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二部
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しおりを挟むぽつぽつとまたたく星が、手を伸ばせば触れられそうなほど近くに見えた。月奈は窓の外に広がる夜景を静かに見つめていた。スカイツリーのネオンがくっきりと輝いて、東京の街をロマンチックに彩っている。
今夜、英作が予約していたのは、日比谷にある高層ホテルのレストラン。夜景も料理も申し分なく完璧なデート――のはずだった。けれど、英作は運ばれてきた料理にはほとんど手をつけず、代わりにグラスに注がれる赤ワインばかりを何杯も頼んでいた。
その視線はずっと月奈に向けられていた。じっとりと湿ったような目で、まるで食事が終わるのをじっと待っているかのように。
月奈は居心地の悪さを感じながらナイフとフォークを動かした。どの料理も美味しいはずなのに、口に運ぶたび、味がよくわからない。やがて「ごちそうさま」と静かに言うと、英作はすぐに席を立ち、何の余韻もなく会計を済ませてしまった。
レストランのスタッフに失礼だったかな――そんな後ろめたさを感じながら、月奈は英作のあとに続いて店を出た。
「ど、どこに行くの……?」
英作が無言で月奈の手を引く。連れていかれたのはエレベーターの前。彼は上層階のボタンを押した。
「部屋、取ってあるんだ。……日が変わるまでには帰すよ」
その言葉に、月奈の心臓がドクンと跳ねた。
(……ホテルの部屋?)
出かける前に、父の予定を確認していた。今日は接待ゴルフで、帰宅は深夜になると聞いている。でも、まさかディナーのあとに部屋まで行くなんて想像もしていなかった。
時刻は夜の十時をまわっている。父が家にいないとはいえ、こんな時間に帰宅が遅れるのは不安だった。
エレベーターの到着を告げる音が鳴る。中からカップルや家族連れが降りていき、乗客がいなくなった瞬間、英作は月奈の手を強く引いて中に押し入れた。扉が閉まると、煌びやかなロビーの風景が一瞬で視界から消える。
次の瞬間、英作は月奈の体を壁に押しつけ、顎をつかんでキスをした。
「ん……っ」
月奈はぎゅっと目を閉じ、唇を噛んだ。誰が乗ってくるかわからないエレベーターの中で、これ以上のことはできない。そう悟ったのか、英作は舌打ちをして唇を離し、苛立たしげに月奈の肩を抱き寄せた。
そんな英作の様子に、月奈は言い知れぬ恐怖を感じる。
やがて、エレベーターが部屋のあるフロアに到着した。ふらつく足で歩かされるように、月奈は英作とともにホテルの一室の前に立つ。
カードキーをかざし、扉が開いた。中へ押し込まれるようにして入った瞬間、英作は背後から月奈を壁際に追い詰めた。
パンプスをつま先で脱ごうとしたが、間に合わない。英作は焦るようにワンピースの裾に手をかける。月奈の体がびくりと震えた。
「シャ、シャワー……浴びたいな」
その一言で、英作の手がふと止まる。無言のまま月奈の手をつかみ、バスルームのドアを開けた。中はガラス張りの浴室。シャワーを浴びさせてくれるのか――そう思って、月奈は少しだけ安堵した。
けれど英作は出て行こうとしない。月奈が脱ぐのを、ただじっと見ている。
「……英作さん?」
不安げに声をかけたそのとき、英作は背後から月奈を抱きしめ、腰に手をまわす。そして、背中のファスナーに指をかけた。
「ひ、一人でやる……から……」
ワンピースがパサリと床に落ちる。ハッとして前を向くと、洗面台の大きな鏡に、下着姿の自分が映っていた。思わず顔が熱くなる。
「英作さんっ!」
逃げようとする月奈の腕を、英作は強く押さえつける。浴室に、月奈の震える叫びが響き渡った。
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