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1章
10話 後悔と、裁きのとき
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「お互い様だよ。
ここにお前がいるなんて思ってもみなかった。
なんで女王サマがここににるんだよ。」
女王
「なんでって、君の処遇についてじゃない。
あんなに暴れておいてよくそんなことが言えるわね。」
「壊れたものは直せばいいだけだろうが。」
女王
「壊れたら直らないものもあるのよ。
そうじゃないと、私がここにいる必要がないじゃない。」
「・・・。
やるなら早くしてくれ。
早く帰りたいんだよ。」
女王「へえ、どこへ?」
「一昨日から泊めてもらっている宿があるんだよ。」
女王「そんなに大事なの?
たかが二泊しただけでしょう?」
「・・・それはお前には関係ねえよ。
ていうか、お前、女王だったんだな。
前はただの訳わからん奴ぐらいにしか思ってなかったが、なんで一国の王があんな森の中で走り回ってるんだよ。」
女王
「あの時は女王じゃないわ。
営業時間外だもの。
仕事とプライベートの切り替えすらできない人が王様なんてなれると思う?
やるときはやるのよ、私。」
「・・・そうかよ。」
女王
「まぁ談笑はこのくらいにして、そろそろ本題に入りましょう。
武道会決勝での件よ。
君は、武道会の決勝でガレンと戦った。
その時に放った君の一撃が、彼を殺した。」
「・・・やっぱり、俺は人を殺したのか・・・。」
女王
「そうよ。」
「あんたが淡々と述べるせいか、ただ実感がないだけなのかわからないが、何も感じないんだ。」
女王
「そんなの、私には興味も関係もないわ。
私は私のするべきことをするだけよ。」
「・・・。」
女王
「よって、私はあなたに裁きを下します。
貴方は、今後一切の我が国の立ち入りを永久に禁止とする。
つまり、追放ね。
君は人を殺したとはいえ、武道会はそもそも戦いだし、武道会参加者はこの最悪の状態を考慮して参加前に同意書を書くの。
君も書いていると思うよ。
もし仮にこの戦いで死んだとしても、私は加害者に最低限の贖罪しか追及しません、ってね。」
「それなら─」
女王
「でもね、それが完全に認められちゃうと、この制度を利用して、他の参加者を殺そうなんて考える人が出てくるかもしれないじゃない。
だから、ある程度の裁きは下すのよ。
ほら、君、闘技場半壊にしてるじゃない。
一応あれでも、武道会のために修繕して、その上から魔法で結界を三重も掛けていたのよ。
それを即刻半壊って、ほんと君ってつくづく面白い人だよ。
まぁ、それでも普通に殺人した人よりも軽いわよ。」
「ま、待ってくれ、てことは、もう俺はあの宿には行けないのか?」
女王
「そうよ。
残念だけど、そういう決まりなの。
だから、早く荷物を持ってこの国を出ていきなさい。」
「一度だけでいい!
本当に一瞬で構わないんだ!
彼女には返しきれない恩があるんだ!」
女王
「そう、なら使いの人に伝言を頼んでおくわ。」
「そういうことじゃない!」
女王
「そう怒らないでよ。
こういう決まりなのよ。」
「俺の力なら今からでも、ここをぶっ壊して逃げてやることだって出来るぞ。」
女王
「あら、そんなことしちゃうとあなたの恩人に何があるかわからないわよ。」
「連れて逃げてやるよ。」
女王
「残った宿は焼き払おうかしら。
貴方の勝手な行動で大事な宿が灰になるなんて、そんなことしてあげないでよ。」
「・・・くっそ・・・。」
女王
「ほら、出会いはいくらでもあるじゃない。
この国以外にもかわいい女の子ならいくらでもいる─」
「うるさい!それ以上あの人を悪く言うな!」
女王
「・・そうだね、今のは私が悪かった。
ごめん。」
「・・・もう、会えないんだけどな。」
女王
「・・・もし、彼女がこの国から出るようなこと、例えば、もし異国からの人なら里帰りとかがあって、他国で会ったりする、って言うのは問題ないから、そんなに希望を捨てないでもいいと思うよ。」
「そうだな。そんな奇跡でも信じてみるよ。
俺の荷物は、その使いの人が持ってきてくれるのか?」
女王
「そうだよ。
その間に僕らは国外へ向かう。
国外って言ってもこの王都から出るだけのことだから、そんなに距離は無いよ。
そして、門で荷物をもらって、君はこの国から出ていく。
それだけで罪を償ったことになるんだから、楽な話でしょ。」
「・・・そうだと良いな。
あ、一つ聞きたいんだが、魔術のさ、魔人の長の伝説は知ってるだろ?
あの魔人の長の墓ってどこにあるんだ?」
女王
「え、この国から結構遠いよ?」
「構わない。
どうせもうすぐから暇人さ。」
女王
「仕方ないなぁ。
旅人が去るのに土産の一つもくれてやるのが良い国だとかなんとかだし、地図、あげるよ。」
土産物かとは思ったが、有難くもらった。
女王
「それじゃあ、門まで行こうか。」
「伝言、よろしく頼むよ。
伝えられる最大の感謝をよろしく。」
女王
「任せて。
メンネドルフ家の名に懸けて誓うわ。」
「そりゃあ大層安心だな。」
女王
「ふふっ。そうね。」
そう言って王城を後にして、
女王と二人で門まで向かった。
ここにお前がいるなんて思ってもみなかった。
なんで女王サマがここににるんだよ。」
女王
「なんでって、君の処遇についてじゃない。
あんなに暴れておいてよくそんなことが言えるわね。」
「壊れたものは直せばいいだけだろうが。」
女王
「壊れたら直らないものもあるのよ。
そうじゃないと、私がここにいる必要がないじゃない。」
「・・・。
やるなら早くしてくれ。
早く帰りたいんだよ。」
女王「へえ、どこへ?」
「一昨日から泊めてもらっている宿があるんだよ。」
女王「そんなに大事なの?
たかが二泊しただけでしょう?」
「・・・それはお前には関係ねえよ。
ていうか、お前、女王だったんだな。
前はただの訳わからん奴ぐらいにしか思ってなかったが、なんで一国の王があんな森の中で走り回ってるんだよ。」
女王
「あの時は女王じゃないわ。
営業時間外だもの。
仕事とプライベートの切り替えすらできない人が王様なんてなれると思う?
やるときはやるのよ、私。」
「・・・そうかよ。」
女王
「まぁ談笑はこのくらいにして、そろそろ本題に入りましょう。
武道会決勝での件よ。
君は、武道会の決勝でガレンと戦った。
その時に放った君の一撃が、彼を殺した。」
「・・・やっぱり、俺は人を殺したのか・・・。」
女王
「そうよ。」
「あんたが淡々と述べるせいか、ただ実感がないだけなのかわからないが、何も感じないんだ。」
女王
「そんなの、私には興味も関係もないわ。
私は私のするべきことをするだけよ。」
「・・・。」
女王
「よって、私はあなたに裁きを下します。
貴方は、今後一切の我が国の立ち入りを永久に禁止とする。
つまり、追放ね。
君は人を殺したとはいえ、武道会はそもそも戦いだし、武道会参加者はこの最悪の状態を考慮して参加前に同意書を書くの。
君も書いていると思うよ。
もし仮にこの戦いで死んだとしても、私は加害者に最低限の贖罪しか追及しません、ってね。」
「それなら─」
女王
「でもね、それが完全に認められちゃうと、この制度を利用して、他の参加者を殺そうなんて考える人が出てくるかもしれないじゃない。
だから、ある程度の裁きは下すのよ。
ほら、君、闘技場半壊にしてるじゃない。
一応あれでも、武道会のために修繕して、その上から魔法で結界を三重も掛けていたのよ。
それを即刻半壊って、ほんと君ってつくづく面白い人だよ。
まぁ、それでも普通に殺人した人よりも軽いわよ。」
「ま、待ってくれ、てことは、もう俺はあの宿には行けないのか?」
女王
「そうよ。
残念だけど、そういう決まりなの。
だから、早く荷物を持ってこの国を出ていきなさい。」
「一度だけでいい!
本当に一瞬で構わないんだ!
彼女には返しきれない恩があるんだ!」
女王
「そう、なら使いの人に伝言を頼んでおくわ。」
「そういうことじゃない!」
女王
「そう怒らないでよ。
こういう決まりなのよ。」
「俺の力なら今からでも、ここをぶっ壊して逃げてやることだって出来るぞ。」
女王
「あら、そんなことしちゃうとあなたの恩人に何があるかわからないわよ。」
「連れて逃げてやるよ。」
女王
「残った宿は焼き払おうかしら。
貴方の勝手な行動で大事な宿が灰になるなんて、そんなことしてあげないでよ。」
「・・・くっそ・・・。」
女王
「ほら、出会いはいくらでもあるじゃない。
この国以外にもかわいい女の子ならいくらでもいる─」
「うるさい!それ以上あの人を悪く言うな!」
女王
「・・そうだね、今のは私が悪かった。
ごめん。」
「・・・もう、会えないんだけどな。」
女王
「・・・もし、彼女がこの国から出るようなこと、例えば、もし異国からの人なら里帰りとかがあって、他国で会ったりする、って言うのは問題ないから、そんなに希望を捨てないでもいいと思うよ。」
「そうだな。そんな奇跡でも信じてみるよ。
俺の荷物は、その使いの人が持ってきてくれるのか?」
女王
「そうだよ。
その間に僕らは国外へ向かう。
国外って言ってもこの王都から出るだけのことだから、そんなに距離は無いよ。
そして、門で荷物をもらって、君はこの国から出ていく。
それだけで罪を償ったことになるんだから、楽な話でしょ。」
「・・・そうだと良いな。
あ、一つ聞きたいんだが、魔術のさ、魔人の長の伝説は知ってるだろ?
あの魔人の長の墓ってどこにあるんだ?」
女王
「え、この国から結構遠いよ?」
「構わない。
どうせもうすぐから暇人さ。」
女王
「仕方ないなぁ。
旅人が去るのに土産の一つもくれてやるのが良い国だとかなんとかだし、地図、あげるよ。」
土産物かとは思ったが、有難くもらった。
女王
「それじゃあ、門まで行こうか。」
「伝言、よろしく頼むよ。
伝えられる最大の感謝をよろしく。」
女王
「任せて。
メンネドルフ家の名に懸けて誓うわ。」
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女王
「ふふっ。そうね。」
そう言って王城を後にして、
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