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《139》チーム
しおりを挟むノワはデリックの腕を掴んだまま、背の高い黒髪を探す。
後方にいたリダルは、まだグループを組んでいないようだった。
「リダル!」
「·····あ?」
ノワはズカズカと歩み寄り、もう片方の手でリダルの腕を掴んだ。
「僕ら、グループ組もう」
ノワは周りに聞こえる声で告げた。三年はギョッとしてから、我先にと他の二学年へ声をかけてゆく。
やはり、計算通りだ。
ノワの作戦はこうだった。
問題児として嫌煙されているデリックと、腫れ物扱いされているリダル。最悪の組み合わせとチームになりたい三年など、いるわけが無い。
余ったノワたちのグループは、教官であるロイドと、余った三学年でチームを作ることになるだろう。
「やめろ」
「わっ」
しかし、冷たい手はこちらの手を粗暴に振り払った。
転びかけたノワを、デリックが支える。
「なんで怒ってるの?いいじゃん、組む人いないんだろ」
「·····はあ?声掛けてきたのはお前だろうが。なんだよその態度」
血色のない顔が眉をひそめる。
真夏の太陽の下でも、ゾッとするほど冷たい視線だ。小一時間のあいだにまた機嫌が悪くなったらしい。
「ご、ごめん」
確かに強引だったかもしれない。彼に断られると困るので、ノワは素直に謝った。
「お願い、組んでよ」
リダルの前に身を乗り出す。
「一生のお願い!」
「そんなに俺と組みてえの?」
両手を合わせたノワは、首を大きく縦に振った。
「そりゃもう!」
「·····」
返答のない相手を、恐る恐る見上げる。
「なら、俺を一番に選べば良かっただろ」
リダルの視線は、ノワの斜め後ろに向けられ、すぐにこちらへと戻された。
「·····?」
「あれ、君たち」
不意に、ナンパの慣用句さながらの言葉をかけられた。
「三年とは、まだ組めてないの?」
チーム分けの紙を片手に持ったレイゲルだ。
「はい、3人グループは作れたのですが」
間もなくしてノワのチームにはロイドとレイゲルが加わった。
結果として、チーム編成はノワの思惑通りとなったのだった。
推定一億エーカーあるといわれているバリバンの森は、未だ確実な面積を図り切れていない、広大な奥地だ。
森を進みながら、チーム別に進行方向を変えてゆく。生い茂る樹木のせいで、別れたチームの姿はすぐに見えなくなった。
遠征目標は外来獣の討伐だ。
近頃北部の村では、森に住み着いた外来獣が作物を漁りに来ることが問題視されているためだった。
「外来獣ドゥジーヤの攻撃性は低い。しかし奴らは繁殖力が高く、体液から痺毒を吐く。少しでも触れば身体が麻痺し出し、自由が効かなくなる」
ロイドは、葉をかき分けながら先を進む。
「現在確認されているのは五頭。八月から九月にかけてが繁殖期だから、一刻も早く始末しないといけない」
ただの遠征だと思ってはいけない、と、低い声が呟く。
学生でありながら、既に将来の国を担う者達としての訓練が始まっているのだ。
ノワは深く頷いた。
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