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《109》非常識な生徒
しおりを挟む「ノワの場合は、条件を満たしたら俺の事を愛称で呼びたいと言っていたな」
あれから、1年がたったのだ。本当に嵐のような1年間だった。
ノワは思い出を懐かしんだ。
「··········」
再び重くなった場の空気に気づいていないのは、ノワだけだ。
「·········そうなんですね。条件はなんだったんですか?」
オスカーがノワの返答を待つ。
しっかりと顔を見ていなかったが、真剣な顔つきは結構格好いい。
彼の眼力に押されつつ、ノワは口を開いた。
「披露パーティの出し物で、最優秀賞をとること」
「分かりました」
「?」
分かりましたとは、一体何を理解したのだろうか。
「披露パーティの出し物で、必ず最優秀賞をとってみせます」
オスカーははっきりと宣言した。
ならば、彼に負けぬよう、今年も賞を勝ち取らなければ。
ノワは、能天気な笑みを浮かべていた。
数日後、ロイドを筆頭に数人の3年は学外の訓練場へ向かった。
この時期は、学園代表の剣練部員が国中の訓練場を周ることがしきたりとなっている。
1年間の事故や厄災の無事を祈る行事らしい。
臨時監督を任されてから早一週間。
ノワは、少しずつ新入部員たちと打ち解けていった。
嫌煙されていた訳では無い。むしろ気を使うあまり距離を置かれているのだということは、彼らの雰囲気から察することが出来た。
「パトリック先輩!ご指摘くださった通りに練習してみたのですが、もう一度見ていただけますか?」
「俺にもご指導お願いします!」
笑顔で対応するノワを中心に、1学年の練習場は和気藹々とした雰囲気だった。
「パトリック先輩って·····全てがイイよなー····」
ノワから離れた位置にたむろっていた一人が、思わずというようにつぶやく。
「お前、休憩中ずっと先輩の事見てたろ。怠けるなよ·····あ、こっち見た·····」
「優しくて丁寧で、本当にいい人だよな」
剣錬部の天使、という呟きがどこからともなくもれる。部員たちは無意識に頷き同意した。
「美人だなぁ·····」
「不届き者め」
呟いた部員は、両隣にいた友人達から頭をはたかれる。
「彼が剣を交えているところ、見てみたくないか?」
ノワに見とれる3人へ、柱によりかかっていた人物が問う。
「そりゃ、見てみたいけど····どうして?」
「まあ見てろって」
フランシスはノワへ向かって歩き出した。
新入生達の面倒を見ながら、そっと背後を振り返る。
先程から、2学年の練習場から強い視線を感じているのだ。
編入部員のデリック・コンラッドだ。
彼は連日、こちらをひたすら睨みつけていた。
転入早々、デリックは何かと周囲をざわつかせた。
例えば彼は、文字を読み書きできない。
配られた教科書を逆さに持ったり、テストでは文字の代わりに絵で物事を伝えようとしたり。
当たり前だが、貴族としてのマナーも身についていない。食事の仕方や目上の者への言葉遣いは、何から何まで滅茶苦茶だった。
そんなわけで、彼は基礎的な知識を身につけるため、普段別室で授業を受けている。
しかし先日、事件は起きた。
デリックが皆と共に教室で受けている、数少ない授業中のことだ。
モラルの授業。人間関係や道徳についての講義を聞かされ、問題解決を生徒達が論じる。
簡単な授業内容のため、デリックも教室で受けることが可能だったのだ。
その日の論題についても、クラスからは至って適当な意見が出されていった。
あたりざわりない意見で黒板が埋まってゆく中、教師はふと1人の生徒に目をとめた。
『問題解決の為に、君ならどうする?』
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