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新人魔導師、特訓する
4月10日、採寸
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この日は特訓ではなく、採寸と魔導衣の希望調査が行われた。発掘調査にスーツやジャージで参加するわけにはいかないので、当日までに天音の魔導衣を作ることになっている。
「ようこそ~、今カラシは部屋から出したんで気にせず楽にしててくださいッス~」
同性である葵が担当してくれるのはありがたいのだが、この人にきちんとした採寸ができるのだろうか。失礼ながらそう思ってしまった。
「あの、一応副所長からお聞きして、希望はまとめてきました」
「お、ありがとうございます、助かるッス。カラシが」
魔導衣に関しては女性の採寸以外しないという葵がけらけらと笑いながら受け取った。だが、要望をまとめた紙を見て、その表情を引き攣らせる。
「ええと、これでホントにいいんスか?」
「はい、それ以外は特にないです」
「うへー、ヤバいのにされないことだけ祈っとくッス」
天音が書いたのは、「装飾は少なく、露出度は低く、動きやすいもの」だけだった。これは双子や夏希の魔導衣を見て考えたものである。元々ファッションに興味の無い天音は、それ以上思いつかなかった。
「カラシが来るまで皆魔導考古学省支給の普通のヤツ着てたんスけどね。アイツ張り切っちゃって。どんどん凝りだしてるんスよ」
「あれ、でも武村さんは普通の魔導衣では?」
「ああ、アイツの場合は、デザインより性能重視なんスよ。今はちっこいッスけど、元々の姿は成人女性なんで。体のサイズに合わせて服のサイズも変わるように術かけたら、めちゃくちゃ作るのに時間かかったんで、デザインは諦めたって言ってたッスよ」
今の幼い容姿に慣れてしまって忘れていたが、雅も本来は魔導師として働ける年齢の女性なのだ。魔導医師免許まで持っているとなると、恐らく夏希よりも年上だろう。
「あとまあ、本人が軍服っぽいのってかっこいいって言ってたんでそのままってカンジッス。アイツ、中二病なんで」
夏希も言っていたが、雅は本当に中二病らしい。口調の時点でわかりはする。
「でもそれ以外のヤツはマージでカラシの趣味がほとんどッスよ」
「小森さんもですか?」
個性的な魔導衣が大半を占めるこの研究所で、比較的基本に忠実なのは恭平である。雅ほどかっちりとはしていないが、基本の魔導衣のデザインとはそう変わらない。
「リトモリは、『楽に着られるヤツ』って希望だったんで。よく見るとボタンの数とか減ってるッスよ。あと、後ろパーカーのフードみたいになってるッス」
「学ランの下にパーカー着るみたいな……?」
「そうそう、そんなカンジッス。リトモリは耳が繊細なんで、フードかぶって守れるようにああなってるんスよ」
「いつもヘッドフォンつけてますしね」
魔力が音で聞こえるタイプもなかなかに大変そうだ。恭平の場合は魔導探知に特に優れているので、その耳を守るためにそういったデザインになったのだろう。
「ほい、採寸終わりッス」
「え!?」
話しているだけだったのに採寸が終わったらしい。メジャーすら出されていないのにどうやって測ったというのか。
「ふふん、実は今あまねんが立っている床、ちょいと特殊でして。自分かカラシの魔力を流せば一瞬で採寸できる優れものッス。体に触れなくていいんスよ。とは言え、異性が目の前でスリーサイズとか見るのは嫌だと思うんで自分がやってるんスけど」
足元を見つめるが、他の部分と変わらない、ごく普通の床である。じっと目を凝らして見ると、うっすらと魔力の色が見えたが、それだけだ。今いるラボは常に透か葵の魔力が見えるのでわかりにくい。
「あとはこの数値を元にカラシに作らせるッス。その……ホントにもう希望ないッスか?」
「うーん……あ、ヒールが高い靴は無理ですね……」
夏希の姿を思い出して言う。彼女の足元は、常に5センチはありそうなヒールの高い靴だった。もしかしたら、低い身長を気にしているのかもしれないが。
「ああ、じゃあ足しとくッス。まあ夏希のあれは、身体強化の術を全身にかけたときに武器になるから履いてるだけなんで、カラシの趣味じゃないッスよ。『童顔のちっちゃい子がきっちりスーツ着てネクタイ締めてるのよくないですか!? あとスリット最高!』とは言ってたッスけど……」
やっぱりもう少し考えた方がいいのかもしれない。
そう思ったとき、ラボの扉がノックされた。
「採寸終わりましたか?」
「ん、入ってきていいッスよー」
透がラボに入ってきた。先程の話を聞いた後だと、妙に警戒してしまう。体を強張らせる天音を、彼は不思議そうに見つめていた。
「ああ、ええと。今回いただいたデータは魔導衣作成以外には使用しませんから、安心してくださいね」
とても丁寧にご説明いただいたが、天音が恐れているのはそういうことではない。要望を書き足そうかと思ったが、そのときには既に葵が透に紙を渡してしまっていた。
「なるほど、あまり装飾がないものですね。フリルとレースはやめておきます。刺繡はアリですか?」
「ま、まあ、それくらいなら……?」
「あんま時間ないッスよ?」
「術使います」
発掘調査までに完成させなくてはならないのだ。あまりデザインを凝りすぎても大変なだけだろう。葵がやんわりと止めるが、魔導衣作成の熱が灯った透は止められない。
「天音さんは魔導耐久が少し低めなので防御力を上げられるものにしましょう。そう考えると、確かに露出度は低いほうがいいですね」
「お、お願いします……」
どうか、奇抜なデザインのものにはなりませんように。
興奮しだした透を見ながら、天音は遠い目をして祈った。
「ようこそ~、今カラシは部屋から出したんで気にせず楽にしててくださいッス~」
同性である葵が担当してくれるのはありがたいのだが、この人にきちんとした採寸ができるのだろうか。失礼ながらそう思ってしまった。
「あの、一応副所長からお聞きして、希望はまとめてきました」
「お、ありがとうございます、助かるッス。カラシが」
魔導衣に関しては女性の採寸以外しないという葵がけらけらと笑いながら受け取った。だが、要望をまとめた紙を見て、その表情を引き攣らせる。
「ええと、これでホントにいいんスか?」
「はい、それ以外は特にないです」
「うへー、ヤバいのにされないことだけ祈っとくッス」
天音が書いたのは、「装飾は少なく、露出度は低く、動きやすいもの」だけだった。これは双子や夏希の魔導衣を見て考えたものである。元々ファッションに興味の無い天音は、それ以上思いつかなかった。
「カラシが来るまで皆魔導考古学省支給の普通のヤツ着てたんスけどね。アイツ張り切っちゃって。どんどん凝りだしてるんスよ」
「あれ、でも武村さんは普通の魔導衣では?」
「ああ、アイツの場合は、デザインより性能重視なんスよ。今はちっこいッスけど、元々の姿は成人女性なんで。体のサイズに合わせて服のサイズも変わるように術かけたら、めちゃくちゃ作るのに時間かかったんで、デザインは諦めたって言ってたッスよ」
今の幼い容姿に慣れてしまって忘れていたが、雅も本来は魔導師として働ける年齢の女性なのだ。魔導医師免許まで持っているとなると、恐らく夏希よりも年上だろう。
「あとまあ、本人が軍服っぽいのってかっこいいって言ってたんでそのままってカンジッス。アイツ、中二病なんで」
夏希も言っていたが、雅は本当に中二病らしい。口調の時点でわかりはする。
「でもそれ以外のヤツはマージでカラシの趣味がほとんどッスよ」
「小森さんもですか?」
個性的な魔導衣が大半を占めるこの研究所で、比較的基本に忠実なのは恭平である。雅ほどかっちりとはしていないが、基本の魔導衣のデザインとはそう変わらない。
「リトモリは、『楽に着られるヤツ』って希望だったんで。よく見るとボタンの数とか減ってるッスよ。あと、後ろパーカーのフードみたいになってるッス」
「学ランの下にパーカー着るみたいな……?」
「そうそう、そんなカンジッス。リトモリは耳が繊細なんで、フードかぶって守れるようにああなってるんスよ」
「いつもヘッドフォンつけてますしね」
魔力が音で聞こえるタイプもなかなかに大変そうだ。恭平の場合は魔導探知に特に優れているので、その耳を守るためにそういったデザインになったのだろう。
「ほい、採寸終わりッス」
「え!?」
話しているだけだったのに採寸が終わったらしい。メジャーすら出されていないのにどうやって測ったというのか。
「ふふん、実は今あまねんが立っている床、ちょいと特殊でして。自分かカラシの魔力を流せば一瞬で採寸できる優れものッス。体に触れなくていいんスよ。とは言え、異性が目の前でスリーサイズとか見るのは嫌だと思うんで自分がやってるんスけど」
足元を見つめるが、他の部分と変わらない、ごく普通の床である。じっと目を凝らして見ると、うっすらと魔力の色が見えたが、それだけだ。今いるラボは常に透か葵の魔力が見えるのでわかりにくい。
「あとはこの数値を元にカラシに作らせるッス。その……ホントにもう希望ないッスか?」
「うーん……あ、ヒールが高い靴は無理ですね……」
夏希の姿を思い出して言う。彼女の足元は、常に5センチはありそうなヒールの高い靴だった。もしかしたら、低い身長を気にしているのかもしれないが。
「ああ、じゃあ足しとくッス。まあ夏希のあれは、身体強化の術を全身にかけたときに武器になるから履いてるだけなんで、カラシの趣味じゃないッスよ。『童顔のちっちゃい子がきっちりスーツ着てネクタイ締めてるのよくないですか!? あとスリット最高!』とは言ってたッスけど……」
やっぱりもう少し考えた方がいいのかもしれない。
そう思ったとき、ラボの扉がノックされた。
「採寸終わりましたか?」
「ん、入ってきていいッスよー」
透がラボに入ってきた。先程の話を聞いた後だと、妙に警戒してしまう。体を強張らせる天音を、彼は不思議そうに見つめていた。
「ああ、ええと。今回いただいたデータは魔導衣作成以外には使用しませんから、安心してくださいね」
とても丁寧にご説明いただいたが、天音が恐れているのはそういうことではない。要望を書き足そうかと思ったが、そのときには既に葵が透に紙を渡してしまっていた。
「なるほど、あまり装飾がないものですね。フリルとレースはやめておきます。刺繡はアリですか?」
「ま、まあ、それくらいなら……?」
「あんま時間ないッスよ?」
「術使います」
発掘調査までに完成させなくてはならないのだ。あまりデザインを凝りすぎても大変なだけだろう。葵がやんわりと止めるが、魔導衣作成の熱が灯った透は止められない。
「天音さんは魔導耐久が少し低めなので防御力を上げられるものにしましょう。そう考えると、確かに露出度は低いほうがいいですね」
「お、お願いします……」
どうか、奇抜なデザインのものにはなりませんように。
興奮しだした透を見ながら、天音は遠い目をして祈った。
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