、いまでいう精神疾患児であったりした、とも。心の内ならばまだよい。見た目に分からぬのだからね。しかし奇形児となると人目につくだろう、まして昔の村落は噂も早けりゃ迫害も早い──」
「はァ。せやから知られとうなくて、豪農は奥座敷で育てるんでしょう?」
「しかし、バレてしまうこともある。あるいは家族に害をなす場合も」
「害、て」
「心のストッパーが欠如する精神疾患があるんだ。これは本人にもどうしようもない。いまでこそ理解もあって、根気強く投薬治療が出来るだろうが、何度も言うように時代はちがう。人々の意識もちがう。たとえばその子が、森谷さんの大切な人の髪をひっつかみ、引き倒すところを見たとしよう。何度止めてもその子の癇癪は治まらぬ。次第にだれもが、家族に危害を及ぼす存在と認識してしまう。ではどうする?」
博臣の声は、背筋を冷やすほど厳かである。
森谷は想像する。
どうするもなにも、どうしようもない。隔離入院はどうか。いや、治療法がない以上入院は無理だ。外へ出したとして、家族に障がい児がいることを知られるのは避けたいと考えるならば、悪手である。となると屋敷での隔離か。いや、屋敷にいる限り家族の身の安全が保証されることはない。縛り付けてしまえばどうだ。それは──死ぬより辛いことかもしれぬ。八方塞がりだ。ならばどうする。
自身の大切な者を傷付けるだけの存在ならば、それがたとえ同じ腹から生まれた兄弟でも、あるいは我が種から生まれた我が子でも。……
──やっぱり行き着くのか。
森谷は喉奥に鉛が詰まったような感覚をおぼえた。
「ころす、んやろうか。オレも、その立場になったら。……」
「それがもっとも簡単な結論だった」
簡単のわけはない。
人を、家族をころすなど。
しかし反論する元気もない。現に自分も、その簡単な答えに導かれてしまったのだから。背後に控える者たちはだれひとり口を開こうとはしなかった。みな同様に、森谷とおなじ思考回路をたどったのかもしれない。
「相良家もおなじだった。簡単な結論に導かれ、えらんでしまったんだ。すべては家族を守るために」
「殺したんすか? 子どもを?」
「ああ」
「そんな話は聞いていないッ」
突然、背後で怒声がした。
睦実である。いったいいつから聞いていたのか、彼はいまにも飛びかからんばかりの体勢で、真っ赤な顔をして博臣を睨み付けている。それを抑え込むのは息子の睦月だった。
ごめんなさい、と睦月は絞り出すように呟いた。
「皆さんが一斉に捌けていくのを見て、どうしたんだろうと、おもって──」
「……相良の方たちには、あまり知られたくなかったでしょうね」
という博臣だが、彼が動揺するそぶりはない。むしろ睦実父子が来ていたことすらお見通しだったかのよう。住職は畳から目線を外し、ゆっくりと睦実を見据える。
「あくまであなたが生まれる以前の話です。大体、身内にそんな話を無闇矢鱈にするとでもお思いですか。否、ミチ子さんがするわけはない」
「あんたに母さんのなにが分かるってんだ!」
「お言葉を返すようですが──春江さんを除くご兄弟の皆々様方は、逃げるように家を出てからとんと音沙汰もなかったそうではありませんか。先代がミチ子さんと最後にお会いしたのが一九九九年、盆暮れ正月と一度も顔を見せに来ないとぼやいておられたそうですよ」
「…………ッ」
「そんなことだから、ミチ子さんにとっては春江さんとその娘である冬陽さんがすべてだった。……」
不意にぽつりと、寂寥の混じる声色で呟いた。
彼の視線はふたたび畳へと注がれている。睦実はもう口を開かない。いや、彼だけではない。この場にいるだれもが住職のつぎのことばを待っていた。
話を戻しましょう、と森谷を見る。
「その忌まわしい悪習は戦後まもなく終わりを告げたそうです。集団就職等で外の世界に目を向けるようになったからでしょうな。ミチ子さんも、祖母が自分の従姉妹に対してその行為をしたのを最後に、ぱったりと見ることはなくなった──と、本人が手紙の内で語っています。ところで、ミチ子さんには兄がふたりと姉がひとり、それから──ふたつ下に妹がいた」
「妹?」
睦実の声が揺れた。
動揺が手に取るようにわかる。存在を知らなかったとでも言いたげに。
「無理もない。ミチ子さんの妹──ミヤ子さんはまだ幼いころに亡くなっている」
「…………」
嫌な筋書きが脳裏をよぎった。
先ほどの事情聴取時、彼は言った。
──奥座敷の床下に相良の秘密が眠っている。
──土に還っているだろうけれどね。
まさか。
「和尚、それは」
「ミヤ子さんは幼少期から異様なほどに気性が荒く、嗜虐心をこじらせた子どもだったようだ。これもミチ子さんから先代に語られた話だよ。そして、そのきっかけはほんの一瞬の事だった、とも。妹は、自分の母親の髪を引っ掴んで、畳の上を引きずり回した」
「!」
やがて博臣は、足元の畳を指さした。
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「和尚」
「当時十歳にも満たぬミチ子さんは、やらねばと、思ったそうだ」
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