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《318》どっちがいい?

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「長旅で疲れたんだろう」


ユージーンが黙ったままのノワをフォローする。
こちらを覗き見た碧眼がフィアンへ流される。話をこれっぽっちも聞いていなかったことは、既に2人にお見通しみたいだった。


「全然、疲れてないです」


「そうか?」


それなら良かったと、フィアンが微笑む。
神々しい顔面に瞬きを繰り返し、チビチビとスープを掬う。
やはり、なんだか夢を見ているような気分だった。


「今夜だが」

「はい」


聞いていますよ、とアピールするために、返事と相槌を心がける。

さっきまでの自分はどうかしてた。
二人の前でぼうっとするなど以ての外だ。


「寝室へ来るように」



フィアンの発言から一秒後、ノワは盛大にむせた。
同時に床にナプキンを落とす。


「こちらを」


横から真っ白なナプキンを差し出される。

世話のやける者で申し訳ない。
いや、そんなことよりもだ。


「おかしいな」


ノワが待ったをかけるのを戸惑っていると、ユージーンが不満そうに口を挟んだ。
フィアンに遠慮のないユージーンには時折ハラハラさせられるが、今ばかりは救われる。
そう、ここは、タンマが必要だった。


「どちらが先かは、ノワが決めることだろう?」


「え」


論点は斜め違う方向へ飛ぶ。


「俺はノワの意見を尊重したいんだ」


ユージーンは優しく微笑んだ。

閨房の相手を決める。
つまり今夜、二人のどちらかと、必ず関係を持つということだ。


「強いて言うなら、ノワも俺達を尊重した答えを出してくれることを願うよ」


ユージーンの発言は、確かに、ノワが約束をすっぽかしたことを根に持っている。
彼の「精算」という言葉を思い出す。確実に自分を選べと、遠回しに圧力をかけられているのだ。

しかし角が立たないようにするなら、皇帝であるフィアンを────。


(いや待って、おかしい)


それ以前に、なぜ自分が彼らのうちどちらかを選ぶ立場になっているんだ?
しかも、既に今夜閨房をする前提になっている。


「·····そうだな。ノワ、どっちが良いんだ?」


フィアンまでそんなことを言い出す。
顔はのぼせるように熱い。
根を上げたのはノワだった。








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