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第一章 ボーイ・ミーツ・ツーディーガールズ

美少女にあんなことやこんなこと……されるというのも悪くない。

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 場面は飛んで2回の裏、北の国チームの攻撃。

 中央の国チームの攻撃は三者三者、頭に血が上っていたユキだったが、ライの予感が的中し上手くストレートをコーナーに決めるピッチングで中央の国打席を寄せ付けなかった。

 そしてこの回はその4番、ユキからの攻撃だが…。

「タイム、オナシャス!」

 たちまちタイムをかけるチロ、そのチロがマウンドに駆け寄っていく。

「どうしたの?チロ。」

「ここは敬遠しよう。」

「え?」

「申し訳ありませんがチロ様、まだ序盤で尚且つリードしているチームが相手が4番打者だからといって歩かせるというのはセオリーにはありません。たとえ本塁打を打たれても1点差ですし、ここは勝負の場面です。」

「いや、ここは敬遠だ。」

「申し訳ありませんがチロ様、頭煮卵ですか?」

「え?」

「……。」

「……まあ、確かにここは勝負の場面かもしれないが、相手チームのポイントゲッターはユキくらいのものだ。ユキとの勝負を避ければウチは勝てるはずだ。」

 頭煮卵という暴言はさておき、ここは敬遠を譲る気は毛頭無い。そしてユキとの勝負を避ける事にはもう一つのメリットが…。

「再三申し訳ありませんが、ユキ様を敬遠することには私は反対です。勝負を避ければユキ様の性格を考えればユキ様の闘志に火がついてしまうでしょう。そうなればもう全く手がつけられなくなります。」

「そう確かにそうだ。だがそれ以上のメリットがある。」

「……と、言いますと?」

「ユキ以外のメンバーだ。彼女らはユキが怒れば怒るほど、緊張で動きが固くなっている。そうなればチャンスは拡大するしユキの闘志とやらもいつまで持つか分からない。」

「確かに一理あるように聞こえますが、ただの憶測でしかありません。それに相手のミスを願って作戦をたててもその結果は偶然でしかありません。ポジティブシンキングも大切ですが、最悪の事態を想定しながら順を追って練っていくのが…。」

「ライさあ、そんな難しく考えなくてもいいんじゃない?」

「しかし、カナ様…。」

「私はチロを信じるよ。それに失敗したらチロに全責任を押し付ければいいよ。」

「確かに、チロ様覚悟しておいてください。」

「おっふ。」

 何か俺に対して美少女二人の当たりが強い。でも悪くない、何か良い、好き。

 まあ、そんなこんなで説得はできた。ただやはりライの言うとおり博打的な作戦であることは間違いない。しかし失敗して罰を受けるのもまた一興、美少女にあんなことやこんなこと……されるというのも悪くない。むしろ楽しみです。

「遅っせーな。あんまり待たせんなや。」

「サーセン、ユキさん!敬遠しまーす!!」

「はぁああ~~!!?」

 ドッキリ大成功的なノリで敬遠を告げる。ユキの反応も伴ってしてやったり感が凄い。

「テメー、覚えてやがれよ。」

 ベタな捨て台詞を吐きながら一塁へと向かうユキ。何か若干不良達、ドラゴンカルテットとキャラが被ってきてる気がするが今さらドラゴンカルテットをドラゴンクインテットにする気はない。間に合ってます。



 さあ、場面はノーアウト一塁で一塁ランナーはユキとなった訳ですが…。

「リード、デッカッ!」

 塁間の半分弱までリードするユキ。漫画とかで足の速さが自慢の奴がよくやるやつ、そして大体盗塁してくるやつだ。

「(カナ様、ここは牽制を。)」

「(分かったわ。)」

 みたいな事をバッテリー間で考えてるだろう。意志疎通の能力はこういうときに便利だな。

 一球牽制を挟む。すると物凄い勢いでユキが帰塁するが、しかし…、ヘッドスライディングする際ユキの胸が突っかかり大幅な減速。タイミングはギリギリだが………。

「セーフ!!」

「ふー、あぶねぇ、あぶねぇ。」

 ユキの潰れてるおっぱいがやけにエロい。カナが「おっぱいが大きくても録な事が無いわね。」といった優越感や相手を蔑むような表情とも、ユキの巨乳を羨ましそうにジェラシー溢れる表情ともどちらとも取れる表情をしているが、その心中はカナにしか分からない。

 状況は変わらないが、先程の事があってか少しユキのリードが小さくなった。

「(一応もう一丁牽制いれとくべ。)」

「(り。)」

 的な会話を恐らく挟んでもう一度牽制。今度は楽に足から帰塁。

「(盗塁の可能性は消えないが右打者だ。小さくなったリードなら刺せる可能性もある。)」

 右打者の場合は一塁ランナーの動きが見やすく、盗塁を刺す確率が上がる。ライはそこに賭けた。

 カナがクイックでホームに投球。そして……。

「走ったぞ!!」

「うおりゃあ!!」

 出た!!ライキャノン!!だが、しかし。

「セーフッ!」

 危なげなく二盗成功。その足の速さ、本物である。

「クソッ!」


 今度は一転ピンチになった。先程と違い右打者が壁となるため三盗阻止の難易度が上がる。さらに牽制も二塁の場合は、セカンド、ショート、ピッチャーとの息の合ったプレーが必要になるが守護者達とは意志疎通が出来るためこの心配は杞憂だろう。

 それにユキのリードはそこまで大きい訳でもないので牽制は恐らく不要だ。後はカナが癖を盗まれなければ良い。

 そしてヒット一本で同点になりうる場面だがこの心配も恐らく杞憂だろう。……お山の大将で目立ちたがり屋のユキがとる作戦は…。

「また走ったぞ!!」

「ッ!舐めやがって!!」

 ユキが滑り込む。カナがモーションに入ってからスタートを切ったのにも関わらず、余裕のセーフだ。

「チッ!」

 これでノーアウト三盗だ。内野ゴロでも犠牲フライでも1点、罰ゲームの確率が随分と上がってしまった。

 本盗も無くはないかもしれないが、恐らくは……。

「スクイズかなー。」

「(スクイズですかね?)」

「(そうね。一球外しときましょ。)」

 先程の投球は2球ともストライクで、一球外す余裕がある。

 ユキも全くサインなどの素振りはないが、意志疎通でサインの交換は済ませてるだろう。

 そして………

「ランナー走った!!」

 ユキがホームに向かって走り出す。バッテリーも立ち上がり外側に大きく外す。予想通りスクイズだ………と、思いきや…。

「バッター!!どけッー!」

「し、しまった。」

 向こうの作戦はスクイズではなくホームスチール。ベースから離れて大きくウエストしたため、がら空きになったホームベースに…。

「ホームイン!!」

「よっしゃああ!!」

 一点を献上してしまった。二人の美少女がこちらを渇いた目付きで見ている。これは罰ゲームやろなー。




 やったぜ。
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