【完結】守り手になるので呪いを解いてください!

あさリ23

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これにてごめん

ピンクな日々の裏側

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「今日も出てこなさそうね」

「そうだな。届けた飯は食ってるみたいだけど、キャスリーンがしっかり食べれてるかは怪しいな」

「まあ。唯一のつがいを蔑ろにはしないとは思うから、大丈夫でしょう。キャスリーンが飲み込みやすいように引き続き野菜とお肉は小さめにしましょう」

『かしこまりました』

 空になったお皿やお椀が乗ったオボンを手に持ってやってきたディーはそれを流し台に持っていくと慣れた手つきで洗い物を始めた。

 私はフゥッと一息ついてから、リビングから2階に繋がる階段を眺めた。

「今日で何日目だっけ?4日目?」

『はい』

「あの体力お化け達が飽きるまでどれくらいかかると思う?」

『そうですね…。ほっておけば2週間は蜜月を過ごしそうですね』

「流石にそれはちょっとダメでしょ!決めた。あの子達は1週間経ったら一旦引き離す」

 フンッと鼻を鳴らすと隣にいるベルナールは優しく微笑むと私の頭を撫で始めた。

『ご主人様。本日は本当にエイデン様と見回りに向かわれるのですか?』

「え?うん。ベルナールも一緒に来てくれるでしょ?」

『はい、もちろんでございます』

 ダヨネーって顔で撫でられ続けていると、洗い物を終えて外出の用意を終えたディーが声をかけてきた。

「よし。ヴィー、用意できたか?」

「あ、うん」

 撫で撫でされつつ、ベルナールから私の体に膜のようなモノを施された。厚着をしなくても暖かい膜のようだ。ベルナールが同じモノをディーにかけてあげれば、ディーは〈便利なもんだ〉と感心した様子になった。

 そして、私達三人は晴れ空で少し雪が降る外へと出た。

 冬は天気のいい日に見回りをするのが守り手の日課業務らしい。春夏秋でそれぞれ日課が変わるらしい。

「ねぇ。守り手の仕事って魔獣を倒すだけ?」

 隣で周りを注意深く観察しながら歩くディーに声をかければ、彼はすこし困った顔になった。

「んー、引き継ぎは終わってるし…守り手の仕事をする必要がないヴィーにどこまで話していいものか…」

 その言葉を聞いて私はプゥッと頬を膨らませた。

「なによ。ちょっとぐらいいいじゃない」

「ん、んー…そ、そうだな。関係者だしな」

 拗ねる私を見て仕方ないなぁという顔でディーが守り手の仕事について説明を始めた。

「守り手の仕事は、この世界の浄化なんだ」

「え?」

 どういう事?っと首を傾げれば、ディーはさらに説明を始めた。

「守り手は、名前の通り守る者だ。それはこの森を守るのではなく、この世界を守る守護者なんだ」

「う、うん?なるほど?」

 ディーは一度立ち止まってジーッと右奥の森に目線を向けしばらく眺めたが、また私に目線を向けて微笑んだ。

「ヴィー。あっちにある風が見えるか?」

「風?」

 ディーが指を刺す場所はさっきまで彼が見ていた場所だ。私はそちらに目線を向けるが、そこには雪が積もった木々しか見えない。一部の木が揺れている様子もない。

 風がなにかわからず首を傾げれば、ディーは納得したような顔で笑った。

「本当にヴィーもう守り手ではないんだな。まだ証は消えてないのに…。風っていうのは、なんというか。渦のようなものだ」

「渦?それってクルクルしてる竜巻みたいなやつ?」

「ああ、そうそう。そんなやつ」

「え?それってこの世界の外でも出るものなの?」

「いや。あれはこの場所でしか出ないはずだ」

「……私、ここに来るまでにゴブがたくさん出てくる竜巻に出会ってるんだけど…」

 私の言葉にディーは驚いたような顔になったが、しばらく考えた後に何かに気がついたような様子になった。

「もしかすると、俺が寝てる間に発生したものかもしれない。その時は守り手候補だった双子達に仕事を一時的に任せたのかもな」

「あー。他の人にも見えるようにしたのは私だけじゃ手が足りないからとか?」

「かもな。でもどこまでの考えで外に出したのかは俺にはわからん」

 なるほど。ベルナールがあの時言っていた言葉を思い出す。彼はどこまでこの世界について知っているのだろうか。ベルナールを問いかけるような目で見つめるが、彼はカラスの姿で私の肩に乗って語ろうとしなかった。

「じゃあ、守り手はあの竜巻から出てくる魔獣をたおして、その竜巻を壊す?消滅させる?のが仕事って事?」

「ああ。簡単に言えばそうだな。この世界のヨドミついて守り手によって考え方は変わるが…俺はあの風がこの世界の病で、そこから出てくる魔獣は病の原因たる存在なんじゃないかと思ってる。守り手は医者みたいなもので、この世界がより元気になるように定期的に検診し時折治療する。ベルナールの父親は〈便利屋〉って解釈だったけどな。出てくる魔獣の数や種類はモノによって様々だ。魔獣が出てくるまで時間がかかるものもあれば、発生してすぐに魔獣が出てくるものもある。冬は風が出ていても小さいものが多いんだ。だから、魔獣が出て来ず静けさがある。守り手にとっては休息期間のようなものだな」

「ふーん」

 私は歩き始めた真剣に見回りするディーについていく。彼は時折立ち止まって森の奥を見つめる。おそらく私には見えていない竜巻を見ているのだろう。

「あの大きさならいつぐらいに魔獣が出るとかわかるの?」

「ああ、だいたいわかる。キャスリーンはまだわからないようだが、数十年働いている間に傾向が分かり始めるからいずれわかるようになる」

「…500年もこの仕事してたんだよね」

「ああ」

「大変だったよね」

「まあ、大変で何度も死にたいと思ったけどずっとずっと今を頑張ればご褒美があるから。そう思って踏ん張ってた」

「なんだか、いいように使われてるような気もする」

 私の言葉にディーはなんとも言えない顔になった。

「だけど守り手に選ばれたのにも理由があるはず。選ばれた俺にしかできない…。例え強制的に選ばれたとしても、この世界に住む者ならば誰でも選ばれる可能性があり選ばれたらやり遂げる義務がある。拒否をするならば、わかるだろ?この世界から拒否をされる。こちらに拒否をする権利はある。でも、否定をする姿を見せたとしても許してもらえるわけではない。義務と権利は難しいものだし、俺は深く考えるのやめたんだ。だって、小難しく考えてたって選ばれてしまったし…諦めるのも大事だろ?」

「…でも、なんか…。やっぱり私は森のやり方が好きじゃないかな。人を駒のように扱ってる気がするし、駒の気持ちを見てるようで何も見てないようにも感じる。心がある存在のようで心がない。物のように扱われる。それが嫌でたまんない」

 またふつふつとした怒りが込み上げてくると、肩にいたベルナールが頬擦りをしてきた。

『ご主人様はお優しい』

「これは優しいとかじゃないの」

 フンッと鼻を鳴らせば、ベルナールは片羽を広げて手を上げるような様子になった。

『では、こう考えてはどうでしょうか。守り手は掃除屋。そしてこの世界に住む人々が知らず知らずのうちに排出しているゴミや汚れを綺麗にしている。森のためではなく、この世界に住む人々のために。誰にも見えない汚れまで綺麗にする事で、ここに住む人々が毎日気持ちよく過ごせるように勤める。誰かに見られる事はないが、いなければ困ってしまう存在。掃除はいつかはやらねばならない事。どんどん汚れていけば、最悪汚れが溜まって住めなくなる。最後は人間が、そして自身が困る。誰かのためにする事であり、自分のためにしている事。汚れを出しているのは、人間達。ならば同じ人間の守り手も選ばれるまでは同じように出してきたはず。つまり、守り手は今までの責任をとっているのです』

「責任…」

『そうです。義務や権利があって自由があれど、責任を果たすことができるのは人間だけなのです。なぜなら、人間がこの世界に住まわなければ汚れは出ないのですから。世界からしたら人間達を受け入れる条件として出てくる汚れは自分達で処理をするようにと思っている』

「…考えるだけで頭痛くなるわね」

「そうだろ?だから自分なりに納得できる解釈を得られた時点で考えるのをやめた方が自分のためだ。だって子難しい事を考えてたって目の前の仕事が減るわけじゃないからな」

 長年働いた彼だからこそ出てくる言葉を聞きながら私は小さく頷いた。


 それからピンクな奴らを引き剥がす日まで、私は私の中で納得できる理由を求めた。

 そして、感じた気持ちを飲み込むために選んだ理由はベルナールが話していた《責任》だった。

 義務や権利があって自由があれど、責任を取れるのは当事者だけ。

 それがこの世界に住む条件なのだとすれば、いつかは誰かがとらなければならない。


 その誰かが【守り手】であり、代表者。


 守り手の素質とは?


 国を守り、国民を守り、場合によっては命をかけて護る。

 
 理想的な為政者に相応しい人物なのかもしれない。
 
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