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第五夜
第34話 幸せのひと口
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世間様は華の長期休暇で家族旅行三昧だというのに、古賀一花は今日もまた自室の部屋でゴロゴロしている。昨日の昼頃に東京へ帰ってきて、藤宮家で夕飯まで馳走になった末に帰宅した古賀家は、いつものごとく祖母とふたりの静かな空間であった。
祖母はやさしい。穏やかだ。
けれど、いつもどこか窮屈そうに生きている──と、おもう。一度、恭太郎を紹介すべく会わせたことがある。しかし彼の能力を説明するまでもなく、彼女は怯えたように肩を強張らせて、挨拶も早々に出かけてしまった。
恭太郎は祖母の声をなにも聞かなかったそうだけれど、
「僕はあまり歓迎されていないみたいだ」
と肩をすくめていた。
──つまんなアい。
今日も祖母は仏壇の前に座っている。
声をかければ返してくれる。ご飯もいっしょに食べるし、テレビを見ていっしょに笑い合うこともある。しかし祖母はいつもどこか怯えている。それについてワケを問うたことはない。せっかくの穏やかな関係性を自分の発言ひとつで壊すことは避けたかったからである。
一花は物覚えがあまりよくない。
その例のひとつとして、幼き頃の記憶がほとんどない。
どこで生まれたのかも知らないし、どこの幼稚園に通っていたのかも覚えていない。小学校のころだってあやふやだ。かつて父と母とともに暮らした数年間のなかでたのしかった思い出はない。恭太郎と出会ってから、記憶にある限りで初めて楽しいという感情を知ったかもしれない。
当時、気にかけてくれた大人たちのやさしさや、恭太郎から与えてもらった勇気をもって、一花ははじめて両親にわがままを言った。この生活から脱却したい、と。反対されるかとおもった提案は案外すんなり通って、記憶のなかでは初めて会ったであろう祖母と過ごすことになったのだ。
あの日、両親から離れた一花の手をやさしく握り返してくれたしわくちゃの手のぬくもりは、きっと一生忘れることはない。だから、一花は祖母がきらいじゃなかった。
長期休暇に入ってもなお、仕事に明け暮れて電話ひとつ寄越さない父と母など、一花にとってはもはやどうでもいい。祖母がすこしでも心穏やかに過ごせるのなら、それでよかった。
赤いベレー帽をかぶる。つっかけを履いて外に出る。
ふたり暮らしのわりに大きな邸宅を背に、コンビニ方面へとからだを向けたとき、パッとクラクションがちいさく鳴った。斜向かいの公園横に停まった車から、ひとりの男が降りてくる。
──あんだっけ、あのヒト。
一花は目を細めた。見たことある顔だ。
色の濃いサングラスをかけた男は、軽快な足取りで近づいてくると、ひょいと馴れ馴れしく手を振った。
「よっ。ずいぶん軽装だな、コンビニ行くのか?」
「あたしになんか用?」
「ちなみに、オレのこと覚えているよな?」
「アッハ……うん。えーっと、ルピ、ルポ」
「ルポライター、な。いい加減覚えてくれよ」
「アッハ。そうそう、それでなんの用?」
「前に言ったろう。オレは君に二、三ほど聞きたいことがあるんだって」
「そうだっけ?」
言いながら、一花はコンビニの方へと歩き出す。
ルポライターはそのとなりに並んでついてきた。
「岩手まで行ってたんだってな」
「そオ。……だれから聞いたの?」
「べつに誰ってこともないけど。財閥お抱えの弁護士呼んで、遺産の話でひと揉めあったって噂を聞いてさ。どうなったかとおもったらまさかの殺人事件に巻き込まれたって? 遺産相続に絡んで人が死ぬってのはいつの世も変わらねえんだなあ。それにアンタも。難儀な星の元に生まれたもんだね」
「散々だったわよ。ねえホントにだれから聞いたの」
「ところでGWだってのに、家族旅行はしねえのかい」
話す気はないらしい。
一花はムッと下唇を尖らせてそっぽを向いた。
「お祖母ちゃん、遠出するの好きじゃないの」
「親はよ」
「知ンない」
「仕事?」
「さあ?」
「仕事、なにしてんだ」
「さあ?」
「電話もこねえの」
「来ないよ」
「それって、おかしくねえ?」
「おかしい?」
一花は足を止めた。
いつもは弛緩した瞳が、くるりとまん丸く見開かれて、男を見据える。意外な目力に圧倒されたか彼はいっしゅん言いよどむ。
「いや、さ。オレだってろくな親じゃなかったけど。世間一般の親ってのはもっとこう、違うんだろ。そんなの親って言えんのか?」
「アンタ、あたしの親を罵倒するために来たのオ」
ふたたび一花は歩き出す。
男もつられて足を動かした。
「そうじゃねえよ。君さ、そんだけ立派に育ってなんの違和感もおぼえたことねえの。昔……三、四歳くらいの記憶とかある?」
「えエ? ない。あたしの海馬、死んでンの。どうして?」
「なんだ覚えてねえのかよ。どおりで──チッ。……じゃあ今日のところはいいや。聞こうにも覚えてないんじゃ無駄足だ」
と言うと、ルポライターはおもむろに足を止めて踵を返した。
──はア?
当然ながら一花としてはおもしろくない。好き勝手言われて、挙句宙ぶらりんのまま放置されるなど冗談ではない。
邪魔したな、とそのまま立ち去ろうとする男の袖をつかみ、ぐっと顔を寄せた。
「ちょっと」
「な、なんだよ」
「取材料くらい払いなさいよ。あたし、パフェ食べたいの」
「…………」
男はとても嫌な顔をした。
コンビニの先にある喫茶店に入り、季節限定のパフェをひとつ頼むと、一花は一気に上機嫌になった。この店は和洋折衷がコンセプトとなっており、一花のお気に入り喫茶のひとつである。なにより店員のコスチュームが可愛いのだ。
しかし対面に座る男はつまらなそうに店内や窓の外を眺めては、あてつけのようにため息を絶やさない。
「そんなにため息ついてると幸せ逃げちゃうわよ」
「心配しなくたって、もとよりオレの人生に幸せなんてほとんどねえよ」
「かアいそ」
「うるさい」
幸せ、とは。
いったいなんだろう──と一花は柄にもなく物思いにふけた。たとえば、一昨日の夜に起きた事件。あれは一花にとって、よくわからないまま終わった。
かつてその家には凄惨な風習があった。後ろ指を指されぬため、世間様になじむため、と命をいのちとおもわず繰り広げられた所業。家の業を隠すべく、当主であった老女はおかしなしきたりを設けた。そのしきたりはやがて、末裔となる孫娘を守る砦となった。
今回、その砦の秘密をさぐった者がいのちを狙われた。
犯人とされた男は当主の意思を継ぎ、砦の秘密を守るために犯行を起こしたという。いや──砦に眠る数多の神々を守るため、か。彼が抱えたほんとうの想いは、一花にはわからない。
──奥座敷の襖を開けたとき。
導かれるようにたどりついたあの場所で、一花はあまりの数の神々を前に卒倒寸前であった。
彼ら、彼女らは──泣いていた。
みなが揃って泣いていた。
骨が埋まっているからではない。肉親が憎かったからでもない。
彼らは、因習に縛られ、苦しみ続ける子孫たちを想って涙を流していたのである。
彼らが一花に見せた映像は、目を覆っても消せぬほど惨たらしいものだった。
鮮明に見えたのは幼き少女の大罪。
さけび、幼い少女に馬乗りとなって、首を絞めていた。ほどなく下敷きになった少女は事切れた。少女は少女によってころされた。髪を乱した老女は馬乗りの少女を抱きしめる。何度もなんども、大丈夫だと囁いた。
──和尚は、嘘をついた。
あの嘘も、老女から託されたことだったのかもしれない。
家族がいつまでも、健やかに、安穏に暮らせるように──お護りください、と。
どのみち今さら、一花にはあずかり知らぬことである。
「幸せってさーア」
「あ?」
「なるもんじゃなくて、するもんよね」
「…………」
男は黙っている。
パフェが来た。書生姿の店員に礼を伝え、一花はスプーンでアイスとフルーツをひと掬い。そのまま男の眼前にずいと持っていった。
「一口あげる。幸せが少ないアンタに、幸せのおすそ分け」
「……フ」
男は困惑した顔のまま、わずかに口角をあげてスプーンにかぶりつく。
「こりゃうまいや」
「幸せ?」
「──ま、そこそこな」
そしてサングラスの奥、瞳を細めてにっこりわらった。
──あ、この笑顔。
そういえばあの家から出たときも、顔を出してきた神々はこんな笑顔を浮かべていたっけ。
普通を求める人間社会のエゴによって、幼くして命を奪われた彼らの笑顔は、ほかの子どもたちとなんら変わらぬ、眩しい太陽のようだった。
──おっかしーの。
一花は思う。
──普通の人間なんて、この世のどこにいるってゆーのよ。
──みんなどっかおかしいじゃないのサ。
──バッカみたいね。
口角をあげてから、スプーンでパフェを掬った。
(終)
祖母はやさしい。穏やかだ。
けれど、いつもどこか窮屈そうに生きている──と、おもう。一度、恭太郎を紹介すべく会わせたことがある。しかし彼の能力を説明するまでもなく、彼女は怯えたように肩を強張らせて、挨拶も早々に出かけてしまった。
恭太郎は祖母の声をなにも聞かなかったそうだけれど、
「僕はあまり歓迎されていないみたいだ」
と肩をすくめていた。
──つまんなアい。
今日も祖母は仏壇の前に座っている。
声をかければ返してくれる。ご飯もいっしょに食べるし、テレビを見ていっしょに笑い合うこともある。しかし祖母はいつもどこか怯えている。それについてワケを問うたことはない。せっかくの穏やかな関係性を自分の発言ひとつで壊すことは避けたかったからである。
一花は物覚えがあまりよくない。
その例のひとつとして、幼き頃の記憶がほとんどない。
どこで生まれたのかも知らないし、どこの幼稚園に通っていたのかも覚えていない。小学校のころだってあやふやだ。かつて父と母とともに暮らした数年間のなかでたのしかった思い出はない。恭太郎と出会ってから、記憶にある限りで初めて楽しいという感情を知ったかもしれない。
当時、気にかけてくれた大人たちのやさしさや、恭太郎から与えてもらった勇気をもって、一花ははじめて両親にわがままを言った。この生活から脱却したい、と。反対されるかとおもった提案は案外すんなり通って、記憶のなかでは初めて会ったであろう祖母と過ごすことになったのだ。
あの日、両親から離れた一花の手をやさしく握り返してくれたしわくちゃの手のぬくもりは、きっと一生忘れることはない。だから、一花は祖母がきらいじゃなかった。
長期休暇に入ってもなお、仕事に明け暮れて電話ひとつ寄越さない父と母など、一花にとってはもはやどうでもいい。祖母がすこしでも心穏やかに過ごせるのなら、それでよかった。
赤いベレー帽をかぶる。つっかけを履いて外に出る。
ふたり暮らしのわりに大きな邸宅を背に、コンビニ方面へとからだを向けたとき、パッとクラクションがちいさく鳴った。斜向かいの公園横に停まった車から、ひとりの男が降りてくる。
──あんだっけ、あのヒト。
一花は目を細めた。見たことある顔だ。
色の濃いサングラスをかけた男は、軽快な足取りで近づいてくると、ひょいと馴れ馴れしく手を振った。
「よっ。ずいぶん軽装だな、コンビニ行くのか?」
「あたしになんか用?」
「ちなみに、オレのこと覚えているよな?」
「アッハ……うん。えーっと、ルピ、ルポ」
「ルポライター、な。いい加減覚えてくれよ」
「アッハ。そうそう、それでなんの用?」
「前に言ったろう。オレは君に二、三ほど聞きたいことがあるんだって」
「そうだっけ?」
言いながら、一花はコンビニの方へと歩き出す。
ルポライターはそのとなりに並んでついてきた。
「岩手まで行ってたんだってな」
「そオ。……だれから聞いたの?」
「べつに誰ってこともないけど。財閥お抱えの弁護士呼んで、遺産の話でひと揉めあったって噂を聞いてさ。どうなったかとおもったらまさかの殺人事件に巻き込まれたって? 遺産相続に絡んで人が死ぬってのはいつの世も変わらねえんだなあ。それにアンタも。難儀な星の元に生まれたもんだね」
「散々だったわよ。ねえホントにだれから聞いたの」
「ところでGWだってのに、家族旅行はしねえのかい」
話す気はないらしい。
一花はムッと下唇を尖らせてそっぽを向いた。
「お祖母ちゃん、遠出するの好きじゃないの」
「親はよ」
「知ンない」
「仕事?」
「さあ?」
「仕事、なにしてんだ」
「さあ?」
「電話もこねえの」
「来ないよ」
「それって、おかしくねえ?」
「おかしい?」
一花は足を止めた。
いつもは弛緩した瞳が、くるりとまん丸く見開かれて、男を見据える。意外な目力に圧倒されたか彼はいっしゅん言いよどむ。
「いや、さ。オレだってろくな親じゃなかったけど。世間一般の親ってのはもっとこう、違うんだろ。そんなの親って言えんのか?」
「アンタ、あたしの親を罵倒するために来たのオ」
ふたたび一花は歩き出す。
男もつられて足を動かした。
「そうじゃねえよ。君さ、そんだけ立派に育ってなんの違和感もおぼえたことねえの。昔……三、四歳くらいの記憶とかある?」
「えエ? ない。あたしの海馬、死んでンの。どうして?」
「なんだ覚えてねえのかよ。どおりで──チッ。……じゃあ今日のところはいいや。聞こうにも覚えてないんじゃ無駄足だ」
と言うと、ルポライターはおもむろに足を止めて踵を返した。
──はア?
当然ながら一花としてはおもしろくない。好き勝手言われて、挙句宙ぶらりんのまま放置されるなど冗談ではない。
邪魔したな、とそのまま立ち去ろうとする男の袖をつかみ、ぐっと顔を寄せた。
「ちょっと」
「な、なんだよ」
「取材料くらい払いなさいよ。あたし、パフェ食べたいの」
「…………」
男はとても嫌な顔をした。
コンビニの先にある喫茶店に入り、季節限定のパフェをひとつ頼むと、一花は一気に上機嫌になった。この店は和洋折衷がコンセプトとなっており、一花のお気に入り喫茶のひとつである。なにより店員のコスチュームが可愛いのだ。
しかし対面に座る男はつまらなそうに店内や窓の外を眺めては、あてつけのようにため息を絶やさない。
「そんなにため息ついてると幸せ逃げちゃうわよ」
「心配しなくたって、もとよりオレの人生に幸せなんてほとんどねえよ」
「かアいそ」
「うるさい」
幸せ、とは。
いったいなんだろう──と一花は柄にもなく物思いにふけた。たとえば、一昨日の夜に起きた事件。あれは一花にとって、よくわからないまま終わった。
かつてその家には凄惨な風習があった。後ろ指を指されぬため、世間様になじむため、と命をいのちとおもわず繰り広げられた所業。家の業を隠すべく、当主であった老女はおかしなしきたりを設けた。そのしきたりはやがて、末裔となる孫娘を守る砦となった。
今回、その砦の秘密をさぐった者がいのちを狙われた。
犯人とされた男は当主の意思を継ぎ、砦の秘密を守るために犯行を起こしたという。いや──砦に眠る数多の神々を守るため、か。彼が抱えたほんとうの想いは、一花にはわからない。
──奥座敷の襖を開けたとき。
導かれるようにたどりついたあの場所で、一花はあまりの数の神々を前に卒倒寸前であった。
彼ら、彼女らは──泣いていた。
みなが揃って泣いていた。
骨が埋まっているからではない。肉親が憎かったからでもない。
彼らは、因習に縛られ、苦しみ続ける子孫たちを想って涙を流していたのである。
彼らが一花に見せた映像は、目を覆っても消せぬほど惨たらしいものだった。
鮮明に見えたのは幼き少女の大罪。
さけび、幼い少女に馬乗りとなって、首を絞めていた。ほどなく下敷きになった少女は事切れた。少女は少女によってころされた。髪を乱した老女は馬乗りの少女を抱きしめる。何度もなんども、大丈夫だと囁いた。
──和尚は、嘘をついた。
あの嘘も、老女から託されたことだったのかもしれない。
家族がいつまでも、健やかに、安穏に暮らせるように──お護りください、と。
どのみち今さら、一花にはあずかり知らぬことである。
「幸せってさーア」
「あ?」
「なるもんじゃなくて、するもんよね」
「…………」
男は黙っている。
パフェが来た。書生姿の店員に礼を伝え、一花はスプーンでアイスとフルーツをひと掬い。そのまま男の眼前にずいと持っていった。
「一口あげる。幸せが少ないアンタに、幸せのおすそ分け」
「……フ」
男は困惑した顔のまま、わずかに口角をあげてスプーンにかぶりつく。
「こりゃうまいや」
「幸せ?」
「──ま、そこそこな」
そしてサングラスの奥、瞳を細めてにっこりわらった。
──あ、この笑顔。
そういえばあの家から出たときも、顔を出してきた神々はこんな笑顔を浮かべていたっけ。
普通を求める人間社会のエゴによって、幼くして命を奪われた彼らの笑顔は、ほかの子どもたちとなんら変わらぬ、眩しい太陽のようだった。
──おっかしーの。
一花は思う。
──普通の人間なんて、この世のどこにいるってゆーのよ。
──みんなどっかおかしいじゃないのサ。
──バッカみたいね。
口角をあげてから、スプーンでパフェを掬った。
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