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3.山名家・上古
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『……少しだけなら』
ほんの少し、味見程度ならよいのでは。
しかし、あまりの空腹との戦いに負け、雅樂は目の前の誘惑に引きずられそうになった。
『一口だけ……万一味付けを間違えていたら、失礼になりますし……』
雅樂も今思い出したのだが、今日は確か山名家にやってくる何かと食を共にする、という日であった。
神様か何かよくわからないが、少しくらい味見……毒見をしても罰はあたらないのでは?
雅樂の中でするすると言い訳が結ばれていく。
では、と箸とお椀を手に持った矢先、突然裏の戸が開いた音がした。
『お、お母様かお婆様が見にいらしたのかしら?』
雅樂は、思わず身を固くする。
「こんばんにゃ~」
間の抜けた声が母屋の中に響いた。雅樂の母や祖母のものではない。奇妙な濁った声音だった。強いて言えば男のものだが、聞き覚えのない声である。
どうしていいかわからず、うろたえている内に何者かの気配がどんどん雅樂の居る部屋に近づいてきた。
「おばんですにゃ~」
声の主は器用に引き戸を開けて、のしのしと室内に侵入してくる。
「ねっ、ねっ、ね……ねこ?」
「返事が無いから勝手に上がらせてもらったにゃ。驚かせたら悪かったかにゃあ」
「ねこっ! 猫……」
雅樂の前にいるのは、猫であった。ただの猫ではない。大きさでいえば虎かライオンくらいはあるのではないだろうか。いや、もう少しあるかもしれない。
「いや、ほんとスマンにゃ。人間態は疲れるからにゃあ……あれっ? っていうかワシのこと見えとるの?」
混乱の極みにいる雅樂はまともに返事が出来ず、引きつった顔でブンブンと首を縦に振った。
巨大な猫は、気持ち良さそうにほぉーと唸り、顔を上下に緩ませる。
「幸先がいいにゃ。これはなかなか有望株にゃ」
「ヒッ、ヒッ」
雅樂は引きつけを起こしたように、青い顔で息を短く呑みこんでいる。
ほんの少し、味見程度ならよいのでは。
しかし、あまりの空腹との戦いに負け、雅樂は目の前の誘惑に引きずられそうになった。
『一口だけ……万一味付けを間違えていたら、失礼になりますし……』
雅樂も今思い出したのだが、今日は確か山名家にやってくる何かと食を共にする、という日であった。
神様か何かよくわからないが、少しくらい味見……毒見をしても罰はあたらないのでは?
雅樂の中でするすると言い訳が結ばれていく。
では、と箸とお椀を手に持った矢先、突然裏の戸が開いた音がした。
『お、お母様かお婆様が見にいらしたのかしら?』
雅樂は、思わず身を固くする。
「こんばんにゃ~」
間の抜けた声が母屋の中に響いた。雅樂の母や祖母のものではない。奇妙な濁った声音だった。強いて言えば男のものだが、聞き覚えのない声である。
どうしていいかわからず、うろたえている内に何者かの気配がどんどん雅樂の居る部屋に近づいてきた。
「おばんですにゃ~」
声の主は器用に引き戸を開けて、のしのしと室内に侵入してくる。
「ねっ、ねっ、ね……ねこ?」
「返事が無いから勝手に上がらせてもらったにゃ。驚かせたら悪かったかにゃあ」
「ねこっ! 猫……」
雅樂の前にいるのは、猫であった。ただの猫ではない。大きさでいえば虎かライオンくらいはあるのではないだろうか。いや、もう少しあるかもしれない。
「いや、ほんとスマンにゃ。人間態は疲れるからにゃあ……あれっ? っていうかワシのこと見えとるの?」
混乱の極みにいる雅樂はまともに返事が出来ず、引きつった顔でブンブンと首を縦に振った。
巨大な猫は、気持ち良さそうにほぉーと唸り、顔を上下に緩ませる。
「幸先がいいにゃ。これはなかなか有望株にゃ」
「ヒッ、ヒッ」
雅樂は引きつけを起こしたように、青い顔で息を短く呑みこんでいる。
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