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夢見堂本店花園駅前
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いかがでしたでしょうか?
良い夢は見れましたでしょうか?
私は良い夢は見られそうにありません。
貴方方はいかがでしょうか?
悪夢でも吉夢でも逆夢でも予知無でもステキな夢は見れましたか?
夢を見るのは良き事だと思います。
将来に希望を持つ夢も、なれなかったが故に捨てられなかった理想の夢も。全てをひっくるめて夢を見ることは素敵だと思っております。
私はそんな夢を食べて生きている、いわば獏なのです。
皆様の夢は内容がどうであれ美味しい、美味でございます。
夢が見れるというのは何ともうらやましい限りでございます。
私にはもう見れないのです。
理由はどうでも良いですよね。後に語るとでもいたしましょう。
なんにせよ、私は夢を食べて生きております。
貴方方は夢を生産してください。
その代わりに、貴方方に幸せな夢をお渡しします。
悪夢を重点的に回収しておりますので、もし受け渡したかったらどうぞ、夢見堂本店花園駅前どうぞ。店長はいつも不在ですが副店長の私、夢見がご案内させていただきます。
~夢見~
ぺたぺたと他人の夢を食い漁る。
苦い夢は嫌い。甘い夢は大好きでした。
好き嫌いが激しくて、いつも甘いものばかり食べていました。
甘いものばかり食べている所為で、いつも自分で見る夢は甘いものばかりでした。
とてもかわいらしい遊園地や、動物園、水族館まで甘い甘い夢を見ていました。
「お前、美味しそうな夢見ているな」
私が寝ていると、一匹の獏が私の夢を全て食べてしまいました。
「何をするの!?返して!私はソレが無いと夢が見れない!!」
獏は返してはくれませんでした。見せしめのように、目の前でぺろりと食べられてしまったのです。
「そんな…」
私は絶望しました。
獏が獏の夢を食べると、取られた獏はもう自分の夢は見れなくなってしまうのです。なので、他人の夢を食べても何の味もしない。ただの『食事』という作業になってしまった。
「どうして」
私は何日も何日も泣きました。
夢のなる木の下でほかの獏に与えられる小さな幸せは、私には与えられないのです。
私は獏を恨みました。
いっそのこと死んでやろうと、何も食べずに生きていました。
もうそろそろ死ねそうになった頃です。
番傘を差した私と似たような女の人が私に傘を差し出しました。
「貴女。夢が見られない夢無し獏ね?」
その女の人はすぐに私を抱き上げて、どこかへ連れて行きました。
私はただただ女の人のするとおりに従っていました。
「このモノクルをかけて見なさい」
渡されたモノクルは綺麗に手入れされていて、縁が金色に光っていました。
私はそっとそのモノクルをかけると、急に世界に色が戻ったような気がしました。
「!!凄い!凄いです!」
「これを食べなさい」
女の人が私に渡したのは甘い夢ばかりが詰まった小瓶でした。
「いただきます」
私はソレを飲み込むと、涙が溢れて止まりませんでした。
「貴女、うちで働きなさいな」
テーブルに頬杖をついてニッコリと微笑む女の人は私にそんな提案をしてきた。
「どんな仕事なんですか?」
「そうね。このお店の副店長をしてもらうわ。実質店長みたいな物なのだけれど…。此処に迷い込んでくるお客さんに夢を見てもらう。そしてその夢を貰うの。あなたはそれの接客から全てをするの」
難しい、私に出来るでしょうか?
「もちろん、衣食住付よ。どう?雇われてみない?」
私は頷きました。
「よし!」
上機嫌の女の人は、自分のことを店長だと名乗りました。名前は教えてくれませんでした。
そのあと着物を着せられて髪を結われ、店先の掃除を頼まれました。
「それじゃあ、後は頑張ってね」
店長はそれだけ言うと番傘を差してまたどこかへ消えてしまいました。
私はその日から此処を離れず、ずっと店をやっています。
~今~
私の過去話を聞いて面白かったでしょうか?
少し不安です。
それでは、今度は貴方方の番ですね。
どうぞ店の奥へ。
美味しい夢を見せてあげましょう。
夢はどこかで繋がっている
良い夢は見れましたでしょうか?
私は良い夢は見られそうにありません。
貴方方はいかがでしょうか?
悪夢でも吉夢でも逆夢でも予知無でもステキな夢は見れましたか?
夢を見るのは良き事だと思います。
将来に希望を持つ夢も、なれなかったが故に捨てられなかった理想の夢も。全てをひっくるめて夢を見ることは素敵だと思っております。
私はそんな夢を食べて生きている、いわば獏なのです。
皆様の夢は内容がどうであれ美味しい、美味でございます。
夢が見れるというのは何ともうらやましい限りでございます。
私にはもう見れないのです。
理由はどうでも良いですよね。後に語るとでもいたしましょう。
なんにせよ、私は夢を食べて生きております。
貴方方は夢を生産してください。
その代わりに、貴方方に幸せな夢をお渡しします。
悪夢を重点的に回収しておりますので、もし受け渡したかったらどうぞ、夢見堂本店花園駅前どうぞ。店長はいつも不在ですが副店長の私、夢見がご案内させていただきます。
~夢見~
ぺたぺたと他人の夢を食い漁る。
苦い夢は嫌い。甘い夢は大好きでした。
好き嫌いが激しくて、いつも甘いものばかり食べていました。
甘いものばかり食べている所為で、いつも自分で見る夢は甘いものばかりでした。
とてもかわいらしい遊園地や、動物園、水族館まで甘い甘い夢を見ていました。
「お前、美味しそうな夢見ているな」
私が寝ていると、一匹の獏が私の夢を全て食べてしまいました。
「何をするの!?返して!私はソレが無いと夢が見れない!!」
獏は返してはくれませんでした。見せしめのように、目の前でぺろりと食べられてしまったのです。
「そんな…」
私は絶望しました。
獏が獏の夢を食べると、取られた獏はもう自分の夢は見れなくなってしまうのです。なので、他人の夢を食べても何の味もしない。ただの『食事』という作業になってしまった。
「どうして」
私は何日も何日も泣きました。
夢のなる木の下でほかの獏に与えられる小さな幸せは、私には与えられないのです。
私は獏を恨みました。
いっそのこと死んでやろうと、何も食べずに生きていました。
もうそろそろ死ねそうになった頃です。
番傘を差した私と似たような女の人が私に傘を差し出しました。
「貴女。夢が見られない夢無し獏ね?」
その女の人はすぐに私を抱き上げて、どこかへ連れて行きました。
私はただただ女の人のするとおりに従っていました。
「このモノクルをかけて見なさい」
渡されたモノクルは綺麗に手入れされていて、縁が金色に光っていました。
私はそっとそのモノクルをかけると、急に世界に色が戻ったような気がしました。
「!!凄い!凄いです!」
「これを食べなさい」
女の人が私に渡したのは甘い夢ばかりが詰まった小瓶でした。
「いただきます」
私はソレを飲み込むと、涙が溢れて止まりませんでした。
「貴女、うちで働きなさいな」
テーブルに頬杖をついてニッコリと微笑む女の人は私にそんな提案をしてきた。
「どんな仕事なんですか?」
「そうね。このお店の副店長をしてもらうわ。実質店長みたいな物なのだけれど…。此処に迷い込んでくるお客さんに夢を見てもらう。そしてその夢を貰うの。あなたはそれの接客から全てをするの」
難しい、私に出来るでしょうか?
「もちろん、衣食住付よ。どう?雇われてみない?」
私は頷きました。
「よし!」
上機嫌の女の人は、自分のことを店長だと名乗りました。名前は教えてくれませんでした。
そのあと着物を着せられて髪を結われ、店先の掃除を頼まれました。
「それじゃあ、後は頑張ってね」
店長はそれだけ言うと番傘を差してまたどこかへ消えてしまいました。
私はその日から此処を離れず、ずっと店をやっています。
~今~
私の過去話を聞いて面白かったでしょうか?
少し不安です。
それでは、今度は貴方方の番ですね。
どうぞ店の奥へ。
美味しい夢を見せてあげましょう。
夢はどこかで繋がっている
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