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16.激突
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「……もういい」
「おっ!」
一瞬わかってくれたか、と思ったのだが。
「これ以上話しても無駄みたい。今! この場所で! オトメを完全に私の眷属にする!」
乙女の希望は無残に打ち砕かれた。
「折角優しくしてあげようと思ったのに!」
「いや、ちょっと……」
反論の声を上げかけた乙女だったが、胸の辺りに思い切りミラの飛び蹴りを喰らって後方へ吹っ飛んだ。
『やべえっ』
呼吸が出来ない。不意打ちだったこともあり、乙女のダメージは深刻である。ミラの眷属にされかけ、強化されていなければ死んでいたかもしれない。
「くっそ……」
やっとのことで立ちあがった乙女だったが、すぐにミラの猛攻に晒される。拳や足が縦横無尽に襲い掛かってくるのだ。華奢なのに滅法力が強い。
さっきの飛び蹴りは空中から放たれたものだけに、超能力のような力だろうが、現在のミラの攻撃はおそらく単純な怪力によるものである。
乙女は背中でドアを開け、素早く玄関ホールに逃げた。
「すごいねっ! まだそんなに動けるんだ!」
哄笑とともに、ミラは空中を滑るように移動して追ってくる。
『これマジでやべえ。力はおんなじくらいかもしれないけど、向こうは空飛べるしな』
乙女が舌打ちし、物陰に隠れ何とか態勢を立て直そうとしていると、上空から
「さっさと気を失っちゃったほうが楽だよ」
と、ミラの声が聞こえてきた。
「あたしをボコして気絶してる間に血ぃ吸うつもりかよ!」
「ウィル・オー・ウィスプ」
乙女の呼びかけには答えず、ミラは何やら呪文のような文句を唱える。
すると、拳二個分くらいの光球が複数出現し、ふよふよと空中をさまよい始めた。
『さっきのやつか?』
脳裏に学生達の前で乱舞していた光がよぎった瞬間、乙女の方へ素早くそれが飛んでくる。
「あつっ! あだだだ! なんだこれ!?」
乙女の頭や腕等に光球が命中した。当たった箇所が痺れている。よくはわからないが、電気の塊のようなものらしい。
「あははっ! 隠れたって無駄なんだから」
ミラは階段周辺の宙に浮かび、高笑いしている。
『ちっきしょー! 飛べるからっていい気になりやがって!』
乙女の頭は瞬間的に沸騰した。
『こっちの力だって強くなってんだからな!』
乙女は、床を踏みしめている足に、ぐっと力を込める。
「こなくそ!」
乙女は、木製の床を思い切り蹴ってジャンプした。脚力が増大しているせいで、人間とは思えない強烈な跳躍である。
びっくりしているミラを足を掴み、地べたに引きずり降ろした。
「おとなしくしろ!」
乙女は馬乗りの体勢で、がっちりミラを足で抑え込み拳を振り上げる。
「っ!」
必死で肘を上げ顔をガードするミラを見て、乙女は我に返った。
「……?」
当然くると思っていた衝撃がいつまで経ってもこないので、ミラは不思議そうな目で腕の隙間からチラッと乙女の様子を窺う。
「いだだだ! 痛い痛い!」
次の瞬間、乙女の背中に先程の光球が二、三発命中する。重心が崩れた隙を狙ってミラはすばしっこく脱出した。
『クソッ! やっぱ子供は殴れねー……。多分ホントはもっと歳いってんだろうけど』
手を出す事を躊躇した自分に乙女が舌打ちしていると、ミラの勝ち誇った高笑いが聞こえてくる。
「甘い。甘いわねえオトメ」
ミラはもう空中に浮いてはいない。乙女が自分を打擲出来ない以上、距離を取る必要はないと判断したのだろう。
「でも、あなたのそういうところ好きよ」
言うが早いか、ミラは笑みがこぼれる口元から、尖った八重歯を覗かせて突進してきた。
「おっ!」
一瞬わかってくれたか、と思ったのだが。
「これ以上話しても無駄みたい。今! この場所で! オトメを完全に私の眷属にする!」
乙女の希望は無残に打ち砕かれた。
「折角優しくしてあげようと思ったのに!」
「いや、ちょっと……」
反論の声を上げかけた乙女だったが、胸の辺りに思い切りミラの飛び蹴りを喰らって後方へ吹っ飛んだ。
『やべえっ』
呼吸が出来ない。不意打ちだったこともあり、乙女のダメージは深刻である。ミラの眷属にされかけ、強化されていなければ死んでいたかもしれない。
「くっそ……」
やっとのことで立ちあがった乙女だったが、すぐにミラの猛攻に晒される。拳や足が縦横無尽に襲い掛かってくるのだ。華奢なのに滅法力が強い。
さっきの飛び蹴りは空中から放たれたものだけに、超能力のような力だろうが、現在のミラの攻撃はおそらく単純な怪力によるものである。
乙女は背中でドアを開け、素早く玄関ホールに逃げた。
「すごいねっ! まだそんなに動けるんだ!」
哄笑とともに、ミラは空中を滑るように移動して追ってくる。
『これマジでやべえ。力はおんなじくらいかもしれないけど、向こうは空飛べるしな』
乙女が舌打ちし、物陰に隠れ何とか態勢を立て直そうとしていると、上空から
「さっさと気を失っちゃったほうが楽だよ」
と、ミラの声が聞こえてきた。
「あたしをボコして気絶してる間に血ぃ吸うつもりかよ!」
「ウィル・オー・ウィスプ」
乙女の呼びかけには答えず、ミラは何やら呪文のような文句を唱える。
すると、拳二個分くらいの光球が複数出現し、ふよふよと空中をさまよい始めた。
『さっきのやつか?』
脳裏に学生達の前で乱舞していた光がよぎった瞬間、乙女の方へ素早くそれが飛んでくる。
「あつっ! あだだだ! なんだこれ!?」
乙女の頭や腕等に光球が命中した。当たった箇所が痺れている。よくはわからないが、電気の塊のようなものらしい。
「あははっ! 隠れたって無駄なんだから」
ミラは階段周辺の宙に浮かび、高笑いしている。
『ちっきしょー! 飛べるからっていい気になりやがって!』
乙女の頭は瞬間的に沸騰した。
『こっちの力だって強くなってんだからな!』
乙女は、床を踏みしめている足に、ぐっと力を込める。
「こなくそ!」
乙女は、木製の床を思い切り蹴ってジャンプした。脚力が増大しているせいで、人間とは思えない強烈な跳躍である。
びっくりしているミラを足を掴み、地べたに引きずり降ろした。
「おとなしくしろ!」
乙女は馬乗りの体勢で、がっちりミラを足で抑え込み拳を振り上げる。
「っ!」
必死で肘を上げ顔をガードするミラを見て、乙女は我に返った。
「……?」
当然くると思っていた衝撃がいつまで経ってもこないので、ミラは不思議そうな目で腕の隙間からチラッと乙女の様子を窺う。
「いだだだ! 痛い痛い!」
次の瞬間、乙女の背中に先程の光球が二、三発命中する。重心が崩れた隙を狙ってミラはすばしっこく脱出した。
『クソッ! やっぱ子供は殴れねー……。多分ホントはもっと歳いってんだろうけど』
手を出す事を躊躇した自分に乙女が舌打ちしていると、ミラの勝ち誇った高笑いが聞こえてくる。
「甘い。甘いわねえオトメ」
ミラはもう空中に浮いてはいない。乙女が自分を打擲出来ない以上、距離を取る必要はないと判断したのだろう。
「でも、あなたのそういうところ好きよ」
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