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2.婚約破棄まであと5ヶ月
7.悪役令嬢と髪飾り
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夏祭りの準備で大通りはとても賑やかな雰囲気だった。
私はその雰囲気だけでも楽しかったが、アレンはまだ難しい顔をしている。それに周りを気にしているようだった。まあ、ひったくりに遭遇したから街の警備について考えているのだろう。
アレンはいつも街や国の治安を気にしている。
子供の頃、みんなが平和で暮らせる国にしたいと言っていた。きっと今もその気持ちは変わっていないのだろう。
「…アレン様、食事は今度にしますか?」
「え?」
「街の警備が気になっているのではありませんか?夏祭りに向けて警備の見直しが必要だと思っていますよね。」
本当は私を優先して欲しい。
だって今日のデートはすごく久しぶりだったし楽しみだった。それにもしかしたら今日が最後のデートになるかもしれない。
でも私はすべての負の感情に蓋をする。
第一王子の婚約者として、物分かりのいいフリをして笑って彼をサポートするべきだ。
アレンは自分の手を顎に当て少し考えてから話し出した。
「…そう、だな。白昼堂々と犯罪が起こるようでは警備が足りないのだと実感した。夏祭りの時期は外国からの要人や観光客も増えるからフィルコート王国の信用問題にも関わってくるしな。だが、食事はしよう。キーナとの約束は守らないとな。」
難しい顔をしていたアレンは私を見て僅かに微笑んだ。
ああ、まずい…。
なんて眩しい微笑みなんだろう。
真剣な表情からの砕けた微笑み。このギャップ。正直言ってカッコいい。
どうせ婚約破棄されるなら、いっそ嫌いになりたいのに…。
私はきっとアレンを嫌いになるなんて一生出来ないのだろう。
これが惚れた弱みってヤツなのね。
私たちは食事を終え、帰宅することにした。
トラブルにも巻き込まれ、予定よりも早い帰宅になってしまったが、高級レストランの食事は美味しかったし、大通りの観光もできた。何よりアレンとの久しぶりのデートはやっぱり楽しく充実した1日だった。
帰りの馬車の中、アレンは私に可愛くラッピングされた袋を渡した。
「これは?」
「髪飾りだ。さっき出店で買った。本当はキーナが欲しいものを買いたかったが、お前は何もいらない、と言っただろ。…だから勝手に選んだ。」
アレンはぶっきらぼうに答えて外を眺めた。照れ隠しだろうか。
私は少し可笑しくなり、こっそり笑った。
袋を開けてみると、金の細い装飾とエメラルドが散りばめられた綺麗な髪飾りだった。
アレンは勝手に選んだと言ったが、この髪飾りは出店で可愛いなと思い、私が手に取った物だった。
気付いてくれてたんだ…。
私は髪飾りを手に取り、オレンジ色に変わりはじめた太陽の光に透かした。
金の装飾がキラキラと光り、エメラルドは美しく輝きを放つ。
「きれい…。」
嬉しいのに悲しくて涙が出そうになった。
アレンとはこんなにも幸せで穏やかな時間が過ごせるのに、5ヶ月後にはこの関係も終わってしまう。
私の何がいけなかったのだろうか。
私はこんなにも幸せなのに、アレンは私と居ても幸せを感じていないのだろうか。
今、こうして私と過ごしている間もメアリーの事を想っているのだろうか。
もうアレンが私の事を好きになる事はないのだろうか。
ー…アレン様は酷い男ね。
好きでもない女に優しくするなんて。
私は髪飾りをそっと握りしめ胸に抱いた。
「ありがとうございます、アレン様。この髪飾りは一生大切にします。」
私は涙を飲み込み、笑顔を作った。
私はその雰囲気だけでも楽しかったが、アレンはまだ難しい顔をしている。それに周りを気にしているようだった。まあ、ひったくりに遭遇したから街の警備について考えているのだろう。
アレンはいつも街や国の治安を気にしている。
子供の頃、みんなが平和で暮らせる国にしたいと言っていた。きっと今もその気持ちは変わっていないのだろう。
「…アレン様、食事は今度にしますか?」
「え?」
「街の警備が気になっているのではありませんか?夏祭りに向けて警備の見直しが必要だと思っていますよね。」
本当は私を優先して欲しい。
だって今日のデートはすごく久しぶりだったし楽しみだった。それにもしかしたら今日が最後のデートになるかもしれない。
でも私はすべての負の感情に蓋をする。
第一王子の婚約者として、物分かりのいいフリをして笑って彼をサポートするべきだ。
アレンは自分の手を顎に当て少し考えてから話し出した。
「…そう、だな。白昼堂々と犯罪が起こるようでは警備が足りないのだと実感した。夏祭りの時期は外国からの要人や観光客も増えるからフィルコート王国の信用問題にも関わってくるしな。だが、食事はしよう。キーナとの約束は守らないとな。」
難しい顔をしていたアレンは私を見て僅かに微笑んだ。
ああ、まずい…。
なんて眩しい微笑みなんだろう。
真剣な表情からの砕けた微笑み。このギャップ。正直言ってカッコいい。
どうせ婚約破棄されるなら、いっそ嫌いになりたいのに…。
私はきっとアレンを嫌いになるなんて一生出来ないのだろう。
これが惚れた弱みってヤツなのね。
私たちは食事を終え、帰宅することにした。
トラブルにも巻き込まれ、予定よりも早い帰宅になってしまったが、高級レストランの食事は美味しかったし、大通りの観光もできた。何よりアレンとの久しぶりのデートはやっぱり楽しく充実した1日だった。
帰りの馬車の中、アレンは私に可愛くラッピングされた袋を渡した。
「これは?」
「髪飾りだ。さっき出店で買った。本当はキーナが欲しいものを買いたかったが、お前は何もいらない、と言っただろ。…だから勝手に選んだ。」
アレンはぶっきらぼうに答えて外を眺めた。照れ隠しだろうか。
私は少し可笑しくなり、こっそり笑った。
袋を開けてみると、金の細い装飾とエメラルドが散りばめられた綺麗な髪飾りだった。
アレンは勝手に選んだと言ったが、この髪飾りは出店で可愛いなと思い、私が手に取った物だった。
気付いてくれてたんだ…。
私は髪飾りを手に取り、オレンジ色に変わりはじめた太陽の光に透かした。
金の装飾がキラキラと光り、エメラルドは美しく輝きを放つ。
「きれい…。」
嬉しいのに悲しくて涙が出そうになった。
アレンとはこんなにも幸せで穏やかな時間が過ごせるのに、5ヶ月後にはこの関係も終わってしまう。
私の何がいけなかったのだろうか。
私はこんなにも幸せなのに、アレンは私と居ても幸せを感じていないのだろうか。
今、こうして私と過ごしている間もメアリーの事を想っているのだろうか。
もうアレンが私の事を好きになる事はないのだろうか。
ー…アレン様は酷い男ね。
好きでもない女に優しくするなんて。
私は髪飾りをそっと握りしめ胸に抱いた。
「ありがとうございます、アレン様。この髪飾りは一生大切にします。」
私は涙を飲み込み、笑顔を作った。
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