ガールズガーディアンガンガンダッシュ戦記

第一章 ボーイ・ミーツ・ツーディーガールズ

陰の実力者!?…その少女凶暴につき。

「申し訳ありません、カナ様。私がちゃんと盗塁を阻止していれば…。」

「いや、私の牽制もクイックも下手だし、ライは悪くないよ。」

「こればっかりは俺が悪い。全責任は俺がとる。」

「誰が悪いとかじゃないよ、言っちゃえば盗塁はピッチャーの責任が一番大きいから悪いのは私。まだ勝ってるしこの反省会は終わってからにしよう。」

　何故か俺への罰ゲーム（ご褒美）については無かったことにされたようだ。畜生め。

　ただカナの言うとおりだ、今は試合の事に集中しよう。有るか無いか分からない罰ゲームについては試合後に考えれば良い。試合後に楽しみ（罰ゲーム）があれば気合いも入る。


　そして続く打者はカナが見事に三人で抑え、三回の表の中央の国チームの攻撃。

「殺っちゃってくだせぇ!!タツの兄貴」

「タツの兄貴」

「タツ兄貴」

「おう。」

　前々の前から思っていたが兄貴ではなく姉貴だろう。しかしそれをタツは全く気にする様子はない。

　小さく、頼りない背中が打席に向かう。明らかに弱そうだが仮にもドラゴンカルテットのリーダーだ。

「ちっこくて弱そうな奴だが、もう油断はしねぇぜ!!」

　ユキから見ても、タツは弱っちく映るようだ。ただその目には油断も慢心もない。全身全霊全力のストレートをタツに投げ込む。

「ほいっ。」


　ぐわらきーん




「……えっ？」

「は？」



　……何が起こったのか分からなかった。いや、今も理解が追い付かない。

　一瞬の出来事だった。ユキの投じたストレートはスピードもコントロールも完璧だった。しかしそれをいとも容易くタツはスタンドに放り込んだ。まさに刹那、弾丸ライナーと呼ぶに相応しい打球だった。

「マジかよ…。」

「な!?やっぱり兄貴はすげーだろ!?」

「いや、マジですげーわ。」

　子供がはしゃぐかのように喜びを爆発させるカズ。今はじめてこいつを可愛いと思った。

　そして、正直ドラゴンカルテットで一番弱いと思ってたタツが、まさかここまで凄いとは…。

　タツがダイヤモンドを一周して帰ってくる。

「あんたマジですげーよ。」

「おう。」

　ここまで「おう。」と打ったときの「ほいっ。」しか喋っていない気がするが、そこが格好いい。多くを語らないが実は滅茶苦茶強いという……正に陰の実力者、漢の中の漢!!

「兄貴!!一生付いていきます!!」

「いや、……チロさんは俺らのボスだろ？」

「え？」

　今、心臓がキュンってなった。心がときめいた。ラブコメが始まりそう。

　まず一人称が俺っていうのがキュンポイントその１。そして敬語すら使わないカズ、ジロ、サブ。敬語は使うもののなめた態度のライ。そんな中で俺に忠誠を誓ってくれるタツ。キュンポイント2だ。ヒロは中々良い娘だが、タツ兄貴のカッコよさには敵わない。ボスは論外だ。

「……それはそうとチロさん、次アンタの打席だろ。」

「ああ、そうだった。」

　打順が一周して、次は俺の打席だ。ホームラン打って、タツとのラブラブアベックアーチ完成させちゃうぞ♪



「ストライク!!バッターアウッ!!」

　やはりそう簡単ではなかった。まあ、一打席目に当たったのが奇跡みたいな物だしな。

　ヒロはショートゴロ、カナはセンターライナーでスリーアウトチェンジ。二順目で、尚且つユキの球速が若干落ちてきたのもあっていい当たりが増えてきた。…俺は三振だったが。

　というよりそもそも150キロ後半から160キロの球をたった一打席でアジャストする方が可笑しい。最早プロフェッショナルの芸当だ。


　三回の裏の北の国チームはカナの前に三者凡退。四回表、中央の国チームもボスにヒットが出るが無得点。

　そして四回の裏もカナの完璧なピッチングで2アウト。そこで……、

「よっしゃ!一発かますぜ!!」

　二刀流スーパースター、ユキの登場である。

「タイム、オナシャス!!」

「またかよ!!」

　ここで二度目のタイムをかける。しかし正直ライトからマウンドに何度も走ってくのは辛いです。

「…チロ様、また敬遠とか言い出すんじゃないでしょうね？」

「いやいや、さすがにそれは無いって。アレよ、ユキを抑える作戦よ。」

　ライが呆れたような、蔑むような目で睨み付けてくる。が作戦の話を持ちかけたとたん表情がガラリと変わる。

「何か詳細のある作戦でも？」

「まあ、何だ。そんな大したものじゃないが。」

「何でしょう？」

　特に意味もなく間をためて、

「シフトだ！そう、ユキシフトだ!!」