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《241》モテモテ

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「·····ああ、でも、ノワ様が彼の雄に辱められる姿はきっととっても魅惑的ですわ····それは私だけでは眺めることの出来ない境地·····そう考えると、この結婚も悪くありませんわね······」


何を言っているのか、ちょっと理解できない。否、理解しない方が良さそうだ。
ノワは彼女を見送ると、深いため息をついた。

一気に10年分老けた気がする。
 

「ノワ様、モテモテですねぇ」


レイゲルが可笑しそうに言う。


「馬車を用意してありますので、急ぎましょう」


ロイドがレイゲルを抜かし、扉を開ける。
彼のマナが少し暗い。
人は負の感情が溜まるにつれ、マナが暗なってゆく。聖徒の力に慣れてから知ったことだ。
ロイドのマナは、初めに見た頃よりも大分色が沈んだ気がする。
表情に出にくいから、聖女の能力が無ければ察知することが出来なかった。


「今日は、3人で馬車に乗らない?」


ノワは階段を降りながら2人に提案する。
目的地の剣術場までは約30分。
その間にロイドに治癒を施すことが可能だ。

レイゲルは二つ返事で了承した。どちらかは馬で見張りをしよう、と乗り気でなかったロイドも、最終的には首を縦に振ってくれた。


「いきなり騎士二人を密室に誘うなんて、いかがわしいな~」


馬車が走り出して間もなく、冗談めかして言ったレイゲルは、ロイドに拳骨を食らった。
音から察するに、かなり本気で殴られたようだ。


「言葉を慎め」

「光栄なことじゃないか。それに、聖女様の近衛は夜のお世話だって仕事内容·····」


ゴツン、と、先程より鈍い音が響いた。ノワは思わず、呟かれた台詞よりもレイゲルの後頭部が心配になる。
レイゲルは「ちょっと待てよ」と方手を振った。


「もしこれがノワ様なりのお誘いだったらどうするつもりなんだ?こんなんじゃもう誘えるものも誘えないじゃないか、無礼なのはどっちだ!ノワ様に謝れ」


暴論にも程がある。


「ねえ、ノワ様」


レイゲルがこちらに同意を求めてくる。全くそんなつもりは無いが、違うと言えば彼はあとでタコ殴りに遭うだろう。


「その·····」


ノワが口ごもると、馬車の中にはヘンな空気が流れる。
最近、黒歴史ばかり更新されてゆく。それでもレイゲルが痛い目にあうよりはましなので、ノワはじっと沈黙を耐えた。


「あれ?もしかして」


ふざけて言ったつもりなのに、と呟くレイゲル。
前思撤回だ。やはりもう少し痛い目にあった方がいい。
ノワは真っ赤になって俯いた。



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