スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木

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第54話 時間魔法から始まる回復魔法です #1

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「すみません。あまりにツッコミどころが多過ぎて、完全に本題を忘れていました」

ええーーっ、本題って授業の事だよね? それを忘れてたって……
でもよかった、やっと授業が始まりそう。

「それでは気を取り直して、時空間魔法における時間関連の説明から始めましょう。まず最初に訊きたいのですが、時間に関わる魔法についてはモリス氏からどのように聞いていますか?」

ええと、モリスさんが言ってたのは確か……
「時間魔法は『把握した空間を流れる時間に干渉する魔法で、空間の把握に慣れれば自然と感覚が掴める』って言ってました」
「なるほど。そのあたりの認識はやはりエルフとは違うようですね。それも確かに間違いではないのですが……。実はエルフには、古くから伝わる鉄板の習得方法というものがあるんですよ」

時空間魔法に優れた種族に伝わる鉄板の習得方法!!
それってもしかして、「謎のベールに包まれた秘密の――』……みたいな?

「それって、他種族には秘密にしてたりとかじゃ……?」
「ああいえ、そんな事はありませんよ。ただ……この方法で教えるためには、教える側がかなりの魔力を保有し、かつ時空間魔法を精緻に使いこなす必要があるのです。なので教える事の出来る者が限られるんですよ」

――ああ、なるほど。だから……

「そう、結果としてエルフしか教える事が出来ない方法となっているんです。ああ、でもモリス氏程の力があれば出来そうではありますね。もし彼が知っていたら、きっとあなたにやってくれていたと思いますよ」

うん、僕もそう思う。モリスさんだったら大喜びで教えてくれそう。『これってエルフに伝わる秘密の習得方法なんだよ!』とか言って。

「では始めましょうか。この方法では火を使うのが一般的ですので、始めにちょっと場所を移動しますね」
そう言って校長先生は【転移】を発動、目に写る景色が校長室から他のそれへと切り替わった。

ここは……どこかの森の外れみたいだ。あれ、でもどことなく見た事があるような……?
あっ、思い出した。ここって前にモリスさんと『5分でゲットだ! 超高速ウルフ狩り』をやった時、最初に転移した辺りだ。

「ではちょっと準備をしますね」
そう言って校長先生は軽く視線を上げ――その次の瞬間、僕達の目の前には枯れ枝の小さな山が出現した。
「これ――焚き火の準備?」
「そうです。この習得方法には焚き火を使うんですよ」

焚き火を使った習得方法……火を囲んで語り合うとか?

「何だかちょっと楽しみです。ところでこの枯れ枝って今【転移】して採って来たんですか? 突然まとまって出てきたように見えたんですけど」
「いいえ、【転移】しながら1本ずつ集めるのは時間が掛かりますからで、周囲から『転送で取り寄せた』ので――ああっ、しまった!」

あ、そっか……

「つまり把握した範囲内から対象を指定して自分の前に……て事は【転送】って自分の前の物を送るだけが使い方じゃないんだ……あ、それじゃあもしかして、把握さえすれば【遠見】で遠くから取り寄せたりも? うわぁ、何それすっごく便利そう!」

これは是非試さなきゃ! さっきの【隠蔽】もそうだけど、やっぱりエルフの時空間魔法ってもの凄く参考になるよっ!!

さあ次はどんな凄い魔法を見せてくれるんだろう!
――って校長先生の方を見ると……
あれ? 何だかしょんぼりしてる……?

「あああ、これ以上余計なものを見せないよう気を引き締め直したばかりだったっていうのに……」

ええっと、これってもしかして……

「エルフの秘密の魔法だったり……とか?」
「――あいえ、そんな事はないですよ。秘密とかじゃあ全然ないです。ただ……カルア君は絶対しないでしょうけど、悪用が出来てしまう魔法ですから。使う時は、うっかり他人の持ち物を取り寄せたりしないように、十分気を付けて下さいね」

ああっ! 泥棒とかやり放題だ、この魔法。怖っ。
いや、それだけじゃないかも。

「もしそんなうっかりを誰かが『【スティール】スキルでやったんだろ』とか言い出したら大変ですよね。【スティール】スキルを持ってる人は全員泥棒扱いされるようになっちゃうとか――」
「そう、その通りなんです」
「分かりました。そんな事にならないように、しっかり気を付けながら使い方を考えてみます」

泥棒だって誤解されないような『お取り寄せ』の使い道……あっ、そうだ!

「そうだよ、直接取り寄せられるなら『なんちゃって水魔法』の水を収納しとく必要がないじゃん。あ、じゃあもしかして、取り寄せられる火さえ見つかれば『なんちゃって火魔法』なんかも出来ちゃうとか? そうか、だったら溶岩とかもいちいち土や石から作らないで、火山から取り寄せちゃえば……それに……」
「ああ誰か助けて……ちょっとした不注意からカルア君の加速が止まらない……」
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