スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木

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第84話 パルムさんに訪れた救いの時です #2

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そして朝!
いつ寝付いたのか全く記憶にないけど、たっぷり寝たお陰で体力は回復したみたいだ。
その代わりお腹がもの凄く空いていて、朝ご飯を食べようと部屋を出ると――

「おはようアーシュ!」
ちょうど隣の部屋から出てくるところだったアーシュと顔を合わせた。
「…………おはよ……ぁふ」
あれ、もの凄く眠そう……?
アーシュってこんな朝弱かったっけ?

「どうしたのアーシュ? 何かすっごく疲れてない?」
「そうなの、朝早くからセカンに起こされてね。『おはよう姉さま、今朝もいいお天気ですね! あ、ダンジョンの中の時間と天気は外と揃えたんですよ。だからこっちも今は日の出の時間です! 今日は今から可愛いウルフちゃんと一緒に森のお散歩するんですよー』なんて……知らないわよっ!!」

ははっ、新しいお姉さんが出来て嬉しそうなセカンの様子が目に浮かぶよ。

「それで話が終わったかと思ってそのまま寝ようとしたら、『そうだ、昨日あれから仔犬タイプのウルフちゃんも作っちゃったんですよ。ちっちゃくってふわふわでモコモコなのがよちよちしてて……あの戦闘力皆無って感じがサイッコーですよね!』なんて言い出すのよ? 頭の中でモコモコもふもふしまくってくる仔犬たちに身悶えてたら、完全に目が覚めちゃったわよ!」

ああ、それってすっごく可愛いかも! 今度見せてもらいに行こうかな。

「そうしたらあの子、次は何て言ったと思う? 『あとちっちゃなラビットとかもすっごいふわふわで……あ、知ってます? ボアの仔ってシマシマなんですよ? これもまたコロコロとした感じで可愛くって……次は仔ディアとかにも挑戦してみようかな』だって! もう早朝から赤ちゃんテロって……やっぱりダンジョンなんて人類の敵よ!!」

「それは……なんて言うか、大変だったね」
「本当よ! だからね、今度直接行ってあいつに文句言ってやるつもりよ! それでついでにその仔達もじっくりと見て触れ合ってくるわ。次はそんな攻撃で心を乱さないよう慣れておく為にね! 私はテロには屈さない!!」

「あーうん、その意気だよアーシュ。頑張ってね」
さて、ごはんごはん……

「何他人事みたいに言ってんのよカルア。あんたも一緒に行くのよ?」
「えっ、いつそうなったの?」
「だってあたしまだ転移とか出来ないじゃない。あんたが連れてってくれなきゃどうやって行くって言うのよ」

ああそうか、言われてみれば……って別に転移じゃなくても――
「でもすぐに行くと何だかあの子に負けた気がするから、行くのは少し経ってからよ。いいわね?」

ははは、僕の転移で行く事はもう確定事項だったみたい……ってあれ?
何だかアーシュ嬉しそう……怒ってたんじゃなかったの?



「みんな準備いいわね? 部屋に忘れ物とかない? 昨日言った通り、ギルドへの報告が終わったらそのまま王都に戻るからね」
大丈夫、ずっと荷物は【ボックス】に入れたままだから。使う時にその場で取り出す方が便利だから、わざわざ部屋に出す必要なんてないんだよ。
「うん、大丈夫そうね。じゃあ行きましょう」

宿を出た僕達は、朝の澄んだ空気に包まれたフタツメの街を歩きギルドに到着した。
扉を開けて中に入る僕達――にもう絡んでくる人なんて誰もいなくて、むしろ冒険者の人達とかが手をあげて挨拶してくれる。

「セカンケイブダンジョンについて大事な報告があります。ギルドマスターに取り次いでくれる?」
超真剣な表情のクーラ先生がそう受付の人に声を掛けると、その人は笑顔と共に動き出した。
「生徒さん無事だったんですね、よかった。少々お待ちください」
――そんな声を残して。

そして間もなく、僕達はギルドマスターの執務室に通された。
……ヒトツメ以外のギルドマスターの部屋って初めて入ったけど、ここにも地図とジオラマが置いてあるんだ。もしかしてこれ、ギルドマスター用の標準設備なのかな?

「久し振りねジャンボ、元気にしてた?」
執務机から立ち上がったギルドマスターに、そう親し気に声を掛けたクーラ先生。そのギルドマスターは凄く身体が大きくて、立ち上がっただけでちょっと部屋が狭くなったような感じさえ受ける。顔は何処となく優し気で、圧迫感は感じないけど。

「まあな。ギルドマスターの仕事ってやつにもようやく慣れてきたところだ。んでクーラの方こそどうだ? 俺のギルドマスターよりむしろお前が先生やってるって方が驚きなんだが」
「ふふっ、こっちもまあ楽しくやってるわよ。それで今日来たのは──」
「ああ、セカンケイブについて話があるんだってな。だがその前にひとついいか? この間の嵐の一件を先に済ませておきたいんだ」

ああ、そう言えば『指名依頼と謝礼が……』ってノルトのお父さんが言ってたっけ。

「そうね、先に簡単な方から済ませちゃいましょうか」
「ああ。まずお前とお前の生徒達には礼を言わなきゃならん。あの農園が壊滅したらこの街の食糧が大変な事になっていたからな。本当に助かった。ありがとう!」

そう言って僕達に頭を下げるギルドマスター。そんな大きな体で頭を下げられると、逆に申し訳なく感じちゃうって言うか……

「ええ。気にしないで……って言っても、あれについては私は完全にノータッチ。全部この子達がやった事だからね」
「ああ、その辺りの話も全部農園主から聞いた。しかしあの農園の敷地全てを囲う結界とは……またとんでもない新人達が現れたものだ」
「まっ、うちにはギルド本部のモリス室長の一番弟子もいるしね」
「成程、インフラ技術室長のお墨付きって事か。だったらそれも納得できるか」
「ふふっ、そういう事」

「それでは事務手続きを始めよう。まずこれが農園からの依頼金だ」
そう言って革袋をドンとテーブルに置くギルドマスター。大きな手に負けないくらいの迫力がある革袋だ。
「次にこっちだ。これはこのフタツメの街からの謝礼金だな」
そう言いながらその隣にもうひとつ、更に存在感のある革袋をドドンと。

「で、代官の挨拶は断っておいたが、それで良かったんだよな?」
「ええ、助かったわ」
「これについては以上だ。あまり詮索するなと『上』から指示も来ている事だしな」
「やっぱり手が回ってたのね。そんな事だろうとは思ってたけど」

『上』って言うと、やっぱりベルベルさんかな……?

謝礼についての話はここまでで終わり、そして話はいよいよ――
「ではダンジョンについての話ってのを聞かせてくれ」
今日の本題へと。
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