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新人魔導師、発掘調査に参加する
5月1日、第5研究所応接室
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案の定、発掘調査の翌日に魔導考古学省からの招集がかかった。現れたのは真子ではなく、鋭い目つきの男性だ。背も高く、2本ラインの魔導衣を纏っており、腰には剣を佩いている。
「清水零魔導復元師、清水夏希魔導復元師、伊藤天音魔導解析師。以上の3名は昨日の発掘調査について魔導考古学省への説明義務がある」
「それで?」
「魔導考古学省へ来てもらおう」
「はあ……ひとまず天音、着替えてこい」
役人の前にもかかわらず、夏希は普段どおりの低い声で言った。時刻は朝8時。天音はまだ魔導衣を着ていなかった。
こうなることを理解していたのか、珍しく夏希は起きており、きっちりと魔導衣を着こんでいた。その後ろに、いつものように零が控えている。
「は、はい!」
「それくらいの時間はくれるよな?」
「……構わない」
男は眉間に皺を寄せたまま、低い声で答えた。天音は一礼して、着替えるために自室へ向かう。
「久しぶりの再会だってのに、随分他人行儀だな」
「お前は今の自分の立場を理解した方がいい。弱小研究所の副所長、おまけに反魔導主義団体と関わりのある可能性も出ている」
「秋楽、お前……」
「気安く呼ぶな」
2人の会話が扉越しに聞こえてきた。男は秋楽という名らしい。夏希の口ぶりからして、かなり親しい間柄だったようだ。
ところが、秋楽にはその様子はまったくなく、ただただ冷たく、夏希を裁くべき対象として見ていた。恵まれない幼少期を送った夏希の数少ない友人だろうに、権力により友情が失われていくのが、ひどく悲しかった。
「……お前、友達が少ないと思われているらしいぞ」
「実際そうだろ」
「俺がいるだろう。和泉さんも……いや、あれは親か」
天音の足音が遠ざかっていくのを感じ取ると、秋楽は愉快そうに笑った。先程まで浮かべていた険しい表情はどこへいったのかわからないほどだ。それでも、顔立ちがいかついのはかわらないのだが。
「そうだ、今ので思い出した。真子は?」
「大会議室にいる。お前たちが着き次第、同時に尋問が始まる」
「尋問って言ってますけど。建前上、招集では?」
「あ」
しまった!
わかりやすく口を滑らせた彼には、天音の前で見せた威厳はなかった。
早乙女秋楽。
それが彼のフルネームである。夏希の小学校時代からの友人だ。心を読むことの出来る固有魔導を持ち、魔導考古学省事務員から役人までたった2年で出世したエリート……なのだが、如何せん魔導以外はとにかく苦手で、養成学校も筆記試験が足を引っ張り最下位の卒業だった。腰に剣を佩いているが、顔と体格でそれらしく見せているだけで喧嘩は大の苦手という優しい心の持ち主である。
そんな彼が、何故こうしてこの研究所に来ているのか。
それは、秋楽が出世のために友人すら売る冷血漢だと思われているからだ。
「魔導考古学省はお前たちを完全に嵌めるつもりだぞ」
「対策はしてあるさ」
「そうか。俺には難しいことはよくわからないが、お前が言うならそうなんだろうな」
魔導考古学省に気づかれず、味方を作りたい。それが第5研究所が設立したばかりのころの夏希の願いだった。研究所担当の真子が夏希の側に立つことは誰が見ても明らかだ。上手く立ち回らなければ、情報を制限されて魔導考古学省にいいように使われてしまう。
しかし、いい人材など見つからず。
白羽の矢が立ったのが、夏希から10年遅れて適性が判明した秋楽だった。
「仕事中は他人のフリして、出来るだけ冷たく接してくれないか。零とあたししかいないときは普段どおりでいいから」
夏希のこの言葉に、秋楽は何も疑いもせず、「お前がそう言うなら」と返事をし、今に至るのだ。
秋楽は意外と演技が上手く、魔導考古学省は彼を出世のためならなんでもする男だと勘違いした。友情を捨て、ひたすらに働いているように見えたのだろう。秋楽はあっという間に昇級した。こうしてかつての友人である夏希を捕縛させようというのだから、上の人間はあまり人を見る目を持っていないようだ。秋楽としては、ただ夏希に言われたように働いているだけである。出世したいのも、2人いる妹たちの学費を稼ぎたいからであって、それ以外にない。
「しかし、新人か。ここに来るのは何年ぶりだ?」
「2年ぶりですよ」
「そうか、和馬の後いなかったんだったな。新しい子が来てくれてよかったじゃないか」
「今結構ピンチなんですけどね」
「あ、そうだった」
「……本当に、貴方が夏希の友人だなんて信じられません」
「遠回しにバカと言っているな! さすがにそれくらいはわかるぞ!」
「そうでしたか、驚きです」
幼少期の夏希を知る人物。しかも男。当然ながら、零は秋楽を敵対視していた。この男はランドセルを背負って登校する夏希や、体操着姿の夏希を見ているのだ。羨ましいし妬ましい。
「ほら、そろそろ天音が来るぞ、シャキッとしろ」
「俺はキャベツじゃない」
「そういう意味じゃねぇんだわ」
「レタスか?」
「それでもねぇ。さっきみたいな顔をしろってコトだ」
「それなら得意だ、任せろ」
天音がノックをする10秒前。秋楽は眉間に皺を寄せた表情にしっかりと戻っていた。
「清水零魔導復元師、清水夏希魔導復元師、伊藤天音魔導解析師。以上の3名は昨日の発掘調査について魔導考古学省への説明義務がある」
「それで?」
「魔導考古学省へ来てもらおう」
「はあ……ひとまず天音、着替えてこい」
役人の前にもかかわらず、夏希は普段どおりの低い声で言った。時刻は朝8時。天音はまだ魔導衣を着ていなかった。
こうなることを理解していたのか、珍しく夏希は起きており、きっちりと魔導衣を着こんでいた。その後ろに、いつものように零が控えている。
「は、はい!」
「それくらいの時間はくれるよな?」
「……構わない」
男は眉間に皺を寄せたまま、低い声で答えた。天音は一礼して、着替えるために自室へ向かう。
「久しぶりの再会だってのに、随分他人行儀だな」
「お前は今の自分の立場を理解した方がいい。弱小研究所の副所長、おまけに反魔導主義団体と関わりのある可能性も出ている」
「秋楽、お前……」
「気安く呼ぶな」
2人の会話が扉越しに聞こえてきた。男は秋楽という名らしい。夏希の口ぶりからして、かなり親しい間柄だったようだ。
ところが、秋楽にはその様子はまったくなく、ただただ冷たく、夏希を裁くべき対象として見ていた。恵まれない幼少期を送った夏希の数少ない友人だろうに、権力により友情が失われていくのが、ひどく悲しかった。
「……お前、友達が少ないと思われているらしいぞ」
「実際そうだろ」
「俺がいるだろう。和泉さんも……いや、あれは親か」
天音の足音が遠ざかっていくのを感じ取ると、秋楽は愉快そうに笑った。先程まで浮かべていた険しい表情はどこへいったのかわからないほどだ。それでも、顔立ちがいかついのはかわらないのだが。
「そうだ、今ので思い出した。真子は?」
「大会議室にいる。お前たちが着き次第、同時に尋問が始まる」
「尋問って言ってますけど。建前上、招集では?」
「あ」
しまった!
わかりやすく口を滑らせた彼には、天音の前で見せた威厳はなかった。
早乙女秋楽。
それが彼のフルネームである。夏希の小学校時代からの友人だ。心を読むことの出来る固有魔導を持ち、魔導考古学省事務員から役人までたった2年で出世したエリート……なのだが、如何せん魔導以外はとにかく苦手で、養成学校も筆記試験が足を引っ張り最下位の卒業だった。腰に剣を佩いているが、顔と体格でそれらしく見せているだけで喧嘩は大の苦手という優しい心の持ち主である。
そんな彼が、何故こうしてこの研究所に来ているのか。
それは、秋楽が出世のために友人すら売る冷血漢だと思われているからだ。
「魔導考古学省はお前たちを完全に嵌めるつもりだぞ」
「対策はしてあるさ」
「そうか。俺には難しいことはよくわからないが、お前が言うならそうなんだろうな」
魔導考古学省に気づかれず、味方を作りたい。それが第5研究所が設立したばかりのころの夏希の願いだった。研究所担当の真子が夏希の側に立つことは誰が見ても明らかだ。上手く立ち回らなければ、情報を制限されて魔導考古学省にいいように使われてしまう。
しかし、いい人材など見つからず。
白羽の矢が立ったのが、夏希から10年遅れて適性が判明した秋楽だった。
「仕事中は他人のフリして、出来るだけ冷たく接してくれないか。零とあたししかいないときは普段どおりでいいから」
夏希のこの言葉に、秋楽は何も疑いもせず、「お前がそう言うなら」と返事をし、今に至るのだ。
秋楽は意外と演技が上手く、魔導考古学省は彼を出世のためならなんでもする男だと勘違いした。友情を捨て、ひたすらに働いているように見えたのだろう。秋楽はあっという間に昇級した。こうしてかつての友人である夏希を捕縛させようというのだから、上の人間はあまり人を見る目を持っていないようだ。秋楽としては、ただ夏希に言われたように働いているだけである。出世したいのも、2人いる妹たちの学費を稼ぎたいからであって、それ以外にない。
「しかし、新人か。ここに来るのは何年ぶりだ?」
「2年ぶりですよ」
「そうか、和馬の後いなかったんだったな。新しい子が来てくれてよかったじゃないか」
「今結構ピンチなんですけどね」
「あ、そうだった」
「……本当に、貴方が夏希の友人だなんて信じられません」
「遠回しにバカと言っているな! さすがにそれくらいはわかるぞ!」
「そうでしたか、驚きです」
幼少期の夏希を知る人物。しかも男。当然ながら、零は秋楽を敵対視していた。この男はランドセルを背負って登校する夏希や、体操着姿の夏希を見ているのだ。羨ましいし妬ましい。
「ほら、そろそろ天音が来るぞ、シャキッとしろ」
「俺はキャベツじゃない」
「そういう意味じゃねぇんだわ」
「レタスか?」
「それでもねぇ。さっきみたいな顔をしろってコトだ」
「それなら得意だ、任せろ」
天音がノックをする10秒前。秋楽は眉間に皺を寄せた表情にしっかりと戻っていた。
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