【完結】守り手になるので呪いを解いてください!

あさリ23

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旅に出ます

昔話聞いてます

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『セトレニア国の開祖である我が両親は、500年前に任期を終えた守り手とその伴侶でございます。母の黒い髪と黒い瞳を受け継いだ私の容姿を見ていただければ、ご理解いただけるかと思います』

「そうね」

 ふぁぁっと私があくびをして無礼な態度を取っても怒りもせず、ベルナールは優しく微笑んで話を続けた。

『任期を終えて森を出た彼らは、ひとまず父の故郷を目的に旅をいたしました。そしてたどり着いたのがココ。父の故郷セトレネ王国でございました。しかし、すでに王国は滅んでおりました。父が守り手になった期間は200年。彼が考えるよりも長い月日でした』

 彼の言葉を聞いて私は何故か共感してしまった。何故なら私が守り手になり、100年単位で国に帰れなかったら…。セトレネ王国と同じ末路の可能性が高いからだ。

 私はようやく彼の話を聞く気になり、無愛想な態度を改めてしっかりと彼の声に耳を傾けた。

『父は元々セトレネ王国の王子でした。守り手に選ばれた際に、自分の故郷が無くなってしまう可能性については想定していたようです。しかし、彼とってココが国。故に彼は母と共に荒れた荒野に住む事にしました。父はとても体が大きく、母曰く熊のような男でした。そして、強く、力もあり、気さくで…。母はとても小柄でしたが美しい方でした。よく笑い、優しく、心も美しい方でした。幼い頃は父が母に甘える様子を見て、子供ながらに美女と野獣だなと思っておりました』

 ふふふっと何かを思い出して微笑むベルナールの顔はとても幸せそうだ。

『父は何もない場所にまず家を建てる事にしました。そしてふと〈家を建てるのはいいが、木はないし、石ころだけだ。さてどうするか〉と呟いたそうです。すると、一瞬にして石造りの二階建ての家が父が立っていた後ろに現れたそうです』

「…ええ…ウソダァ」

『ふふ。私も幼い頃に聞かされて嘘だろうと思っておりましたが、あながち嘘ではないのかもと思ったのは死してからでした。森は私達にはない力を持っておりますからね…』

 困ったような顔になりつつも、ベルナールは話を続けた。

『部屋数も十分。設備も十分。父は誰が家を与えたのか理解し、母と共にその家で暮らし始めました。もちろん感謝の祈りは忘れずに。石造りの割に隙間風はいっさい入ってこないとても快適な家が手に入り、彼らは次に田畑を作り作物を育てる事にしたそうです。種を買いに2人で1番近い街へ赴き、必要なものを買って家に帰ると…』

「…まさか」

『あら不思議な事に、耕そうとしていた場所にフカフカの土でできた畑。畑と家の周りに石柵ができており、柵から離れた場所に牛と鶏の雌雄一組がブラブラと歩いていたそうです』

「……いやいやいや、神秘の森さん!?やりすぎてない!?守り手と伴侶のこと好きなのはわかるけども!?」

『ふふ。父も母も開いた口が塞がらなかったとよく話しておりました』

 私の反応を見てクスクスと笑うベルナールは話を続けた。

『そんなこんなで、父と母はその家で暮らし始めました。荒れた土地に突然現れた家に住む夫婦。盗賊に狙われることもあったそうですが、父はとても強く全く相手にならなかったそうです。田畑を増やし、家畜を増やし…。父が住んでいる場所から徐々に開拓を進めていくと、噂を聞いてやってきた元住人たちが1人、また1人と集まってきて徐々に人が増えていきました。そして住み始めて3年後には荒れ果てた土地であったのが嘘のように、緑豊かになったそうです』

「はい、ベルナールさん。急に緑豊かになったのは…」

 ハイ!っと右手を挙げて質問すれば、ベルナールはウンウンと首を縦に振った。

『貴方様が考えている通りです。森のおかげです』

「ダヨネェ」

 神秘の森さん?ちょっとほんとやりすぎでは?そんな気持ちを全面に出しつつ、私はベルナールの声に耳を傾けた。

『徐々に村から町になり、市場も賑わい、どんどん人が増えていきました。そして争いも増えた事で、人々を率いる人物が必要になったのです。父は自分を頼ってくれる人々のために王になることを決め、祖国の名前を取って[セトレニア国]と名づけました。王族以外は平民ばかりでしたが、国を作るにあたって爵位を作り、適任者に任命し、徐々に貴族と平民と立場が変わる者たちが増えていきました』

「ふむふむ」

『建国1年目に私が生まれ、その2年後に妹が生まれました。今までどんなに励んでも子供にめぐまれなかった両親は私達の誕生をとても喜んだそうです。国はどんどん発展し、豊かになっていきました。私が15歳になり成人した頃には、この世界でセトレニア国を知らない者はいない。そんな国になっていました。特産は森が与えてくださった鉱山から採れる魔石、母の知識をもとに作った魔道具、そして食品でした。どんどんどんどん発展し、建国30周年を迎える頃に父が亡くなりました。そして後を追うように3日後には母が…。私はその時29歳でした。幸い妻もおり、子供にも恵まれた私は二代目の王になって欲しいという周りの声を受け入れて、王になることを決意しました。森に愛されたこの国ならば、父達がいなくなってもきっとその子孫も愛されるはずだ。そんな傲慢な考えを持ちながら、戴冠式3日前に眠りに落ちたその日の夜』

 フゥッと息を吐いてから、ベルナールは悲しそうな顔になった。

『夢の中で、私は宙に浮く光り輝く球に出会いました。男性のような女性のような声で〈我が愛するのはお前の両親であり、その子孫ではない。お前の時代以降、我が目をかける事はない〉と告げられました』

「ええええ。何それ。超自分勝手じゃない!?勝手に与えて甘えさせておいて、もうあげませんなんてさ」

 私がむむむっと怒りをあらわにすれば、ベルナールは少し嬉しそうに笑って話を続けた。

『私も当時そのように思いました。なので怒りを玉にぶつけました。なぜなのかと。すると相手からある提案がありました。〈お前の父親は我の加護だけで本当に国を守っていた。そう思っているならば、一つ提案をしてやろう。お前が望む力を与えてやる。しかしその力を使い続けるためにはお前は死なねばならん。それでもその力を求めるなら与えてやろう〉。今でも一言一句覚えております。そして私はこう答えました』

 ベルナールは少し遠くを見つめてキリリっとした顔になると、口を開いた。

『我が身が滅んだとしても、父と母が愛した国を守れるならば本望です』

「やーん。かっこーい」

『えへへ。そうですか?でも今の私は当時の私のことを愚か者だと思っております』

「なんで?」

 力が欲しいかと問われて、力が欲しい理由を述べて欲した事が愚かだとは思えなかった私が首を傾けて質問すれば、ベルナールはクスクスと笑いはじめた。

『貴方様もまだお若いと言う事ですね』

「えええ?!ちょっと、そんな返答は理由になってないわよ!?」

『ふふふ』

 クスクス笑うベルナールに苛立ちを感じながらも、話の続きを聞くために黙って見つめれば彼は笑うのをやめて話を続けた。

『私は両親がとても好きでした。だからこそ、この国を守りたかった。私は父と母の初めての子。母が本来持っていた色合いを引き継いだのは何故か私だけ。私の子も妹の子も母の色合いは一切引継ぎませんでした。異世界からきた母の存在を残せるのはこの国の記録だけ。母がいたことを証明し続けたい。そして父が1から作り上げた国を寿命が尽きたとしても守りたい。国があり続けることが両親が生きた証なのだから…。だから、力が欲しかったのです』

「…そんなに好きなんだ。ご両親のこと」

『ええ!もちろんです!私は2人の子供として生まれた事に誇りを持っております。父のように強くはないですが、母のように素晴らしい知識もないですが…それでも私を自慢の息子だと話してくれる両親を愛しております。その気持ちは今でも変わっておりません。ですが、当時の私に今の私がもし会えるならば…お前がみていた父親の姿は本当にお前がみていたものと同じなのか?と言いたいですけどね』

 何故か何かを殴りつけるように右ストレートパンチを繰り出したベルナールは、少しだけ満足そうに笑ってから話を続けた。

『朝目覚め、私はすべきことを全て理解しました。下準備をし、戴冠式当日。冠を頭をつける前に国民に宣言しました』

【私は冠をいただいた瞬間に死を迎える。だが、次代については安心して欲しい。私が死してすぐに現れるモノを使えば次代を決める事は容易い。これから先、王を決めるのはそのモノとなる。またそれは国を守るために必要なモノだ。選ばれた者は肩身離さず身につけておくべし。さすればどんな脅威からもこの国は守られるだろう】

『そして私は王冠を頭に乗せたのです。愛する妻と子供2人は私をみて涙を流していました。家族、宰相や国を運営する者達。彼らは私がやろうとしていることを知っていたからです。止める者はいませんでした。そして、私は光に包まれました。次に目を開けると体は透けており、生身の体は無くなっていました。私の体があった場所にはコレがプカリプカリと浮いていたのです』

 ベルナールは私が手に持っている魔石を指差した。

「え?コレが国を守るモノ?」

『はい。正式には国を守るモノだったものです。もうそんな力はありません。…当時すぐには理解できませんでしたが、数分後には私がその魔石になったことを理解しました。そしてどのように力を使えばいいのかもすぐにわかりました』

「ああえ?これ、ベルナールなの!?やだぁ」

『ああ、そんな。もっと手に持って私に温もりを感じさせてくださいませぇえ。投げないでぇええ』

 ペッペッと投げ捨てる真似をするとベルナールは地面にひざまづいて私に縋るように手を伸ばしてきた。ヤダヤダっと涙目になりながら首を横に振るイケメン。

 くっ。見た目は正直大変好みなのだ。そんなイケメンが私に縋ってくる。捨てないでぇっとだ。ちょっと、いや、かなり…。

「イイよ」

『よかった。捨てないでくださるのですね』

 嬉しい嬉しいっと笑ってベルナールは嬉し泣きし始めた。なんとも、この男は感情が昂ると泣いてしまうようだ。そんなところも…。

「イイね」

「ガウ…(お前…)」

 私がどんな意味で言っているのか理解したのか、完全に空気だったケイレブは呆れた様子だった。

「だって、ほら。からかいがいがあって可愛がりたくなるじゃない」

「…ワフー(はぁぁ)」

 ケイレブはさらに呆れたような顔になると、鼻から盛大に息を吐き出した。つまりため息だ。

 ベルナールはぐすんぐすんっと鼻を啜りながら、潤んだ瞳でこちらをみている。私達の会話の意味がわからないのか少し首を傾げているため、さらに可愛さが増していた。

 うん、イイネ。
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