【完結】守り手になるので呪いを解いてください!

あさリ23

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まだ旅は途中

コマよ、クルクル回れ

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「もう、いつまでやるのよ。昼ごはんすら食べる暇ないじゃない!!!!」

 ゴブ野郎達は絶え間なくくる。休む暇もなく。どこにそんなにいるの?って思うくらいくる。もうお日様も真ん中でこんにちわしてるというのに、タイチョーズが戻ってくる様子はない。

『ゴミ山がだいぶ増えましたが、魔石はほとんどなさそうですね』

「はっ!この後あの山の仕分けもあるわけ?!やだぁぁあ」

『何かがゴミを吸って自動的に分別してくれれば楽なのですが…』

「ガウガウ(お前なら出来るんじゃないか?)」

『いやですよ。出来たとしても遠慮します。それにアレを私に取り込んだら、私を取り込んでるご主人様も取り込む事になりますよ?』

「いやいやいや!いや!むり!ベルナール、しないでね!!」

『もちろんです』

「ガウガウ…(絶対それ以外の方法がある気がする…)」

 3人でお喋りしていると、ヒューッと音が聞こえきた。音がする方向に目線を向ければ飛び出してくるゴブ野郎達よりも少し背丈があるのか、草むらから頭が少しはみ出ているのが見えた。

 皮膚の色合いはゴブと同じに見えるが、ちょっと大きなゴブ?なんて思っていたそいつが飛び出してきた。

 しかも、ギィィイイ!なんて声を出して口を大きく開けて迫ってくる。涎もすごい。その口元はブォオオオッと音が出そうなほどの威力で空気をどんどん取り込んでいっている。もう周りにあるゴブ死体や生きてるゴブや石や木まで、無差別に吸い込んでいた。

 驚きの吸引力!

「パワフルなヤツきたぁああ!」

『噂をすればなんとやら、ですね』

「ガウガウ(おお、ゴミ掃除係の登場か)」

 吸い込みゴブはおそらく変異種なのだろう。今まで見ていた個体よりも体は大きいが、顔立ちや装備は同じだ。

 かなりの量を吸い込んでいる割にお腹が大きくなっている様子もない。どこかに排出してるのか取り込んでるのか…。

 全くわからないが、奴から中級以上の魔石が出る可能性は高い。私は今日1番ご機嫌な笑みを浮かべた。

「アレを一旦捕縛するわよ。そしてゴミを吸わせてお掃除させつつ、やってくるゴブ野郎も吸わせるように固定してクルクルさせましょ…。私たちはお手隙になるから皆んなでお昼食べて、その間にタイチョーズが来たら…ふふ、ふふふ。ケイレブ、ゴブ野郎をお願い。ベルナールは私と一緒に吸引ゴブを捕縛!」

 掃除もできて、仕返しもできるかも!

 そんな気持ちを全面に出しながらの指示に従ってケイレブとベルナールは動きを変えた。

 まずケイレブがゴブ野郎達の標的になるよう囮になっている間に、吸引ゴブの口を塞ぐためベルナールが吸引ゴブに大接近。同時に私が吸引ゴブに向かって盾ソルくんの電撃ビリビリ!もうありったけのビリビリを与えた。

 吸引ゴブが白目を剥いてピクピクしている隙にベルナールが口を塞いで縄で縛った。気絶した瞬間に吸引が止まったのはよかった。縄はどこから出てきたのか?それはゴブ野郎の武器の一部だ。つまり拾った。

 吸引ゴブが気絶している間に出てきたゴブ野郎達はケイレブが裂き裂き。

 ベルナールと私で吸引ゴブを私達が立っていた地点まで引きずって移動。

 ついでにそこらへんに落ちていた盾、棒、紐を拾う。うつ伏せにさせた吸引ゴブを盾の上に置いて、死なない程度に棒を突き刺し、最後に口を大きくあけさせ紐でその位置を固定。さらに紐を棒に括り付けてゴブコマの完成だ。

 私とケイレブが一旦退避してすぐに、ベルナールが吸引ゴブを起こす。私達がある程度離れたらコマのように吸引ゴブを回転させる。ベルナールはすぐにカラスに変化して飛んできた。ぐるぐると回りながらひたすら吸引する装置になった彼を見届けて私達は吸引が届かない木の上に登った。

 遠くに行くと私の匂いに釣られてよってこなくなるため、あまり離れないようにした。作戦通りだ!

ちなみに、ゴブコマの作り方について詳しくベルナールに指示はしていない。でも不思議なことに彼は私が思い浮かべた通りのもの一緒に完成させた。私の動きに合わせて察したにしては、阿吽の呼吸過ぎて内心かなりビックリした。

 そういえば、ベルナールにケイレブが実は人間ですとか、守り手になるために旅してるとか話をしたっけ??

 したようなしてないような。よく考えればベルナールは不思議な存在だ。なぜか?だって私の事をよく知っているからだ。

 どこか壁があるようで、壁がない。こちらのことを見透かしてるような、ないような。

 そして、話していると時折懐かしくなるのだ。何故かは分からないが。

 でも、やっぱり深く考えるのはやめよう。深入りしすぎも良くない。それに今回は結果オーライなのだからいいじゃないか。私は思考する事を放棄して働くゴブコマを眺めた。

「おー、働いてる働いてる」

 見晴らしのいい場所でよかった。上に登って下を観察するにもってこいである。私とケイレブは木に登ってすぐにフーッと息を吐いた。

 しかしずっとぐるぐる回るゴブコマ。一定の速さで回り続けている。行き当たりばったりでコマを想像して作成したはいいが、コマなら途中で止まるのにファンタジー世界ってすごい。多分なんかうまくいったのだろう。

 ゴブコマは回り続けててどんどん吸引しているため、土地がどんどん開拓されていっている。今いる木も時間が経つにつれ巻き込まれそうだ。しかし棒が刺さって常に出血しているため、放っておけば本体の力が尽きていずれ止まるだろう。

 なんて思いつつ眺めていたら、人型に戻ったベルナールは疲れ知らずなのか収納を漁って食事の準備を始めた。

『ケイレブ様、生肉はありませんが干し肉ならありますよ』

「ガウ…ガーウ?(干し肉飽きたなぁ…なんか料理ない?)」

『そうですねぇ。ああ、ご主人様が一昨日欲張って購入したサンドイッチがありますよ。夜食にする!なんて言って買ったのに食べなかったやつです』

『ガウガウ(それにするわ)』

「待って!楽しみにとっておいたのに!」

『ご主人様は昨日泊まった宿のご飯が美味しいからとおねだりして昼食を作ってもらったじゃないですか。こちらの魚の揚げ物を食べましょうね』

「くっ、おかみさん特製の魚のフライ弁当…確かに美味しいだろうから仕方ない。そのサンドイッチはくれてやる」

 ベルナールに昼食が入った包を手渡されつつ、お茶を出してもらったりと至れり尽くせりな昼食を食べ終わる頃に遠くから「おーい」という声が聞こえてきた。

「ねぇ、なんか聞こえた?」

『そうですね。聞こえた気もします』

「ガウガウ?(気のせいじゃないか?)』

「1番耳がいいケイレブが気のせいっていうなら、気のせいか」

 ははは!っと笑っていると私の肩を誰かがガシっと掴んできた。

「気のせいではありません」

「……ぐっ」

 ギギギッと音が鳴りそうな首を動かして後ろを振り向けば、とても真っ黒な笑みを浮かべたケビンさんがいた。

「皆さんを休憩させるにも、湧いて出るゴブを隊員が討伐するにも人数が必要ですので、先に昼食を済ませ駆けつければ…なんですか?あの置いてある物体は」

「え、えーと。草むらから出てきたので使ってます」

「出てきたからっておかしいでしょう!?」

「だって休憩したかったんですよ!!お腹すいたしー!!!」

「だからってアレはおかしいでしょう!?ちなみに私は吸い込まれそうになりましたよ!?」

「倒してもあの能力がある魔石が出るかわからないじゃないですか!他の機能があるかもでしょ?!例え出てきてその場で魔道具にするよりも、あのまま活用した方が早く休める、そう判断したんです!」

「本当に?!私達をあわよくば吸い込ませようとか思ってませんでした?!」

「そ、そ、そ、そ、そんなこと、あるわけ…」

「本当に?」

 ケビンさんはニコニコニコニコと微笑んでいる。めちゃくちゃ怖い。

 昨日出会ってばかりなのに、タイチョーズは私の事をよく見ている。あと割と可愛がってくれている気もする。だからなのか私が企みそうな事を察知したようだ。

「くっ」

 私が悔しそうに唸ればケビンさんは少し呆れたような顔になった。

「ほらやっぱり。吸い込ませようとしましたね」

「嫌だって言ったのに私たちを置き去りにしたからですよ!」

「でもそのおかげで、異常発生する発信源を特定できました」

『おお、それはこの状況を打破する良い情報ですね』

 ベルナールはのほほんとした様子で返事をした。私はずっと逃げないように掴まれたままだ。ケイレブは眠たそうにしている。

 とりあえず、ゴブコマは他の隊員に見てもらいつつ私達はケビンさんについていくことになった。

 木から降りてケイレブに乗ると道案内するケビンさんを追いかけるようについて行く。ベルナールはちゃっかりカラスになって私の肩にいる。

 移動中もケビンさんの小言は止まらない。

「周りのことをもっと考えなさい」
「本当に吸い込まれたらどうするつもりだったのか」
「イタズラにしてはやりすぎだ」

 などなど、言っている。私達は「はい、すみませーん」なんて軽く流した返事をしながら歩いていた。

 この世界に生まれてから、肉親に諭されるように叱られた記憶はあっただろうか。

 いや、ない。

 だって、彼らは精神年齢がとても低く常に自分の欲望に忠実だからだ。

 誰かを諌めるのも、諭すのも、年長者がすべきことは全て私がやっていた。幼い時からずっと。

 誰かに「手のかかる奴だな」と困ったような笑顔で構われるのはいつぶりだろう。

 この町に来てからの私は少し子供っぽい気がする。まるで幼い頃に出来なかった我が儘や悪戯をしているかのようだ。

 私はケビンさんの大きな背中を眺めてフフッと笑みを漏らした。
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