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7話 魔王二大天王デミスト
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「さっき知った真実が衝撃過ぎて確認し損ねてしまったが、女神から授かった力があれば、弟のブラグラを元に戻せるんだよな……」
ドワーフ王国へと移動している最中、グランデルが私に尋ねてきた。
「そうらしいのですが、実際に女神の力を試したわけではありませんので――、必ず元に戻せるとは今の段階では言えません……」
「それもそうだな。女神の力を使いこなせるようになったら、また教えてもらえるか?」
「もちろんです」
「ただの女ではないと思っていたが、まさか女神の力まで使えるようになるとはな?」
ルランドが会話に加わってきた。
「ふふ、もしかして、私の才能に驚いちゃってるの?」
「そうだな、まるで俺の知ってるラティリスではないみたいだ――」
「……ルランド?」
冗談のつもりで言ったのだが、ルランドは何故か真剣に受け止めてしまったようだった――
「あ、いや、何でもない、気にしないでくれ……」
「そ、そう?」
ルランドは気にしないでくれと言ったが、その表情が私には妙に気になっていた――
「こんな所で人間が何をしている?」
あーあ、ドワーフ王国まで目前だったのに……
どうやら、ブラグラ王子の兵士達に見つかってしまったようだ。
「ラティリス、逃げろ!! そいつは魔族だ!!」
「え?」
ルランドの叫び声が私に届いたと同時に、物凄い悪寒が背筋を走った。
「こ、この人が魔族?!」
そうだった――
ブラグラ王子だけでなく、私達は既に魔族とも遭遇する場所にまで来ていた……
「魔族と一括りにしないでほしいな。俺にはデミストという名があるのだから――」
「ラティリスから離れろ!!」
ルランドが一瞬で間合いを詰めて、デミストに魔剣で切りかかった。
「ほう、魔剣か? ――だが、まだ使いこなせてはいないようだな」
デミストはルランドの魔剣を素手で受け止めた。
「なっ!?」
デミストの圧倒的な力に、ルランドが驚愕している。
ルランドのその表情を見ただけでも、デミストがただの魔族ではないということがわかった。
「闇魔法稲妻!」
グランデルが黒い稲妻をデミストに向かって落とした。
「ん? ダークエルフと人間が、なぜ一緒にいるのだ?」
デミストは黒い稲妻を高速で避けながら、疑問を口にした。
「ルランド、あの男はまずい。デミストは魔王二大天王の一人だ」
「あの魔族が魔王二大天王? まさか、これほどの力を持っている存在だったとは……。俺達が戦って勝てる可能性はあるのか?」
「――残念ながら、今のオレ達では勝ち目はない」
「それって、逃げる選択肢しかないんじゃないか? ラティリス、エアルの力を貸してくれ!!」
ルランドはエアルの力がないと逃げきれないと判断した。
「逃げるしかないみたいなんだけど……、エアルの力を使えば逃げ切れそう?」
私はエアルに尋ねた。
「もちろん、僕の力を使えば逃げることだけはできるよ。でも――」
「でも?」
エアルが何か言いたそうにしている。
「遠慮せずに言っていいよ」
「ありがとう、ラティ。彼はおそらく僕達の敵じゃない」
「……どういうこと?」
魔族なのに敵ではない?
「ファレス様の話を聞いてるから、ラティにはわかってもらえると思うけど、魔族の中には亜人に戻りたいと思っている魔族もいるんだ」
「――あのデミストが、その一人だっていうの?」
「うん、前に会った時と変わってなければだけど……」
「それで、エアルはどうしたいの?」
「ファレス様の願いを叶えるため、できればデミストと話をして、魔族の情報を得たいと思ってる」
「なるほど――」
正直、ルランドとグランデルが、共闘しても歯が立たないほどの強大な力を持った魔族と話なんかしたくはないが……
「もちろん、逃げないといけないとわかったら、僕が全力でラティを護るよ」
エアルには、今まで散々助けてもらってきている。
それも友達というだけで、何の見返りもなく――
そのエアルが遠慮しながらも、私にお願いをしてきているということは、必要な情報を得られる可能性が高いということなのだろう……
「わかったわ、他でもないエアルの頼みだもんね」
「ラティ、無理言ってゴメンね。――でも、ありがとう」
エアルはそう言いながら、私に向かって微笑んだ。
「戦いをやめて!!」
私は大声を出して戦いを制止した。
「ラティリス?」
急に戦いを制止されて、ルランドが驚いた表情で私の方を振り向いた。
デミストを含めた全員が私に注目している。
「私がデミストと話をするわ」
「……人間の娘が、私と話をしたいだと?」
「何を言ってるんだ、ラティリス?! 危険過ぎる!! 俺がお前にそんなことさせるはずないだろう!!」
ルランドの気持ちは痛いほどわかる。
逆の立場だったら、私もルランドに同じことを言っただろう――
「ありがとう、ルランド。でも、大丈夫だから」
「フ、面白い。何の話がしたいのかはわからんが、その提案、受けさせてもらおう」
「きゃっ!」
デミストが瞬時に間合いを詰め、私を抱きかかえた。
「ラティリス!!」
私の名を叫んでデミストに切りかかったが、高速で空へ飛び上がったことにより、ルランドの剣がデミストに届くことはなかった。
「戦う意思のない者を悪いようにはしない。しばし、この娘は預からせてもらうぞ」
デミストはそう言い残して、そのまま高台へと移動した。
「――それで、俺に話とは何だ?」
「ええ、時間もないから単刀直入に聞くわ。デミスト、あなたは亜人に戻りたいの?」
「何故……、魔族が元亜人だと知っている? ああ、そこにいるシルフから聞いたのか――」
デミストはエアルから聞いたと思ったようだ。
「確かにそう思っていた時期もあったが……、俺はもう諦めたよ」
「――もし、魔族を亜人に戻す方法があるとしたらどうしますか?」
「亜人に戻れるとしたらか……。争いがない世界ならば、それもいいのかもしれないが、今の世界では護りたい者を護るためには力が必要だ。だから、たとえ亜人に戻れるとしても、俺は亜人には戻らないだろう。ただ――」
魔族の世界は、おそらく力が全ての社会。
そんな世界で力を失うことは、魔族でいることより恐ろしいことなのかもしれない……
「ん、ただ?」
まだ話の続きがあるようだ。
「我が主君の幼い魔王様は亜人に戻してあげたいとは思っている」
「――魔王を亜人に?」
「最近、即位した幼い魔王様は、まだ魔王同士の争いについて多くは知らない。もし、亜人に戻ることができるのであれば、今の重荷から解放してあげたいとは思うな……」
「え、魔王は一人じゃないの?」
今更ながら、私は衝撃的な事実を知った。
「そんなことも知らなかったのか? 現魔王は三人いる」
魔族の世界のことなど知る由もない。
「――ということは、ブラグラ王子を操っているのは、デミストとは違う勢力の魔王の仕業なの?」
「なるほど、知り合いの王子が魔族の誰かに操られているのか……、確かに別の魔王の四天王の一人に、相手を操る魔術を得意としている誘惑のサビスルという魔族はいるが――」
「やっぱり、そういう魔族がいるのね……」
「ただ、それをお前達が知ったからといって、魔王四天王の魔術は打ち破れないだろうな」
「フフ、普通はそう思うよね」
エアルが会話に入って来た。
「風の精霊シルフの魔力なら可能かもしれないが――、魔法の属性が違うだろう?」
「僕じゃないよ、そこにいるラティは、女神の力の一部が使えるのさ」
「それは詳しく教えてもらおうじゃないか……」
意外にもデミストからエアルの話に乗ってきた――
「つまり、この女、ラティリスが女神の力を使いこなすことができるようになれば、魔王様を亜人に戻すことも可能だということか?」
「そういうこと」
デミストの質問にエアルが答えた。
因みに、女神の力の話をしたついでに、私の名前も伝えておいた。
「使い方は聞いたけど、まだ使ったことはないから、本当にそんなことができるのかは正直わからないんだけどね……」
「――だったら、俺で試してみるか?」
そう言うと、デミストが右腕を私に差し出した。
「い、いいんですか?」
「ああ、いつか魔王様を亜人に戻せるかもしれない力が、どんなものか俺が知っておきたい」
「わかりました、では――」
ファレス様から教えられた女神魔法。
魔の力を浄化することができる。
「女神魔法浄化!」
私がそう唱えると、両手から光が発せられ、デミストの右腕を光で包んだ。
「こ、これは……」
「ど、どうですか?」
「一旦、止めてくれ――」
「え、あ、はい!」
私は魔法を慌てて止めた。
「確かに、魔の力が失われていくのを感じた……」
「無事に使えたみたいですね」
これでブラグラ王子にも女神魔法が使えることが証明された――
「ああ、ただ、今は魔王様のためにも、まだ力を失うわけにはいかないからな。今日はこれくらいにしておく……」
「魔王様のことが、本当に大切なんですね」
「フ、大切だった人の忘れ形見だからな――」
魔族には魔族の事情があるのだろう……
「まあ、俺のことはどうでもいい。それよりも、ラティリスの仲間がそろそろここにたどり着くようだ」
ここまで来る時間が予想よりも遥かに早い。
ルランドが必死に追いかけて来てくれていた姿が目に浮かんだ――
「俺はこの場で立ち去るが、俺が育てたこの魔獣をお前に渡しておこう」
「か、かわいい」
渡された魔獣はハリネズミの姿をした魔獣だった。
手のひらの上で愛くるしい動きをしている。
「緊急時に役に立つはずだ」
「ふふ、デミストは見た目によらず、実は可愛いものが好きなんですね」
「見た目によらずとは酷いな。否定はしないが――」
……もしかして照れてる?
話をする前とは、ずいぶん印象が変わったよね――
そんなことを考えながら、私は思わず微笑した。
「ラティリス!!」
「あ、ルランドって、え?!」
ルランドは私を見つけると大声で私の名を呼び、そのまま私を強く抱き締めた。
「無事で良かった!!」
ルランドの身体が小刻みに震えている。
そんなにも私のことを心配して……
「不安にさせて、ごめんね……」
私は心から申し訳なく思った。
「いや、俺が勝手に心配しただけだ。ラティリスが無事なら、それでいい――」
「心配してくれてありがとう、ルランド……」
確かに、私は色々な不運に巻き込まれている。
でも――
それを差し引いても、こんなに私のことを想ってくれる人が婚約者なのだから……
私は幸せ者なんだと改めて思った。
ドワーフ王国へと移動している最中、グランデルが私に尋ねてきた。
「そうらしいのですが、実際に女神の力を試したわけではありませんので――、必ず元に戻せるとは今の段階では言えません……」
「それもそうだな。女神の力を使いこなせるようになったら、また教えてもらえるか?」
「もちろんです」
「ただの女ではないと思っていたが、まさか女神の力まで使えるようになるとはな?」
ルランドが会話に加わってきた。
「ふふ、もしかして、私の才能に驚いちゃってるの?」
「そうだな、まるで俺の知ってるラティリスではないみたいだ――」
「……ルランド?」
冗談のつもりで言ったのだが、ルランドは何故か真剣に受け止めてしまったようだった――
「あ、いや、何でもない、気にしないでくれ……」
「そ、そう?」
ルランドは気にしないでくれと言ったが、その表情が私には妙に気になっていた――
「こんな所で人間が何をしている?」
あーあ、ドワーフ王国まで目前だったのに……
どうやら、ブラグラ王子の兵士達に見つかってしまったようだ。
「ラティリス、逃げろ!! そいつは魔族だ!!」
「え?」
ルランドの叫び声が私に届いたと同時に、物凄い悪寒が背筋を走った。
「こ、この人が魔族?!」
そうだった――
ブラグラ王子だけでなく、私達は既に魔族とも遭遇する場所にまで来ていた……
「魔族と一括りにしないでほしいな。俺にはデミストという名があるのだから――」
「ラティリスから離れろ!!」
ルランドが一瞬で間合いを詰めて、デミストに魔剣で切りかかった。
「ほう、魔剣か? ――だが、まだ使いこなせてはいないようだな」
デミストはルランドの魔剣を素手で受け止めた。
「なっ!?」
デミストの圧倒的な力に、ルランドが驚愕している。
ルランドのその表情を見ただけでも、デミストがただの魔族ではないということがわかった。
「闇魔法稲妻!」
グランデルが黒い稲妻をデミストに向かって落とした。
「ん? ダークエルフと人間が、なぜ一緒にいるのだ?」
デミストは黒い稲妻を高速で避けながら、疑問を口にした。
「ルランド、あの男はまずい。デミストは魔王二大天王の一人だ」
「あの魔族が魔王二大天王? まさか、これほどの力を持っている存在だったとは……。俺達が戦って勝てる可能性はあるのか?」
「――残念ながら、今のオレ達では勝ち目はない」
「それって、逃げる選択肢しかないんじゃないか? ラティリス、エアルの力を貸してくれ!!」
ルランドはエアルの力がないと逃げきれないと判断した。
「逃げるしかないみたいなんだけど……、エアルの力を使えば逃げ切れそう?」
私はエアルに尋ねた。
「もちろん、僕の力を使えば逃げることだけはできるよ。でも――」
「でも?」
エアルが何か言いたそうにしている。
「遠慮せずに言っていいよ」
「ありがとう、ラティ。彼はおそらく僕達の敵じゃない」
「……どういうこと?」
魔族なのに敵ではない?
「ファレス様の話を聞いてるから、ラティにはわかってもらえると思うけど、魔族の中には亜人に戻りたいと思っている魔族もいるんだ」
「――あのデミストが、その一人だっていうの?」
「うん、前に会った時と変わってなければだけど……」
「それで、エアルはどうしたいの?」
「ファレス様の願いを叶えるため、できればデミストと話をして、魔族の情報を得たいと思ってる」
「なるほど――」
正直、ルランドとグランデルが、共闘しても歯が立たないほどの強大な力を持った魔族と話なんかしたくはないが……
「もちろん、逃げないといけないとわかったら、僕が全力でラティを護るよ」
エアルには、今まで散々助けてもらってきている。
それも友達というだけで、何の見返りもなく――
そのエアルが遠慮しながらも、私にお願いをしてきているということは、必要な情報を得られる可能性が高いということなのだろう……
「わかったわ、他でもないエアルの頼みだもんね」
「ラティ、無理言ってゴメンね。――でも、ありがとう」
エアルはそう言いながら、私に向かって微笑んだ。
「戦いをやめて!!」
私は大声を出して戦いを制止した。
「ラティリス?」
急に戦いを制止されて、ルランドが驚いた表情で私の方を振り向いた。
デミストを含めた全員が私に注目している。
「私がデミストと話をするわ」
「……人間の娘が、私と話をしたいだと?」
「何を言ってるんだ、ラティリス?! 危険過ぎる!! 俺がお前にそんなことさせるはずないだろう!!」
ルランドの気持ちは痛いほどわかる。
逆の立場だったら、私もルランドに同じことを言っただろう――
「ありがとう、ルランド。でも、大丈夫だから」
「フ、面白い。何の話がしたいのかはわからんが、その提案、受けさせてもらおう」
「きゃっ!」
デミストが瞬時に間合いを詰め、私を抱きかかえた。
「ラティリス!!」
私の名を叫んでデミストに切りかかったが、高速で空へ飛び上がったことにより、ルランドの剣がデミストに届くことはなかった。
「戦う意思のない者を悪いようにはしない。しばし、この娘は預からせてもらうぞ」
デミストはそう言い残して、そのまま高台へと移動した。
「――それで、俺に話とは何だ?」
「ええ、時間もないから単刀直入に聞くわ。デミスト、あなたは亜人に戻りたいの?」
「何故……、魔族が元亜人だと知っている? ああ、そこにいるシルフから聞いたのか――」
デミストはエアルから聞いたと思ったようだ。
「確かにそう思っていた時期もあったが……、俺はもう諦めたよ」
「――もし、魔族を亜人に戻す方法があるとしたらどうしますか?」
「亜人に戻れるとしたらか……。争いがない世界ならば、それもいいのかもしれないが、今の世界では護りたい者を護るためには力が必要だ。だから、たとえ亜人に戻れるとしても、俺は亜人には戻らないだろう。ただ――」
魔族の世界は、おそらく力が全ての社会。
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「ん、ただ?」
まだ話の続きがあるようだ。
「我が主君の幼い魔王様は亜人に戻してあげたいとは思っている」
「――魔王を亜人に?」
「最近、即位した幼い魔王様は、まだ魔王同士の争いについて多くは知らない。もし、亜人に戻ることができるのであれば、今の重荷から解放してあげたいとは思うな……」
「え、魔王は一人じゃないの?」
今更ながら、私は衝撃的な事実を知った。
「そんなことも知らなかったのか? 現魔王は三人いる」
魔族の世界のことなど知る由もない。
「――ということは、ブラグラ王子を操っているのは、デミストとは違う勢力の魔王の仕業なの?」
「なるほど、知り合いの王子が魔族の誰かに操られているのか……、確かに別の魔王の四天王の一人に、相手を操る魔術を得意としている誘惑のサビスルという魔族はいるが――」
「やっぱり、そういう魔族がいるのね……」
「ただ、それをお前達が知ったからといって、魔王四天王の魔術は打ち破れないだろうな」
「フフ、普通はそう思うよね」
エアルが会話に入って来た。
「風の精霊シルフの魔力なら可能かもしれないが――、魔法の属性が違うだろう?」
「僕じゃないよ、そこにいるラティは、女神の力の一部が使えるのさ」
「それは詳しく教えてもらおうじゃないか……」
意外にもデミストからエアルの話に乗ってきた――
「つまり、この女、ラティリスが女神の力を使いこなすことができるようになれば、魔王様を亜人に戻すことも可能だということか?」
「そういうこと」
デミストの質問にエアルが答えた。
因みに、女神の力の話をしたついでに、私の名前も伝えておいた。
「使い方は聞いたけど、まだ使ったことはないから、本当にそんなことができるのかは正直わからないんだけどね……」
「――だったら、俺で試してみるか?」
そう言うと、デミストが右腕を私に差し出した。
「い、いいんですか?」
「ああ、いつか魔王様を亜人に戻せるかもしれない力が、どんなものか俺が知っておきたい」
「わかりました、では――」
ファレス様から教えられた女神魔法。
魔の力を浄化することができる。
「女神魔法浄化!」
私がそう唱えると、両手から光が発せられ、デミストの右腕を光で包んだ。
「こ、これは……」
「ど、どうですか?」
「一旦、止めてくれ――」
「え、あ、はい!」
私は魔法を慌てて止めた。
「確かに、魔の力が失われていくのを感じた……」
「無事に使えたみたいですね」
これでブラグラ王子にも女神魔法が使えることが証明された――
「ああ、ただ、今は魔王様のためにも、まだ力を失うわけにはいかないからな。今日はこれくらいにしておく……」
「魔王様のことが、本当に大切なんですね」
「フ、大切だった人の忘れ形見だからな――」
魔族には魔族の事情があるのだろう……
「まあ、俺のことはどうでもいい。それよりも、ラティリスの仲間がそろそろここにたどり着くようだ」
ここまで来る時間が予想よりも遥かに早い。
ルランドが必死に追いかけて来てくれていた姿が目に浮かんだ――
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「か、かわいい」
渡された魔獣はハリネズミの姿をした魔獣だった。
手のひらの上で愛くるしい動きをしている。
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……もしかして照れてる?
話をする前とは、ずいぶん印象が変わったよね――
そんなことを考えながら、私は思わず微笑した。
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「あ、ルランドって、え?!」
ルランドは私を見つけると大声で私の名を呼び、そのまま私を強く抱き締めた。
「無事で良かった!!」
ルランドの身体が小刻みに震えている。
そんなにも私のことを心配して……
「不安にさせて、ごめんね……」
私は心から申し訳なく思った。
「いや、俺が勝手に心配しただけだ。ラティリスが無事なら、それでいい――」
「心配してくれてありがとう、ルランド……」
確かに、私は色々な不運に巻き込まれている。
でも――
それを差し引いても、こんなに私のことを想ってくれる人が婚約者なのだから……
私は幸せ者なんだと改めて思った。
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