感情の波

kotoha00

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街灯の下の雨

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街灯の下の雨。それはまるで光に近寄る虫みたいに、きらきら光り、ひらひらと飛ぶ。美しくて鬱陶しい。また、それは埃だらけの屋根裏にも似ていて、息を吹くと舞い上がっては、落ちて目に見えないようになる。引っ越す前の家に置いてきた、小さい頃に作った宝箱。きっと屋根裏で、埃でできた布団をかけ、眠っていただろう。中には道端で拾ったビー玉と、水色の紙飛行機、そして数えきれないほどの思い出。そのちっぽけで汚い、何よりも輝くものが。

「カッコー、カッコー」

信号が変わった。街灯から視線を離して、前へと歩く。横断報道を半分くらい渡った時、後ろから誰かに呼ばれた気がした。振り向くと、そこには誰もいない。
渡り切った時、信号がちょうど赤に変わった。車が動き始める。一台がすぐ隣を走っていって、水をかけられた。びしょびしょだ。ため息をついて、歩きを止める。ふと見上げたそこにはあまり明るくない街灯が、街灯の下の雨が、光に近寄る虫が、埃だらけの宝箱が。ああ、あの宝箱はどうなってしまったのだろう。どこかの道端に捨てられて、冷たい雨でびしょびしょになっているのだろうか。それを考えると耐えきれないほどの悲しさに侵され、泣いてしまった。あの小っちゃくて輝いていたころのように、大きな声で泣いてしまった。

1分、10分、あるいは1時間が立った。傘にぶつかる雨の音が強くなった。冷たい空気で体が震える。
鼻をすすって、また歩き始めた。もう帰らなきゃ。
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