私以外居なくなってた―職場改革のはざまで

田中葵

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CHAPTER 1

■ 冒頭:いつもの日常(明るさの中に未来の影)

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昼下がりの職場は、今日もゆるく賑やかだった。

「ナコハさーん、これ食べます? 昨日の残りだけど美味しいよ」
「また? ありがとう、でも三日連続だよ? 絶対作りすぎでしょ」
「ほら、うちの母がさ、作る量の感覚バグってるんですよ」

そんな他愛もない会話が、午後の眠気をほどよく散らしてくれる。
社食なんて立派なものはないけれど、同僚がよく弁当を差し入れてくれるせいで、
この部署はいつも“腹が満ちて人間関係も満ちている場所”だった。

私は、クズミ ナコハ(42)。
器用に立ち回れるわけじゃない。
誰かに取り入る才能も、成果を数字で積み上げる力も、とくにない。

ただ、
「この職場の空気が好きだなあ」
と思いながら、静かに、淡々と、日々の仕事を回していた。

それで充分“充実”だった。
――2026年の、あの日までは。
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