8 / 43
正月の手伝い
しおりを挟む
『年末年始、家に来ない?』
『お正月来て!』
と、別々にメッセージが来たのは、戻った日の夜中。
二人とも、早すぎでしょって、笑ってしまった。
家に戻って薬を飲んですぐに寝てしまったので、気がついたのは朝になってからで、おれが二人に送った最初のメッセージは、ごめんねのスタンプとなった。
おれとしては『気がつかなくて返事が遅くなってごめんね』のつもりだったのだけど、お断りの意味だと思われたみたいで、そっから連続して駄々こねのスタンプが送られてきてる。
もちろん、シュンから。
慌てて『職場と相談してまた連絡する』って、付け加えたのは言うまでもない。
「へえ、これ見事だな」
参考で撮らせてもらった史料の写真を見て、先輩がため息をつく。
「でしょ。なんで、こっちから正式に保管依頼出したいんですよ」
「出すべきだろう。『寺請帳《てらうけちょう》』は混じってないかな。探してるんだよな」
「あるかな……ちゃんとは見せてもらってないんですよね」
「そりゃあ、そうだろ。うわあ、オレが交渉したいくらいだわ……どこの寺?」
聞かれて答えた地名は、先輩にとって魅惑の地だったらしい。
そして、上に出したお願いは、恐ろしくあっさりと通った。
だよねー。
この写真だけでも、動きたくなるよな。
「くっそー、正月行こうかな……嫁、キレっかな」
カレンダーを眺めながら先輩が呟く。
「何で正月?」
「顔売れるから」
「はい?」
曰く、地元密着の史料は保管しているところだけじゃなくて、そこを支えているとこ――例えば寺なら檀家さんたちに、自分たちのことややってることを、知っておいてもらった方がいいんだそうだ。
だから、正月とか祭りとか盆とか、行事ごとに顔を出すのは大事だっていう。
それでメッセージを思い出した。
シュンはともかく、テルさんの『来ない?』は、そういう意味もあったのかもしれない。
お言葉に甘えていいですか。
そう返事をしたら、シュンから返ってきたのは喜びのスタンプで、テルさんからは恐縮っていう謎のスタンプだった。
正月って言っていたけど、相談していく中で大みそかの方がいいでしょうってなった。
なので、大みそかの日の昼下がり、約束のとおりの時間にこっちに来た。
『ゆっくりはできないと思うんだ。こっちは人手確保できてありがたいけど』っていう言葉どおり、立派な門構えの寺には、ずーっと誰かしら出入りしていて、テルさんはずっと立ち働いている。
「いっくん、その椀洗い終わってるから、そのままでいいよ」
「はーい」
「テルちゃーん、島根さんが甘酒終わったって~」
「ハイハイ、もう終いって言っといて」
「おっけー」
おれが寺についた時は、もう松飾はされていて、ひと段落したところだった。
そこからずっとバタバタしている。
言われればそうですねって思うんだけど、改めて、知った。
寺って、正月は忙しいもんなんだ。
檀家さんたちが集まって、寒さをしのぎながら時間を待って除夜の鐘をうって年を越し、ちょっと年越しの宴会があって、いったん解散した後、朝にまた集まって新年のお参り、新年のあいさつ会。
でも、おかげで住職と話をすることもできたし、檀家さんたちとも挨拶程度にはだけど、話ができた。
先輩が言ってた『顔を売る』の意味が、ちょっとだけわかった。
なんか、懐かしい感じでバタバタしてる。
勝手がわからないから言われるままに、できることだけ手伝う。
していることはお運びさんとか伝言係とか、シュンと変わらないあたりが、情けないけど。
集まっていた人も帰っていって、あとは最後の片づけだけってとこまできて、ちょっと一息ついてるテルさんが、おれの顔を見て言った。
「意外だったな」
「はい?」
「いっくん、すごいさらっと馴染んでてびっくりした。なんか、勝手に人づきあい苦手な人かと思ってたんだよ」
「そうなんだ?」
寺の台所にはテーブルっていうよりは作業台って感じの台があって、腰かけって感じの椅子が添えられてる。
そこにテルさんは座っていて、手元にはほうじ茶の入った湯飲み。
ホントに一息つきましたって雰囲気。
おれは流しにたくさん積み上がった色んな飲み物の空き缶を、一個ずつすすいでる。
「うん、なんか、前に会った時の印象で」
「……あの時は、色々とあって落ち込んでたから……」
「へえ?」
「だから、気分転換で電車にのっちゃったって、言ったじゃないですか」
「そういえばそう言ってたね」
ふむふむと納得して、テルさんは湯飲みを傾ける。
納得するだけで踏み込んでこないのは、テルさんだからかな。
「今は落ち込んでないんだ?」
「うん。それにおれ、こういう祭……っていうか行事ごと、慣れてるんで」
「ああ、そういうのが盛んな地域で育ったとか?」
「や、中学からずっと寮なんで。寮祭みたいで、懐かしくて楽しかったですよ」
普通の自宅生だと、学校行事の祭りってそんなにないらしい。
それに運営っていっても学内だけだし。
寮の祭りは、寮内だけの親睦会もあるけど、寮祭って地元の人との交流行事があって、その時は業者さんや地元の人とも色々と交渉しなきゃいけなかった。
確かにおれは、それほど外交的な性格じゃないけど、そういう生活を六年もしているとなんとなく何とかなるものなのだ。
何とかしなきゃいけなかったっていうのもあるんだけど。
「え、じゃあ、正月は実家に行った方がよかったんじゃないの?」
今更のように、テルさんは目を丸くする。
「実家、ないんで」
「え?!」
おれにとってはもう当たり前のことだったから、普通にそう言っただけだったんだけど。
ますます驚かれて、こっちが申し訳なくなる。
「もう、結構な間、正月って一人でぼーっとしてるか、バイトしまくってるかで終わってたんで、呼んでもらえてよかったです。すごく楽しいし」
中学の時は閉寮しているほんの数日の間だけ、親のどっちかのところに行っていた。
高校・大学の間は、バイトしながらネカフェに泊まった。
それで何とかなっちゃうんだから、便利な世の中だと思う。
「いっくん」
驚き通り越して真顔になっちゃったらしい。
テルさんはものすごく真面目な顔をして、言った。
「これから、盆と正月は家においで」
「はい?」
「ゆっくりはさせてあげられないけど、皆いるから」
「はあ……ありがとうございます?」
『お正月来て!』
と、別々にメッセージが来たのは、戻った日の夜中。
二人とも、早すぎでしょって、笑ってしまった。
家に戻って薬を飲んですぐに寝てしまったので、気がついたのは朝になってからで、おれが二人に送った最初のメッセージは、ごめんねのスタンプとなった。
おれとしては『気がつかなくて返事が遅くなってごめんね』のつもりだったのだけど、お断りの意味だと思われたみたいで、そっから連続して駄々こねのスタンプが送られてきてる。
もちろん、シュンから。
慌てて『職場と相談してまた連絡する』って、付け加えたのは言うまでもない。
「へえ、これ見事だな」
参考で撮らせてもらった史料の写真を見て、先輩がため息をつく。
「でしょ。なんで、こっちから正式に保管依頼出したいんですよ」
「出すべきだろう。『寺請帳《てらうけちょう》』は混じってないかな。探してるんだよな」
「あるかな……ちゃんとは見せてもらってないんですよね」
「そりゃあ、そうだろ。うわあ、オレが交渉したいくらいだわ……どこの寺?」
聞かれて答えた地名は、先輩にとって魅惑の地だったらしい。
そして、上に出したお願いは、恐ろしくあっさりと通った。
だよねー。
この写真だけでも、動きたくなるよな。
「くっそー、正月行こうかな……嫁、キレっかな」
カレンダーを眺めながら先輩が呟く。
「何で正月?」
「顔売れるから」
「はい?」
曰く、地元密着の史料は保管しているところだけじゃなくて、そこを支えているとこ――例えば寺なら檀家さんたちに、自分たちのことややってることを、知っておいてもらった方がいいんだそうだ。
だから、正月とか祭りとか盆とか、行事ごとに顔を出すのは大事だっていう。
それでメッセージを思い出した。
シュンはともかく、テルさんの『来ない?』は、そういう意味もあったのかもしれない。
お言葉に甘えていいですか。
そう返事をしたら、シュンから返ってきたのは喜びのスタンプで、テルさんからは恐縮っていう謎のスタンプだった。
正月って言っていたけど、相談していく中で大みそかの方がいいでしょうってなった。
なので、大みそかの日の昼下がり、約束のとおりの時間にこっちに来た。
『ゆっくりはできないと思うんだ。こっちは人手確保できてありがたいけど』っていう言葉どおり、立派な門構えの寺には、ずーっと誰かしら出入りしていて、テルさんはずっと立ち働いている。
「いっくん、その椀洗い終わってるから、そのままでいいよ」
「はーい」
「テルちゃーん、島根さんが甘酒終わったって~」
「ハイハイ、もう終いって言っといて」
「おっけー」
おれが寺についた時は、もう松飾はされていて、ひと段落したところだった。
そこからずっとバタバタしている。
言われればそうですねって思うんだけど、改めて、知った。
寺って、正月は忙しいもんなんだ。
檀家さんたちが集まって、寒さをしのぎながら時間を待って除夜の鐘をうって年を越し、ちょっと年越しの宴会があって、いったん解散した後、朝にまた集まって新年のお参り、新年のあいさつ会。
でも、おかげで住職と話をすることもできたし、檀家さんたちとも挨拶程度にはだけど、話ができた。
先輩が言ってた『顔を売る』の意味が、ちょっとだけわかった。
なんか、懐かしい感じでバタバタしてる。
勝手がわからないから言われるままに、できることだけ手伝う。
していることはお運びさんとか伝言係とか、シュンと変わらないあたりが、情けないけど。
集まっていた人も帰っていって、あとは最後の片づけだけってとこまできて、ちょっと一息ついてるテルさんが、おれの顔を見て言った。
「意外だったな」
「はい?」
「いっくん、すごいさらっと馴染んでてびっくりした。なんか、勝手に人づきあい苦手な人かと思ってたんだよ」
「そうなんだ?」
寺の台所にはテーブルっていうよりは作業台って感じの台があって、腰かけって感じの椅子が添えられてる。
そこにテルさんは座っていて、手元にはほうじ茶の入った湯飲み。
ホントに一息つきましたって雰囲気。
おれは流しにたくさん積み上がった色んな飲み物の空き缶を、一個ずつすすいでる。
「うん、なんか、前に会った時の印象で」
「……あの時は、色々とあって落ち込んでたから……」
「へえ?」
「だから、気分転換で電車にのっちゃったって、言ったじゃないですか」
「そういえばそう言ってたね」
ふむふむと納得して、テルさんは湯飲みを傾ける。
納得するだけで踏み込んでこないのは、テルさんだからかな。
「今は落ち込んでないんだ?」
「うん。それにおれ、こういう祭……っていうか行事ごと、慣れてるんで」
「ああ、そういうのが盛んな地域で育ったとか?」
「や、中学からずっと寮なんで。寮祭みたいで、懐かしくて楽しかったですよ」
普通の自宅生だと、学校行事の祭りってそんなにないらしい。
それに運営っていっても学内だけだし。
寮の祭りは、寮内だけの親睦会もあるけど、寮祭って地元の人との交流行事があって、その時は業者さんや地元の人とも色々と交渉しなきゃいけなかった。
確かにおれは、それほど外交的な性格じゃないけど、そういう生活を六年もしているとなんとなく何とかなるものなのだ。
何とかしなきゃいけなかったっていうのもあるんだけど。
「え、じゃあ、正月は実家に行った方がよかったんじゃないの?」
今更のように、テルさんは目を丸くする。
「実家、ないんで」
「え?!」
おれにとってはもう当たり前のことだったから、普通にそう言っただけだったんだけど。
ますます驚かれて、こっちが申し訳なくなる。
「もう、結構な間、正月って一人でぼーっとしてるか、バイトしまくってるかで終わってたんで、呼んでもらえてよかったです。すごく楽しいし」
中学の時は閉寮しているほんの数日の間だけ、親のどっちかのところに行っていた。
高校・大学の間は、バイトしながらネカフェに泊まった。
それで何とかなっちゃうんだから、便利な世の中だと思う。
「いっくん」
驚き通り越して真顔になっちゃったらしい。
テルさんはものすごく真面目な顔をして、言った。
「これから、盆と正月は家においで」
「はい?」
「ゆっくりはさせてあげられないけど、皆いるから」
「はあ……ありがとうございます?」
0
あなたにおすすめの小説
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
完結|好きから一番遠いはずだった
七角@書籍化進行中!
BL
大学生の石田陽は、石ころみたいな自分に自信がない。酒の力を借りて恋愛のきっかけをつかもうと意気込む。
しかしサークル歴代最高イケメン・星川叶斗が邪魔してくる。恋愛なんて簡単そうなこの後輩、ずるいし、好きじゃない。
なのにあれこれ世話を焼かれる。いや利用されてるだけだ。恋愛相手として最も遠い後輩に、勘違いしない。
…はずだった。
バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?
cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき)
ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。
「そうだ、バイトをしよう!」
一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。
教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった!
なんで元カレがここにいるんだよ!
俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。
「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」
「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」
なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ!
もう一度期待したら、また傷つく?
あの時、俺たちが別れた本当の理由は──?
「そろそろ我慢の限界かも」
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
【完結】抱っこからはじまる恋
* ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
BLoveさまのコンテストに応募しているお話に、真紀ちゃん(攻)視点を追加して、倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
経理部の美人チーフは、イケメン新人営業に口説かれています――「凛さん、俺だけに甘くないですか?」年下の猛攻にツンデレ先輩が陥落寸前!
中岡 始
BL
社内一の“整いすぎた男”、阿波座凛(あわざりん)は経理部のチーフ。
無表情・無駄のない所作・隙のない資料――
完璧主義で知られる凛に、誰もが一歩距離を置いている。
けれど、新卒営業の谷町光だけは違った。
イケメン・人懐こい・書類はギリギリ不備、でも笑顔は無敵。
毎日のように経費精算の修正を理由に現れる彼は、
凛にだけ距離感がおかしい――そしてやたら甘い。
「また会えて嬉しいです。…書類ミスった甲斐ありました」
戸惑う凛をよそに、光の“攻略”は着実に進行中。
けれど凛は、自分だけに見せる光の視線に、
どこか“計算”を感じ始めていて……?
狙って懐くイケメン新人営業×こじらせツンデレ美人経理チーフ
業務上のやりとりから始まる、じわじわ甘くてときどき切ない“再計算不能”なオフィスラブ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる