執事の恋

たかせまこと

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お仕置き

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 そこがお前の甘いところで困ったところだな、と、呟いて暖己はオレの髪を梳く。
 突き放せば良かったのか?
 もっと強く拒否しておけば?

「拒むなんて難しいだろう。あんなにお可愛らしいんだ」
「笙介さまはなあ……お可愛らしい上に聡くていらっしゃるから、ご自分の活かし方をよく分かっておられる」
「よくできた方だ」
「悪知恵もお働きになるがな」
「地頭がよいと言うんだよ」
「それでこんな中年執事に引っかかっていたら、世話がない」

 サクっと落とされて、しょんぼりだ。
 なのにすかさずに暖己がオレを喜ばせる。

「だが、笙介さまは人を見る目にも長けていらっしゃる。お前を選ぶんだからな」

 そう言う暖己の顔は複雑そうだった。
 オレの気持ちは疑う余地なくても、相手が笙介さまであっても、本当は自分以外がオレを選ぶのはイヤだって思ってくれている?

「でも違うから」
「ん?」
「笙介さまは愛おしくてお可愛らしい。けど、お前は別枠で愛してるから」
「俺も同じだよ」
「主筋の皆さまは、大事に思ってる。でも、手に入れたいとかオレから離れるなとか、そういうのは、暖己だけだ」
「それは光栄だ……」

 暖己がオレの上に屈みこんでくる。
 オレの両手を首に回して、身体ごと引き寄せた。
 下唇を甘噛みしてくるから、ちゅうっと舌を吸い込んでやった。

「この酔っぱらい」
「もう抜けた」

 だから、この僥倖を堪能させろ。

「業務連絡の続きがある」
「なに?」
「明日はふたりとも休みでいい。明後日からは速やかに次の業務に就くように、と」
「オレは春日井の本家に行けばいいのか?」
「そう。大旦那さまが『ふたりを入れ替えてそれでいいだろう』って」
「入れ替えって……」
「俺と寛文」
「それで、お前が笙介さまを叩き直すのか」
「ものすごくいやがっておられたけど、な」

 暖己がくつくつと喉をならして笑う。

「お手柔らかにして差し上げてくれ」
「じゃあ、嫉妬にかられないように、しっかりと寛文の気持ちを俺に刻んでおいて」

 言われずとも。
 唇をあわせておいしく味わい、せわしなく手を服の下にはわせる。
 じゃまな服ははぎ取ってベッドの下に投げた。
 きれいな暖己の身体。
 日焼けをする暇もないから肌は白いままで、それでも隙を見て鍛えているんだろう、うっすらと均等についた筋肉。

「きれいだな」

 明日が休みだというなら、お互いに出すものがなくなるまで、励むとしようか。
 これからしばらくは暖己に酔うのだ。
 正気に戻るのは、明日の朝でいい。

「寛文、おいで」

 暖己が脚を開いて、オレを誘った。


<END>
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感想 1

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みんなの感想(1件)

モサク
2023.11.30 モサク

執事同士の恋。
主人への敬慕、自身の仕事への矜持。長きにわたって培われる思いや、自分の核として支えてくれる存在。
そんなものを短いお話の中にしっかりと感じさせていただきました。
読後感がとても清々しいです。

2023.11.30 たかせまこと

ありがとうございます。
急ぎ足のお話になってしまって、物足りないかと心配もしましたが、楽しんでいただけてよかったです。
暖己と寛文がラブラブなのも、伝わって嬉しいです。

感想、ありがとうございました!

解除

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