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しおりを挟む彼……現在の沖田総司と山崎が出会ったのは、沖田が11歳になった頃だった。
9歳で試衛館の内弟子になったことは聞いていたけど、そのときにはもうすでに周りとは群を抜いていた。
山崎はその頃山谷と名乗っていた。
総司は、皆といるときは褒められて照れたり、嬉しいのに喜んでいないふりと可愛い表情をみせていたが、一人になった瞬間にふと悲しそうな表情をしていた。
まだ少年であった総司に、20になったばかりの山崎にとって、彼の存在は偽っている自分と似たような気さえしていた。
「…自分強いなぁ」
「…誰ですか?」
純粋に訊ねることと首を傾げる仕草は、子供らしいと思う反面、どこか違和感もあった。
「山谷丞。一度手合わせせぇへん?」
少年はニヤリと微笑み、承諾した。
勝敗は一瞬だった。
元々薬師の家で育った山崎は、薬を売りながらいろんな土地を旅していた。
剣術など全くなく、勝てる保証など皆無だった。
「………あんた、ただの薬師なのに勝負挑んできたの?馬鹿??…」
その悪態は、彼の本心だった。
どこか大人びた様子の彼は、どうしてそんなに頑張るのかという山崎の質問に
「…そのために生まれてきたから」
と悲しそうに言った。
その反応が気にくわなくて、目をそらした少年の肩を掴み、
「俺には本音を言え。偽ってばかりだと心が疲れる」
そう言って、優しく頭を撫でた。
本当に心が疲れていたのか、少年は少しだけ涙を流した。
「…本当は、もっと普通に生きたい。でも、僕にはやらなきゃいけないことがあるから」
と。
***
「今思えば、未来から来たことを隠さないかんし、未来から来た理由も隠して沖田総司としてふるまわないかんくて辛かったんやろうな」
まあ、今でもその理由は教えてくれんけど、と山崎は笑って言った。
「…無理矢理聞き出そうとか思わなかったの?」
「……んー、それは考えたことないなー。だってさ」
ニコッと微笑み、ウインクをしたあと
「聞いたところで教えてくれる人間じゃないやろ?」
そんな山崎に、雫は笑って同意した。
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