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君の今世に幸福を
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炭酸の抜けたコーラの甘みが舌に張り付くが、それもまた楽しみの一つなのだろう。通販か何かで大量購入した赤い紙コップの残りはほんの僅かとなっていたが、さて次に飲みたいものも思い浮かばない。初めて参加した高校の文化祭は存外楽しくあったけれど、今更はしゃぐ気にもなれなかった。ただ、この平和な時間をのんびりと過ごしたい。高校生には似つかわしくない考え方だ。
「眞鍋ー」
四方を校舎に囲まれた中庭は、出店も何もないせいか閑散としていた……というわけではない。人混みになれない生徒たちにとっての憩いの場に、廊下窓から声をかけられた。
「もう交代だっけ?」
「いや、お前にお客さん! お兄さん来てるぞ」
言葉に、呼びかけられた少年……眞鍋賢人は首をかしげた。眞鍋家は両親と賢人、それに今春中学に上がった妹の四人家族のはずだ。いとこも女ばかりで昔なじみも年下に囲まれた賢人には、兄なんて存在に心当たりはない。
「それってどんな」
「勇者様!」
とん、と目の前に人間が現れた。いや、降りてきた。しかしながら三階の窓は人間が生身で飛び降りるには高すぎる。思い思いに時間を過ごしていた人々の視線は、中庭からも廊下からも一人の不審者に向けられる。次いで飛び出た言葉がゲームの中でしか聞かないような単語だ。祭りの最中なのだから演劇の宣伝等と勘違いしてくれていたら良いものの、目の前の青年がどう見ても成人していたためにそれも通用しそうにない。声をかけてくれた学友はスマートフォンを手に取っており、その指が同じ場所に二度触れた時点で咄嗟に叫びを上げた。
「兄さん! もういい加減にしてくれ!! そういうのは卒業したって言っただろ!」
当然茶髪の男は目を見開いた。彼が想像した賢人のリアクションというのは二つだろう。何も覚えておらず困惑するか、或いはすべて覚えていて叱りつけてくるか。それが子どもを騙すための嘘に沿ったものだったのだから、唖然とするのも理解できた。だが、ここで辻褄の合わないことを言われても困る。厨二病なんて汚名を被った意味までなくなるのだ。多感な時期の少年が背負うには重い十字架だが、浮かんだ誤魔化しはそれしかない。
「オレが勇者様の兄……そういうのも、良」
「こっち来て!!」
とんでもないことを口走った男の手を握り、ずんずんと進む。何せ人でごった返した場所だ、二人になれる場所に心当たりはなかったが、あそこに留まるよりは歩き続ける方がましだった。それだってこの男の見た目が許さないことはわかっていたから頭が痛いが、とにかく今はそうするしかない。
金色だった髪は濃い茶色になり、宝石のような碧眼も明度が低くなりほとんど黒にも見えている。だが、その整った顔立ちはあの頃と何も変わっていない。この世界に馴染むための変身魔法か、はたまた自身と同じ転生か。かつての世界で共に戦ってくれた魔法使いの姿を元勇者はちらりと振り返って確認する。手を繋いだだけで真っ赤になった顔がこれからの面倒さを如実に現していたから、ますます溜息を吐くより他なくなるのだ。
剣と魔法の世界。今生きている世界では人気の高い娯楽の舞台だった。小説や漫画、アニメ、それにゲーム。賢人だって十六年も生きていたらいくつもそんな世界観に触れていたし、ついでに前世の記憶のようなものも思い出した。とはいっても最初は信じられなかった物だ。なにせ自分の前世、勇者エリックの人生がそのまま漫画としてそれなりの人気を博していたのだから。
そもそも数十年前に完結した物語だったから、幼い日に見たストーリーが夢に出てきて混乱したものだと思っていた。だが、それからしばらくして公開された作者の遺作となる『物語の後の話』についての展開予想が全て的中したのである。ここまできても二つの世界は余りに違いすぎて、まだ自身が作者の転生体であると思い込んでいた。
ふと寝ぼけて、魔法を使ってしまうまでは。
簡単なことだった。水を飲もうとしたらペットボトルが空になっていて、こんなときあの勇者なら自分の思うままに水が出せたにと思ったのだ。出来心で呟いた呪文は確かな効果をもたらし、快晴の続く街に直径二メートルほどの水たまりを作った。もう、そこまでいけば認めるしかないのだ。
「勇者様……その、さすがにこういうことは……も、もちろん、勇者様のお望みとあれば」
「違う!!」
老朽化により天井が剥がれた体育倉庫は、現在立ち入り禁止扱いとなっている。あちこちに人間を拒絶するテープが貼られていたから、優等生の集う高校ではとくに侵入者もいないようだ。近辺まで来て建物で体を隠し、すぐに二人の幻覚を来た方の壁へと歩かせた。あとはたとえ見目麗しい男に女性がつられていこうが、心配した学友が追ってくれていようがどうにでもなる。
「アンリ、お前いつからわかっていた?」
「この世界で新たな生を受けてより、です。ずっとあなたに会うことだけを目標に生きてきました」
「せっかく平和な世界に生まれたんだからちゃんと前を向いて生きろ!!」
「しっかり前を! 二人の未来を見据えて生きてきました!!」
「全ッ然向けてない!!」
アンリがエリックのパーティーに加入したのは旅を続けてしばらく経った頃だった。先代の魔法使いは彼の姉であるマノンで、呪いによって視力を失った彼女の代理として加入してきたのだ。当時最年少だった僧侶より更に四つも年下の十三歳での加入だったから、当時はメンバー同士で意見を衝突させたのを覚えている。結局姉のためにと憎悪の炎を燃やす天才児は大人たちを実力で黙らせ、魔王を倒すまで第一線で戦ってくれていた。
そこまではまあ、良かったのだ。いや、問題は山ほどあるが、それでも結果良ければというやつである。マノンも無事視力を取り戻し、幼馴染みの商人と幸せな結婚をして子どもも四人目までは確認した。
あとは幼いながらも戦わざるを得なかった少年も自分なりの幸せを見つけてくれれば文句のない大団円だったのだが、そちらはどうにもうまくいかなかった。
彼が惚れ込んだ相手は、よりにもよって魔王が最後に残した呪いによって余命五年を宣告された勇者だったのだから。
「あのあと、どうした?」
「ちゃんと後進を育て、国の政治にも力を貸し、七十歳の大往生でしたよ」
「まあ、あの世界ならそのくらい生きれば十分か」
科学医療はなく、魔法によって病や怪我を治していた世界だ。平均寿命が現代日本に比べて低いのは致し方ないことである。その中で七十まで生きていてくれたのなら、遺言の一つ、長生きしてくれも果たされた事になるだろう。
「勇者様は、早すぎましたからね」
あのとき、エリックの正解は酷い言葉を投げてでもアンリに恋心とやらを諦めさせることだった。しかしそれが出来なかったのは、自らの死で放たれるであろう呪いの解決策がついぞ見つけられなかったからだ。彼が隣で看取ってくれれば、その呪いは人々を襲うこともない。慕ってくれた子ども相手に、惨いとしか言いようのない仕打ちである。だが、勇者としての選択に後悔はない。そして勇者の背を守った魔法使いとしても、それは同じだった。と信じたかった。
「今は、ご健康そうで何よりです」
「……マノンは元気にしているか?」
「最終的に十人生んで、しかもオレより長生きしましたよ。ああ、こちらではオレは一人っ子です」
「そうか。オレは妹が一人いるよ」
言うと、アンリはニコニコと笑う。幼少期村を焼かれた話は酔った勢いで一度したくらいだったが、忘れてはいなかったらしい。
その気持ちを勘違いだと切って捨てるには、あまりにいろいろと聞かされて過ぎていた。魔王の城があった場所に簡単な小屋をたて、二人で暮らした五年間。たまに転移魔法でかつての仲間が送ってくれる手紙以外、外の世界とほとんど繋がりを持たなかった。ゆるやかに過ぎていく二人だけの時間だ。だからといって何があったわけでもないが、アンリはそれでも隣に居続けてくれた。絆されなかったと言えば嘘になる。だが、彼の手を取った先にあるのはきっと地獄に違いなかった。わかっていたから、最後の最後に遺言を残したのだ。決して後は追わないこと、幸せになること、恋をしたいなら別の人間に想いを向けること。ぞっとするほど卑怯な話だ。
「で、アンリの今の名前は?」
「葵です。篠花葵」
「良い名前じゃないか。篠花」
「葵って呼んでください。それが嫌なら、アンリと」
「じゃあ、葵だな」
聞いたのはいくら前世の記憶が鮮明に残っていたとして、今は別の名で生を受けているからだ。それでは意味がないと名前を呼べば、彼ははにかんでみせてくれた。
「葵、スマホ出して」
「え? は、はい」
「……よし、と。文化祭が終わったら連絡するから」
「へ?」
「それまで適当に時間潰しておいてくれ。ああ、このあたりに馴染みがないならバスで十分くらいのところに映画館が」
「そ、そういうことではなく!」
慌てる葵に、賢人はきょとんと彼を見た。
「どうした?」
「え、えっと、また会ってくれるんですか?」
「当たり前じゃん。昔の仲間を拒絶するほどあのとき人生は軽くないよ」
「っ、ゆ、勇者さ」
「賢人。お願いだから会ったときみたいに悪目立ちするようなことはしないでくれな」
感激で抱きしめようとしてきたのを、頭を押さえて制止する。この体勢が既に平穏からの程遠さを物語っていたが、出会ってしまったものは仕方ない。
拗らせた夢を終わらせる責任があることくらいは、自負していた。
「わかりました、賢人様! お待ちしています」
「様もやめてくれ……」
結局さん付けで落ち着いた呼称が、いつかもっと自然な『他人』のものになるまで。多少困難になっても、彼が最も傷つかない方法を。その義務を果たすまで、平穏な日常と別れを告げる覚悟は、存外すんなりと持つこと出来た。
「眞鍋ー」
四方を校舎に囲まれた中庭は、出店も何もないせいか閑散としていた……というわけではない。人混みになれない生徒たちにとっての憩いの場に、廊下窓から声をかけられた。
「もう交代だっけ?」
「いや、お前にお客さん! お兄さん来てるぞ」
言葉に、呼びかけられた少年……眞鍋賢人は首をかしげた。眞鍋家は両親と賢人、それに今春中学に上がった妹の四人家族のはずだ。いとこも女ばかりで昔なじみも年下に囲まれた賢人には、兄なんて存在に心当たりはない。
「それってどんな」
「勇者様!」
とん、と目の前に人間が現れた。いや、降りてきた。しかしながら三階の窓は人間が生身で飛び降りるには高すぎる。思い思いに時間を過ごしていた人々の視線は、中庭からも廊下からも一人の不審者に向けられる。次いで飛び出た言葉がゲームの中でしか聞かないような単語だ。祭りの最中なのだから演劇の宣伝等と勘違いしてくれていたら良いものの、目の前の青年がどう見ても成人していたためにそれも通用しそうにない。声をかけてくれた学友はスマートフォンを手に取っており、その指が同じ場所に二度触れた時点で咄嗟に叫びを上げた。
「兄さん! もういい加減にしてくれ!! そういうのは卒業したって言っただろ!」
当然茶髪の男は目を見開いた。彼が想像した賢人のリアクションというのは二つだろう。何も覚えておらず困惑するか、或いはすべて覚えていて叱りつけてくるか。それが子どもを騙すための嘘に沿ったものだったのだから、唖然とするのも理解できた。だが、ここで辻褄の合わないことを言われても困る。厨二病なんて汚名を被った意味までなくなるのだ。多感な時期の少年が背負うには重い十字架だが、浮かんだ誤魔化しはそれしかない。
「オレが勇者様の兄……そういうのも、良」
「こっち来て!!」
とんでもないことを口走った男の手を握り、ずんずんと進む。何せ人でごった返した場所だ、二人になれる場所に心当たりはなかったが、あそこに留まるよりは歩き続ける方がましだった。それだってこの男の見た目が許さないことはわかっていたから頭が痛いが、とにかく今はそうするしかない。
金色だった髪は濃い茶色になり、宝石のような碧眼も明度が低くなりほとんど黒にも見えている。だが、その整った顔立ちはあの頃と何も変わっていない。この世界に馴染むための変身魔法か、はたまた自身と同じ転生か。かつての世界で共に戦ってくれた魔法使いの姿を元勇者はちらりと振り返って確認する。手を繋いだだけで真っ赤になった顔がこれからの面倒さを如実に現していたから、ますます溜息を吐くより他なくなるのだ。
剣と魔法の世界。今生きている世界では人気の高い娯楽の舞台だった。小説や漫画、アニメ、それにゲーム。賢人だって十六年も生きていたらいくつもそんな世界観に触れていたし、ついでに前世の記憶のようなものも思い出した。とはいっても最初は信じられなかった物だ。なにせ自分の前世、勇者エリックの人生がそのまま漫画としてそれなりの人気を博していたのだから。
そもそも数十年前に完結した物語だったから、幼い日に見たストーリーが夢に出てきて混乱したものだと思っていた。だが、それからしばらくして公開された作者の遺作となる『物語の後の話』についての展開予想が全て的中したのである。ここまできても二つの世界は余りに違いすぎて、まだ自身が作者の転生体であると思い込んでいた。
ふと寝ぼけて、魔法を使ってしまうまでは。
簡単なことだった。水を飲もうとしたらペットボトルが空になっていて、こんなときあの勇者なら自分の思うままに水が出せたにと思ったのだ。出来心で呟いた呪文は確かな効果をもたらし、快晴の続く街に直径二メートルほどの水たまりを作った。もう、そこまでいけば認めるしかないのだ。
「勇者様……その、さすがにこういうことは……も、もちろん、勇者様のお望みとあれば」
「違う!!」
老朽化により天井が剥がれた体育倉庫は、現在立ち入り禁止扱いとなっている。あちこちに人間を拒絶するテープが貼られていたから、優等生の集う高校ではとくに侵入者もいないようだ。近辺まで来て建物で体を隠し、すぐに二人の幻覚を来た方の壁へと歩かせた。あとはたとえ見目麗しい男に女性がつられていこうが、心配した学友が追ってくれていようがどうにでもなる。
「アンリ、お前いつからわかっていた?」
「この世界で新たな生を受けてより、です。ずっとあなたに会うことだけを目標に生きてきました」
「せっかく平和な世界に生まれたんだからちゃんと前を向いて生きろ!!」
「しっかり前を! 二人の未来を見据えて生きてきました!!」
「全ッ然向けてない!!」
アンリがエリックのパーティーに加入したのは旅を続けてしばらく経った頃だった。先代の魔法使いは彼の姉であるマノンで、呪いによって視力を失った彼女の代理として加入してきたのだ。当時最年少だった僧侶より更に四つも年下の十三歳での加入だったから、当時はメンバー同士で意見を衝突させたのを覚えている。結局姉のためにと憎悪の炎を燃やす天才児は大人たちを実力で黙らせ、魔王を倒すまで第一線で戦ってくれていた。
そこまではまあ、良かったのだ。いや、問題は山ほどあるが、それでも結果良ければというやつである。マノンも無事視力を取り戻し、幼馴染みの商人と幸せな結婚をして子どもも四人目までは確認した。
あとは幼いながらも戦わざるを得なかった少年も自分なりの幸せを見つけてくれれば文句のない大団円だったのだが、そちらはどうにもうまくいかなかった。
彼が惚れ込んだ相手は、よりにもよって魔王が最後に残した呪いによって余命五年を宣告された勇者だったのだから。
「あのあと、どうした?」
「ちゃんと後進を育て、国の政治にも力を貸し、七十歳の大往生でしたよ」
「まあ、あの世界ならそのくらい生きれば十分か」
科学医療はなく、魔法によって病や怪我を治していた世界だ。平均寿命が現代日本に比べて低いのは致し方ないことである。その中で七十まで生きていてくれたのなら、遺言の一つ、長生きしてくれも果たされた事になるだろう。
「勇者様は、早すぎましたからね」
あのとき、エリックの正解は酷い言葉を投げてでもアンリに恋心とやらを諦めさせることだった。しかしそれが出来なかったのは、自らの死で放たれるであろう呪いの解決策がついぞ見つけられなかったからだ。彼が隣で看取ってくれれば、その呪いは人々を襲うこともない。慕ってくれた子ども相手に、惨いとしか言いようのない仕打ちである。だが、勇者としての選択に後悔はない。そして勇者の背を守った魔法使いとしても、それは同じだった。と信じたかった。
「今は、ご健康そうで何よりです」
「……マノンは元気にしているか?」
「最終的に十人生んで、しかもオレより長生きしましたよ。ああ、こちらではオレは一人っ子です」
「そうか。オレは妹が一人いるよ」
言うと、アンリはニコニコと笑う。幼少期村を焼かれた話は酔った勢いで一度したくらいだったが、忘れてはいなかったらしい。
その気持ちを勘違いだと切って捨てるには、あまりにいろいろと聞かされて過ぎていた。魔王の城があった場所に簡単な小屋をたて、二人で暮らした五年間。たまに転移魔法でかつての仲間が送ってくれる手紙以外、外の世界とほとんど繋がりを持たなかった。ゆるやかに過ぎていく二人だけの時間だ。だからといって何があったわけでもないが、アンリはそれでも隣に居続けてくれた。絆されなかったと言えば嘘になる。だが、彼の手を取った先にあるのはきっと地獄に違いなかった。わかっていたから、最後の最後に遺言を残したのだ。決して後は追わないこと、幸せになること、恋をしたいなら別の人間に想いを向けること。ぞっとするほど卑怯な話だ。
「で、アンリの今の名前は?」
「葵です。篠花葵」
「良い名前じゃないか。篠花」
「葵って呼んでください。それが嫌なら、アンリと」
「じゃあ、葵だな」
聞いたのはいくら前世の記憶が鮮明に残っていたとして、今は別の名で生を受けているからだ。それでは意味がないと名前を呼べば、彼ははにかんでみせてくれた。
「葵、スマホ出して」
「え? は、はい」
「……よし、と。文化祭が終わったら連絡するから」
「へ?」
「それまで適当に時間潰しておいてくれ。ああ、このあたりに馴染みがないならバスで十分くらいのところに映画館が」
「そ、そういうことではなく!」
慌てる葵に、賢人はきょとんと彼を見た。
「どうした?」
「え、えっと、また会ってくれるんですか?」
「当たり前じゃん。昔の仲間を拒絶するほどあのとき人生は軽くないよ」
「っ、ゆ、勇者さ」
「賢人。お願いだから会ったときみたいに悪目立ちするようなことはしないでくれな」
感激で抱きしめようとしてきたのを、頭を押さえて制止する。この体勢が既に平穏からの程遠さを物語っていたが、出会ってしまったものは仕方ない。
拗らせた夢を終わらせる責任があることくらいは、自負していた。
「わかりました、賢人様! お待ちしています」
「様もやめてくれ……」
結局さん付けで落ち着いた呼称が、いつかもっと自然な『他人』のものになるまで。多少困難になっても、彼が最も傷つかない方法を。その義務を果たすまで、平穏な日常と別れを告げる覚悟は、存外すんなりと持つこと出来た。
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