【完結】国立第5魔導研究所の研究日誌

九条美香

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新人魔導師、2回目の発掘調査に参加する

6月2日、初めての趣味

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 翌日、天音と由紀奈は調査のために手の空いている人物を探していた。できれば、昨日聞くことができなかった双子か、雅、いれば夏希や零が望ましい。

「あ」
「いた」

 2人が探す前に双子の方からやって来た。いつものように手を握りあって歩いている。まだ双子の見分けがつかない由紀奈は困ったように天音を見た。向かって左がはるかだと、さりげなく伝える。

「恭平から聞いたよ」
「趣味探し」
「手伝う」
「アンケート?」

 双子は協力的で、悩んでいる2人を助けようと調査に応じてくれた。インタビューのように、食堂の椅子に腰かけて質問する。

「ご、ご趣味は……?」

 どう切り出したらよいかわからず、天音はそう問うた。瞬間、「お見合い?」というはるかのツッコミが入る。確かに、それにしか聞こえなかった。

「かなたと入れ替わってイタズラ」
「はるかと入れ替わってイタズラ」
「すみません、私たちには無理です」

 双子だからこそできる趣味を答えられて困ってしまった。天音と由紀奈の容姿は似ていないし、第一イタズラしたいわけでもない。

「そう? 楽しいよ」
「最近はすぐバレるけどね」
「でしょうね」

 慣れてくれば、意外と双子は見分けやすい。高確率で先に喋るのがはるか。まずはこれで見分けられる。内面で言えば、かなたの方が心配性だったり、面倒見がよかったりと、まったく同じわけではないので、話していれば気づけるのだ。

「まあそうだよね」
「じゃあ他の人の教えてあげる」
「お願いします……」

 由紀奈は昨日消しゴムをかけまくっていた紙とペンを用意して、メモをとろうとしている。天音は由紀奈の真面目さに驚いていた。ここに恭平がいれば、人のことなど言えないとツッコんでくれたことだろう。

「零はねー、人間観察って言ってた」
「自分のしないことしてる人を見るのが楽しいんだって」

 流石妻に「デスゲームとか主催して楽しんでそう」と言われるだけある。彼の、穏やかそうでその実何を考えているかわからない瞳に見つめられるのはなかなかに恐ろしいものだ。だが、恐らく見ていることに気づかせないのだろうと天音は思った。

「あ、それちょっとわかります……私、人と話すの上手じゃないから……どういう人かなんとなくわかれば話せるかなって、見ちゃいます……」
「多分所長の趣味はそういうんじゃないよ。ただ単に面白がってるだけだよ」

 上司相手に考えてはいけないことだが、零は「ふふ……人類は愚かですね……」などと言っていそうな雰囲気がある。由紀奈の人間観察とは似て非なるものだ。

「うーん……確かに、趣味とは違うかも……」
「なら雅は?」
「パズル好きだよ、雅」
「そうなんですか? 知りませんでした」

 雅の意外な趣味が明らかになった。やっている姿が想像できない。実際に見に行ってみようと、天音たちは双子に礼を言って医務室へ向かった。

「パズルだって」
「天音ちゃん、そういうの得意そう」
「どうだろう、全然したことないや」

 医務室の扉をノックするが、反応はなかった。休日なので、自室か、もしくは外出しているのかもしれない。ひとまず2階の彼女の部屋へ行くことにした。

「なんじゃ、2人揃って」

 雅は部屋にいた。ちょうど、テーブルの上にはジグソーパズルのピースが広げられている。部屋を訪れた理由を話すと、彼女はいくつか箱を取り出した。

「この辺りならちょうどよい難易度じゃろう」

 見れば、雅がやっていたのは真っ白なピースのミルクパズルと呼ばれるものだった。確かに、初心者にはハードルが高すぎる。

「ありがとうございます、やってみます」
「うむ」

 折角なので、すぐ近くの由紀奈の部屋でパズルをしてみることにした。すると、2人はとあることに気が付いた。

「これ……」
「魔導パズルだね……」

 魔導パズル。近年、密やかに流行している玩具だ。完成させるたびにピースの形が変わるので何度でも楽しめるという煽り文句で、マニアたちを虜にした。雅もその1人だったのだろう。

「難しいなぁ」
「そう? 私、結構好きかも」
「由紀奈ちゃん、武村さんと似てるのかもね」
「そうなのかな……ならちょっと嬉しい」

 次々に隙間を埋めていく由紀奈に対し、天音の手が進むスピードはゆっくりだ。ひとまず角から埋めてみたが、そこからが上手くいかなかった。天音には向いていないのかもしれない。

「私、これ進めてみるね。あ、小森さんに報告しなきゃ」
「私はもう少し探してみる……確か、副所長が空を飛びながらの散歩が好きだったはずだから、やってみようかな」
「うん、わかった」

 早くも1つ目が完成した由紀奈は、満足そうな表情をしている。そんな彼女に手を振って、天音は自室に箒を取りに行った。そのまま階段を駆け上がり、「家」を出て敷地内の上空を飛ぶ。外出届を出していないので外には出れないが、敷地は十分広いので気にせず飛ぶことができる。

(……風が気持ちいいな……副所長が好きなのもわかる……うん、これかもしれない)

 そう気づいた天音が夕食の際に報告すると、ようやく息抜きの方法を見つけられたのか、と恭平は安心したように息をついたのだった。
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