スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木

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第79話 僕達に訪れた突然の危機、そして #3

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そのカルアラートが鳴り響き、そして途中で途切れた。
という事は……アラートが遮断される程の危機がカルアに迫っている!
その事に思い至ったピノは、キッと宙を見据え――
「待っててカルア君、今助けに行きます!」
そして消えた。

ピノが応対中だった冒険者と、隣のカウンターでそれを目撃したパルムを残して。
「仕事……」



ピノが【転移】した先は当然カルアの行き先であるセカンケイブダンジョンの前。ダンジョンの中へは転移装置で入り、そこでブレスレットによりカルアの位置を把握しようとしたのだが――
「どうしよう、中に入ったのにまだカルア君のいる方向が分からない……」
通信ならば届くかもしれない。だが危機的状況においてそれを試すのはリスクが高すぎる。
ならば打てる手はひとつ。

「今はとにかく進もう。方向が感じられるようになるまで!」
そしてピノは走り出した。
進路上にいた不運なゴブリン達を撥ね飛ばしながら……



第6階層、ボスの間。
「困ったな、何処を視てもカルア君達が見つからない」
「あのゴブリンソーサラーは『真なる最下層』って言ってた。だから少なくとも下方向だとは思うんだけど……」

この場に【転移】してすぐにカルア達の気配を探し始めたすモリスとクーラであったが、未だ発見には至っていない。刻一刻と過ぎていく時間に焦りの色を隠せない、その二人の前に――
「あれっ、モリスさん!?」
「ピノ君!?」
「ピノ先生!?」
途轍もない速度でダンジョンを踏破してきたピノがついに合流した。

「それでカルア君は!? カルア君はどこですか!?」
「ちょっピノ君――」
本来ここにいる筈の無いモリスがいると言う事は……
その事に気付いたピノは状況を知るべくモリスに猛然と詰め寄る。両肩をピノに掴まれガクガクと揺さぶられるモリスが何も答えられぬ間に、カルア達が姿を消す現場を目撃していたクーラがピノにその時の様子を伝え始めた。

「そう、この更に下に階層が……」
「ええ、どうやらそうらしいわ」
「……カルア君ったら、またダンジョンで転送されちゃったのね」
「ぶふっ!!」

ピノの呟きがモリスにクリティカルヒット!
だが今この状況で笑う訳にはいかない。モリスは必死で崩壊を抑え続けた。

「モリスさんの遠見でも見つける事が出来ないんですね」
「うっ……くく……そっ、そうなんだよ。っ……ふぅ……多分何かに妨害されてるんだとは思うんだけど」

ピノは軽く俯いて少し考え、そして再びモリスに視線を戻す。
「じゃあ逆に視えない場所ってどこです?」



その言葉にハッとするモリス。ピノの言わんとする事に一瞬で思い至った。
「そうか! 視る事が出来ない空間――それがすなわち彼らの言う『最下層』って事か!!」
範囲を広げて再度【遠見】を行うモリス。すると、範囲の外側方面にはダンジョン外壁と思われる限界域が、そして下方には……
ダンジョン外壁とは明らかに異なる、不可視の空間が存在している!
「あった! この下約10メートル、そこから下に視えない領域がある」

「10メートル……それくらいなら!」
ピノは両の掌を地面に打ち据え、緩んだ地盤をペンダントに【収納】した。
するとその下から姿を現したのは、平らで艶やかな黒い壁。
「これが最下層の上壁……か」

ピノはその壁の上に降り立つと両拳にナックルダスターを装着、そして身体強化を発動して壁を殴ってみる。すると――
黒い壁は一瞬揺らめくように波打ち、小さな穴が開いて――そしてすぐまた塞がった。
「この感じなら全力で殴れば通れると思うけど、それだと魔力が……」
そう、この先には強大な敵が待ち受けている可能性が高い。
例え中に入れたとしても、魔力を使い切った状態ではカルアを助けられないのだ。

「なら穴を開けるのは私がやるわ」
思い悩むピノであるが、その時すぐ横に降り立ったクーラがそう言って小さな笑みをこぼした。

「多分私の魔力はそれで尽きると思う。だから……あの子達の事はピノ先生、あなたにお任せします」
そのクーラの信頼にピノもまた小さく微笑み、そして頷いた。
「では壁の破壊はクーラ先生にお任せします。カルア君は私にお任せください……あ、お友達も」
「…………」

微妙な不信感を覚えるクーラに、ピノが最後に一つお願いを伝える。
「あそうだ、私が来たって事は内緒に。気付かれないように変身していくので」
「お安いご用よ。その理由も見当が付くしね。……じゃあ行くわよ」
そしてクーラはその全ての力を――
「全解放っ!!」

クーラが全力で放った拳は、その黒い壁に人ひとり通れる程の穴を穿ち――
「行って!!」
その叫びを受けてピノはその穴に突入した。

「頼んだわよピノ先生……カルア君以外も」



ダンジョンの中に発生したその壁は、言わば『異界の壁』。それを物理的な力のみで抉じ開けるという偉業を達成したクーラは、その代償として殆どの魔力を使い切ってしまった。
その急激な魔力消費によりその場にへたり込んだクーラだったが、遥か上方から掛かるモリスの声に慌てて立ち上がる。

「クーラくーん! この床の大穴とさっきの物凄い衝撃で、この部屋今にも崩れちゃいそうだよ! 何とか結界で支えてるけどそんなに保たないよ! 修繕を手伝ってーーー!!」

何とか【身体強化】無しで10メートルの高さを掛け上がり、クーラはモリスの横に立った。
「それで、この状態からどうやって修繕するつもりなの?」
「うん、それなんだけど……ここは一つダンジョンコアを囲む結界を外しちゃって、ダンジョン自身に修繕して貰おうかなって」
半ば投げ遣りなモリスのその返答に、こっちはこっちで大変な事になりそうだ――と、見えない天を仰ぐクーラだった。



一方、こちらはセカンケイブダンジョンに降り立ったピノ。
「カルア君を感じる! もっと下の階にいるのね。すぐに行くから待ってて!」

ピノは軽く顎を上げ、右拳を左上前方に突き出した。
そして――
「ルピノス!」
掛け声と共にメタルピノスーツを着装っ!

着装のキーワードには、変身後の偽名をそのまま設定した。
少女3人が深夜の勢いで採用した偽名を!
そしてその変身ポーズもまた、深夜の勢いによるものなのだ!
深夜の勢いによるものなのだ!

行け、ルピノス! カルア達を救うために!!



▽▽▽▽▽▽
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