スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木

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第4話 ギルドマスターの話を聞きました

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「よく来てくれた、カルア君」

ギルドに到着すると、そのままギルドマスターの待つ個室に案内された。
というか、家からこの部屋までピノさんに『連行』されて来たって感じ?
嬉し楽しい連行だったけど。
ピノさんは今日はここに留まらずに受付カウンターへと戻っていった。
ちょっと残念だけど、朝は混む時間だから仕方ないよね。

「では早速だが、まずは昨日君が預けてくれた魔石についてだ」
そう前置きして、ギルドマスターの話が始まった。

「君は『ギルド間通信』と『ギルド間共有』を知っているかな?」
「いえ、初めて聞きました」
「そうか、では説明しよう。まず『ギルド間通信』だが、これは簡単に言えば他のギルドに物品や情報を送る仕組みの事だ。転送の魔道具を使用する事でサイズや重さの制限はあるが他のギルドに物品を送る事が出来る。そして通信の魔道具によりこちらの映像や声、文字などといった情報を他のギルドに送る事が出来る。この二つの機能を合わせて『ギルド間通信』と呼ぶ」

「あの、それってダンジョンコアの監視映像とかダンジョン入り口の転移装置みたいなものですか?」
「ふむ、理解が早いな。概ねその認識で間違いない」

なるほど。

「次に『ギルド間共有』だが、これは先ほど話した『ギルド間通信』を使う事によって全てのギルドで情報と金品を共有する仕組みだ。まず情報については、全てのギルドに情報蓄積の魔道具が設置されている。この情報のレプリケーション、あー同期とか複製とかいう意味なんだが――により各ギルドの持つ情報を同一にする事が出来る。これにより、例えば一枚のギルドカードで何処のギルドでも身分証明が出来る訳だ」

「あれ? でもそれって同じ情報をあちこちで持たなくても、何処か一か所の情報をみんなで見ればいいんじゃないですか?」

「ほほう、そこに気付くか。これは本当に驚いた。まあそれに対する回答だが……情報を一か所に集約するのは確かに効率的なんだが、その場所で何か問題が起きたらどうなると思う?」
「あ、全部のギルドで情報が使えなくなります」
「その通りだ。しかも最悪の場合ギルドが持つ全ての情報が失われる可能性もある。その為、一度に全てのギルドが罹災でもしない限り情報が失われないよう、効率は悪くてもレプリケーションによる仕組みをとっているのだ」

そんなところまで考えてるなんて、やっぱりギルドって凄いや。

「ちなみに、ギルドカードで金を預けたり引き出したり出来る事は知っているな? この『ギルド間共有』による金品の共有によって、預けた金はどのギルドからでも引き出せるようになっているのだ」

ギルドって実は国よりもすごいんじゃ……いやよく知らないけど。

「さて、それでここからがやっと本題なんだが、まずこれらの機能を使い君の魔石に該当する情報を探してみた」
「はい」
「しかし、そこには該当する情報はなかった。それで次にサンプルとして魔石をいくつか王都のギルド本部に転送し、そこで専門家達による魔石の研究と調査が開始されたところだ」

「何だか凄い事になっちゃってる気が……」
「新発見だからそれも当然だろう。そこでひとつ確認しておきたいのだが、君はこの魔石をどうするつもりでいる?」
「そうですね、僕が持っていても仕方が無いので全て売るつもりです」

「ふむ、であればまず一旦通常の価格で魔石を買い取り正式な査定額が出た後に差額を支払うという方法もとれるな。この場合のメリットは今すぐ生活費を用意出来る事、逆にデメリットとしては君自身があの魔石に何か別の用途を見つけた場合に買い戻しが出来ない事だろう」

そうか、その場合でもいい点と悪い点があるんだ。

「まあこれはあくまで選択肢についてだ。別にどちらを選んでくれても構わないし今すぐ回答が欲しい訳でもない。金に困った時にでも考えてくれればいいだろう」

ギルマス超親切! 話し方は超ぶっきらぼうなのに。

「魔石についてはここまでだ。何か質問はあるかね?」
「いえ、とても良く分かりました」

「よし、では次に転送トラップの話だが……その前に少し休憩を入れるか。飲み物を用意させよう」
そう言いながら手元のベルを振るギルマス。

チリンチリン……
ベルは涼しげな音を鳴り響かせ、暫くするとパルムさんが部屋へとやってきた。

「お呼びですか、ギルドマスター?」
「おや、てっきりまたピノ君が来るものかと思っていたが」
「いやー、凄く来たそうな顔してましたけど応対で抜けられなくて、今回は私が」
「これは機嫌が悪くなるパターンだな。あとでフォローしておこう」
「ぜひお願いします。ここに来る時もの凄く視線が痛かったので」

さっきからもの凄く内輪な話してるんだけど、聞いちゃって大丈夫なのかな……

「それで用件だが、お茶と軽くつまめるものを頼みたくてな」
「分かりました。すぐ用意しますので少しお待ちくださいね」
「ああ、頼む」

ギルマス超気配りの人! 話し方は超ぶっきらぼうなのに。

「さて、お茶が来るまで雑談でもどうだ。訊いてみたい事があれば何でも訊いてくれ。雑談だから何でも構わないぞ。ギルドと私自身の機密事項は話せないがな」

うーーん大丈夫かな、ちょっと重たい話になっちゃうけど……

「僕、強くなりたいんです。でも魔法も力も駄目で訓練しても上達しなくって……ダンジョンに行ったのも自分を見直したいからで……」
「ふむ、そうだな……カルア君、君は今何歳だ? それとギルドに登録したのは?」
「この間13歳になりました。登録は10歳になってすぐです」
「ではギルドに登録して3年といったところか。それなりに経験を積み上げ、自分というものが見えてくる年数だな」
「はい。勉強や訓練も沢山したし色んな経験も積めたと思ってます」

「そうか……実は昨日君が帰った後、ギルドのメンバーに君の話を訊いてみたんだ。そうしたら皆口を揃えて『才能はない。だが凄い努力家だ』と言っていたよ」

うん、分かってたけど嬉しいような悲しいような……

「どうやら君自身も皆と同意見のようだな。だがな、私に言わせれば君を含め全員が大きな勘違いをしている」
「勘違い、ですか?」
「そう勘違いなんだ。いいか、確かに生まれ持った才能というものはある。しかし君ぐらいの年齢で急に化けるというか急成長する者というのもまた多い。才無しと思われていた子供が成長するうちに天才と呼ばれていた者を遥かに超えてゆく、そんな例は世の中に数多く存在するんだ」

「……」

「ふっ、信じられないといった顔だな。だがこれは事実だ。私は今までギルド職員そしてギルドマスターとして数多くの冒険者を見てきた。そしてだからこそ分かった事がある。それは才能というものについてだ。いいかねカルア君、才能と呼ばれるものには実は大きく2種類があるんだ」

思わず身を乗り出す僕。

「まず一つ目は君の言った通り生まれ持った才能だ。これは間違いなくある。そしてもう一つは、ある出来事や機会を境に急激に伸びる才能だ。こう言うと信じられないかもしれないが……そうだな、例えば君は『壁を越えた』という言葉を聞いた事は無いかね?」

……ある! そうだ、あの物語バイブル主人公ヒーローが――
『坊主、どうやら壁を超える事が出来たようだな。そうさ、難しく考える事なんかないんだ。前だけ向いてとにかく走り続けりゃあいい。気がついた時にゃあ、出来なかった自分なんか遥か後ろに置いてきちまってるもんさ』

まさかあの主人公ヒーローと同じ言葉をギルマスから聞くなんて!

「特に君くらいの年齢の子は急に伸びる事がよくある。だから過去の自分が持っていた才能や持っていなかった才能など、実は全く気にする必要が無いんだ。少なくとも私はそう感じている」

ああ、心が震える……

「あっありがとうございます。何だか僕、まだまだ頑張れそうな気がします」
「そうか、そう思ってくれたのなら私も嬉しい。こう見えて君には期待しているんだよ。とは言え君はそれだけじゃない可能性もあるんだが……それはまあその次の話だ」
「?」

「お待たせしました」
ちょうどそこにお茶を持って来たパルムさん……じゃなくてピノさん?
「おや、パルム君と交代したのかな」
「はい、パルムさんにご用の冒険者さんがみえたので」

「成程なるほど。それなら私のフォローは必要なさそうだ」
「何の話です、ギルドマスター?」
「いやこちらの話だ。気にしないでくれ」

などと話しながらお茶のカップを並べるピノさんだけど、3人分並べ終えたところで僕の隣に座った。あれ?

「私も担当としてお聞きしたほうがいいと判断しましたが、ご一緒してもよろしいですか?」
「そういう事なら構わないが、受付業務は大丈夫か?」
「ちょうど人の流れも途切れたようですし、何かあっても他の職員がフォロー出来そうでしたので」

ピノさんの言葉に頷くギルマス、そして僕達3人は静かにお茶を飲みお茶菓子を食べた。あ、このお菓子美味しい。
ほっと落ち着いたところでギルマスがカップに残ったお茶をグイッと飲み干し、口をリセットさせてからさっきの続きを話し始めた。


「確か転送トラップの話に入るところだったな。これについては近々専門家が調査に派遣されて来る事となった。まずは君の証言を元に考えられる条件のパターンをリスト化してトラップを再現させ、発生条件を特定するそうだ」
「大丈夫なんですか?」
「調査には上級冒険者が同行する事になるそうだ。安全を考慮してかなり強い冒険者に依頼する予定らしい」

おおっ上級冒険者! 有名な人だったらサインとか貰いたい!

「場合によっては調査に来た専門家にカルア君からの説明を求められる事があるかもしれん。すまないがその際はよろしく頼む」
「分かりました。心の準備をしておきます」
「うむ、冒険者らしい良い回答だ。よし、では転送トラップについては以上だ」


「次はいよいよ最後、君のスキルについてだ」
「はい」
「進化した【スティール】については後で見せてもらうとして、まずは前提となる話から始めるとしよう」
「前提となる話、ですか?」
「そうだ。……カルア君、そもそもスキルとは何だと思う?」

いきなりの質問に戸惑う。スキルとは何か? うーむ……

「難しいだろう? 実はこの問いについては専門家の間でもはっきりとした答えは出ていない。今のところは全てが仮説レベルなのだ」
「そうなですか?」
「うむ。そしてその中で現在最も有力だと言われているのが、魔法の一種であるという説だ」
「スキルが魔法……ですか」
「そうだ。なので今はその前提で話を進めよう。スティールを魔法として考えた場合、では属性は何になるだろう?」

【スティール】……アイテムを手元に引き寄せるスキル。離れた場所にあるものを自分の手元に移動させるのなら空間魔法か。そして徐々にではなく一瞬で手元に来る。ならば時間魔法も関係する? とすると……

「時空間魔法……ですか」
「その通りだ。そして君は他にも時空間魔法が使えるな?」
「えっ!?」

僕が使える、時空間魔法……?
あっ、もしかしてピノさんが言ってた――
「回復魔法……?」
「そう。昨晩他の冒険者から聞いたのだが、君は彼らが回復魔法を使っているのを見て覚えたと言っているそうだな。その事実に間違いは無いかね?」

「ええ、その通りです」
「では誰かにやり方を聞いたり説明を受けた事は?」
「ありません」
「そうか……」

黙って考え込むギルマス。
一体何なの? 回復魔法ってそんな難しいものじゃないと思うんだけど……

「あの、何か問題でした?」
「ああいや、そうじゃないんだ。んーそうだな……カルア君、君は回復魔法についてどう思う?」

回復魔法について……?
「使える人は多いし、とても簡単な魔法なんじゃないかな?」
それに何と言っても僕にでも使える魔法なんだから。

「うーん、やはりか……」
ギルマスの表情がますます曇っていく。もしかして僕何か変な事言った?
「実はな、回復魔法というのは『非常に難しい』魔法なんだ」
「え……?」
そんな訳……
「使える者が多いのは習う者が皆真剣だからだ。何しろ命に直結する魔法だからな。それ故ギルドでも真っ先に覚えるよう推奨しているんだ」

「……あの、僕ギルドからそんな事言われてませんよ?」
「それはその話をする前に君が回復魔法を使えていた為だ。そしてギルド職員は君の回復魔法は親御さんから教わったものだろうと思っていたらしい。普通に考えればそれ以外の理由などあり得ないからな」

「え、それってもしかして……」
「ああ。見ただけで覚えるなど通常は絶対にあり得ないんだ。そして回復魔法が簡単などという話もまた然り」

回復魔法が難しいなんて思っても見なかった。
色々と才能が無い僕が見よう見真似で出来ちゃった魔法なのに……

「以上の事から、君は実は時空間魔法に対して途轍もない適性を持っているのではないか、と私は推測している」
「っ! 僕が魔法の適性を……」
「もちろんこれはまだ推測の域を出ない仮説に過ぎん。だが時空間魔法に高い適性を持つ君だからこそ、命の危険に晒されたその時に時空間属性のスティールスキルが進化を果たした、そう考えると辻褄が合うのだよ」

どうしよう、もの凄くドキドキしてきた。
じゃあ……じゃあ、もしかしたら他の時空間魔法も使えるように!?

「あの、時空間魔法って他にどんなのがあるんですか?」
「ふふふ、当然そう言うと思って調べておいた。まず有名なところだと【ボックス】だ。魔法の鞄の元となっている魔法と言えば分かり易いだろう。次に【遠見】、これは離れた場所の様子を見る事が出来る魔法だ。そして【転移】、遠見で見た場所に一瞬で移動出来る。これはダンジョンの転送装置に使われている魔法だな」

凄そうな魔法が次々と……

「あとこれは物語レベルの話だが、過去や未来を見る事が出来る魔法もあるとか。まあこれについては真偽の程は分からないがな」
「ですよね、流石に過去とか未来なんて……」
「だが一つ確実に分かっている事がある。それは――」

うん、それは!?

「どの魔法も結構な魔力を必要とするという事だ」
「……」

ああもうっ、そんな事だろうと思ったよ!
結局僕には使えないって事じゃん!

「む、その顔は魔力が少ないから結局無理だと思っているな。別にそんな事は無いぞ、魔力は訓練で増やせるからな」
「えっ、魔力って増えるんですか?」

そうなの?

「そうか、その辺りもまだ知らんか。ならばまずは魔法に関する正しい知識を身につける事をお勧めする。何なら私から紹介状を書くが、どうする?」
「……そこまでしてもらっていいんですか?」
「勿論だとも。先程も言っただろう、私は君に期待してるのだと」

突然僕の前に開けた夢のような未来!
って、もし本当にただの夢だったりしたら……嫌すぎる。

そんな嫌な想像をする僕だったけど嬉しい事にこれは夢でも何でもなくって、ギルマスは話を続ける。
「人生にかかわる大事な話だ、急な事だし考える時間も必要だろう。だから今はまず必要な事から先に済ませようじゃないか」
「……必要な事、って何ですか?」

「決まっているだろう、君の特別な【スティール】を見せてもらうのだよ」



▽▽▽▽▽▽
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