したことないのに出来ちゃった⁈

友谷良平

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初対面

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 僕はイスに座り、足を動かす。右足、左足、右足、左足…交互に力を入れて動かしていくと、イスも進む。そう、今僕は自転車に乗っているのだ。実家から自宅に帰る途中なのだが、どうも気が進まない。実家に居たかったわけではないが、家に帰ったところで特にこれといってすることもない。 
 僕は途中にある川沿いの公園で時間を潰すことにした。この公園はお花見で有名な公園だった。今は夏も終わり過ごしやすい気候になってきた頃なので、子供連れの親や家族が沢山いる。僕は小さい子は好きなのだが、変に話しかけたりして誤解されたりでもすると大変なので適度に距離を取るようにしていた。しばらく走り回る子供たちを眺めていたが、気がつくと向かい側のベンチに座っている女の人に視線がいっていた。(僕と同い年くらいだろうか。)モデルのように一般的な美しさを兼ね備えているわけではないのに、どこか惹かれるような魅力があった。
 とっ。向かいの女の人を見惚れている間に僕の足に何かが当たった。僕はつま先あたりに落ちているものを優しくと人差し指と親指で挟んで拾い上げると、綺麗な形をしたドングリだった。今年のものらしくまだ傷もなく色もきれいなままだっだ。「…あの…おにいさん…」僕がドングリまじまじと眺めていると小さな声が聞こえた。5歳くらいの女の子で、手には溢れんばかりのドングリが握られていた。このままではこの子の親の元に戻るまでに盛大にこぼしてしまいそうな気がしたので、持っていたコンビニのビニール袋に入れてやった。すると女の子はパッと笑って「ありがとう!」と一言言うとあっと言う間に走り去ってしまった。やっぱり小さい子は可愛いなと思いながらも、僕の視線は先ほどの女の人の方へ注がれていた。“女の人の方”。そう、正確には女の人の座っているベンチの隣の植え込みに入っていこうとする犬に。周りには飼い主らしき人の姿が見当たらなかったので僕はゆっくりと植え込みに近づいていった。たぶんあの女の人も同じことを考えていたのだろう、僕と同じように植え込みを覗き込むように近づいていた。お互い知らない人同士ながら目で合図しあい、両側に回り込むことに成功した。いざ、と植わっている木や草を両手で出来るだけ優しくかきわけるとそこには…
 「っ…え?」目の前からも同じもうな声が漏れていた。「これは…どうしましょう…かね?」困惑する僕たちの前にいたのは生後2、3ヶ月くらいの赤ん坊とぬいぐるみのようなかわいいワンちゃんであった。
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