【完結】守り手になるので呪いを解いてください!

あさリ23

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まだ旅は途中

だ、だれだ!

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「ふふ、ふふ、ふふふ!できたぁぁぁあ!」

 引きこもり生活、5日目に私はやり遂げた。

 何を?それはもちろん、魔道具の作製だ!

「さっそく、ケイレブで試さなきゃ」

 ニヤニヤが止まらない私は青色のチョーカーを手に取ると引きこもり部屋(宿舎の部屋)から出た。まだ朝とお昼の間ぐらいだ。徹夜の徹夜で陽の光が眩しいが、今日ははじまったばかりだ!

 ルンルンッと鼻歌を歌いながら毛玉と毛玉が遊んでいるであろう訓練場へ向かった。

「とりゃあ!」

『隙が多いですよ』

「隙あり!」

「ガウガウ!(尻尾を狙うな!)」

 訓練場につくとケイレブと木刀を持った人型ベルナールが楽しそう(?)に隊員達と戯れていた。

「おーい、ケイレブ。ちょっと来てぇえええ」

「ガウ?(んあ?)」

 私が遠くから声をかければ、ケイレブは近寄ってきた隊員をベシッと肉球パンチで1発殴りつけてから私のところへと駆け寄ってきた。パンチされた隊員は若干嬉しそうな顔で地面で気絶している。

「ねぇ、力は加減あれで大丈夫なの?」

 ニヤけた顔でピクピクッと痙攣している隊員を、周りの隊員達は手慣れた様子で担架に乗せてゆく。それを指さしてケイレブに声をかければ、彼はフンッと鼻を鳴らした。

「ガウガウ。ガウガウ(いいんだよ。弱いともう一回ってしつこいからな)」

「なるほど」

 1発で気絶させているのはある意味匠の技だったようだ。納得していると呼ばれず寂しそうな声のベルナールがやってきた。

『ご主人様、私に御用はないのですか?』

 こちらも周りにいた隊員をボコボコ、いや厳しく訓練して彼らを地面に倒したようだ。気絶まではしてないようで、隊員達はウットリ顔で起き上がるとそれぞれが木刀を持って自主練習を始めた。

「んー、旅で使うものも紹介したいし。ベルナールも一緒にきて」

『はい、もちろんです』

 ベルナールは嬉しそうに微笑むと私の半歩後ろに立った。訓練場にいた隊員達は訓練の終わりを察したのだろう。それぞれが違った動きをしながら、私達を見送ってくれた。

 2人を連れて部屋に戻ると、私は早速手に持っていたチョーカーを2人に見せた。

「ジャジャーン!おそらく世界初、魔石を練り込んで製作されたチョーカーでございます!」

『なんと!』

 私は自慢げに見せたチョーカーをベルナールに手渡すと、彼はふむふむと言いながら観察を始めた。

『青い布に青い糸で模様が描かれてますね。一見ただの布に見えますが、よく見れば刺繍がきめ細やかで…むしろ布自体がこの糸で出来ているかのようです』

「ふふ、正解!なんとこれは、変化の魔石を使って解除の魔石を糸状に変えて作ったものなのだ!」

「ガウ?(石って糸になんの?)」

「うん!なんかできたの。こう、まずは変化の魔石をみつつ〈コレ杖みたいにならないかなー〉って眺めてたらこうなって」

 私は製作中利用していた机から長さ30センチほどの紫色の杖を手に取った。

『魔石自体が形状を変えたのですか?』

「うん。勝手にね!ピカーッと光ってまるでガラスペンみたいな杖になったのよ」

『ガラスペン…ああ、あれですね。なるほど』

 ベルナールは考えるような顔になったかと思えばすぐに何かわかったような顔になった。ケイレブは不思議そうな顔で杖を見ている。

「まるで魔法使いみたぁい!って思って、この杖を振ってみたのよ。何も考えずに振ったら何も起きなかったんだけど…見ててね」

 私は杖を持ちながら白いソファーに移動すると、杖をかざした。

「ソファーの色よ、真っ白から真っ赤にかーわれ!」

 呪文(?)を唱えながら杖を振ると、ソファーが淡い光と共に徐々に赤色に変化してゆく。それをみて2人は「おおお」と声をあげた。

「ふふ、すごくない?これはもう魔法使いよ!」

「ガウガウ?(エヴィ以外でも使えるのか?)」

「うーん、それはわかんない。ベルナールやってみてよ」

『かしこまりました』

 チョーカーと杖を交換するようにしてベルナールに手渡すと、彼は私の動きを真似た。

『ソファーの色よ、赤から白に変わりなさい』

 私とは言い回しは違うが同じ意味の言葉を言って杖を振るが、何も変化がなかった。

「ガウ!ガウガウ(おお!エヴィだけぽいな)」

「ベルナールが人認定されてない可能性もあるけど、私だけの可能性は高いわね。でも人前では使わないようにしなきゃ」

『ええ、これは世界を揺るがす、争いの元になりそうです』

 ベルナールは杖を眺めて小さくため息をつくと、それを私に手渡してきた。

「でね、話を戻すと。他の魔石も変えられないかなーっと思ったのよ。で、試してみた結果がこちらです」

 手に持っていたチョーカーを掲げるように見せれば、ケイレブが少し首を傾げた。

「ガウガウ?(でもなんでそれなんだ?)」

「ふふ、それはねー!とりあえず、ケイレブちょっと来て」

 私がおいでおいでと手招きすれば、お座りしていたケイレブは不思議そうな顔で近寄ってきた。私は近寄ってきた彼の首に首輪のようにチョーカーをつけた。

 その瞬間、強い光にケイレブが包まれる。私は咄嗟に目を両手で覆った。

「ど、どう???」

 光が弱まった頃に声をかけるが、誰からも反応がない。私はそっと両手を下ろしてケイレブがいた場所を見つめた。

「え?誰」

 兄がいた場所には身長180センチはありそうな、筋肉質で顔が整った男性が立っていた。肩まであるフワフワした髪質の金髪はケイレブの毛皮と同じだし、瞳の色も同じ青色だ。ただ、頭に見覚えのある狼の耳がついてる。尻尾はないようだ。

「まじかよ」

「いや、だから誰よ。その前に大事な場所隠して!」

 男は全裸で両手を眺めて呆然としていた。私の言葉も聞こえないようで、ベルナールが何処からか取ってきたバスタオルを腰に巻き付けてあげるまで仁王立ちのままだった。

「おい、エヴィ。これって呪いが解けたのか?」

「んー、いや。多分呪いの緩和的なのだと思う。人型になれるはずなのになれない。そんな部分を解除したって感じかな」

「…そうか…」

 アンタは誰?なんて言いつつも誰かはわかっていた私は普通に返答をする。だって顔立ちが父親にそっくりで、誰がどう見ても双子の兄に間違いなかったからだ。

「二本の足がある」

「そりゃ、人型だしね」

「すげぇぞ、エヴィ!!最高だ!!」

「ぐへっ」

 狼耳人型ケイレブは感動したように声をあげて私に飛びついてきた。自分よりも大きな体かつムキムキな筋肉質の男に抱きしめられ、少しばかりドキッとする。

 が、すぐに血のつながりがある兄であると思い直して彼の背中をベチベチと叩いた。

「ぐるじぃ」

「ああ、すまん」

 喜びのあまり力任せで私を抱きしめていたケイレブはパッと離れると、また自分の体を触って嬉しそうだ。その様子を見て私も嬉しくなる。

 実験が成功したため、必要なものが増えた。私はカバンをガサガサと漁りながらベルナールに声をかけた。

「ベルナール。ケイレブが着れそうな服や靴を一式調達してきて。はい、これお金。下着も合わせて…3日分もあればいいかしら。足りなければまた途中で買いましょ。ああ、動きやすいのにしてね」

『かしこまりました』

 カバンから探り当てたお財布を渡してお使いを頼むと、ベルナールはニコッと微笑んで部屋から出ていった。

「さあ、お兄ちゃん。妹に何か言うことは?」

「ありがとう!お前は最高の妹だ!」

 ケイレブは耳をピクピクと動かしながら、満面の笑みを浮かべた。笑った顔が本当に父にそっくりだ。懐かしい顔を見れて私も心がほっこりする。

「ふふ、そうでしょうそうでしょう!これで街で食べ歩きもできるね!」

「それはそれ、これはこれだな」

「えー…けちんぼ」

 ケイレブは私が食べ歩きをするのをあまりよく思っていない。せっかく人型になっても相変わらずだった。

 
 ケイレブが走ったり、歩いたり、屈伸したりして体の動きを確認している横でヤイヤイと話していると、ベルナールが帰ってきた。出発してから1時間以内に帰ってくるとは…仕事が早い男だ。

 服を着せて、髪の毛を整えて(ベルナールが器用に散髪をして短髪になった)狼耳が無ければどう見てもイケメン男子に生まれ変わったケイレブを見て、私は満足げに頷いた。

「あー、無駄にイケメンが増えたわ」

「無駄ってなんだよ」

「逆ハーレムのお話が始まっちゃうわー、もう学園とか行ってチヤホヤされるヒロインだわー」

「また意味わかんねーこと言ってる」

『逆ハーレムはあまり好きではないですね。私は出来れば一途な。そう、幼い頃から知り合いお互いに初恋であるが、初めは結ばれない状況。そしてすれ違いながらも男の執着が勝つ展開が好みです』

「えー、私はやっぱり偶然であって運命感じる系がいいなー」
 
「なんの話それ…」

 私とベルナールの会話についていけないケイレブはドスンッと音を立ててソファーに座った。

「二本足で歩くの違和感しかねーや」

「あ、そうだ。その体で戦えるようにベルナールに剣でも習ったら?」

「あー、そうするか。ふぁぁぁ。んじゃ、頼むわ」

『はい、もちろんです』

 欠伸をしながら頼み事をするケイレブの様子は大変失礼だが、ベルナールは気にもしていないようだ。ニコニコと微笑んでいる。

「ふふ、ちなみに私は更にすごいのを完成させたの。これをみて!」

 のんびりしようとする2人の前に私は近くに置いておいた一本の箒を手に取る。そしてピンク色の布を箒に巻き付けると、その箒に跨った。

「魔法使い必須アイテム!みよ!!」

 掛け声と共に浮くように念じると、私の足がゆっくり地面から離れる。そして高さ1メートルほど浮上すると2人にドヤ顔でVサインをした。

「まじかよ、浮いてんじゃん!!」

 箒にまたがり浮いている私に興奮した様子でケイレブは近寄ると、浮いている空間に手を差し込んで本当に浮いているかを確認し始めた。それを眺めつつ、私はドヤ顔だ。

「まじですわよ!浮いてるの!これで移動も楽になるよ!!!!まだちゃんと飛ばしたことはないけど、多分思った方向に移動できると思う」

 頭の中で少し前に移動するイメージを作れば、箒が想像通りの動きをした。それをみてベルナールは考えるように顎に手を置いて話しかけてきた。

『箒以外でも可能ですか??」

「浮遊魔石をつけた状態なら、多分重さ関係なく浮くと思う。多分だけどね」

『ほほー。では、馬車の箱に取り付ければ…』

「空飛ぶ馬車になるはず」

「『おおー』」

 両隣から拍手喝采で私の鼻は高々だ。

「でも目立つだろ、これ」

「大丈夫!これがあるから!」

 誰かに指摘されるだろう事を指摘され、私は待ってましたと言わんばかりに机にあった黄色の布を手に取った。そして、それを箒に巻き付けると周りからまた「おおー」という声が聞こえてきた。

「見えない!エヴィが消えた!」

『なるほど。見えるという認識を阻害させたのですね』

「そう!よくあるファンタジーの魔法みたいにね!」

「なんか便利なもんができたなー」

「ちなみに、この布。アンタが人型になってる時に体のどこかにつければ人型で出歩いても認識されない。つまり耳がそれでも堂々と歩けるわよ」

「まじかよ、スゲェ…。え?でも俺のことエヴィも見えなくなるんじゃねーか?」

 不思議そうな顔で首を傾げるイケメンに私はさらにドヤ顔で答えた。

「えっへん。なんかわかんないけど、私は阻害されてるものが見えるのよね。石の持ち主だから?わかんないけど」

「なんか、いつものご都合すぎるアレだな」

「そういう事です!お兄ちゃん、何か言う事は?」

「さすが俺の妹、天才!」

「おーほっほっほっ!」

 高らかに笑う上機嫌な私に目をキラキラさせてケイレブが話しかけてきた。

「俺も乗ってみたい!」

「私以外でも出来るか確認がてら、いいわよ」

 地面に足をつけ、阻害の布を取り外してから快く交代をする。ケイレブがウキウキと箒に跨って「とべ!」なんて掛け声をかけるが、箒はびくともしなかった。

「これも私が動かさないとダメ…なのかも」

「…お前限定ってことは、他人には真似できない魔道具。またご都合なアレか…」

「あははは。そうかも。でもさ、これで大分楽に移動できると思わない?陸よりやっぱり空よ!空!」

『そうですね。あとは天候や風の強さなど考える点はありますが、一度に移動できる距離は飛躍的に伸びるでしょう。素晴らしいです』

「でしょー!」

 ベルナールからも褒められてとても嬉しくなる。ケイレブから箒を取り返し、代わりに黄色い布をバンダナのように頭につけてからベルナールに目線を向けた。

「ベルナールはケイレブのこと、見えてる?」

『はい。ご主人様が認識できるものは私もできます』

 ベルナールの言葉に私はホッと息をついた。ケイレブは嬉しそうに頭の布を触っている。

「おお。なら外出する時はこの布を巻けばいいんだな」

「または狼に戻っていつも通りケージね」

「せっかく人間になれたんだから、しばらくは狼になりたくねーよ!」

「モフモフ信者がなくぞー」

 ケイレブと2人でキャッキャッとはしゃぐ。ベルナールはそんな私達を見つめて小さくため息をつき、小さな小さな声で呟いた。


『本当。森は愛し子への愛が異常ですね…』


 彼の呟きも聞こえないほどはしゃぐ私達を横目にベルナールは再びため息をついた。
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