【完結】守り手になるので呪いを解いてください!

あさリ23

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旅の終わり?

お口悪し3人組

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「もう3日も経つのに、ベルナールが帰らない!!」

「おーおー、元気だな。3日前から熱を出して寝込んでいる設定の人には見えねーな」

 狼耳人型ケイレブはソファーに触って干し肉をガジガジ噛みながらベッドで暴れている私を見ていた。

 ベルナールからは何も連絡がない。

 私はというと〈何かあったのだのでは?〉そう思ってもう一つの通信魔道具で連絡しようかと悩んでみるが、彼が帰ると言ったならば信じなければと葛藤する日々を過ごしていた。

 一方。ケイレブは人型になるようになった。ホープ伯爵に変身できることが知られたことと、狼よりコンパクトな人型になって自由に過ごすことを許可されたからだ。

 部屋の外に出るときは阻害の布をつけて、食事はクリスさん(彼だけ事情を把握)以外の使用人は退席させて食堂でするようになった。

 そんなケイレブはピクピクッと耳を動かしながら話を続けた。

「そろそろ。皇帝のおっさんが屋敷に押しかけてきそうだな」

「くんなくんな!エロ親父は待ってない」

「そうは言ってもなー。多分無理だと思うぞー」

「なんで!?」

「だって」
「エヴィくん、もう無理だ!!!!」

 ケイレブの声を遮るようにバーンッと大きな音とを立てて扉を開けたホープ伯爵が部屋に飛び込んできた。

「アレが君に会わせろ会わせろとうるさくなって、騎士を10数人引き連れて屋敷にやってくる。数時間以内にくる!」

「はぁああ?」

「あの日に誘惑したことでアレの頭の中では君を抱くことしか考えていないようだ」

「うっわ、最悪」

 ホープ伯爵は私の言葉遣いが悪くても何も気にしていない。彼は薄い頭をカキカキと掻きながら、部屋の中をぐるぐると回っていた。むしろつられて彼の言葉遣いも悪くなっており、不敬罪待ったなしの言葉のオンパレードだ。

 ホープ伯爵が私のことを咎めないことには理由がある。

 それはベルナールが去る前に私の身分を告げていったからだ。

 ホープ伯爵曰く。

〈ベルナールさんは、頭の回転が早い。私に君の身分を教えることで、身元を保証させたんだ。君が最果てにある公国の公女かつ守り手であると私に教える事で、君を保護せざるおえない状況にした。全く、君はとんでもない隠し球をまだ持っているとは…〉

 と、話して彼は薄頭をさらに薄くなるまで掻きむしっていた。

 なので私が気安く話しても不敬にはならない、むしろ楽に過ごして欲しいと言われ取り繕う必要がなくなったのだ。

「あの親父の3本目の足を切ったらどう?」

 私は体を起こしてベッドサイドに座ると、ニヤッと笑った。

「多分、この国の娘を持つ親は皆そう思ってんじゃないか?」

 ケイレブもニヤニヤ笑っている。

「そうよね?そうなれば皆様の願いを叶えたということで、妃様方から感謝されないかしら」

「君達は…なんて不穏なことを楽しそうに笑って話すんだい!?」

 私とケイレブが冗談混じりで笑いながら話すのを見て、ホープ伯爵はまた頭を掻きむしり始めた。

「そもそもだ。アレが色にこだわりを見せねば良いのだ。なにが自分と同じ煌めく金髪が良いだ。髪があるならなんでもいいだろう!?私なんて若い頃からアイツに振り回される度にどんどん抜けて、今ではみる影もないんだぞ!!宰相なんていいから、私の赤毛を返してくれ!!」

「うわー、本音出てる」

 いや、それよりも彼の髪は赤毛だったのか。ハゲ散らかしている頭に残っている髪の毛は両サイドだけ。それも白髪混じりで色素も抜けているため赤毛には見えない。あえて言うなら茶髪が傷んだような感じだ。

「金髪なんてどれも同じだろ…」

 ケイレブの呟きにホープ伯爵は大きく頷いて同意している。

「全くもってその通り!を持つ皇子殿下や皇女殿下は両手で数えられないほどいる。結局は自分の皇位を譲りたくないだけなのだ。キャスリーン皇女殿下がもし男性であれば。そう思う事は多々あったが、私は今では彼女は女性で良かったと思っているよ」

「え?なんで急に」

「何故かって?今までは最低限は考えてものを言っているだろうと思っていたからね。だが、アレは頭の中まで筋肉と聞いてからは単純に考える事にしたのだよ」

「つまり?」

「アレは自分のことしか考えていない。周りがどうなろうと関係ない。その考えでいるならば、もし皇女殿下が男児として生まれていたら今まで〈同じ色の子供がよい〉と逃げ回って決めなかった皇太子を決めたも当然になってしまう。さすれば、どうなるか。下手すれば幼い子供を亡き者にした可能性もある。そうだ。だから皇女でよかったのだ。皇太子同然の扱いをしながらも、女帝にする気がない理由にもつながる。自分の在位を長くし、好き勝手やりたいのだ。なんて奴だ。皇女殿下を他の子よりも構い、教育をさせて皇子殿下達と競わせたのも単純に奴が自分自身の欲求を満たすためにしたのだ。きっとそうだ!頭の中が筋肉?いやいや、アレの頭の中は何も入っておらん。何も詰まっておらん!ただ、あるのは動物のような欲望だけ。うむ、そうだそうだ。非道徳的な行動しかできず、周りのものを傷つけるような奴の頭に筋肉が詰まっているだなんて筋肉に失礼だ!」

 ホープ伯爵は次から次へと飛び出してくる言葉の槍を投げ、話しながら自分の考えを整理しているようだ。

 ホープ伯爵のなかでは【皇帝→脳筋✖︎、皇帝→モラハラクソエロ親父◎】と認識が変わったようだ。確かにホープ伯爵の言う通り、皇帝陛下=モラハラ気質説は同意しかない。

 そう、あの時思い出せなかった言葉はモラハラだったようだ。

 奴の本性を聞いてからどこかあった違和感はこれだったようだ。モラハラ野郎の方が脳筋より正しい解釈だ。

 私が“モラハラ”と言う言葉を教えてあげたいなぁ、なんて言い換えればいいんだろうとな考えている間に、ホープ伯爵も不機嫌な顔で何かを考え始めた。

「しかし、どうするべきか。エヴィくんを会わせるにもベルナールさんが戻り次第動いた方が良さそうなのだが…」

「それはそうだけど、熱が出たから会えないと話を先延ばしにするのもそろそろ限界だとは思うのよね。そーねー。この国は皇帝が死してから争いがないように後継者を決めて欲しいのよね?」

「そうだ」

「うーん、じゃあ…皇太子が婚姻した相手の子供は必ず金髪金眼になる。そんな縛りをどうにかつければいいんじゃない?」

「そんなことできるわけないだろう!?」

「確かに無理なんだけどね?でも、儀式とかして何かに誓い誓い合った同士でないと子供が生まれない。生まれた場合は金髪金眼。そんな感じの呪いをかけられたらいいのなーって思って」

「うんうん。できたらいいな、できたらな。できるわけがないから困っておるのだよ!」

「デスヨネー」

 私の思いつきに対してホープ伯爵はツッコミを入れつつ、最後はうわああっと倒れ込むようにソファーに座った。

「こういう時にベルナールがいたらなー。なんかしてくれそうだったよな」

「ほんとにね」

「君達はベルナールさんの力に頼りすぎなのではないか?」

「だって、言ったらなんでも叶えてくれるんだもん」

「「ねー(なー)」」

 双子が声を揃えて頭を横に傾ければ、ホープ伯爵は頭が痛いと眉間を指先でグニグニと揉み始めた。

「とりあえず、今から来るおっさんをどう退けるか。それが問題だな」

「そうね。どうにかすぐに帰りたくなる方法って何かしら」

「そーだなー。なんとなくだけど。自分のものだと思っている時に他のやつの手垢がつくと嫌がるんじゃねーか?いくら女を取っ替え引っ替えしてたとしても、自分が興味を持ってる時は執着心くらいはあるだろ。だから、エヴィが誰かと寝れば?」

「は?」

「まあ。無理だから俺とかさ。相手役にしたらいいじゃん」

「はー?」

「どうせ守り手にならなければ、そうなってたんだし」

「…」

「お互いの裸なんで見慣れてるし」

「…」

「いい案だと思うけど????」

 私は自分の体がプルプルと震えるのを感じながら、今にも飛び出しそうな右手拳を抑えた。

「うむ。いい案かもしれん」

「はぁ???」

 怒りを鎮めようとしているのに、更に燃料を投下される。流石にこっちも限界なんですけど!っとバーンッと両足で地面を鳴らして立ち上がれば、男2人はビクッと体を震わせた。

「なーにが見慣れてるだよ。うちの国の常識は他国の非常識だって教えただろ??あ”?」

 ギロッと鋭い目でケイレブを睨みつければ、彼は怯えたような顔になった。

「…そ、そんなに怒るなよ…」

「そ、そうだ。実際に閨事をするわけではないなら良いではないか」

「それはそれ、これはこれ。あのおっさんに私の体を見せるようなことをすること自体が嫌なの。なに?私の体はホイホイと気安く見せてもいいってこと?ねぇ!」

 ボキボキッと指の関節を鳴らしながらソファーにいる2人に近づけば、ケイレブは耳を伏せてプルプルと震えホープ伯爵はハンカチで汗を拭いて震えている。

 ニッコニコの黒い笑みで微笑み、まずは兄を殴りつけようと右手を振りかぶった瞬間。


『おやまあ。ここは本当に賑やかですね』
「ふむ。この方々が私と共に森を守るお方なのか?」

 と、言う声が部屋の中から聞こえてきた。

 元々部屋にいた3人は一斉に声がする方向に目線を向けた。

『ただいま帰りました』

 すると、そこには人型のベルナールが胸に手を当てて軽く頭を下げてから私達に微笑んだ。

「やあ。伯爵。久しぶりだな。息災であったか?」

 その横には肩まで切られたキラキラと煌めく金髪、紫の瞳、陽に焼けてこんがり小麦肌、形の良い口から覗く白い歯、ズボンにラフなシャツを着たスタイル良しな美人さんが微笑んで立っていた。

「「ベルナール!!!」」
「姫様!!!!!」

 私達はそれぞれの待ち人の前まで走る。私はすかさずベルナールに抱きつき泣きながら彼の逞しい胸板を頬擦り、ケイレブはベルナールの肩に腕を回して肩を組むとゆさゆさと横に揺らした。

 ホープ伯爵は美人さんの前に両膝に座をついて跪くと相手の手を取って涙を流して喜んでいた。

「「「おかえり!(なさいませ!)」」」

「ふふ。ああ、今戻った」

『ただいま戻りました。もう、ケイレブ様そんなに体を揺らさないでください。ああ、ご主人!鼻水が出てますよ」

 泣いて喜ぶ私の鼻をハンカチでチーンッとかませてくれるベルナールは楽しそうに笑った。
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