【完結】守り手になるので呪いを解いてください!

あさリ23

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はじまり

守り手に選ばれました②

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 ベッドサイドに腰掛け、私は頭を抱え考えをまとめようと思考を巡らせた。

「ガウガウ、ワオーン(なぁなぁ、なんでなんで?3日後には俺たち結婚だろ?終わったとかなんで!?)」

 状況がいまいちわかっていないケイレブは私の体を包む様に横になって大きな前足で私の体をツンツンと突いてきた。

「私たち、守り手に選ばれたわ」

「ガウ…ガウ!?(守り手ね、ふーん。守り…守り手!?)」

 びっくりした様な声をだしたケイレブを目の端に入れながら私はコクコクと頷いた。そして、声をかけようと口を開いた瞬間に部屋の扉が大きな音を立てて開いた。

「嘘だと言っておくれ、エヴィちゃん!」

 大声で叫びながら入ってきたのは私達の父親だった。早歩きでこちらに向かってくる彼は金色の長い髪を靡かせ、青い瞳を潤ませている。どうやら現時点で泣き虫スイッチが入っているようだ。

 我が国、ピデン公国の頂点に立つ男がこのスティーブ・ピデンなのだが、頭に王冠がのっていなかったらただの泣き虫の美中年にしか見えない。物心ついた時から彼のことを見るたびに、子供扱いするべきか否かを迷うのは私だけだろうか…。

 そんな私の気持ちなぞつゆ知らず、彼は私達の目の前へやってくると、私の肩を両手で掴みグラグラと私の体を揺らし始めた。

「君が去ったら誰が後継者になるの!?」

「お、お父様。落ち着いて…」

「落ち着いていられないよ!ああ、嘘だと言って!」

「陛下。エヴィ様が苦しそうでございます」

「うわーん!」

 お父様は子供の様に大声をあげて泣き始めると、隣でお父様を制していた宰相のグレイソンに抱きついた。

「で、姫様だけですか?」

 グレイソンは冷静な顔をして泣きつくお父様の頭を撫でている。私はハァァァっと深いために息をつきながら首を横に振った。

「双子だからなのかしら…。ケイレブにもあったわ」

「ワフ(見て見て)」

 隣でお行儀よく座ったケイレブは大きな口から舌を出してグレイソンに見せた。ハッハッと息をしながら舌を出している様子は犬にしか見えない。しかも青い瞳はなぜかキラキラと輝いていて、好奇心いっぱいのように感じる。

(この子、喜んでるの?)

 ジトーっとした目でケイレブを見ている私を横目に、グレイソンはジッと舌を見つめていた。そして確認が終わった後に私に目線を向けてきたため、私も口を開けて舌を出す。私の舌も確認したグレイソンは深いため息をついた。

「模様のようですね。まだ薄いのですぐ交代にはなりませんが…ここから神秘の森までは約一年かかります。それを考えると早く出発されたほうがよろしいでしょう」

「グレイソン!ダメだよ!僕の子供で成人まで育ったのはこの子達だけ!行ってしまっては後継者はどうするんだい!」

 グレイソンの冷静な判断に横槍を入れる様にお父様は涙をポロポロ流して彼に反論を始めた。グレイソンは涙を流すお父様の頭を撫でながら宥める様に声をかけた。

「陛下はまだまだお若い。励んでいただくしか…」

「でも、でも…」

「お生まれになったお子様方がスクスク育つように、神秘の森に着いたらお二人に祈ってもらいましょう」

「ハッ!そうだね!守り手は森に愛される。きっとお願いだって聞いてくれるよね!」

「ええ。ついでに今回守り手に選ばれたのは300年前に受けた罰を償えということでしょう。うまくいけば呪いが解けるかもしれませんよ」

「っ!そうだね!そうだよ!うんうん。君が言う事に間違いはない!わかった!じゃ、僕は今からお仕事してくるから、あとは任せたよ!」

「はい、陛下」

 お父様はグレイソンに上手く言い包められ、涙を拭いて急いで部屋から出ていった。

 慌ただしい父親の後ろ姿を見送った私はゆっくりグレイソンに目を向けた。宰相である彼は1番この状況を理解しているようだ。彼は悲しそうな顔をしながら床に跪いた。

「エヴィ様、ケイレブ様。おめでとうございます」

「…ありがとうと言うべきかしら」

「森の意向は無視できません。無視した結果どうなるのか、身をもって理解されていらっしゃるはずです」

「そうね、そう…わかっているわ。でもこの国は大丈夫かしら…」

 心配そうに私が呟けば、ケイレブは片膝をついたまま伏せていた顔を上げて優しく微笑んだ。

「国は滅びるときは滅びるものです。私が生きている限り、最後までこの国をお支えします」

「ふふ。貴方が生きている間は大丈夫そうね。さっきお父様に話した事が叶うかはわからないけど…森が私達を選んだのには理由があるはずよ」

「はい」

「出発は3日後。それまでに支度をお願い。戴冠式並びに結婚式は無期延期。お父様には精がつく食べ物をたくさん食べさせてあげて。私がしていた魔道具開発については考えをまとめたメモ書きがあるから、私がいなくなってからでも何かしら開発できるはず。後で貴方に渡すから受け取ってね」

「かしこまりました」

 ケイレブは優しく微笑んでから頷く。私は若くして宰相をしている彼を見つめてため息をついた。

「はぁ。やっと貴方の仕事量を減らせると思ったのに…」

「私も優秀な姫様に今まで以上にお仕え出来る日を楽しみにしておりました。しかし、残念ですが致し方ありません。幸いなことに我が国は公族の皆様を敬う民が多い。謀反を起こす馬鹿はいないでしょう」

「そうだといいのだけど…。なるべく最短で帰ってこられるように毎日お祈りするしかないわね」

「最短でも50年はかかるのでは?」

「うぐっ…それでも、な、なるべく早く帰るわ」

「はい、人生をかけてお待ちしております」

 私が少し苦笑いをしながら話しかけると、ケイレブは頷いてから頭を下げた。

「じゃ、興奮したお父様が乱行を始める前に早くいってあげて」

「はい。計画を立てて陛下が萎えない様にいたします」

 グレイソンは立ち上がると私に微笑みかけてその場を後にした。

(あーあ。良き戦友ともお別れか…)

 描いていた未来は無くなってしまった。今まで好き勝手に生きてきたツケなのかもしれない。

 私は寂しい様な悲しい様な気持ちを抑え込みながら、隣に座って暇そうにしているケイレブの頭を撫でた。

「さて、お兄様。船酔いは大丈夫かしら?」

「ガウガウ!(大丈夫だ、問題ないさ)」

 ウンウンと頷いて私の体にスリスリと擦り寄ってくる大きな狼は私を安心させるかの様に優しく囁いた。
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