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alive
joint
しおりを挟む「…本当にあれでよかったのか?」
今は二人、斉藤と歩いていた。
というのも総司が稽古があったからで、意図して二人でいる必要はもうなかった。
「…はい。協力していただいてありがとうございました」
礼を言うと、雫はその場を去ろうとした。
しかし、斉藤はその腕をがしっと掴む。
「…な、何をするんですか?」
「…お前、女だろ。何であんなことをする」
雫は動揺を隠せなかった。
「…い、つから……?」
いつバレてしまったのか……
バレないように総司以外の人間とは距離を取るようにしていた。
もともと身長もそれほどないので、華奢な少年だと勘違いさせるような行動をとっていたのに。
「お前がここに現れた日からだ。それからずっと疑っていたが、先日……お前を助けた時に確信をもった」
雫が自覚していない自殺まがいの行動のときだが、雫にはそれがわからなかった。
だが、確信を持って訊ねている今、これ以上隠すことが出来ないと判断した。
大きく深呼吸して、自分を落ち着かす。
「…他の人に知られたくないので、あまりその事は口に出さないでください。それに、先ほどの件は元々仕組まれていたことに私が駒のように動いただけです。」
急に落ち着きを取り戻し、笑顔で話す姿は異様なものとさえ感じた。
「…暁月、お前は……総司のことをどう思う?」
幾人もの人間と相対し、死闘を繰り広げたこともある斎藤だからこそわかる。
暁月雫は放っていると消えてしまう存在だ。
自分がどういう状況にあるかを把握した上で、死さえ受け入れてしまう。
こいつには生を繋ぎ止める誰かが必要である。
そう判断した故の質問であった。
だが、雫には意味の分からない質問となった。
「…総司のこと、ですか?…………面倒だとは思います。良くも悪くも」
雫は今までにあった出来事を思い出していた。
良くも悪くも、というのは総司のことを優しい人間だと受け入れているからだ。
だからこそあのように無茶をしたら怒ると分かっていた。
それは雫にとっては面倒なこと。
雫は、質問は以上ですか?と雫は再び微笑んだ。
他人との間に壁を作るための微笑みだということが、今になって斎藤の知るところとなる。
「…あ、私のことは出来れば秘密にしていてもらえますか?ここを追い出されるとまだ困るので」
それだけを言い残して、彼……彼女はその場から立ち去った。
「…まだ……か」
あの言葉は、いずれここを出ていこうと思っていると示していた。
彼女は自分が不利な状況になるかもしれないこの場で、味方をつけず、一人で生きるつもりなのだろうか。
斎藤はその場に立ち尽くして、考えを巡らせていた。
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