【完結】高嶺のバスケ部主将(ヤンデレ後輩&不良後輩×世話焼き先輩)

亜依流.@.@

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第五章

《第30話》置いてけぼり

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どうしてだろう。
半年前よりも、身長差は開いた。
力でも自分が勝っていた。
彼に一泡吹かせてやりたくて、彼だけを目標に、日々練習に励んでいた。

暫く、その場を動くことが出来なかった。
徐に姫宮へ視線をやる。
たくさんの生徒に囲まれる彼を、ありえないような表情で見ていた。

ショックではなかった。
とても追いつけない。
どこかで、勝てるわけがないとわかっていた。

ドンマイ、勇気あったよ、お疲れ、と、ほとんど話したことの無い二年生や三年のバスケ部員達が、更衣月に声をかけては、姫宮へと寄っていく。

今度こそ終わりか。
このどこまでも遠い人を、諦めるしかないのだろうか。


「お疲れ様です、みずき先輩」


人がまばらになったアリーナに、温和な声が響いた。


「庵野」


姫宮の方へ寄っていく庵野は、しかし彼から2mほど距離を置いたところで立ち止まった。


「··········?」


更衣月は、違和感に、眉根を寄せる。
狐のような視線が、すいとこちらへ向けられたのは、一瞬。
そのまま諦めてしまえ、と、ひと押しされた気がした。


「みずき先輩、折り入ってお願いがあるのですが」


「ん、どした?」


更衣月は嫌な予感がした。

そういう時の予想ほど、的中するものだ。
姫宮を囲んでいた人間たちは、庵野に気を使うように、アリーナ脇へとずれてゆく。

しかし話は聞いていたいようだ。
彼らは嘘のように静まりかえって、息を殺していた。


「最近耳に挟んだ噂によると···」


片手を顎に添えながら、庵野が思い出すように言う。
まだアリーナに残っていた女子達からは、甘い吐息が漏れた。


「噂では、俺とみずき先輩は、交際しているんだとか」


1泊おいてから、発言にどよめきが起こる。
たしかに最近話題の、気にするまでもないデマだ。
更衣月も、その噂は聞いたことがあった。


「はぁ?なにそれ·····」


姫宮が顔をしかめる。


「もちろん噂であって、事実無根です」


話題にした庵野が、自ら否定する。


「なんだ、やっぱり嘘か」


周りの者達は、皆安堵するように囁いた。


「みずき先輩、俺とも是非、バスケでお手合わせ願いたいのです」


今日と同じようにと続けた庵野が、ニコリとする。
3年の集団からは楽しげなヤジが飛んできた。


「俺が負けた場合、みずき先輩の言う事を1つ、何でもお聞きします」

「まじ?」


それなら、Aランチの券1年分にするか。初めは遠慮してたけど、家を見るあたり相当金持ってそうだし痛くも痒くもなさそうだなんて、遠慮を忘れ勝つことを前提に考え始める。


「庵野は、3点とったら勝ちってことでいいよ」


更衣月の時と同じ条件を出す。
庵野は更衣月と違い、姫宮の提案に喜んで甘んじた。
この前の更衣月との1on1では、脅威の身のこなしで勝利した庵野だ。

盛り上がりが増す。
問題は、その後に投下された発言だった。


「·····───ですが、万が一俺が勝った場合は、噂の通り俺と付き合って下さい」


申し出は、アリーナ全員の耳に聞こえていた。
もちろん、更衣月にもだ。


「「「「「「「···えっ?」」」」」」」


全員の声が重なる。


「どうですか?みずき先輩」


無理にとは言いません、と、遠慮するように伏せられた視線は、姫宮に対する挑発だ。


「はっ」


姫宮が鼻先で笑いとばす。
彼は程なくして了承の返事をした。

更衣月は、少し離れた場所で、2人を眺めていた。


·····───まさか、このままやられっぱなしな訳ないだろ?なぁ?


姫宮みずきを、諦めていいのだろうか。
諦められるのだろうか?
更衣月は唖然と立ち竦んでいた。

まるで忘れ去られたみたいに、自分だけが取り残されていた。



















姫宮が帰る頃、部室の扉が開いた。


「お前、ストーカーかよ」


姫宮はふざけたように言った。


「すんません」


更衣月があやまる。
否定しろよ、と突っ込むが、笑ってくれる者は一人もいない。


「庵野とのゲーム、降りてください」


「は?」


「負けたら付き合うって本気で言ってんすか?」








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