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5.
しおりを挟む「ふわぁ」
「変な声出すなよ·····」
少しの間意識が飛んでいたらしい。
気がつけば店の外だ。なんだか、めちゃくちゃ頭がぼうっとする。
「ちゃんと立て」
言いながらも、ケイはしっかりとこちらを支えてくれていた。
また払わせてしまった。
「ケイサマ、太っ腹~、普段よりイケメンに見える」
「こりゃ相当酔ってんな」
せっかくおだててやったのに可愛くないやつめ。
「ねえ、なんで蓮のこと、変なやつって思うの」
酒の勢いに任せて聞く。
もしかしたら何か知っているのかもしれない。
だとしたら、こんな風に平静でいられないだろうか。
そんなふうに分析する自分だって大概だ。
「なんとなく」
帰ってきたのは素っ気ない返事だった。
「気に入らないんだ」
「ほえ」
ふざけた相槌を打つ。
やっぱり陸上部の出来事を根に持ってるんだろう。
負けず嫌いな性格が、時に羨ましい。
「ケイもかっこいいよ」
「そうだろうな、あれだけ俺の金で食ったんだから」
「照れるなよ~、チューしよう」
「はいはい」
車へ引きずり込まれる。
時刻は24時前だ。
「まだ帰りたくないよ」
帰るには少し早い。
だってこの時間じゃ、あいつはまだ起きているかもしれないから。
「シートベルト閉めろ」
「嫌だァ~、僕赤ちゃんだからできない~」
思えばその日はなんだか変な感じがしていた。
隣の運転席に座っていたケイが、こっちへ覆いかぶさってくる。
ベルトをつけてくれるのかと思ったが、近づいてきたのは顔面だった。
「··········?」
咄嗟に、彼の唇に手のひらを押し付けた。
「赤ん坊は、キスしようなんて言わないぞ」
熱い唇だ。
意外にも柔らかい。慌てて手を離すと、ケイはすぐに身を翻した。
しばらくチカチカした道を進んで、信号で止まる。
「ケイが冗談にノってくるなんて、らしくないよ」
車は再びなめらかに走り出す。
「泊まってくだろ?」
彼は前を向いたまま言った。
いつもと同じルートだ。
本当にいつもと同じだろうか?
「今日は帰る」
郊外に入ったとき、路地裏の影を黒猫が駆けていった。
酔いが少し冷めた。
「そうか?」
車は適当なところでUターンしはじめた。
ここから歩いて、15分くらいで着く。降ろしていいと言ったら、近いんだから送っていくと言い返された。
「階段でコケるなよ」
「任せろ」
車を降りて、ちょっとよろけてからガッツポーズ。
薄暗くても相手が顔を顰めたのはわかった。
「頼もしいな」
皮肉を言い残して車が去ってゆく。
辺りはしんと静まり返っている。4月上旬の夜は、まだ結構涼しかった。
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