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■お手紙■春の終わり
しおりを挟む【春の終わりのお料理お手紙(つづき)】
瓶に入れるだけと書かれていて、らっきょうを漬けることならわたしでもできるかな、と思ったけれど無理でした。
らっきょうを漬けるには、下処理がいるんです。
らっきょうの皮をむく……むずかしそう。
その話を電話でした日、笑って聞いてくれてうれしかった。
『らっきょう漬けは好きだけれど、自宅に様々な味つけのらっきょう瓶が常に並んでいたから。朝食も、昼食も、夕食も、いつもらっきょうビュッフェだった。たまにならいいけれど、新居もその様子じゃ、さすがに飽きるかも』
アキヒトさんがそんな言葉を加えてくれて、もっとうれしかった。
『瓶に入って並んでいるならジャムのほうがいいな。春は、イチゴがおいしい季節だよな。イチゴジャムにチャレンジしてみたらどうかな?』
そうアキヒトさんにいわれて、イチゴジャムのレシピが書かれたページを眺めてみたけれど、なんだかすごくむずかしいと思ってしまった。
それを素直に伝えると、またアキヒトさんは笑ってくれたわね。
『じゃあ、ジュースにしたらどうかな。イチゴジュース。へたを取って、鍋にイチゴと砂糖を入れて煮るだけ。それだけ。イチゴジュースの作りかたは、それだけだと考えて。完成したイチゴジュースに冷たい炭酸水を入れてストローをさすと、屋台で売っていそうな炭酸飲料になる。温かい牛乳を注いでスプーンでまぜたら、カフェで出てきそうなイチゴミルクになる。暑い日は炭酸水、寒い日は牛乳。春は、気温の変化が激しい。だから、来年以降も、サクラがイチゴジュースを作ってくれるとうれしいな。毎日帰宅するのが、それだけで楽しいって考えてしまうよ』
瓶に入れて、一週間くらいは保存できると“四季がうれしくなるちょっとしたレシピ”に書いてあるわね。
季節のフルーツを使ったジュースの瓶を、アキヒトさんと新居で暮らすようになったら並べてみようかな?
ふふ。そういう夢ができました。
季節のものといえば、電話でも伝えた通り、お義母さんが持ってきてくれたキュウリのぬか漬けがとてもおいしかったです。
キュウリなんて、スーパーにいけばいつでも手に入ると思っていた。だから、春キュウリがあんなにおいしいとは考えたことがなかった。
春キュウリは、そのまま食べても、うなって感動するくらいにみずみずしいし、香りもすごくいいの!
そういえば、お義母さんから直接、お料理の得意なお嫁さんを迎えることになったら焦ってしまうわ、といわれた。
アキヒトさんから事前に聞いてはいたけれど、お姑さん(アキヒトさんのおばあさまなのね)が料理のことに細かいかただったから、料理上手のお嫁さんがきたら、なんだか焦ってしまいそう、とお義母さんは思っていたそうね。
でも、アキヒトさんと同じ本を見ながら料理をしているという話は聞いているから、それなら安心、とお義母さんにいわれた。アキヒトさんに料理を教えなかったのも、お義母さんのご自分の体験からみたいね。
アキヒトさんと一緒の目線で料理を作っていきたいという人に、お嫁さんにきてほしいと思っていた、といわれると、どこかうれしい気分になりました。
『料理教室の生徒さんから大量にお魚をいただいて、ご近所に配ってもまだそれでも、たくさんあまっているの。よかったら食べて』
そんなふうにいわれて、お義母さんからアジを干したものと、イワシを塩漬けにしたものをもらいました。
どちらもおいしかった。
大阪にいるアキヒトさんにはおすそ分けできないのが残念。電話とメッセージで食レポートはお伝え済みだけれど、このお手紙で再度お伝えしておきます。
アジを干す方法やイワシを塩漬けにする方法は、“四季がうれしくなるちょっとしたレシピ”にも掲載されていたけれど、流水で洗いながら内臓を取り除くって……わたしじゃとてもできそうもない。
でも、お義母さんにいただいたものなら、そんなわたしでも食卓にのせられました。
アジを干したものは、炙るだけでいいって本に書いてあったし、イワシを塩漬けにしたものは、軽く焼いたバケットのうえや、二つに切った茹でタマゴのうえにのせるだけで、朝食の一品や小腹がすいたときの軽食、晩酌時のおつまみにもなる。
イワシの塩漬けが、特に気に入ってしまいました。
そうお義母さんに伝えたら、また作ったら持っていくわね、といってもらえたのが、なんだかとてもうれしかった。
料理の上手なお嫁さんよりも、料理をおいしく食べてくれるお嫁さんがほしかったと加えてくれたのもうれしかったけれど、アキヒトさんと二人でおいしい料理が作れるお嫁さんを目指したいです。
そうしたら、お義母さん、もっとうれしそうな顔をしてくれそうです。
From サクラ
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