【完結】悪役令息に転生した社畜は物語を変えたい。

亜依流.@.@

文字の大きさ
68 / 342

《66》公爵家

しおりを挟む







「成程、全く好意が感じられないから不思議に思っていたところだ。恥ずかしがり屋な所も好印象だね」


果たして自分は、この男を騙せているのだろうか。
はたまた全てお見通しで、遊ばれているのだろうか。


屋敷へ侵入し、更には知る者のみが知る愛称で呼んだ不審者。そんな自分をそばに置くのだから、彼は相当変わり者だ。

もしも自分が他のモブキャラに転生していたのなら、ヒロインにぜひ警告したい。

ユージーンは超ド級の腹黒サディストなのでやめておけと。


(·····それとも、愛する人には原作通りスパダリ紳士になるのかな)


「今度、ゆっくり話が出来る時間を儲けよう。共にする時間が増えればいずれ緊張も解けるだろう?」


ノワは頷く他なかった。


(怖い。怖すぎる·····)


馬車に乗っていたのは、時間にすれば30分。
その間は、永遠のように長く感じられた。


「挨拶を済ませてくるから、少し待っていてくれ」


目的地に着くと、ユージーンは一人馬車をおりた。

1人になったノワは、深く息を吐く。

息が詰まるかと思った。

大会のトーナメント表を眺める。一日目にリダルの名前は無かった。

体力上のハンデで、最年少の17歳がトーナメントに組み込まれるのは2日目かららしい。

それでも、勝ち残った相手と戦うんだから、結局1回戦で敗退する確率が高くなる。

ノワは背もたれに体を預けた。


(今日は来なくても良かったんだ)


勝ち残り戦と決勝戦は明日だ。

一日損した気分だ。しかし、どこか安堵している自分がいた。

リダルに会ったら、取り敢えずは心から謝罪しようと思う。
思えばそれなりに酷い言い草だった。

あの死神のことだ。
ノワが下手に出れば、きっとまた貸し1つだなんて意地の悪いことを言うに違いない。

けれどそれも、今となっては特に嫌だとは思わなくなっていた。

いつかの夜、血のように赤い瞳に、冷たい月の光が沈んでいた。
胸が苦しくなるような気分は、彼の顔立ちがあまりにも綺麗だったからだ。ただそれだけだ。

未来を覆そうと必死な自分と、自由奔放で傲慢なリダル。まるきり違う立場だと言うのに、今だってなぜか秘密を共有している。

彼は謎だらけだ。
王宮へ忍び込んでいた理由も、フィアンを忌み嫌うわけも、なぜ変装をしているのかも、彼については何一つ知らない。


(思い返せば、本当に危険人物だ)


彼は一体、何者なんだろう。

不意に、扉が二度ノックされた。
彼が用事を終えて戻ってきたのだ。扉へ手をかけながら、しかしノワは疑問を抱く。

普通、馬車の扉を開けるのは従者の仕事だ。
そしてユージーンがノックをする必要はない。
疑問が不信感に変わった頃、扉は既に開かれていた。

大柄な黒服の男が目の前に現れる。
叫ぶより先に、口元を厚手の布で覆われた。




















ガタガタと荒い振動が続いている。
荷台の中だ。
ノワは手足の自由を奪われ、床に転がされていた。


「いや~、こんなに上手くいくとはな」


「もっとスピード出ないのか、このオンボロはよ」


前方、荷台の運転席から、機嫌の良い男二人の声が聞こえる。
目元を布で覆われ、視界は確認することが出来ない。


(まじか·····)


目を覚ましたのは、つい先程。
体が酷く痛む。既に長い間床に身体を叩きつけられていたようだ。


(とすると、ここは都心からだいぶ離れた場所·····)


混乱の中、ノワは必死に記憶を呼び覚ます。

突如、黒服に身を包んだ男が自分を襲った。
布で口元を塞がれ、睡眠薬を吸わされたのだ。


(どうして僕が····)


パニックに陥りそうになるが、ここで頼れるのは自分だけだ。
痛みに耐えながら、思考を集中させる。

彼らが襲ったのは公爵家の馬車。
とすると、狙いは自分ではなく、ユージーンだったはずだ。


「公爵家だぜ?身代金は幾らでも払うに違いない」


(やっぱり·····)

馬車の中にいた自分とユージーンを間違えたのだろう。

そして誘拐犯は、公爵家の者を判断できない人間。

彼らの身分は貴族ではない。
そこまでを考えて、疑問が浮かび上がった。

ユージーンが人さらいにあうなんて話は、ゲーム中には無かったはず。
誘拐関連の話があったとすればヒロインが攻略対象を庇い人質になるという事件くらいだ。
それも、結局は攻略対象との関係を進展させるためのハプニングに過ぎない。

───が、手違いでノワが誘拐されていなければ、ここにはユージーンがいるはずだった。








しおりを挟む
感想 168

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  ゆるゆ
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 透夜×ロロァのお話です。 本編完結、『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけを更新するかもです。 『悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?』のカイの師匠も 『悪役令息の伴侶(予定)に転生しました』のトマの師匠も、このお話の主人公、透夜です!(笑) 大陸中に、かっこいー激つよ従僕たちを輸出して、悪役令息たちをたすける透夜(笑) 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

婚約破棄で追放された悪役令息の俺、実はオメガだと隠していたら辺境で出会った無骨な傭兵が隣国の皇太子で運命の番でした

水凪しおん
BL
「今この時をもって、貴様との婚約を破棄する!」 公爵令息レオンは、王子アルベルトとその寵愛する聖女リリアによって、身に覚えのない罪で断罪され、全てを奪われた。 婚約、地位、家族からの愛――そして、痩せ衰えた最果ての辺境地へと追放される。 しかし、それは新たな人生の始まりだった。 前世の知識というチート能力を秘めたレオンは、絶望の地を希望の楽園へと変えていく。 そんな彼の前に現れたのは、ミステリアスな傭兵カイ。 共に困難を乗り越えるうち、二人の間には強い絆が芽生え始める。 だがレオンには、誰にも言えない秘密があった。 彼は、この世界で蔑まれる存在――「オメガ」なのだ。 一方、レオンを追放した王国は、彼の不在によって崩壊の一途を辿っていた。 これは、どん底から這い上がる悪役令息が、運命の番と出会い、真実の愛と幸福を手に入れるまでの物語。 痛快な逆転劇と、とろけるほど甘い溺愛が織りなす、異世界やり直しロマンス!

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)  インスタ @yuruyu0   Youtube @BL小説動画 です!  プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです! ヴィル×ノィユのお話です。 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけのお話を更新するかもです。 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

処理中です...