スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木

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第84話 パルムさんに訪れた救いの時です #3

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ここでもやっぱり説明はクーラ先生から。『真なる最下層』の事は全部先生に話してあるから、内容は全部その通り――ただしルピノスさんの登場は無しで。

「なんと……ボスによる強制転移、そして『真なる最下層』だと?」
「ええ。ただまあそれはもういいのよ。その後にダンジョンの構成が変わって、もうそれは無くなっちゃったから」
「は? 構成が変わった? どういう意味だ?」

まあ普通ビックリするよね――って言うか『意味不明』って感じかな?
という事で、次はゴブリンのダンジョンが森のダンジョンに変化したあたりの話に――ただしセカンの登場は無しで。

「何だと!? そんな事があり得るのか!?」
「信じられないのも無理は無いわ。だけど事実よ。まあこの後にでも確認に行ったらいいわ。どういう経緯で変化したかっていうのは言えないけどね。これは本部に直接報告する案件になりそうだから」
「まあ、それはそうだろう。俺も聞かずに済むのならそうしたいし、むしろ話さないでもらってよかった」

そう息を吐くジャンボさんの姿は何だか最初より一回り小さくなったように見える。絶対気のせいだろうけど。
でも大丈夫、次の話を聞けばきっと元気が戻ると思うから。

「それで、ここからが直接この街の今後に影響するところよ。まずはその森だけど、かなり凄い事になってるわ。普通の森と同じように薬草や香草が生えて、沢山の森の魔物が生息している。しかもダンジョンだから、これらは取ってもすぐ元に戻る。分かる? これってつまり『森の資源が安定して入手出来るようになった』って事よ?」
「それは……なんと……」
「しかもそこに生えている木がね――カルア、例の板を一枚出してくれる?」

はい、真なる最下層の床板ですね。

「こんな良質な板が作れるような真っ直ぐに伸びた大木もあるの。どう? これって街の特産品として打って付けだと思わない?」

ギルドマスターは板を手に取り、目を見開いた。
「これは……見た目も質感も素晴らしいな。早速商工ギルドとも話を詰めなければ。クーラ、この板貰っていいか?」
「ええ、いいわよ。……とまあそんな訳だから、多分これからこのフタツメの街は大変な事になるわよ。もう誰も『不人気ダンジョンを抱える寂れた街』だなんて言わなくなる。資源採取の依頼ももの凄い量になるだろうから、冒険者の数も今のままじゃ全然足りなくなるでしょうね。『ギルドマスターの仕事に慣れた』なんて感想は、もう言ってられないわよ?」
「ああ……そうだな。これは本当に大変な事になりそうだ。全く、『英雄カバチョッチョが立ち寄った街かよ!』って感じだぜ」

「これも全部この子達がした事よ。謝礼が出るようならオーディナリーダの口座に振り込んでおいて。王都のギルドに問い合わせれば分かるから」
「分かった。代官や商工ギルドと協議してからとなるだろうが、経済効果から算出した結構な金額の謝礼となるはずだ」



これで僕達がセカンケイブダンジョンでやる予定だった事、そしてフタツメの街でやらなければいけない事は全部終わった。後は王都に帰るだけだ、けど――
「馬車ってまだ迎えに来ないんだよね?」
まだ予定の2週間が経っていないから。今から呼んでも来るのは夕方くらいかな?
「別に転移で帰ればいいじゃない」
あれ? それでいいの、アーシュ?

「『冒険者らしく』じゃなかった?」
「あー、それはもう十分満喫したでしょ? テンプレにフラグ、それに嵐から農園を守ってダンジョンの秘密にも迫って、冒険も戦闘もいっぱいやったし、今更馬車での移動なんかにこだわってもね」
「あはははは、確かにそうかも」

と言う事で、街を出た僕達は目立たない場所から王都の転移スポットへ――
「【転移】っと」
そう言えば【転移】にここを使うのって久し振りじゃない?
最近は部屋とかベルベルさんのお店に直接跳んでたからなあ。

「じゃあお昼を食べてから学校に行くわよ。冒険者ギルドへは私とラーバル校長で報告に行くから、あなた達はそこで解散ね」

そっちの報告もみんなで行くのかと思ってた……
クーラ先生がやってくれるなら全部お任せで。よろしくお願いします!

って事でお昼も済んで、暫くぶりの学校へと到着。何もかもが懐かしい……
「明日はお休みで明後日からは2日間セントラルダンジョン探索、その次の日は日曜日でお休み。それで今回の2週間の校外授業は全部終了よ。という事で、明後日はいつもの時間にここに集合。いいわね?」

そして解散。
笑顔で手を振りあって、みんな家へ寮へと帰って行った。

さてと……
今日の午後と明日、やる事がなくなっちゃったから……
久し振りにピノさんのところに行ってみようかなっ!



王立学校、校長室――
「校長、ただいま戻りました」
「お疲れさまでしたクーラ君。予定より早い帰還という事は、カルア君のスキルが無事に進化出来たのですね」
そう笑顔で出迎えたラーバルにクーラもまた笑顔で返す。
「ええ、そちらは問題なく。……それ以外で途轍もない事が起きましたけど」

「えっ!?」
想定外の返事に笑顔のままフリーズするラーバル。だがその目の辺りには縦線が幻視される。

「その件でこれからギルド本部に報告に行きますので、校長もご同行をお願いできますか。現地でモリスさんとマリアベル氏が合流する予定です」
そんなラーバルに落とされたクーラのトドメの一言。顔色を無くしたラーバルから一切の表情が消えた。
「ああああ……これは本当に大変な事が起きたって事か」

ギルド本部に到着したクーラとラーバル。
受付を済ませた二人が連れていかれたのは、最上階にある幹部用会議室だった。
そこで二人を待っていたのは、モリスとマリアベル、そして――

「いよぉクーラ、元気そうじゃあねえか。どうだ学校の先生ってヤツは? 楽しんでやってるか? こんな冒険ってのも……中々良いモンだろう?」

冒険者ギルド全てを統括するグランドマスターであり、クーラの師匠そして直属の上司でもあるこの男の名は、スパカップ。

そう、かの英雄カバチョッチョのモデルとなった男である。



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