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《65》デート
しおりを挟むロイドは軽く片手を振った。
では、ユージーンとのアレはなんだったのか?
キースとの関係は?
聞きたいことは山ほどあったが、口には出さなかった。
何かを隠していることも薄々勘づいている。
そして、きっと自分ではそれを助けることが出来ないのも理解している。
周りがなんと言おうと、ノワは違うと言っている。
これだけが真実だ。
廊下を進みながら、ロイドはやはり呆れ返っていた。
ノワと、自分自身に対してだ。
気がある男へ思わせぶりな態度をとっていることを、ノワは無自覚なようだ。
それに喜んでしまう自分だって大概だろう。
「ウォルター先輩!」
軽い足音が後ろから追いかけてきた。
「まだ何かあるのか?」
これ以上振り回されるのは御免だ。
渋々振り返る。
ノワは意を決したように告げた。
「ペナルティーを与えてください!」
勘弁してくれ。
ロイドは脳内でつぶやいた。
「指導時間外だ」
「でも·····!」
ノワの手は、腕をひと振りするとあっけなく振り払われた。
「お願いします!」
「いや·····」
真剣な眼差しが痛い。
ロイドは潤った黒目から視線を外した。
なぜ罰を与える側の人間がたじろがなければいけないのだろうか。
とても不本意だ。
ノワの肩口は微かに震えていた。
「·····ったく·····」
怖がっているくせに、自ら罰を申し出るなんて、呆れを通り越して関心こそしてしまう。
「?」
ロイドがノワの片手を掴み、口元へ近づける。
「いっ·····?」
次の瞬間、指先に、微かな痛みを感じた。
噛み付かれたのだ。
口元から、犬歯が覗き見える。ノワはおもわずドキリとした。
さっさと手を離される。
訳が分からないノワは、頭上にはてなマークを浮かべていた。
「罰だ」
「えっ?」
(これが、罰·····?)
「ご褒美の間違いじゃ·····」
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ロイドはギョッとしたようにノワを見下ろしていた。
「じょ、冗談です」
声に出てしまっていた。
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薬指に残った歯型。まるではめかけのリングのようだ。
「こんなに手のかかる後輩は、お前が初めてだぞ」
ロイドが仕方なさそうに笑う。
ノワはふと立ち止まった。
ロイドとヒロインの親密度が80パーセント以上で告げられる台詞と、まるきり同じだったからだ。
(偶然?)
「何してる」
前を歩いていたロイドが、早く来いとノワを振り返る。
「あ·····はい!」
ノワは駆け足で彼の後に続いた。
門の前で待機していた馬車は、朝日を浴びて輝くようだった。
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「コレ、本当に僕が乗っても大丈夫なんでしょうか·····」
ノワは不安になって問いかける。
向かいに座ったユージーンは軽く眉を持ち上げた。
「当たり前だろう。この俺が許可したんだから·····"例え"君が罪人でも、誰一人として咎めることは出来ない」
「う"」
ノワは返す言葉が見つからない。
柔らかな白髪が、朝日を吸い込むようだ。
光の中で微笑む男は息を飲むほど美しかった。
本性を知らぬ者が見たら、彼を神だとでも思いそうだ。
視覚的な攻撃と精神的負担のダブルパンチで、胃もたれを起こしそうだ。
「ノワ」
ユージーンが名前を呼ぶ。
「ひゃい」
舌を思い切り噛む。
こちらを眺めるユージーンは、いつにも増して楽しげだった。
「そろそろ、今日の目的を教えてくれるかな」
低い声は落ち着いていて、とても和やかだ。
しかし、細められた碧眼には一切の隙もなかった。
「ユ、ユージーン様と一緒にお出かけがしたくて····」
死を逃れるためについた嘘は、今更取り消すことなどできない。
ならばいっそ上手く利用しよう。
ノワはひきつる口角を無理やり持ち上げた。
「ああ、そういえば君は俺が好きなんだっけ」
美しい顔がわざとらしくとぼける。
ふ、と、吐息のような笑い声が聞こえた。
「てっきり、君は俺の事が苦手なのかと」
「·····好きな人の前だと、緊張してしまって·····!」
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