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1話

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獣人の女性と別れた男はフラつきながら宿に向かう。
「飲み過ぎた・・・明日は二日酔い確定だな・・・」
胸糞の悪い出来事が立て続けに起きて酒を飲まずにはいられなかった。
宿への近道を通る為、薄暗い裏路地に入った時、背中に衝撃が走った。
振り向くと以前異世界召喚の時に顔を見た青年が薄気味悪い笑みをこぼして言い放った。
「貴様のおかげで俺の人生無茶苦茶だ・・・死んで詫びろ!」
何を言っているのか男は理解できなかったが目の前の青年が突き刺したショートソードは自分の体を突き抜けおり切り口からは夥しい血が流れている。
薄れゆく意識の中で男はありったけの魔力を込めて唱える。
「クリエイトアンデッド」
青年は男が倒れたのを確認した後足早にその場を後にする。
男の周りに黒い霧が渦巻いていたのを気がつかずに・・・・



どれだけの時が経っただろう。
男が目覚めた時狭い箱の中に閉じ込められていた。どうやら木製の箱のようで叩くと鈍い音
がする。
不思議と刺された時の痛みもないそして空腹感も疲れもなく時が過ぎていく。
最後の記憶は青年に刺され倒れたことだった、思い出すとどす黒い殺意がこみ上げてくる。
もしここから脱出できたら。今まで自分を非難してきた奴らに復讐をするのもいいかもしれない。
男はここから脱出する為箱に入っていた金属製のハンティングナイフで目の前の板を破壊する。
破壊したところ上から土が入ってきたが黙々と先を掘っていく。しばらくしてようやく開けた空間に出ることができた。
視界が広がる。満点の夜空そしてあたりを見渡すと石の墓石が立っている。
そして足元にある墓石には自分の名前が彫られていた。

この日から男は人ではなくなった。
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