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アホ共
冥福?それっておいしいの?(楊一家、鄭一家、趙一家)
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「やわらかな湯気」の続き
前の話URL(作者日記版/投稿版)
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〔はじめに〕
復讐もやり方でリーズナブルになるね☆
【人物紹介】
〈楊姉妹と趙一家〉
楊美鈴(ヤン ミーリン 63):楊家の三女で鄭浩傑の妻。5子あり。普段は温和だが…。中国籍。
趙瑛姫(チョウ エイヒ 67):旧姓、楊。美鈴の姉で楊家の次女。現金でガメつい。2子あり。帰化人。
両華玉(リャン カギョク 75):旧姓、楊。瑛姫たちの姉で楊家の長女。母を疎む。帰化人。
趙艾(チョウ アイ 31?):瑛姫たちの長女。奥ゆかしい。
趙憲(チョウ ケン 23?):瑛姫たちの長男。素直な青年。
趙達栄(チョウ タツエイ 70):瑛姫の夫。2子あり。朗らか。帰化人。
〈鄭一家〉
鄭浩傑(テイ コウケツ 62):美鈴の夫。5子あり。普段は優しい。中国籍。
鄭燐(テイ リン 45):美鈴たちの長女で勒の双子の姉。日本に帰化。率直。
鄭周(テイ シュウ 41):美鈴たちの次男。穏やかで冷静。
小幡葉(コハタ ヨウ 44):旧姓、鄭。美鈴たちの次女(養女)。小幡照彦の妻。
小幡翔(コハタ ショウ 13):葉の長女。小幡照彦の養女。
鄭勒(テイ ロク 45):美鈴の長男。クズ。
〈黒幕たち笑〉
楊婉(ヤン エン):元・楊家当主。養父(伯父)・玄鳳の権威を借り、悪徳の限りを尽くした新興成金の汚嬢が婆さんになった。ほとんどの子孫たちに禍根を残し、瑛姫にはなにがしかの財産を遺した。
楊玄鳳(ヤン ゲンホウ):元々・楊家成金当主。婉の養父をしていた伯父で元凶のジジイ。フィクサー的存在だった。
楊艙良(ヤン ソウリョウ):婉の父で玄鳳の弟。風見鶏。
〈他〉
(葉の肉親たち)
宋碧歌(ソウ ヘキカ 67):葉の生母。中国のドラマ女優。母性なく飲んだくれる快楽主義者。
鄭崙鳴(テイ ロンメイ 68):葉の生父。中国の芸能プロデューサー。冷たいが時流は読める。
【本文】
2023年8月、久々に親子の再会を果たした燐たちが行きつけのラーメン屋でダベって決めた「母方祖母・婉の墓参り」。当日は秋分の日で祝日なこともあって、ほとんどの家族がすぐOKした。
ただし、葉は
「あの昭和一ケタ糞婆ぁの骨になんか会いたくないわ。あんたらで行ってよ!
あと万一、リア親来たら速攻で帰るから!」
そこに翔も乗ってきて
「はじめからラスボス戦☆」
周が
「なんか嫌な予感が……」
と、注釈はついたが。
☆☆☆
当日午前10時過ぎ。吾妻橋駅近くにある3階建てだが地味な佇まいのビルのがらんとした感じの入口に集まる。まだ暑さは残って、汗ばむ。浩傑が検索し辿りついたネットの案内によれば、近年のビル型納骨堂の中ではわりと老舗の部類だと知った。
「皆んな、来たね。まだ集まってないのは…」
「いないよ」
「オーケー♪」
美鈴は、紺のツーピースに珍しく黒のオープントゥのサンダル。そうしないと蒸れがひどくなり痒みを増すからだという。
燐は、黒い麻地の長いベストを羽織り下は
浩傑は、漆黒の縦ストライプスーツセットに黒いマット仕上げの靴。
葉は、ジルスチュアートの黒ツーピースにアウトレットで買ったDIANAの黒サンダル。
翔は、スカート特有のヒラヒラ感が苦手で、レンタルサイトで借りた男子用のグレーのスーツセットに黒のスポーツシューズ。
1階奥にあるこれまた狭いエレベーターホールでしばらく待ち、着いたらすぐ乗って2階で降り、受付前へ。
「ご足労ありがとうございます。」
降りるなり案内係の男性、年頃は四十代そこそこと思われる彼に声をかけられた。ちなみに真っ白い歯。
見るからに腰が低く丁寧かつ爽やかに、
「楊様のご遺族の方々ですね。こちらへどうぞ」
実は美鈴がオンラインで来訪予約していた。ぬかりない。
燐がサラッと、
「ええ、いつもお世話になっております。本日もよろしくお願いします」
これに続けて浩傑と美鈴もそれぞれ、
「なかなか来れずに、すみません」
「姉一家にもよろしくお伝えください」
姉一家とは、美鈴のすぐ上の実姉・趙(旧姓、楊(ヤン))瑛姫(エイヒ)とその子供たちのこと。一女一男、ともに成人していて、定期的にこの近代的な造りの墓所を訪ねている。このことについては、葉と翔と勒を除く鄭一家は頭の下がる思いを抱えてきた。
案内係は営業スマイルで、
「そろそろ、行きましょうか」
係を含む一行は再度エレベーターに乗り、3階に着く。
とほぼ同時に、もう一つ隣のエレベーターも同じ階で止まった。自動で開いたドアから見える人影には、見覚えのある成人3人の背格好と佇まいが。
それもそのはず。
趙家の瑛姫とその娘と息子、名は艾(アイ)と憲(ケン)。
美鈴と燐はほとんど同時に
「エイヒ!」
少し後に葉も、
「叔母さんっ!」
周と浩傑、それぞれの口から思わず、
「ぁあ~~!」
「はち合わせか…」
瑛姫は、黒いスリーピースに同じく黒のローヒール。
艾は、黒のリクルートスーツに黒のケミカルシューズ。
憲は、ダークグレーのスーツセットに焦茶の革靴。
あとから駆けつけた趙一家と先に来ていた鄭一家。挨拶をし、瑛姫から、
「ここでバッタリ会うとは思わなくて!あら!コウケツ、あんたも来たのね。久々~」
浩傑にとっては、話を振ってもらえるのはありがたいが、ますますパワーアップした厚かましさが鼻につく…。内心冷や汗かきつつ、
「いやぁ、何やかや元気にやってますよ。お構いなく」
美鈴からは、
「会うならその前に言ってよ~!」
ひとしきり話したら、皆で祭壇に身体を向ける。
本来なら祈る・・・段取りのはずが、なぜか瑛姫親子たちの他は“誰も”合掌しようとしない。
美鈴と浩傑は気がゆるみバテたせいか、両腕ごとダランと下げ、燐は俯いているが、両手を体の前面に持って行き左手を上に重ねる。葉は右手に持つスマホで時刻を確かめ、左手は翔の右手と繋がっている。周はラフに立ったまま、簡素にまとまった祭壇を見つめている。
瑛姫の子供たちはともに少し戸惑った。憲は、素直に尋ねた。
「あの、両方の手の平は合わせないんですか?」
これに鄭家の燐が、
「あら?コノ婆の冥福なんか祈らないわよ。ね、ミーリン」
美鈴はチラッと燐と憲たちに目配せして、
「少なくとも敬ったり供養したりするつもりは無いですから。憲サン、こんな答えでいいかしら?」
「は、はい。」
憲は、こう答えるしか出来なかった。
さらに被さるように鄭家側から、
「冥福?それってお・い・し・い の?」
「アンタ大福じゃないんだからw」
「www」
憲は、ただただ、目を丸くするしかなかった…
話題はもちろん切れることなく
葉から、
「で、当該ババアをどう思うよ?」
周がそれに対して、
「嫌い」
葉からすぐに、
「だよな」
美鈴からも、
「いなくなって良かった」
燐も、
「それしか出ない」
浩傑と翔、
「……」
何とも酷い言われようだが、婉に自分以外を思いやる心は微塵もなかった。
引き替えに沢山持っていたのは、類まれと思いたいほどの傲慢さ。その根拠はどこにあったのだろう?
まず語り出したのは美鈴。割と大きめの声で、
「もうイロイロイロイロイロイロあり過ぎむかっ(怒り)最悪だったのは……あっち(本国)にいた頃…十代だった私たちを、こっち(日本)で言うとこの旧◯線街から移ったお店へ入れて夜中まで働かせるって……今じゃ間違いなく犯罪だわ。オゾマシイ」最後は溜め息も混じった。
次に瑛姫。いつになくしんみりと、
「あのときの私たちの心は死んでたわ。思い詰めて水の中の世界へ行きたかった……ねぇ、ミーリン」
他の皆の顔から血の気がどんどん引いている。
と同時に、同じ階に来ている他家の訪問者たちからもあからさまに嫌な顔をされ、浩傑と燐、葉の3人が彼らのいる方向へ身をかがめて謝った。
そして偶然年の順で浩傑、燐、葉、周、ついでに翔と続く。
浩傑からは困り果てた様子で、
「訳わからなすぎて度々頭が宇宙行きかけたwこうにも読めなさすぎたら何も返せんわ。ミーリン、本当に済まんな、力になれなくて……」
美鈴は首を横に振りながら、浩傑の手を自分の両手で包み込んだ。
燐は投げやりに、
「私の双子の弟、勒っていうんだけど。アイツにだけチヤホヤして、私たち女には酷なくらい嫌がらせオンパレード。狂気じみてたわ」
この後、無意識に口もとに寄せたハンカチをきつく噛んでいた。もともと、咳が出たときに口元へ当てるために持っていたもの。
葉は徐々に怒りが込み上げたのか、荒い口調で、
「これまで生きてきて同性からセクハラされたのコノ婆からだけだった。体を舐め回すように見られておまけに“どっかの後添いに成りな”だってよ。アリエナイ」と、言い捨てた。
しかしながら皮肉なことにこの指摘だけは的中してしまった。後々、葉が惚れた今の相手、小幡照彦は精算済みとはいえ婚姻歴があるからである。
翔がすぐに入ってきて、関係なさそうなことから話し始めた。
「ねーねー、ママ。あたし小1のころの作文で「うちのおかあさんはりょうりをしません。」って書き出したやつがあって、あの頃は朝一…家のパソコン前の仕事で疲れてるから?って思ってたけど、もしかしてこれ、おばあちゃんも、ひいばあちゃんもそうだったの?」
葉は苦笑いしながらら
「ほ、ほんとにあの頃は、ごめんね。私もミーリンも料理、特に手の込んだのは苦手で…今でも下手なのよ。翔には今さらかもしれないけど、これからなるべく頑張って作るから」
話題に出た美鈴もおずおずと、
「昔から…親族の出入りが多くて、いつもガーッ(右手で業務用の大ぶりなお玉で料理を混ぜ)て作るから普段も急いじゃうのよね。ダメって思うんだけど…翔ちゃんの紙切れでのひいおばあちゃんは・・・料理作れなかったの。夫とのケンカで右手を痛めてからほとんど動かなくなったから。こればっかりは、ね‥」
翔はうつ向いたまま、黙ってしまった。
元々は核家族だった美鈴たちのところへ、長女の華玉(カギョク)宅を追い出された婉が来て実質本家にされてしまった数年がある。これに浩傑と燐が
「ウチに来たがるのは身内の連中は当然、葉が新婚の頃は月岡サンのとこのマスタケまで顔出してたな。酒甕入りの紹興酒目当てに(笑)」
「だった!酒飲みたち嗅ぎつけるのスゴいからw」
彼を知る者は皆、めいめいに吹き出した。
ツキオカマスタケは、葉の元内縁夫の親戚の一人。浩傑とはとても親しい間柄だが、性的に絡んできた婉のことは
“オレにまで色目使いやがってあのアバズレが”
と腐した。もちろんそこから先には進んでいない。ちなみに普段のマナーは良かった人。
葉と周が入って、
「マスタケさん、いつだったか子どもたちにアマゾンギフトカードくれたっけ、アホっぽく見せて案外いい人だよね、あの人。いつも笑ってたよね」
「諒介君、照れながら受けとって「あり、が、とう…」って。かわいかったなぁ」
ここで翔も、
「あたしもあのとき同じのもらったけど、アイツ使わないで無くした。アホがボケーっとした顔」
周がとっさに翔をなだめにかかったが遅く、翔は美鈴のそばへ行ってしまった。
ここで瑛姫がなにげなく…
「ええと。さっきまでしてた話に戻すけど、母はたまに、気に食わない相手に出す主菜の皿に
軽い劇薬、たぶんしびれ薬っぽい粉状のものをふりかけて使用人に出させてた。コッソリ覗いてたのバレてたかも」
美鈴をはじめ、当時を知る者たちは皆、苦笑した。
このとき、艾と憲の表情は固まり、しばらく動かせなかった。
周は戸惑いつつも、口を開いた。
「僕は……勒兄と比べられて、ヨウ姉と同じようにイヤらしい目つきをされて、股間に手を伸ばされ“これならウチも安泰安泰♪”だとさ。さっき父ちゃんも言ってた“訳わからなすぎて”…一緒だった」
話しながら、微かに体が震えていた。
一通り話し終えたタイミングで、恰幅のいい一人の参拝者がスマートな足取りで来た。鼻下に整えた髭を少し残し、英国仕立ての焦茶色のスーツセットに身を包んだ老紳士。皆、一目で誰なのか判別できた。瑛姫の夫、趙達栄(タツエイ)。皆から“タッちゃん”と呼ばれている。ちなみに趙家は一家で日本に帰化した。
彼は一礼のあと、皆に一言、
「とても遅くなりました」
皆、その颯爽とした雰囲気に圧倒され、しばらく場が静かになった。
「大体の流れはLINEのトークルームでつかみました。燐さん、葉さんありがとう!」
彼女たちはどちらも、明るく会釈をした。
そして、他の面々はスマホを取り出して楊家のトークルームを読みはじめた。
達栄は、葉からのリクエストに答える形で、
「婉婆さんがああなったのは、日本と中国の間の交易や貿易でひと財産を築いた成金養父、まぁ…元は伯父なんだけど、ゲンホウ老師(センセイ)の後ろ盾と、当時の中国に巣食っていた表向き共産主義……実は世界のリーダーになりたがる考えが特に流行った追い風を得て、そこに根っからワガママで動じないところが行き過ぎて“周りにあるあらゆるものは私の好きにできる“と錯覚。これが物だけでなく人にも及んで、身内をはじめ周囲の反感を招いて本国から追い出されちゃった。で、ここまで分かったかな?」
「分かった。だからアノ人マジで仁王立ちして私たち若い連中を見下して偉そうだったのか…サイテー」と、葉。
達栄は葉に目でOKの合図をした。
隣で聞いていた燐と憲はそれぞれ、
「その話、美鈴からある程度聞いてましたが、やはりそうだったんですね……不条理だわ」
「起点はそこなんですね。それなら彼女は他国に行けて暮らせているはずですよね?なぜ日本に来たんでしょう?」
達栄は少し考えをまとめてから、
「それは燐サンのおっしゃる通りで。まぁ、アッチじゃよくいるんだけどね。こういう人。で、憲。君が婉婆さんの立場ならどうする?」
憲は一瞬詰まったが、何とか、
「僕…が彼女なら、本国の田舎か目立たないところへ移り住むかな。雑音が耐えられないと思うから……」
ここで達栄、もう一捻りし、
「う~ん、、、それがダメならどうする?」
憲…
「仕方がなくなるから、本国から地続きのところの国境の検問で隣国へ移れるよう食い下がっても交渉すると思います」
と、言い終わった憲の余裕のなさを見た達栄は、
「ここまでよくついて来てくれた。成長したな、憲」
というのが先か、讃える意味で軽く上体を近づけ抱き合うのが先か、そこに親子の、いや、大人同士の励ましの流れを、葉と周は見逃さなかった。
そのどちらかが、
「ウラヤマぴかぴか(新しい)」と微かにつぶやく。
ここから、皆にスッカリ忘れ去られていた「艾と憲の見解」も聞きたい、と美鈴からお願いして話してもらった。
少し改まって頬が紅潮している艾から
「知らなかったことが次々と出てきて、まとまりきっていません…再会できるときに、また、お聞かせ願えましたら、よろしくお願いします」
深々と礼をして憲へ回す。
憲が、これまでに出されたことをかいつまむように話す。
「話をまとめると、僕たちの祖母が、かつて長い間ずっと皆さんに多大な迷惑をかけて、皆さんは一切許すつもりはない。ということですね。今までそのようには思いもしなかったので……持ち帰ってよく考えることにします。言い方に配慮が足りなかったらすみません」
皆、めいめいに
“来てくれただけでも嬉しいよ”
“機会を設けて、食事会でも(笑)”
のようなことを話し、解散の運びに。
美鈴から、案内係を務めた彼に
「先ほどはお心遣いありがとうございました。また、よろしくお願いします」
彼からは
「本日は、ありがとうございました。またのご来拝をお待ちします」
☆☆
墓所で散々くだ巻きまくった帰りに寄った鄙びたたこ焼き屋。ここでビールビール。浩傑は何故か一滴も飲まず、美鈴と燐と周はそれぞれ1杯、葉がなんとハイピッチで3杯空けた。やっぱ健在!この子の胃…(by燐)
そして彼女からおノロケ爆弾発言が…
「照彦さんの前じゃまだ大人しくしてるから~🥰💕イイ歳した大人がブリっ子って思われても気にしないっぴかぴか(新しい)ぴかぴか(新しい)ぴかぴか(新しい)」
他の皆は一様に、呆れた。中でも周は軽く引きながら
「ヨウ姉、こんなんじゃなかったよな…」
美鈴も
「何か変よね……あ!そういえば耀珠、アノ人、似てたわ婉婆に」
耀珠。葉の実母である。日本で言うなら真◯よ◯子。本国では、プライベートはほとんどアレに近いが、中堅のドラマ女優の碧歌(ヘキカ)として知られている。しかし、今では原型を留めないほど崩れて、どブスがバレた…。それでも葉にはシビアな実父ゆずりの冷静さも入っているはず。どうして?と美鈴は首をかしげた。
本当に恐ろしいのは、血の繋がりよりも生きざまの方かもしれない、と周は思い、隣りにいた燐と頷き合った。
【終】
と、見せかけて
まだあります。
☆☆
瑛姫と美鈴と燐は、
参列した男ども & ソラマチへ行く葉母娘 & 用事のある艾と別れて、近くにある喫茶店へ入った。
そして、美鈴が水を一気に飲み干したあと瑛姫に訊ねた。
「どうしてアノ女の墓なんて世話してるの?ずっとそれが引っかかってて。」
瑛姫は思わず目を丸くして、
「ぶっちゃけ一言で言えばババアに買収されたのよ。金目のモノと不動産。あと前に見せた清朝時代の大ぶりな真珠のネックレス。アノ人の生前に譲ってもらったの。私としてはコレでチャラかな~~~」
一転して、美鈴がおったまげた。
燐は表情一つ動かすことなく、瑛姫に
「納骨堂の更新が来たら、どうされるおつもりですか?」
瑛姫は
「まぁ私たちがアノ骨の面倒を放棄するのは、楊家を見限ったときだから♡そうなったらミーリン、アンタにバトンタッチよ☆あ!その前(個別管理の切れるとき)に合葬されちゃうか(笑)」
いかにもその後「オ~~ホホホ♪♪♪」なんて言いそうな高らかさで笑う瑛姫のあっけらかんさに、美鈴と燐は
“やっぱりエイヒ健在だ”
と認識を新たにした。
(終)
ノートノート3:
近いようでいて遠慮がちにもなる距離感
合掌の意味について
ビルディングの形をしたお墓(ビル型納骨堂)について
鄭一家側と楊一家側の温度差、隔たりの大きさ
―― cahier ――
たくましいわ!とくに女たち。
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〔はじめに〕
復讐もやり方でリーズナブルになるね☆
【人物紹介】
〈楊姉妹と趙一家〉
楊美鈴(ヤン ミーリン 63):楊家の三女で鄭浩傑の妻。5子あり。普段は温和だが…。中国籍。
趙瑛姫(チョウ エイヒ 67):旧姓、楊。美鈴の姉で楊家の次女。現金でガメつい。2子あり。帰化人。
両華玉(リャン カギョク 75):旧姓、楊。瑛姫たちの姉で楊家の長女。母を疎む。帰化人。
趙艾(チョウ アイ 31?):瑛姫たちの長女。奥ゆかしい。
趙憲(チョウ ケン 23?):瑛姫たちの長男。素直な青年。
趙達栄(チョウ タツエイ 70):瑛姫の夫。2子あり。朗らか。帰化人。
〈鄭一家〉
鄭浩傑(テイ コウケツ 62):美鈴の夫。5子あり。普段は優しい。中国籍。
鄭燐(テイ リン 45):美鈴たちの長女で勒の双子の姉。日本に帰化。率直。
鄭周(テイ シュウ 41):美鈴たちの次男。穏やかで冷静。
小幡葉(コハタ ヨウ 44):旧姓、鄭。美鈴たちの次女(養女)。小幡照彦の妻。
小幡翔(コハタ ショウ 13):葉の長女。小幡照彦の養女。
鄭勒(テイ ロク 45):美鈴の長男。クズ。
〈黒幕たち笑〉
楊婉(ヤン エン):元・楊家当主。養父(伯父)・玄鳳の権威を借り、悪徳の限りを尽くした新興成金の汚嬢が婆さんになった。ほとんどの子孫たちに禍根を残し、瑛姫にはなにがしかの財産を遺した。
楊玄鳳(ヤン ゲンホウ):元々・楊家成金当主。婉の養父をしていた伯父で元凶のジジイ。フィクサー的存在だった。
楊艙良(ヤン ソウリョウ):婉の父で玄鳳の弟。風見鶏。
〈他〉
(葉の肉親たち)
宋碧歌(ソウ ヘキカ 67):葉の生母。中国のドラマ女優。母性なく飲んだくれる快楽主義者。
鄭崙鳴(テイ ロンメイ 68):葉の生父。中国の芸能プロデューサー。冷たいが時流は読める。
【本文】
2023年8月、久々に親子の再会を果たした燐たちが行きつけのラーメン屋でダベって決めた「母方祖母・婉の墓参り」。当日は秋分の日で祝日なこともあって、ほとんどの家族がすぐOKした。
ただし、葉は
「あの昭和一ケタ糞婆ぁの骨になんか会いたくないわ。あんたらで行ってよ!
あと万一、リア親来たら速攻で帰るから!」
そこに翔も乗ってきて
「はじめからラスボス戦☆」
周が
「なんか嫌な予感が……」
と、注釈はついたが。
☆☆☆
当日午前10時過ぎ。吾妻橋駅近くにある3階建てだが地味な佇まいのビルのがらんとした感じの入口に集まる。まだ暑さは残って、汗ばむ。浩傑が検索し辿りついたネットの案内によれば、近年のビル型納骨堂の中ではわりと老舗の部類だと知った。
「皆んな、来たね。まだ集まってないのは…」
「いないよ」
「オーケー♪」
美鈴は、紺のツーピースに珍しく黒のオープントゥのサンダル。そうしないと蒸れがひどくなり痒みを増すからだという。
燐は、黒い麻地の長いベストを羽織り下は
浩傑は、漆黒の縦ストライプスーツセットに黒いマット仕上げの靴。
葉は、ジルスチュアートの黒ツーピースにアウトレットで買ったDIANAの黒サンダル。
翔は、スカート特有のヒラヒラ感が苦手で、レンタルサイトで借りた男子用のグレーのスーツセットに黒のスポーツシューズ。
1階奥にあるこれまた狭いエレベーターホールでしばらく待ち、着いたらすぐ乗って2階で降り、受付前へ。
「ご足労ありがとうございます。」
降りるなり案内係の男性、年頃は四十代そこそこと思われる彼に声をかけられた。ちなみに真っ白い歯。
見るからに腰が低く丁寧かつ爽やかに、
「楊様のご遺族の方々ですね。こちらへどうぞ」
実は美鈴がオンラインで来訪予約していた。ぬかりない。
燐がサラッと、
「ええ、いつもお世話になっております。本日もよろしくお願いします」
これに続けて浩傑と美鈴もそれぞれ、
「なかなか来れずに、すみません」
「姉一家にもよろしくお伝えください」
姉一家とは、美鈴のすぐ上の実姉・趙(旧姓、楊(ヤン))瑛姫(エイヒ)とその子供たちのこと。一女一男、ともに成人していて、定期的にこの近代的な造りの墓所を訪ねている。このことについては、葉と翔と勒を除く鄭一家は頭の下がる思いを抱えてきた。
案内係は営業スマイルで、
「そろそろ、行きましょうか」
係を含む一行は再度エレベーターに乗り、3階に着く。
とほぼ同時に、もう一つ隣のエレベーターも同じ階で止まった。自動で開いたドアから見える人影には、見覚えのある成人3人の背格好と佇まいが。
それもそのはず。
趙家の瑛姫とその娘と息子、名は艾(アイ)と憲(ケン)。
美鈴と燐はほとんど同時に
「エイヒ!」
少し後に葉も、
「叔母さんっ!」
周と浩傑、それぞれの口から思わず、
「ぁあ~~!」
「はち合わせか…」
瑛姫は、黒いスリーピースに同じく黒のローヒール。
艾は、黒のリクルートスーツに黒のケミカルシューズ。
憲は、ダークグレーのスーツセットに焦茶の革靴。
あとから駆けつけた趙一家と先に来ていた鄭一家。挨拶をし、瑛姫から、
「ここでバッタリ会うとは思わなくて!あら!コウケツ、あんたも来たのね。久々~」
浩傑にとっては、話を振ってもらえるのはありがたいが、ますますパワーアップした厚かましさが鼻につく…。内心冷や汗かきつつ、
「いやぁ、何やかや元気にやってますよ。お構いなく」
美鈴からは、
「会うならその前に言ってよ~!」
ひとしきり話したら、皆で祭壇に身体を向ける。
本来なら祈る・・・段取りのはずが、なぜか瑛姫親子たちの他は“誰も”合掌しようとしない。
美鈴と浩傑は気がゆるみバテたせいか、両腕ごとダランと下げ、燐は俯いているが、両手を体の前面に持って行き左手を上に重ねる。葉は右手に持つスマホで時刻を確かめ、左手は翔の右手と繋がっている。周はラフに立ったまま、簡素にまとまった祭壇を見つめている。
瑛姫の子供たちはともに少し戸惑った。憲は、素直に尋ねた。
「あの、両方の手の平は合わせないんですか?」
これに鄭家の燐が、
「あら?コノ婆の冥福なんか祈らないわよ。ね、ミーリン」
美鈴はチラッと燐と憲たちに目配せして、
「少なくとも敬ったり供養したりするつもりは無いですから。憲サン、こんな答えでいいかしら?」
「は、はい。」
憲は、こう答えるしか出来なかった。
さらに被さるように鄭家側から、
「冥福?それってお・い・し・い の?」
「アンタ大福じゃないんだからw」
「www」
憲は、ただただ、目を丸くするしかなかった…
話題はもちろん切れることなく
葉から、
「で、当該ババアをどう思うよ?」
周がそれに対して、
「嫌い」
葉からすぐに、
「だよな」
美鈴からも、
「いなくなって良かった」
燐も、
「それしか出ない」
浩傑と翔、
「……」
何とも酷い言われようだが、婉に自分以外を思いやる心は微塵もなかった。
引き替えに沢山持っていたのは、類まれと思いたいほどの傲慢さ。その根拠はどこにあったのだろう?
まず語り出したのは美鈴。割と大きめの声で、
「もうイロイロイロイロイロイロあり過ぎむかっ(怒り)最悪だったのは……あっち(本国)にいた頃…十代だった私たちを、こっち(日本)で言うとこの旧◯線街から移ったお店へ入れて夜中まで働かせるって……今じゃ間違いなく犯罪だわ。オゾマシイ」最後は溜め息も混じった。
次に瑛姫。いつになくしんみりと、
「あのときの私たちの心は死んでたわ。思い詰めて水の中の世界へ行きたかった……ねぇ、ミーリン」
他の皆の顔から血の気がどんどん引いている。
と同時に、同じ階に来ている他家の訪問者たちからもあからさまに嫌な顔をされ、浩傑と燐、葉の3人が彼らのいる方向へ身をかがめて謝った。
そして偶然年の順で浩傑、燐、葉、周、ついでに翔と続く。
浩傑からは困り果てた様子で、
「訳わからなすぎて度々頭が宇宙行きかけたwこうにも読めなさすぎたら何も返せんわ。ミーリン、本当に済まんな、力になれなくて……」
美鈴は首を横に振りながら、浩傑の手を自分の両手で包み込んだ。
燐は投げやりに、
「私の双子の弟、勒っていうんだけど。アイツにだけチヤホヤして、私たち女には酷なくらい嫌がらせオンパレード。狂気じみてたわ」
この後、無意識に口もとに寄せたハンカチをきつく噛んでいた。もともと、咳が出たときに口元へ当てるために持っていたもの。
葉は徐々に怒りが込み上げたのか、荒い口調で、
「これまで生きてきて同性からセクハラされたのコノ婆からだけだった。体を舐め回すように見られておまけに“どっかの後添いに成りな”だってよ。アリエナイ」と、言い捨てた。
しかしながら皮肉なことにこの指摘だけは的中してしまった。後々、葉が惚れた今の相手、小幡照彦は精算済みとはいえ婚姻歴があるからである。
翔がすぐに入ってきて、関係なさそうなことから話し始めた。
「ねーねー、ママ。あたし小1のころの作文で「うちのおかあさんはりょうりをしません。」って書き出したやつがあって、あの頃は朝一…家のパソコン前の仕事で疲れてるから?って思ってたけど、もしかしてこれ、おばあちゃんも、ひいばあちゃんもそうだったの?」
葉は苦笑いしながらら
「ほ、ほんとにあの頃は、ごめんね。私もミーリンも料理、特に手の込んだのは苦手で…今でも下手なのよ。翔には今さらかもしれないけど、これからなるべく頑張って作るから」
話題に出た美鈴もおずおずと、
「昔から…親族の出入りが多くて、いつもガーッ(右手で業務用の大ぶりなお玉で料理を混ぜ)て作るから普段も急いじゃうのよね。ダメって思うんだけど…翔ちゃんの紙切れでのひいおばあちゃんは・・・料理作れなかったの。夫とのケンカで右手を痛めてからほとんど動かなくなったから。こればっかりは、ね‥」
翔はうつ向いたまま、黙ってしまった。
元々は核家族だった美鈴たちのところへ、長女の華玉(カギョク)宅を追い出された婉が来て実質本家にされてしまった数年がある。これに浩傑と燐が
「ウチに来たがるのは身内の連中は当然、葉が新婚の頃は月岡サンのとこのマスタケまで顔出してたな。酒甕入りの紹興酒目当てに(笑)」
「だった!酒飲みたち嗅ぎつけるのスゴいからw」
彼を知る者は皆、めいめいに吹き出した。
ツキオカマスタケは、葉の元内縁夫の親戚の一人。浩傑とはとても親しい間柄だが、性的に絡んできた婉のことは
“オレにまで色目使いやがってあのアバズレが”
と腐した。もちろんそこから先には進んでいない。ちなみに普段のマナーは良かった人。
葉と周が入って、
「マスタケさん、いつだったか子どもたちにアマゾンギフトカードくれたっけ、アホっぽく見せて案外いい人だよね、あの人。いつも笑ってたよね」
「諒介君、照れながら受けとって「あり、が、とう…」って。かわいかったなぁ」
ここで翔も、
「あたしもあのとき同じのもらったけど、アイツ使わないで無くした。アホがボケーっとした顔」
周がとっさに翔をなだめにかかったが遅く、翔は美鈴のそばへ行ってしまった。
ここで瑛姫がなにげなく…
「ええと。さっきまでしてた話に戻すけど、母はたまに、気に食わない相手に出す主菜の皿に
軽い劇薬、たぶんしびれ薬っぽい粉状のものをふりかけて使用人に出させてた。コッソリ覗いてたのバレてたかも」
美鈴をはじめ、当時を知る者たちは皆、苦笑した。
このとき、艾と憲の表情は固まり、しばらく動かせなかった。
周は戸惑いつつも、口を開いた。
「僕は……勒兄と比べられて、ヨウ姉と同じようにイヤらしい目つきをされて、股間に手を伸ばされ“これならウチも安泰安泰♪”だとさ。さっき父ちゃんも言ってた“訳わからなすぎて”…一緒だった」
話しながら、微かに体が震えていた。
一通り話し終えたタイミングで、恰幅のいい一人の参拝者がスマートな足取りで来た。鼻下に整えた髭を少し残し、英国仕立ての焦茶色のスーツセットに身を包んだ老紳士。皆、一目で誰なのか判別できた。瑛姫の夫、趙達栄(タツエイ)。皆から“タッちゃん”と呼ばれている。ちなみに趙家は一家で日本に帰化した。
彼は一礼のあと、皆に一言、
「とても遅くなりました」
皆、その颯爽とした雰囲気に圧倒され、しばらく場が静かになった。
「大体の流れはLINEのトークルームでつかみました。燐さん、葉さんありがとう!」
彼女たちはどちらも、明るく会釈をした。
そして、他の面々はスマホを取り出して楊家のトークルームを読みはじめた。
達栄は、葉からのリクエストに答える形で、
「婉婆さんがああなったのは、日本と中国の間の交易や貿易でひと財産を築いた成金養父、まぁ…元は伯父なんだけど、ゲンホウ老師(センセイ)の後ろ盾と、当時の中国に巣食っていた表向き共産主義……実は世界のリーダーになりたがる考えが特に流行った追い風を得て、そこに根っからワガママで動じないところが行き過ぎて“周りにあるあらゆるものは私の好きにできる“と錯覚。これが物だけでなく人にも及んで、身内をはじめ周囲の反感を招いて本国から追い出されちゃった。で、ここまで分かったかな?」
「分かった。だからアノ人マジで仁王立ちして私たち若い連中を見下して偉そうだったのか…サイテー」と、葉。
達栄は葉に目でOKの合図をした。
隣で聞いていた燐と憲はそれぞれ、
「その話、美鈴からある程度聞いてましたが、やはりそうだったんですね……不条理だわ」
「起点はそこなんですね。それなら彼女は他国に行けて暮らせているはずですよね?なぜ日本に来たんでしょう?」
達栄は少し考えをまとめてから、
「それは燐サンのおっしゃる通りで。まぁ、アッチじゃよくいるんだけどね。こういう人。で、憲。君が婉婆さんの立場ならどうする?」
憲は一瞬詰まったが、何とか、
「僕…が彼女なら、本国の田舎か目立たないところへ移り住むかな。雑音が耐えられないと思うから……」
ここで達栄、もう一捻りし、
「う~ん、、、それがダメならどうする?」
憲…
「仕方がなくなるから、本国から地続きのところの国境の検問で隣国へ移れるよう食い下がっても交渉すると思います」
と、言い終わった憲の余裕のなさを見た達栄は、
「ここまでよくついて来てくれた。成長したな、憲」
というのが先か、讃える意味で軽く上体を近づけ抱き合うのが先か、そこに親子の、いや、大人同士の励ましの流れを、葉と周は見逃さなかった。
そのどちらかが、
「ウラヤマぴかぴか(新しい)」と微かにつぶやく。
ここから、皆にスッカリ忘れ去られていた「艾と憲の見解」も聞きたい、と美鈴からお願いして話してもらった。
少し改まって頬が紅潮している艾から
「知らなかったことが次々と出てきて、まとまりきっていません…再会できるときに、また、お聞かせ願えましたら、よろしくお願いします」
深々と礼をして憲へ回す。
憲が、これまでに出されたことをかいつまむように話す。
「話をまとめると、僕たちの祖母が、かつて長い間ずっと皆さんに多大な迷惑をかけて、皆さんは一切許すつもりはない。ということですね。今までそのようには思いもしなかったので……持ち帰ってよく考えることにします。言い方に配慮が足りなかったらすみません」
皆、めいめいに
“来てくれただけでも嬉しいよ”
“機会を設けて、食事会でも(笑)”
のようなことを話し、解散の運びに。
美鈴から、案内係を務めた彼に
「先ほどはお心遣いありがとうございました。また、よろしくお願いします」
彼からは
「本日は、ありがとうございました。またのご来拝をお待ちします」
☆☆
墓所で散々くだ巻きまくった帰りに寄った鄙びたたこ焼き屋。ここでビールビール。浩傑は何故か一滴も飲まず、美鈴と燐と周はそれぞれ1杯、葉がなんとハイピッチで3杯空けた。やっぱ健在!この子の胃…(by燐)
そして彼女からおノロケ爆弾発言が…
「照彦さんの前じゃまだ大人しくしてるから~🥰💕イイ歳した大人がブリっ子って思われても気にしないっぴかぴか(新しい)ぴかぴか(新しい)ぴかぴか(新しい)」
他の皆は一様に、呆れた。中でも周は軽く引きながら
「ヨウ姉、こんなんじゃなかったよな…」
美鈴も
「何か変よね……あ!そういえば耀珠、アノ人、似てたわ婉婆に」
耀珠。葉の実母である。日本で言うなら真◯よ◯子。本国では、プライベートはほとんどアレに近いが、中堅のドラマ女優の碧歌(ヘキカ)として知られている。しかし、今では原型を留めないほど崩れて、どブスがバレた…。それでも葉にはシビアな実父ゆずりの冷静さも入っているはず。どうして?と美鈴は首をかしげた。
本当に恐ろしいのは、血の繋がりよりも生きざまの方かもしれない、と周は思い、隣りにいた燐と頷き合った。
【終】
と、見せかけて
まだあります。
☆☆
瑛姫と美鈴と燐は、
参列した男ども & ソラマチへ行く葉母娘 & 用事のある艾と別れて、近くにある喫茶店へ入った。
そして、美鈴が水を一気に飲み干したあと瑛姫に訊ねた。
「どうしてアノ女の墓なんて世話してるの?ずっとそれが引っかかってて。」
瑛姫は思わず目を丸くして、
「ぶっちゃけ一言で言えばババアに買収されたのよ。金目のモノと不動産。あと前に見せた清朝時代の大ぶりな真珠のネックレス。アノ人の生前に譲ってもらったの。私としてはコレでチャラかな~~~」
一転して、美鈴がおったまげた。
燐は表情一つ動かすことなく、瑛姫に
「納骨堂の更新が来たら、どうされるおつもりですか?」
瑛姫は
「まぁ私たちがアノ骨の面倒を放棄するのは、楊家を見限ったときだから♡そうなったらミーリン、アンタにバトンタッチよ☆あ!その前(個別管理の切れるとき)に合葬されちゃうか(笑)」
いかにもその後「オ~~ホホホ♪♪♪」なんて言いそうな高らかさで笑う瑛姫のあっけらかんさに、美鈴と燐は
“やっぱりエイヒ健在だ”
と認識を新たにした。
(終)
ノートノート3:
近いようでいて遠慮がちにもなる距離感
合掌の意味について
ビルディングの形をしたお墓(ビル型納骨堂)について
鄭一家側と楊一家側の温度差、隔たりの大きさ
―― cahier ――
たくましいわ!とくに女たち。
0
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