暁の刻

煉獄薙

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あ、あぁ……山崎さんが行ってしまった。
助けてほしかったのに……

無理な体勢から元に戻って、居ずまいを正す。
「…それで?話って何?」

「……君、吉田と戦ったんだね……」

「…うん。」

「…戦えたんだ…僕、知らなかったよ」
淡々と言うその様に、雫は普段の強さを無くしていた。

総司はムクッと起き上がり、ただ黙って何かを考え込んでいた。

言うかどうか迷っているその態度に、雫は音を殺して待っていた。

「…僕が斬られた理由、わかる?」

理由。
そんなの分かるわけがない。

なんとなく嫌な気配がして、追いかけたら総司が殺されそうになっていた。

雫が知っているのはただそれだけであった。

「…吉田が教えてくれたんだ。君が赤い瞳をするってことを」

動揺を気取られないように、笑顔を貼り付けて答える。

「…確かに私は興奮すると目が赤くなるよ。吉田と会ったときは死にそうで危なかったから………」

「ウイルス被爆者の特殊体質」
総司の口から放たれた言葉は、この時代の人間が知らないはずの単語。
さすがの雫も動揺を隠しきれなかった。

そして、すぐにここに来たばかりの時のことを思い出す。

タイムスリップをしているのは自分だけじゃないこと。
そして、
『本人はそれを隠したがっているから教えはしないがな』
土方さんがそういっていたこと。

「……もしかして、総司も未来から来たの?」

不安気に訊ねる。

「…僕は、本当は藤原っていうんだ。藤原惣司。君がこの幕末に来たとき、僕はすぐに未来から来たって思ったよ」

質問に的確に答えた訳ではないが、その答えは『幕末』という未来の人間しか知り得ない単語を使っている時点で明白であった。

動く右腕を使い雫の顔に触れ、目の辺りを優しく撫でた。

「…君のその目の事は僕も聞いたことがある。人工的に人間兵器を作ろうとしたときに、生まれてきた子供たちが赤い目を持っているって……」

「総司……惣司は」

「総司のままでいいよ」

触れていた手を離す。

温もりが少しだけ残っている。

悲しそうな顔をする総司 見て、自分自身も辛くなっていた。

「…総司は、どうしてこの時代にいるの?どうして私を助けてくれたの?」

しばらく答えに迷い、
「……この時代にいるのは、沖田総司の代わりまなって、歴史を守るため。君を助けたのは自己満足のためだよ」
重い口を開いた。




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