氷解ーperiod

田中葵

文字の大きさ
27 / 38
そして、現在

京都から東京まで(里世視点・他サイト発表済)

しおりを挟む
鍋島家略系図
 ┌──────┬──┐
   茜(戦死)  岳 満喜子
 │       ├────────┬───┐
早紀    昭┳大原由美┬滋  和子┳月岡幸二
            ┃     │       ┃
      里世  ナオミ  (国後)武尊━国後藍

天沼・松永家略系図

 満喜子┳天沼稔
┌────┴───┐
雅治┳恵  久枝┳松永慎三
  ┣━┓   ┣━┳━━━┓
 秀隆 康昭 愛佳 葵┳尚 健太朗
           子

本シリーズ一覧
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1986138209&owner_id=9270648
発表回が増えたので新しくページつくりました

<要点>
里世が父方の大おば(大伯母。戸籍では事情で大叔母)に呼ばれ、宅で新たな知見が広がる
・向島から横川のロケーション。東武橋を渡るのか京成橋を渡るのかで経路が違ってくる。〈実地かストリートビューで確認する〉

〈登場人物〉※略系図あり
●大原里世(おおはら・りせ(36))
早紀の親戚の一人(甥・昭の娘でナオミの妹)。個人経営の法律事務所の庶務。今まで男に無縁だったが…
●鍋島早紀(なべしま・さき(85))
里世と姉(ナオミ)の大伯母。今は亡き大物実業家に見初められ実質仲間だった元愛人。肉体年齢65歳。後期高齢者にされてても「誰の話?」。元々じいばあ(鍋島篤之助と夕梨)によく懐いて体にいい食べ物に馴染んできた。公共交通の無料パスは使わない。
〈電話口〉
ナオミ=カキモト:里世の実姉で早紀の親戚の一人。デジタル専門の作曲家。ポーランド市民同士で交際中。離婚歴あり。
〈話に出る〉
柿本由美:里世とナオミの母。病弱で恋多き女だった。
金城昭:旧姓、鍋島。早紀の従弟で里世の父。
鍋島滋:早紀の従弟。里世の叔父でナオミの父。
国後武尊:旧姓、月岡。早紀の姪・和子の一人息子で里世たちの従兄。今夏、里世と…
○クール宅急便の配達員(お兄さんかお姉さん):京都から取り寄せた鴨肉を届ける



<本文>
それはある日の昼下がり、
向島、二階建ての邸宅、木造だが手の込んだ日本家屋の玄関。石畳が美しい。
里世が八重洲辺りで購入した、京仕込みの毬麩を手土産に持ってきた。
住人の早紀さんが出て、里世が挨拶。
「先日は大原家へお中元ありがとうございました。母(まーおばちゃん)も喜んで頂いていました[m:338]あと、季節柄【ハロウィン】にちなむ物にするかどうかも考えましたが…良いのがなくて[m:78]」
早紀さんはニッコリと、
「いいのよ。あれは元々私たち日本で祝わなくていいものだから[m:242]」
パッと晴れやかな表情の里世。

玄関ホールから通路へ通され、その幅の広さに関心しきり。
里世がこの場所を訪れたのは、去年秋、まーおばちゃんの養女になった際の報告以来。
突然決まったらしい改築をされてからは全く行けなかったので、今回が初訪問。

出された緑茶が体の隅々まで行き渡り、
「【細胞】が欲してたのコレです」
ほっこりした表情を見せた早紀さん。

彼女から、
「最近、そちらの暮らしはどうかしら?」
里世、
「お蔭さまでほとんど穏やかですね。家族も、友人たちも皆元気に過ごしてます♪」
「そう。良かった…」
早紀は間を置くことなく返したが、すぐに表情が曇った。
里世は、そこで、
「あの、もしかして……“ゼニゲバーズ”ですか?」
早紀はその単語を耳にすると、目を見開いて勢いよく首を縦に振り、
「そう、アイツら!またまたまた私のお金アテにして投資しようとしてるの。やんなっちゃう!」
今度は、里世の顔が曇る。
「ちょっとは身内のよしみで貸したけど、ほっとんど返って来なかったんだから💢」
里世からは、溜め息が漏れはじめた。どうしよう😥
仕方がないので、長さは覚悟で聞き続けることに決めた。
「もうここで名前挙げちゃうけど、マサハル、妻のメグミ、それからヒサエ。皆んなどうかしてる!そんなにやりたきゃポケットマネーでやんなさいっての😒」
お金のことは本当に厄介だ。里世にも近年までタカってきていたゲスな元同居人が居たこともあって、人ごとには思えなかった。
思い起こせばX年前、やたらとまとわり付かれ里世の当時住んでいたアパートに居付き、浪費しては里世の財布を当てにしていたHN赫音(アカネ)こと重兼心(ココ)。ワガママが闊歩しまくったその姿も生きざまも、鮮明に焼きついて離れない。
「そもそも過去、バブルの頃に新しい会社作るとき貸した金を踏み倒された上に、そこが潰れたら私に泣きついて結局やりたくもなかった清算にまで関わらされたわ。あの偉そうなのに軟弱な鬼畜生たちが😮‍💨」
その後も延々と話は続き、里世はその全てにつき合った。
そもそも彼らゲバーズは、父親違いの優秀だった早紀さんに妬きながら都合よく甘えてきていた。
「ごめんね。里世ちゃんにほとんど関わらないことぶち撒けちゃって💦由美サンとバカ昭の娘ってだけで…」
里世はこれを受けて、
「いえ、…私は早紀さんが思っているほどには聞くこともなかったですから、むしろ関わりが整理できました🙂」
ちなみに由美は早紀の従弟・昭の元嫁で、過去、早紀さんともうひとりの親族に助けられていた経緯がある。そのもうひとりは、昭の妹の和子。
(互いの近況、法事や墓参りなどのこと、そして…)



姉のナオミに確かめたいことが出て、電話。普段はいいけど、出先でしかも早紀さんの前だと…ちょっと焦る[m:52][m:78]
「時差があるから出てくれるかどうか……」

出てくれた。
「暇で暇でさぁー、眠れなくて☆ちょうどよかった[m:209]で用件は?」
「私の両親が離婚したのって…私が4歳になる年でいいんだっけ?」
「だと思うよ。合ってるじゃん!」
「イエ~[m:87]」


「ピンポーン!」
早紀さんが、とっさに玄関へ向かう。
クール宅急便の配達員の、ハキハキと満面の笑顔がこぽれそうに感じた、と早紀さん。
京【鴨】の水煮をいただく。
元々薄味かつ旨味の出る肉と少し塩味の効いたつゆの相性が、濃い味好みな里世の舌にも合う。さらに、そこに塩麹もすこし足したという。
「これも、美味しいですね。何で火力取ってます?」
「普通のプロパンだけど。IH調理器とそんなに違う?」
「ええ、断然こちらが良いです!」
「そう。出した甲斐があるわ♪」

「せっかくだから、一緒に戴きましょ♪」
里世から受け取った毬麩を、薄く削った松茸のお吸い物と一緒に入れて、二人で堪能。


何故、里世が呼ばれたか。本題は相続の話。
早紀さんから手短に、
「今回里世ちゃんを呼んだのは、私がいなくなってからのことを一部頼みたくて。聞いてもらえる?」
この話を受けたとき、里世は直観で、
“何かありそう…”とは掴んでいた。
「昔から、あなたのお母さん……由美ちゃんのこと。折々気にかけてたの。会うたび痩せていって……。ここからの話は、しないほうがいいかしら?」
「いいえ、むしろ聞かせてください」
早紀は頷いて、語り始めた。
「あの娘は、出会ったときからあまり食べなくて、私が食べるよう催促してようやくお吸い物からゆっくり口にしていったのが鮮やかに思い出せるの。こっち(鍋島家その他)とは真逆で…」
真剣に頷いて目を合わせる里世。
ちなみに、このエピソードは初耳だった。里世の知る母の食はむしろ太かった上に、ヤケ酒を姉のナオミと浴びてもいた。とは言えナオミは元々
下戸なので、始めの1杯を飲んだふりして、ダイニングテーブル下に置いていた麦茶用のポットへ流した。里世が姉からその話を聞かされた当時、
”こんなトコにも、片親違いの体質差出るんだなぁ…“
とぼんやり思ってしまったこともあり。
さらに早紀は、いつになくしんみりとした口調で、
「アタシね、誰にも頼れなかった。いつもそう。自分が終わるとき、由美ちゃんが生きてれば贈りたかった。手元にあるそれなりの品とお金。でも叶わなかった……さらにナオミちゃんまで距離的にも国も遠くなって。里世ちゃん、受け取ってもらえる?」
里世は、体の動きを止め…
「ご提案とっても嬉しくはありますが、私よりもっと近い相続者いますよね?」
「ええ、まあ…でも月岡さん家行った和子さん、最近は体調崩すことも多くてね。後日武尊も交えてこの場所で話しましょ」となった。
早紀さんからは
「あの子には私から伝えるから」とのこと。二人がLINEで繋がってて助かるわ~
里世からも、いつになく口ごもりながら
「実はその……彼と一夜を共に過ごしてしまって…。どうかしていたとしか思えなくて」
早紀さんからは即座に吹き出され、
「じゃ、心ゆくまで話しましょ。今日は夜の用は無いの[m:338]」

早紀さんがいつもの晴れやかに高い声で「そんな話聞いちゃったら酒、しかもひどく重いの飲みたくなった。つき合う?」
そうしてもしなくても構わなさそうな気さくさ。私は
「はい!」
軽く微笑んだ早紀さんの表情。
そぞろ歩きつつ、二人は横川の飲み屋街へ吸い込まれた。
路地の空気感は、そんなに変わっていない。早紀と里世はしみじみしながらゆっくりと歩みを進めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

N -Revolution

フロイライン
ライト文芸
プロレスラーを目指す桐生珀は、何度も入門試験をクリアできず、ひょんな事からニューハーフプロレスの団体への参加を持ちかけられるが…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

処理中です...