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hoshizora

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★心境

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綾乃は突然の緊迫に満ちた中、スマホの振動に目を向けることが出来ずにいた。

そのような綾乃を見て竜馬がポツリと口を開いた。

「ごめん 悪かった・・・」

龍馬は今の綾乃の心境をよく理解したいと思った。

綾乃も穂の花が逝ってからというもの、龍馬と二人三脚で乗り越えてきた部分があるのでこれから先も龍馬と仲良くしていきたい気持ちが強かった。

「上手く言葉には出来ないけど今はあまり平常心でいられないの・・・ごめんなさい・・・」

この出来事から帰宅途中に綾乃は龍馬の真剣な眼差しを思い浮かべて混交した感情が揺れていた。

携帯には隼人からの留守番電話が残されていて愛してはいるのだが自分から離れるべきなのだと思い、留守番電話を聞こうとはしなかった。

綾乃がマンションに帰宅して時計を確認するとAM5時過ぎ・・・

綾乃は穂の花の部屋に向かっていた。
穂の花の部屋はいつ来てもまるで時間が止まっているように感じてならなかった。

穂の花、龍馬、そして綾乃、3人揃って遊園地に行った時の写真を見つめたりもしていた。

自然と涙が溢れだす。

この心の傷は一生 消えることはない。

そして綾乃は写真の中の穂の花に問い掛ける。

「穂の花はもし愛した人が警察官なら どうしてた?」

けして返事が返ってくることのない問い掛け・・・

綾乃は穂の花の部屋から中々、退室しようとはしなかったが退室すると浴室に向かいシャワーを浴びることにした。

溢れだす涙がシャワーで消されていった。

綾乃は自分の部屋に戻ると少しの時間、眠ることにした。
たとえいくら寝付きが悪くても少しでも睡眠を取ることにした。

2~3時間ほど就寝したあと綾乃は気を紛らわすかのように買い物に出掛けることにした。

すると交差点で一瞬、ワゴンRの運転席にいる綾乃を隼人が見掛けた。

隼人は綾乃を追い掛けた。

これは電話を掛けてもメールをいくら送っても何も反応がないため、やむを得ずの行動だった。

ワゴンRはショッピングモールの駐車場に入っていったが隼人も追い掛けて駐車場に向かっていった。

隼人はどうしても直接、綾乃に気持ちを確かめたいと思っていた。

隼人は綾乃が駐車して運転席から降りてくると背後から声を掛けた。

「綾乃さん!」

綾乃は声で隼人だと認識して 動揺しながらもゆっくりと振り向いた。

「綾乃さん ごめん・・・綾乃さんを見掛けて・・・つい・・・」

綾乃は心に嘘を付いて真顔で淡々と会話を返した。

「もう隼人のこと 嫌になったの」

すると隼人も必死に問い掛けた。

「身に覚えがないんだよ  別れを告げられたのもいきなりだったし何が嫌になったのか教えてくれ!」

綾乃は直ぐには言葉が返せずにいた。

「だから そうやってしつこいところよ」

本心ではなかったがこうするしかないのだと割り切って言っていたが、鼓動がずっと高鳴っていた。

実はこの2人の様子を俊樹が偶然、見掛けていた。

俊樹は隼人と面識がある。

俊樹は運転席から2人を見ていた。

「あれ あの時の警官・・・彼女と喧嘩でもしたのか・・・?」

しかし俊樹はふと気が付いた。

「あの人・・・穂の花のお姉さんだ」
お通夜の時に一度だけ面識がある。

「相変わらずおしとやかで綺麗な人だよな、穂の花とは性格が真逆だからな」
俊樹はそのように思いながら店内に入っていった。

隼人はいくら綾乃に問い掛けても嫌っているような言い草だったので納得はしなかったが、この場は一旦 戻ることにした。

「綾乃さん!今の任務が真っ当できたら、その時は・・・その時はプロポーズするから!」

隼人のその声は力強い声だった。

綾乃はただただ辛く感じて心の中では泣いていた。

それから数日後、俊樹は雅也といつものように一緒にファミレスにいた。

「そういえばこの間、モールで偶然、穂の花のお姉さんを見掛けたよ」

雅也も俊樹と同様、お通夜の時に1回だけ面識がある。

雅也はその当時の綾乃を一瞬、思い浮かべていた。

「実はその時に話をしていた相手があの時の警官だった」
まるで恋人同士が喧嘩でもしているような雰囲気だったよ」

「RはRでもお姉さんはワゴンR、穂の花はGT-Rだもんな。あんなに上品な人には32は到底 運転出来っこないよな」

雅也は何も喋らなかったが俊樹と同じように思っていた。

雅也と俊樹はファミレスを後にするとタイヤ屋さんに向かうことにしたのだが走行車線の反対側でいかにもチューンしていそうなサバンナRXー7(FC3S型)(FC)とすれ違ったのだが、のちのちドルフィンと対決する事となる。


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